たたら製鉄のソースを表示

[[File:Japanischer Tatara-Ofen mit Flügelgebläse (18 Jahrhundert).jpg|thumb|300px|たたら製鉄における踏み鞴による送風作業（『日本山海名物図会』所載）。]]
'''たたら製鉄'''（たたらせいてつ、[[英語|英]]：Tatara）とは、[[日本]]において[[古代]]から[[近世]]にかけて発展した[[製鉄|製鉄法]]で、炉に[[空気]]を送り込むのに使われる[[鞴]]（ふいご）が「たたら」と呼ばれていたために付けられた名称である。[[砂鉄]]や[[鉄鉱石]]を[[粘土]]製の炉で[[木炭]]を用いて比較的低温で[[還元]]し、純度の高い[[鉄]]を生産できることを特徴とする<ref>[[#Suzuki 2005|鈴木 2005]], p. 97.</ref><ref>[[#Tawara 1953|俵 1953]], p. 64.</ref>。[[近代]]の初期まで日本の国内鉄生産のほぼすべてを担った<ref name="Tatara06">[[#Kiyonaga 1994|清永 1994]], p. 1453.</ref>。[[明治]]以降急激に衰退し、現在では、[[日本刀]]の原材料「[[玉鋼]]」の生産を目的として、[[島根県]][[仁多郡]][[奥出雲町]]にある「[[日本美術刀剣保存協会|日刀保]]たたら」などが稼働している。

この記事では基本的に、初出時を除いて「鉧」を「ケラ」、「銑」を「ズク」、「鞴」を「フイゴ」、「鉄滓」を「ノロ」とそれぞれ表記する。

== 名称 ==
「たたら」という用語は古くから「鑪」や「踏鞴」、「[[多々良]]」などと表記されてきたが<ref name="Tatara12">『[[エンカルタ|エンカルタ総合大百科]]』2003年版、マイクロソフト、見出し語「たたら」。</ref>、それらは製鉄のさいに火力を強めるために使うフイゴを指し、既に「[[古事記]]」や「[[日本書紀]]」にその使用例がある{{Refnest|group="注釈"|「[[古事記]]」には[[神武天皇]]の后として「[[ヒメタタライスズヒメ|比売多多良伊須気余理比売]]（ひめたたらいすけよりひめ）」の名が記述されている<ref>[[次田真幸]]訳注 『古事記 全訳注』中巻、講談社〈講談社学術文庫〉、1980年、44頁。</ref>。また、「[[日本書紀]]」では「媛蹈鞴五十鈴媛命（ひめたたらいすずひめのみこと）」となっている<ref>[[宇治谷孟]]訳 『全現代語訳 日本書紀』上巻、講談社〈講談社学術文庫〉、1988年、108頁。</ref>。}}。また、近世以降に屋内で操業されるようになると、たたら炉のある建物を意味する「高殿」という表記も使われるようになった<ref name="Tatara15">[[#Kozuka 1966|小塚 1966]], p. 38.</ref>。

このような経緯から、「たたら」という言葉は製鉄法の他にフイゴや製鉄炉、それらを収めた家屋をも指す広い意味で用いられたが、[[20世紀]]に入った頃より、特に製鉄法を指して「タタラ製鐵法」<ref name="#1">[[#Tawara 1910|俵 1910]], p. 103.</ref>、「たゝら吹製鐵法」<ref>[[#Tawara 1933|俵 1933]], 著書名副題.</ref>といった用語が使われ始めた。また、たたらで製鉄をおこなう工程のことを「たたら吹き」と言い<ref name="Tatara12" />、現在では「たたら製鉄」と同じ意味で使われる場合がある<ref>[[#Nagata 1998|永田 1998]], p. 27.</ref>。

一方で「たたら」という呼称そのものの語源については不明であり、確実なことはわかっていない。一説によれば、[[サンスクリット|サンスクリット語]]で熱を意味する「タータラ」に由来すると言い、他にも[[タタール|タタール族]]を介して日本にもたらされたためとする説がある<ref>[[佐藤健太郎 (フリーライター)|佐藤健太郎]]『世界史を変えた新素材』[[新潮社]]刊、2018年10月25日。</ref><ref>{{Cite web|和書|url = http://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/nnp0101.htm|title = たたらの話|publisher = [[日立金属]]|accessdate = 2016-12-5}}</ref>。[[大和言葉]]に語源を求める説もあり、「叩き有り」からの転化、簡略化であり「踏み轟かす」の意、とする文献が存在する<ref>[[大槻文彦]] 『[[言海|大言海]]』第3巻、[[冨山房]]、1934年、238頁。</ref>。

== 特徴 ==
[[ファイル:Powder steel.jpg|thumb|砂鉄]]
鉄は自然界において独立した形で存在することはほとんどなく、例えば鉄鉱石や砂鉄などに代表される[[酸化鉄]]のように[[化合物]]として分布している。そのため、そこから鉄を取り出すには還元が必要であり、さらに[[銑鉄]]や[[鋼]]を生み出すためには[[炭素]]と結合させねばならない。

たたら製鉄は、初期に鉄鉱石の使用例があるものの、おもに砂鉄を原料とし、燃料にはもっぱら木炭が使われた<ref>[[#Saitou, Sakamoto & Takatsuka 2012|齋藤・坂本・高塚 2012]], p. 180.</ref>。[[東北地方]]では[[餅鉄]]が原料に用いられた例もある<ref>[[#Iida 1980|飯田 1980]], p. 128.</ref>。また、早い時期から火力を高めるためにフイゴが使用されるようになり、古代から近世までの長い年月をかけてゆるやかに進化してきた。

粒の細かい砂鉄を炭火の中に投入することで短い時間で還元吸炭が進み、また近現代製鉄にくらべて低温で加熱するために[[リン]]や[[硫黄]]などの有害不純物の鉄への混入が少なく、結果として非常に純度の高い鉄を取り出すことができる<ref>[[#Nagata 1998|永田 1998]], p. 32.</ref>。こうして生産された[[錬鉄]]、鋼、銑鉄は、近代以降には洋鋼に対してそれぞれ「[[和鉄]]」、「[[和鋼]]」、「和銑」と呼ばれるようになった。

世界史的に見てフイゴを使った低温還元の製鉄法自体はありふれた物であるが、木炭生産のための森林資源が豊富で、かつ温暖多湿な気候で[[雨季]]が存在するためその回復も速く、他にも[[中国地方]]で採れる良質な砂鉄の存在や<ref>{{Cite journal|和書|author=久保善博, 佐藤豊, 村川義行, 久保田邦親 |title=たたら製鉄の生産性と製品品質に及ぼす装荷比(砂鉄/木炭)の影響 |url=https://doi.org/10.2355/tetsutohagane1955.91.1_83 |journal=鉄と鋼 |ISSN=00211575 |publisher=日本鉄鋼協会 |year=2005 |volume=91 |issue=1 |page=83 |doi=10.2355/tetsutohagane1955.91.1_83}}</ref>、対する鉄鉱石の産出量の低さ等々の要因により、日本において製鉄はやや特異な発展を遂げてきた{{Refnest|group="注釈"|20世紀前半期の[[冶金学者]]である[[俵国一]]は「古来穏健なる発達を遂げて一種独特の点がある」と評している<ref name="#1"/>。}}。

== 構造 ==
[[File:Structure of Eidai Tatara.png|thumb|[[江戸時代]]中期に完成した永代たたらの構造図。]]
[[File:Japanischer Tatara-Schmelzofen - Zeichnung von Adolf Ledebur (1901).jpg|thumb|炉の断面・平面・側面図。]]
時代や地域によって違いはあるが、たたら製鉄では基本的に高さの少ない長方形の炉が使用された。[[中世]]には長さが約2 - 5メートル、幅は約1 - 2メートルの製鉄炉が使われている<ref>[[#Kawase 1997|河瀬 1997]], p. 219.</ref>。この箱形低炉は粘土で作られ、製鉄の際には炉材が不純物の[[溶媒]]の役割を兼ねるために、鉄が出来ていくに従って炉壁の下部が少しずつ内側から削られてゆくのが特徴である<ref name="Tatara07">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 7.</ref>。壁が薄くなり炉が耐えられなくなった所で操業を終えるが、この一連の作業単位を「一代（ひとよ）」と呼ぶ。炉は一代ごとに壊され、次回の操業はまた新たな炉を作って行なわれる。

たたらの語源ともなったフイゴにも時代ごとの変遷はあるものの、おおむね箱形炉をはさんで長辺側に2台設置されるのが一般的で、それぞれに約20本ずつ取り付けられた「木呂（きろ）」と呼ばれる送風管によって炉壁の両側下部より空気を送り込む。炉の内部は下に向かって徐々に狭まってゆく構造で、幅が最も小さくなる底部周辺に羽口があり、そこに鉄が生成される。羽口は2段階の太さになっており、先のほうが細い。これは[[#鉧押し（けらおし）法|後述]]する鉧押し（けらおし）の炉にのみ見られるもので、炉内にケラが出来始めて炉壁を侵食してゆき、それが中程まで進んで羽口の太い所まで来た時には最も火力を上げる時期に差し掛かるため、フイゴの速度を上げてより多くの風を送り込むための工夫である<ref>[[#Kozuka 1966|小塚 1966]], p. 40.</ref>。

また、除湿と保温のための地下構造もたたら製鉄の発展に伴ない拡大してきた。近世中期には上部構造物の3倍の規模をもち、炉の火力を落とさないためのさまざまな工夫が見て取れる。まず地下約1.5 - 2メートルにかけて厚い粘土の層を設けてそれより下からの[[地下水]]や湿気を遮断する。粘土層の下には木炭や[[砂利]]などの層が続き、最下部中心には排水溝を通す。一方、粘土層の上には深さ1.5メートル程の「本床（ほんどこ）」を設け、その中に[[薪]]を詰めて蒸し焼きにすることで地下構造全体を十分に乾燥させる。薪は木炭となって残り、それをそのまま突き固めて木炭と[[灰]]の層とする。また、本床の両側には「小舟（こぶね）」と呼ばれる熱の遮断と湿気の発散を目的とした小さな空間を設ける。<ref>[[#Kozuka 1966|小塚 1966]], pp. 38–40.</ref><ref>[[#Nagata, Hanyuu & Suzuki 2001|永田・羽二生・鈴木 2001]], p. 46.</ref>

規模の変遷こそあるものの、初期を除いてたたら製鉄の基本構造に、時代ごとで根本的と言える程の違いは存在しなかった。

なお、古来からある日本独自の溶鉄炉には「こしき炉（甑炉）」と呼ばれる炉もあり、混同されることがあるが両者は構造が全く異なる<ref>{{Cite web|和書|author=菅野利猛|url=https://www.kimuragrp.co.jp/company/effort/uploads/nirayama20161117.pdf |title=世界文化遺産、韮山反射炉の10大ミステリーを解く |accessdate=2020-05-15}}</ref>（[[キューポラ]]を参照）。

== 歴史 ==
=== 概略 ===
[[File:Tonomaruyama Tatara furnace.JPG|thumb|[[広島県立みよし風土記の丘]]に移築復元された戸の丸山製鉄遺跡（[[古墳時代]]後期）の製鉄炉。]]
古代における国内製鉄に関しては未だ詳しくわかっていないことも多い。

最古級の遺跡に、弥生時代中期頃の[[奴国]]に比定される福岡県の[[赤井手遺跡]]があるが、この遺跡は製鉄を行った遺跡ではなく、鉄素材を加工して鉄器を製作した鍛冶遺跡であった。

古典的には、弥生時代に、朝鮮半島から持ち込まれた原料を用いた製鉄が始まったと考えられてきた<ref name="Tatara03-2">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 2.</ref>。ただしこの説の根拠とされる遺跡の炭素年代の検討には疑義があり、確たる説と認められるには至っていない<ref name="Tatara03">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 3.</ref>。[[文献学]]的な見地で見た場合、[[記紀]]における内容や「多多良」という[[加羅]]の王[[姓氏]]、[[和名]]の発生時期などから、すでに[[5世紀]]前後には国内製鉄が行われていた可能性も指摘されている<ref>鈴木卓夫 『作刀の伝統技法』 [[理工学社]]、1994年、2頁。</ref>。

考古学的に信頼できる確かな証拠としては、[[6世紀]]半ばの[[吉備国|吉備地方]]に遡る<ref name="Tatara03">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 3.</ref>。ここでは、最初期には[[磁鉄鉱]]、6世紀後半からは砂鉄を原料として使用していた<ref name="Tatara03"/>。国内で調達が容易な砂鉄を原料とすることで、製鉄法は吉備地方から日本各地へ伝播したとみられる<ref name="Tatara03-3">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 3-4.</ref>。また、日本の製鉄法は、朝鮮半島や大陸あるいは世界各地の製鉄法と比較して、炉の形状が特異である<ref name="Tatara03-3"/>。朝鮮半島での製鉄では円筒形で高さのある炉が用いられているのに対し、吉備地方から伝わった製鉄法では箱型で高さの低い炉が用いられた<ref name="Tatara03"/>。なぜこのような独特の技法が編み出されたのかは解明されていない<ref name="Tatara03"/>。

なお、近年の発掘、研究の進展によって、[[福岡県]][[福岡市]]の[[博多遺跡群]]や、[[長崎県]][[壱岐]]の[[カラカミ遺跡]]などでは、[[弥生時代]]の製鉄遺跡と思われる痕跡が相次いで見つかっている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.city.fukuoka.lg.jp/maibun/html/preservation/18.html | title=保存処理の成果 (平成18年度) | publisher=福岡市埋蔵文化財センター | accessdate=2017-09-15}}</ref>。

当初は自然風のみを利用した方法であったため、「[[スラグ|鉄滓]]（のろ）」と呼ばれる不純物を多く含んだスポンジ状の[[海綿鉄]]ができ、それを再度加熱した上、ノロと余分な[[炭素]]を叩き出すことで錬鉄や鋼に加工した。間もなくしてフイゴが使われるようになると、その後の技術の改良や進歩によってたたら製鉄は徐々に規模を拡大し始める。

続く[[奈良時代|奈良]]・[[平安時代|平安期]]頃にはどういった鉄が生産されていたのか不明であるが、遺跡の発掘によって中国地方の[[山陰地方|山陰]]、東北地方の南部では砂鉄が、[[山陽地方|山陽]]では鉄鉱石が多く原料に使われたことが分かっている<ref>{{Cite web|和書|url = http://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/nnp0202.htm|title = たたらの話|publisher = [[日立金属]]|accessdate = 2016-11-19}}</ref>。すでに初歩的な地下構造が出現し、炉も大型化が進んだ<ref name="Tatara10">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 4.</ref>。

中世以降のたたら製鉄には[[間接製鋼法]]である「銑押し（ずくおし）」と[[直接製鋼法]]である「鉧押し（けらおし）」とが存在した。前者は中世から<ref name="Tatara05">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 5.</ref>近代の半ばにかけて全国で広く行われた方法であり<ref name="Tatara04">[[#Kiyonaga 1994|清永 1994]], p. 1455.</ref>、対して後者は[[16世紀]]初頭になって登場した[[播磨国]]の「千種鋼（ちぐさはがね）」を始まりとする{{Refnest|group="注釈"|江戸後期に[[公儀]][[御用人]]を務めた[[山田浅右衛門|山田浅右衛門吉睦]]の著書『古今鍛冶備考』（[[1819年]]頃）の記述による。一方、同じ江戸後期に活動した刀工、[[水心子正秀]]が著した『剣工秘伝誌』（[[1821年]]）では、ケラ押しの発生時期を千種鋼の登場より100年以上前の[[応永]]年間（1394 - 1427年）としている。<ref name="Tatara08">[[#Suzuki 2005|鈴木 2005]], pp. 98–99.</ref>}}。

また年代ごとの方式の変遷として、古代・中世における露天型の「野だたら」から、近世中期以降の屋根を備えた固定型の「永代たたら」への移行といった流れがある。

このような長い変遷を経たのち、たたら製鉄が成熟し完成の域に達するのは[[18世紀]]に入ってからのことである<ref name="Tatara01">[[#Nagata, Suzuki 2000|永田・鈴木 2000]], p. 64.</ref>。

=== 銑押し（ずくおし）法 ===
[[ファイル:Pig iron.jpg|thumb|銑鉄]]
「銑押し（ずくおし）」は、まずたたら炉で炭素濃度の高い銑鉄を作り、それを「大鍛冶場（おおかじば）」と呼ばれる別の作業場において脱炭[[精錬]]して錬鉄や鋼にする方法である。

おおむね2つの手順を踏むために間接製鉄法に分類され、その操業日数から「四日押し」とも呼ばれる。不純物を多く含むものの、粒が細かいため還元が速く、銑鉄になりやすい赤目砂鉄（あこめさてつ）をおもな原料とした<ref name="Tatara06" />。

大鍛冶場は「左下場（さげば）」と「本場（ほんば）」とに分かれており、左下場では銑鉄を再度加熱して[[融解|半溶融]]させ、その時フイゴで送った空気に含まれる[[酸素]]と反応させることで炭素量を減らす。それを本場においてもう一度加熱、脱炭した後、鍛錬して不純物を取り除く。そうして出来上がった錬鉄は「割鉄（わりてつ）」{{Refnest|group="注釈"|明治期以降にはその形から「包丁鉄（ほうちょうてつ）」とも呼ばれる<ref>[[#Amada 2004|天田 2004]], p. 45.</ref>。}}、鋼は「左下鉄（さげがね）」と呼ばれ、脱炭の度合いによって各種の鉄を作り分けることができた<ref name="Tatara04" />。

たたら製鉄は[[鎌倉時代|鎌倉期]]以降、このズク押しが主流であり<ref name="Tatara11">[[#Nagata 2005|永田 2005]], p. 13.</ref><ref name="Tatara05" />、中国地方を中心として日本各地で錬鉄や鋼、銑鉄が生産され、それらを用いて生活必需品や武器、農工具などさまざまな物が製造された。なお、近世後期には錬鉄は鋼の約2倍の価格で売買されており<ref name="Tatara02">[[#Katayama, Kitamura & Takahashi 2005|片山・北村・高橋 2005]], p. 125.</ref>、当時のたたら製鉄の生産の中心は鋼ではなく、汎用性に優れた錬鉄の方だった。

=== 鉧押し（けらおし）法 ===
[[ファイル:Tamahagane yao.jpg|thumb|玉鋼]]
いちど銑鉄を作ってからそれを錬鉄や鋼に卸すズク押しに対し、「鉧押し（けらおし）」は砂鉄から直に鋼を作りだす直接製鋼法に分類される。ただし、後述するようにケラ押しでは通常、鋼の他にそれを超える量の銑鉄や不均質鋼などができ、それらは主に錬鉄に仕上げられるため<ref name="Tatara04" />、厳密には「直接製鋼法'''兼'''間接製鉄法」である。

[[天文 (元号)|天文]]年間（1532 - 1554年）には播磨国で「千種鋼」の生産が始まっているが<ref name="Tatara08" />、より大規模なものになるのは近世になってからである<ref>[[#Suzuki 1990|鈴木 1990]], p. 86.</ref>。近世のケラ押しは「三日押し」とも呼ばれるが、それはズク押しよりも日数を短縮することで、錬鉄よりも[[原価]]の低い鋼が出来る割合を増やし、操業を合理化したことによる<ref name="Tatara14">[[#Tachi 2005|舘 2005]], p. 9.</ref>。

ケラ押しの主原料である真砂砂鉄（まささてつ）は不純物が少なく<ref name="Tatara06" />、また粒が大きく還元の進む速度が遅いため<ref>[[#Suzuki, Nagata 1999b|鈴木・永田 1999b]], p. 54.</ref>、銑鉄と共により炭素量の低い「鉧（けら）」と呼ばれる大きな鉄塊が炉の底に生成される特性をもつ<ref name="Tatara09">[[#Katayama, Kitamura & Takahashi 2005|片山・北村・高橋 2005]], p. 124.</ref>。ケラはさまざまな性質の鉄が混在する塊であり、その中には純度の極めて高い鋼（後に「[[玉鋼]]（たまはがね）」と呼ばれる）が含まれている。なお、炉から引き出されたケラの冷却方法の違いにより、大きな池に浸けて急冷する「水鋼（みずはがね）」と、そのまま放置して徐冷する「火鋼（ひはがね）」とに区分されるが、いずれの方法でも鋼そのものの品質に差異は出ない<ref>[[#Suzuki 2001|鈴木 2001]], pp. 82–83.</ref>。

[[1750年代]]にケラを大ドウ<ref group="注釈">金偏に胴。</ref>と呼ばれる巨大な装置で割って鉄を各種類に選別する技術が開発されたことや<ref name="Tatara09" />、[[1790年代]]の錬鉄価格の暴落を背景とし<ref name="Tatara14" />、[[19世紀]]初頭には[[出雲国]]を中心にズク押しと並行して盛んに操業されるようになった。ズク（銑鉄）の多くは錬鉄に仕上げられ、ケラの中の鋼はそのままで商品として出荷されたが、当時のケラ押しによって生産される錬鉄と鋼の比率は約3：1であった<ref name="Tatara02" />。

このケラ押しは、ズク押しに較べ操業された地域や時代は限定されていたものの<ref>[[#Tawara 1953|俵 1953]], p. 45.</ref>、直接製鋼法としては世界的に見ても珍しい形で発展を遂げた。

=== フイゴの進化 ===
[[File:Tenbin Fuigo.png|thumb|江戸時代中期に発明された天秤鞴の構造図。]]
国内製鉄においてフイゴが使われだしたのは遅くとも[[6世紀]]後半から[[7世紀]]初頭と見られているが<ref>[[#Suzuki 1990|鈴木 1990]], p. 23.</ref>、初期に使われたのは[[シカ|鹿]]の[[皮革|皮]]を袋状にした「吹皮（ふきかわ）」と見られ、十分な火力を生むことができなかった<ref name="Tatara03" />。

そこで[[8世紀]]には東北地方南部や[[関東地方]]において、板の両端を数人ずつで交互に踏んで送風する[[シーソー]]式の「踏み鞴（ふみふいご）」が出現する<ref name="Tatara10" />。中世になると、手動でピストンを往復させて空気を送る箱型の「吹差し鞴（ふきさしふいご）」が使われだした。

[[1691年]]の出雲国における「天秤鞴（てんびんふいご）」の開発は、たたら製鉄の効率を大きく上げることとなる<ref name="Tatara13">[[#Katayama, Kitamura & Takahashi 2005|片山・北村・高橋 2005]], p. 123.</ref>。両端に支点のある2つの踏み板を真ん中に立つ1人ないし2人の番子（フイゴを踏む作業員）が交互に踏む方式で、送風量の増加と番子の負担軽減をもたらした<ref name="Tatara05" />。

その後、近代に入るとフイゴを[[水車]]を使って稼働させる方法が広く採用された<ref name="Tatara14" />。

=== 近世永代たたらの完成 ===
[[17世紀]]初頭より始まった「[[鉄穴流し]]（かんなながし）」による砂鉄の大規模採取の実現<ref name="Tatara07" />は、フイゴの改良と相俟って鉄の増産を可能にした。

また、たたら場の施設全体にも大きな変化があった。近世中期の「永代たたら」への移行である。それまでの「野だたら」は砂鉄や木炭用の森林資源を求めて移動を繰り返す必要があったが、[[ウマ|良馬]]の繁殖の成功によって運搬力が増強された結果<ref name="Tatara13" />、それら原材料の輸送が容易になったことで、たたら場全体を「高殿（たかどの）」と呼ばれる建物で覆って固定化できるようになり、操業の全天候化の他、地下構造を含めた施設全体の拡大やそれに伴う増産が可能になった。<ref>[[#Tachi 2005|舘 2005]], pp. 6–7.</ref>

=== 近代以降 ===
[[ファイル:The situation of the domestic iron output in the middle of the Meiji era.png|thumb|250px|'''明治中期の国内鉄生産高の状況。'''<br />明治に入ってもしばらくは中国地方産たたら鉄がその大多数を占めていたが、明治20年の[[釜石鉱山田中製鉄所]]および同34年の[[官営八幡製鐵所|八幡製鉄所]]の創業により急速にその比率が低下した。]]
たたら製鉄は[[19世紀]]の初めには成熟期を迎え、[[幕末]]から[[明治時代|明治]]中期にかけても依然として国内製鉄の中心だった<ref>[[#Nagata 2004|永田 2004]], p. 38.</ref>。しかし[[明治30年代]]、[[関税自主権]]を持たないことにもよる安価な輸入鋼材の流入、および国内での洋式製鉄の伸張により急速に衰退<ref name="Tatara06" />。[[1923年]]（[[大正]]12年）に商業生産を終えた<ref name="Tatara01" />。

その間にズク押しは失伝してしまうが<ref>[[#Kozuka 1966|小塚 1966]], p. 46.</ref>、ケラ押しの方は[[1933年]]（[[昭和]]8年）より始まる「靖国たたら」により生き残ることになる<ref name="Tatara06" />。[[軍刀]]用の玉鋼生産のためという用途が限定された操業であったため、それまでのケラ押しとは異なり鋼の生産を第一の目的とし、[[1945年]]（昭和20年）の[[太平洋戦争|大戦]]末期まで作刀用鋼材を供給し続けた。その後の敗戦による武装解除によってもはや需要は見込めない状況となり、再びたたらの火は消える。活動を再開した数少ない[[刀匠]]たちは靖国たたらの在庫等を使って作刀を続けた。

[[1977年]]（昭和52年）、[[日本美術刀剣保存協会]]や[[日立金属]]など刀剣関係者の努力が実り、[[島根県]][[仁多郡]][[横田町]]（現：[[奥出雲町]]）において、靖国たたらの遺構を利用する形で「日刀保たたら」として復元に成功した<ref>[[#Suzuki, Nagata 1999a|鈴木・永田 1999a]], p. 43.</ref><ref>鉄をはぐくむーー出雲國たたら風土記(上)日本刀支える極上「玉鋼」日本古来の伝統・技術を継承『[[産経新聞]]』朝刊2017年7月9日</ref>。[[2017年]]（平成29年）現在においても、18世紀末に完成した「永代たたらによるケラ押し」を継承し続けている<ref>[[#Nagata, Suzuki 2000|永田・鈴木 2000]], p. 71.</ref>。

奥出雲町には[[1993年]]（平成5年）に「奥出雲たたらと刀剣館」が開館した。
[[2016年]]（平成28年）には、[[文化庁]]により[[日本遺産]]として「出雲國たたら風土記～鉄づくり千年が生んだ物語～」が認定され、島根県と奥出雲町、[[安来市]]、[[雲南市]]が観光客誘致を図っている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/nihon_isan/pdf/nihon_isan34.pdf|title=出雲國たたら風土記～鉄づくり千年が生んだ物語～|publisher=文化庁「日本遺産」説明資料|accessdate=2017-7-15}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://www.kankou-shimane.com/mag/2586.html|title=日本遺産認定・出雲國たたら風土記|publisher=しまね観光ナビ|accessdate=2017-7-15}}</ref>。

===現存の公開施設===
[[File:Ohitayama-tatara Iron Works 05 Furnace and Blower.JPG|thumb|江戸時代に使用されていた[[大板山たたら製鉄遺跡]]（[[萩市]]）の高殿跡（製鉄炉と天秤鞴）。]]
*菅谷たたら山内（島根県雲南市吉田町）：たたら製鉄に従事した人々の職場や居住地が山内（さんない）。高殿や生活伝承館などがある。
*鉄の歴史博物館（島根県雲南市吉田町）
*奥出雲 たたらと刀剣館（島根県仁多郡奥出雲町）
*[[絲原記念館]]（島根県仁多郡奥出雲町）：松江藩の鉄師頭取一家の記念館で、その邸宅と庭園、文化財を展示している。
*[[可部屋集成館]]（島根県仁多郡奥出雲町）：同上。
*[[和鋼博物館]]（島根県安来市）
*[[広島県立みよし風土記の丘]]（[[広島県]][[三次市]]）

== 作業手順 ==
たたら製鉄は近世まで[[一子相伝]]であったため、遺構の発掘の成果や数少ない文献の記述などによってその概要が知られるのみであり、各時代の詳細な作業方法や手順までは記録に残されていない<ref name="Tatara17">[[#Kozuka 1966|小塚 1966]], p. 37.</ref>。これはズク押しの技術が途絶えた原因にもなったわけであるが、ケラ押しは靖国たたら、および日刀保たたらによって辛うじて命脈を保った。このため、以下の記述は後世に伝わった幕末から近代にかけての、ケラ押しによる操業手順となる。

（以下、靖国たたらに於ける昭和10年11月18 - 22日の操業記録<ref>[[#Kozuka 1966|小塚 1966]], pp. 40–45.</ref>に基づく）

操業は約70時間、中断なく継続して行われる。全体の工程は「籠り（こもり）」、「籠り次（こもりつぎ）」、「上り（のぼり）」、「下り（くだり）」の計4期からなり、それぞれの所要時間はおおむね7時間半、7時間半、18時間、36時間程となる。現場での指示は「村下（むらげ）」が担当し、送風量の増減や砂鉄と木炭の投入時期などを決める。

=== 籠り期 ===
まず準備段階として、種火の入った炉に木炭を充填して送風を開始する。その後2時間程たち、炉の温度がある程度上がった所で「籠り砂鉄」を投入し始める。この砂鉄は粒が細かく溶けやすいため、粘土で出来た炉壁と比較的すみやかに反応してノロ（鉄滓）を作り出し、そのノロが熱を籠らせる役割を果たす。<br />
ここからが籠り期となり、木炭、その後再び砂鉄と、交互に約30分ごとの投入を繰り返す。定期的に余分なノロを排出する。

=== 籠り次期 ===
投入する砂鉄を、主原料である真砂砂鉄に籠り砂鉄を4割程度混入したものに切り替える。<br />
次第に炉の温度が上がってゆき、ノロの他にズク（銑鉄）も出来始める。

=== 上り期 ===
十分に熱が炉底に籠った所で、投入する砂鉄をすべて真砂砂鉄とする。この粒の粗い砂鉄は炉の中で完全には溶解せず、ノロに包まれる形でケラ（鉧）を生成する。ケラはノロの中で育つため、排出する量は多すぎても少なすぎてもいけない。<br />
この頃になると、炎の色が初めの頃の赤黒色から山吹色に変わる。

=== 下り期 ===
砂鉄を投入する間隔を短くしてゆき、量も増やしてゆく。ケラが成長するとともに炉壁の侵食も進む。<br />
ケラが肥大化し、炉がこれ以上耐え切れないと判断した所で、村下の指示で送風を止める。

その後、炉を壊して燃え残った炭を取り除き、ケラを引き出す。ケラは十分に冷ました後、破砕して選別する。<br />

なお、現在も操業を続ける日刀保たたらでは諸事情により籠り砂鉄を使用せず、操業期を「籠り」、「上り」、「下り」の3期に分ける他<ref>[[#Suzuki, Nagata 1999a|鈴木・永田 1999a]], p. 46.</ref>、生産される鋼とズクの比率が大きく異なるなど、上記と相違がある。

{| class="wikitable" style="width:40em; text-align:right"
|+ ケラ押しによる各時代のたたらの生産量<ref>[[#Suzuki, Nagata 1999b|鈴木・永田 1999b]], p. 51.</ref><ref name="Tatara19">[[#Suzuki 2001|鈴木 2001]], p. 158.</ref> {{fontsize|small|（単位：[[キログラム]]）}}
! たたら名 !! 操業年 !! 使用砂鉄 !! 使用木炭 !! 鋼 !! 銑鉄 
|-
! [[伯耆国]]砥波たたら
| [[1898年]] || 12,825 || 13,500 || 1,125 || 1,575
|-
! 靖国たたら
| [[1943年]] || 14,911 || 14,900 || 577<ref group="注釈">ただし玉鋼のみ。</ref> || 1,519
|-
! 日刀保たたら
| [[1978年]] || 7,840 || 11,932 || 1,194 || 176<ref group="注釈" name="ttr01">ただしケラに含まれる分のみ。</ref>
|-
! 日刀保たたら
| [[1997年]] || 10,325 || 10,725 || 2,300 || 49<ref group="注釈" name="ttr01" />
|}

=== ズク押しでの操業におけるケラ押しとの相違 ===
ズク押しとケラ押しとでは、その設備全般や操業法に大きな差異はない<ref name="Tatara15" />。
しかしズク押しではもっぱら銑鉄を生産するため、砂鉄を速やかに還元したのち炭素をよく吸収させる必要があり、ケラ押しと比較して以下のような違いがある。

* 粒が細かく、[[二酸化チタン]]の含有量が多いために[[融点]]の低い赤目砂鉄や浜砂鉄を使用する<ref>[[#Suzuki 2001|鈴木 2001]], pp. 162–164.</ref>。
* 蓄熱のため炉の幅が20センチメートルほど狭く、下部の傾斜がより急になっている<ref>[[#Suzuki 2001|鈴木 2001]], pp. 155, 161.</ref>。
* 羽口の角度が緩やかで先が広いため、炉底部全体に幅広く風が行き渡る<ref>[[#Suzuki 2001|鈴木 2001]], pp. 165–168.</ref>。
* 炉底に溜まった熔銑を約3時間ごとに流し出すためケラがほとんど出来ない<ref name="Tatara16">{{Cite journal|和書|author=鈴本禎一 |title=たたら製鉄と和鋼記念館(<特集>化学と文化財) |url=https://doi.org/10.20665/kagakukyouiku.27.1_24 |journal=化学教育 |ISSN=03862151 |publisher=日本化学会 |year=1979 |volume=27 |issue=1 |page=27 |doi=10.20665/kagakukyouiku.27.1_24 |naid=110001822554}}</ref>。
* 操業は4昼夜に渡って行われ、全体で約84時間に及ぶ<ref>[[#Suzuki 2001|鈴木 2001]], p. 156.</ref>。

{| class="wikitable" style="width:40em; text-align:right"
|+ ズク押しによるたたらの生産量<ref name="Tatara19" /><ref name="Tatara16" /> {{fontsize|small|（単位：キログラム）}}
! たたら名 !! 操業年 !! 使用砂鉄 !! 使用木炭 !! 鋼 !! 銑鉄 
|-
! 広島鉄山
| 1898年 || 18,750 || 15,000 || 不明 || 4,875
|-
! [[石見国]]価谷たたら
| 1898年 || 18,000 || 18,000 || 337<ref group="注釈">ただしケラ塊。</ref> || 4,500
|}

=== 古代における作業手順 ===
以下に古墳時代の「たたら炉」による製造作業について説明する。
古墳時代にはフイゴが作られていなかったために、たたら炉では自然風によって木炭の[[燃焼]]が行われていた。

#炉は風上に炉口をもつよう斜面などに作られ、炉口の反対側の木炭粉と[[石英]]で出来た炉内床面の上に木炭と砂鉄が交互に層を成して並べられ、[[柴木]]なども加えられて準備が完了する。
#炉口から火が付けられる。
#火が消えて冷えれば、還元鉄が得られる。

製品は[[鍛造]]に適した鉄が得られた<ref>鉄と生活研究会編 『鉄の本』 2008年2月25日初版1刷発行、ISBN 9784526060120。</ref>。フイゴを使用する後の方法に比べて風量が少ない分、低温精製によりフイゴ式よりも純度の高い鉄が得られるという利点があるが、製鉄に非常に長い時間がかかるのに生産量が少ないという難点があった。

== 炉内反応 ==
たたら製鉄における炉内の反応については諸説あるが、さまざまな化学反応が複雑にからみ合っていることは確かである<ref name="Tatara20">[[#Kiyonaga 1994|清永 1994]], p. 1456.</ref>。

まず、フイゴによって炉の中に空気が吹き込まれて木炭が燃焼すると、空気中の酸素({{chem|O|2}})と木炭の炭素(C)とが反応して[[二酸化炭素]]({{CO2}})を生成し、それがさらに炭素と反応して[[一酸化炭素]](CO)が生じる<ref name="Tatara18">{{Cite journal|和書|author=小松芳成, 後藤正治, 麻生節夫 |title=たたら製鉄に関する実験的検討 : 創造工房実習より得られた二三の知見 |url=https://air.repo.nii.ac.jp/records/1519 |hdl=10295/1507 |journal=秋田大学工学資源学部研究報告 |ISSN=1345-7241 |publisher=秋田大学工学資源学部 |year=2001 |month=10 |volume=22 |page=54}}</ref>。

:<chem> C + O2 -> CO2 </chem>

:<chem> CO2 + C -> 2CO </chem>

雨上がりで[[湿度]]が高い時など、条件によっては炭素が空気中の水分({{chem|H|2|O}}とも反応を見せる<ref>{{Cite journal|和書|author=丸本浩 |title=「たたら製鉄法」の基礎研究と定量実験としての教材化<第2部 教科研究> |url=https://doi.org/10.15027/32973 |journal=中等教育研究紀要 ／広島大学附属福山中・高等学校 |ISSN=0916-7919 |publisher=広島大学附属福山中・高等学校 |year=2009 |month=03 |volume=49 |pages=259-264 |doi=10.15027/32973 |naid=120004161195}}</ref>。

:<chem> C + H2O -> CO + H2 </chem>

:<chem> CO + H2O -> CO2 + H2 </chem>

こうして出来た一酸化炭素は炉内を還元性雰囲気へと導き、砂鉄還元の主役を担う。砂鉄の主成分は[[四酸化三鉄]]({{chem|Fe|3|O|4}})だが、赤目砂鉄など、種類によっては[[酸化鉄(III)|酸化第二鉄]]({{chem|Fe|2|O|3}})も多少含まれる。砂鉄は炉の中を降下してゆく過程で一酸化炭素と反応して容易に[[酸化鉄(II)|酸化第一鉄]](FeO)となり、より高温の領域ではその酸化第一鉄がさらに一酸化炭素と反応して鉄(Fe)が取り出される。<ref name="Tatara18" />

: <chem> 3Fe2O3 + CO -> 2Fe3O4 + CO2 </chem>

: <chem> Fe3O4 + CO -> 3FeO + CO2 </chem>

: <chem> FeO + CO -> Fe + CO2 </chem>

また、炉の下部の高温域においては、砂鉄と木炭との間で直に還元反応がおこる。これを[[直接還元]]と呼ぶ<ref>[[#Kiyonaga 1994|清永 1994]], p. 1456–1457.</ref>。

: <chem> FeO + C -> Fe + CO </chem>

これら還元された鉄の粒は、木炭に直接触れて炭素を吸収することで融点が下がり、溶融した銑鉄となって炉外へと流し出される他、ケラ押しでは炉底部において焼結して半溶融状のケラを形成する<ref name="Tatara11" />。

一方で、酸化第一鉄は粘土製の炉壁の主成分であるケイ酸({{chem|SiO|2}})とも反応して[[カンラン石|ファイヤライト]]{{chem|Fe|2|SiO|4}})となり、比較的早期にノロを形成する<ref name="Tatara20" />。炉底に溜まったノロは砂鉄中の二酸化チタン{{chem|TiO|2}})などの不純物を溶融させることで砂鉄を製錬する他、生成したケラを包みこむ形で再び酸化するのを防ぐ役割も果たす<ref>[[#Nagata 1998|永田 1998]], p. 31.</ref>。

他にも、たたら製鉄には近現代製鉄にくらべ炉内の酸素濃度が高いという特徴がある。すなわち、砂鉄のみが還元されて[[二酸化ケイ素|ケイ酸]]などの不純物は還元されないほどの、適度な酸素濃度を保つことで鉄の品質を高めているわけである。また、砂鉄は粒が細かいため木炭との接触時間が長くなり、高い酸素濃度の中でも十分に炭素を吸収できるのも大きな長所と言える。<ref name="Tatara11" />

== 産業 ==
=== 現代刀 ===
{{main|玉鋼}}
たたら製鉄で作られた鋼は古くから[[日本刀]]の製作に使用されてきたが{{Refnest|group="注釈"|ただし、日本刀のうち[[慶長]]年間より前に作られたもの、すなわち「古刀」にまで遡ると、その材料や製法は伝承されておらず、使われた鋼がたたら製鉄によるものなのか否かは判断できない<ref>[[#Amada 2004|天田 2004]], p. 12.</ref>。}}、前述の通り近代以降に洋式製鉄が主流になると幾度か途絶の危機に見舞われた。

[[第二次世界大戦]]が終結する頃には、洋式製鉄に対し価格面で圧倒的に不利であることや需要の大幅な低下のため、たたら製鉄は操業を完全に停止した。しかし、洋鋼では和鋼に比べて良質な日本刀を作ることが困難であることから、日本刀業界によりたたら製鉄の復活が切望されるようになる<ref name="Tatara17" />。これに[[日立金属]]安来工場が応え、少量ではあるが製造が行われることとなった。

2017年（平成29年）現在、この「日刀保たたら」などが日本刀の素材の製造元として操業されている。目下のところ日本刀の製作に使用される鋼のほとんどがこの直接製錬された「玉鋼」であり、事業主である日本美術刀剣保存協会が刀匠への販売を請け負っている<ref>『刀剣美術』 2017年7月号（726号）、日本美術刀剣保存協会、31–32頁。</ref>。その一方で玉鋼を使わない刀匠も存在し、自家製鋼を行ったり古鉄を使用する例がある。

=== 日刀保以外の現代のたたら ===
[[File:Tatara (Making Japanese Iron and Steel).png|300px|thumb|新見庄たたらでの操業の様子。]]

各地で[[地域おこし]]イベントとしてたたら製鉄を行う事例や、研究者や愛好家による小型たたら製鉄が盛んに行われており<ref>[[#Amada 2004|天田 2004]], p. 182.</ref>、2017年（平成29年）現在では下記のような例が存在する。

*NPO法人ものづくり教育たたら：簡易型たたら炉を使った教育プログラムを企画・推進<ref>渡邊玄 「『NPO ものづくり教育たたら』の活動事例」『まてりあ』第54巻第4号、日本金属学会、2015年、152–154頁。</ref>。
*東田たたらプロジェクト（[[福岡県]][[北九州市]][[八幡東区]][[東田 (北九州市)|東田]]）：[[北九州イノベーションギャラリー]]主催の簡易型たたら炉による操業<ref>{{Cite web|和書|url = https://www.kigs.jp/event/2017/10/243.php|title = 東田たたらプロジェクト2017|publisher = 北九州イノベーションギャラリー|accessdate = 2017-12-19}}</ref>。 
*新見庄たたら（[[岡山県]][[新見市]]）：備中国新見庄たたら伝承会による操業。現代では失われたズク押しを推定復元している<ref>{{Cite web|和書|url = http://net-sealion.com/tatara/index.html|title = 備中国新見庄「たたら」|publisher = 新見庄たたら学習実行委員会|accessdate = 2017-12-19}}</ref>。

=== 他産業との関係 ===
;和牛
: 中国山地ではたたら製鉄で用いる砂鉄や炭・出来た鉄は牛馬で運搬されていた。より役立つ牛を育てるため、この地域では古くから牛の品種改良が行われており、そこから生まれた代表的な牛が周助蔓である。これは[[但馬牛]]のルーツとなった牛であり、更に但馬牛は現代[[三大和牛]]の基である<ref>{{Cite web|和書|publisher=滋賀県配合飼料価格安定基金協会|url=http://haigou.sakura.ne.jp/kachikutorihikinoakinaitooumiusi2012.12.21.pdf|format=PDF|title=家畜取引の商いと近江牛|accessdate=2017-08-09}}</ref>。

;競技用ボール
: 江戸時代、出雲藩とともに広島藩でもたたら製鉄が盛んだった。広島藩では鉄から針（[[広島針]]）製造を生み出し、近代以降には縫針の国内トップ産地となった。この縫針とゴム製造が結びついて、[[モルテン]]と[[ミカサ]]といった世界的なスポーツ競技用ボールメーカーが生まれた<ref>{{Cite web|和書|publisher=県立広島大学|url=http://www.pu-hiroshima.ac.jp/site/gakuchoblog/blog04.html|title=学長ブログ第4回「ブランドを産み出す力」|date=2014-02-14|accessdate=2017-08-09}}</ref>。

;鉄砲
: 戦国時代から江戸時代まで[[鉄砲]]の生産地として栄えた[[国友]]などが原料に使用した鉄はほとんどが中国山地から供給されており、たたら製鉄は日本の鉄砲文化を支えた<ref>{{Cite web|和書|publisher=鉄の道文化圏推進協議会|url=https://tetsunomichi.gr.jp/history-and-tradition/tatara-history/part-3/|title=奥出雲の和鉄 - たたらの歴史 -|accessdate=2020-10-06}}</ref>。

== 環境破壊 ==
{{main|鉄穴流し}}
たたら製鉄は大量の木炭を燃料として用いる為、近世以前の中国山地ではたたら製鉄の為に樹木が伐採された[[はげ山|禿げ山]]が珍しくなかった。また原料となる砂鉄を採掘・選別するための「鉄穴流し」で丘陵が掘り崩されたり、山間部の渓流などの利用により流出した土砂が下流の農業に大きな影響を与えたりした。この為、鉄山師は操業に先立って流域の農村と環境破壊に対する補償内容を定める契約を交わし、冬のみに実施することとなった<ref>有岡利幸 『里山Ⅰ』 [[法政大学]]出版局、2004年、231–261頁。</ref>。ただし、たたら製鉄の中心地であった[[出雲国|奥出雲]]においては25年から30年のサイクルで木材の計画的な伐採が行われており、必ずしも森林が乱伐されていたわけではない<ref>[[#Kitamura, Katayama, Takahashi 1997|北村・片山・高橋 1997]], p. 295.</ref>。また鉄穴流しが終わった後の「残丘」では、[[棚田]]や段々畑としての利用も含めて植生が回復している。

== 関連作品 ==
* 映画
** 『[[もののけ姫]]』（[[1997年]] 日本） - [[宮崎駿]]監督・脚本の[[アニメーション映画]]。「たたら場」が描かれる。
** 『駆込み女と駆出し男』（[[2015年]] 日本） - 原田眞人監督・脚本。「鉄練りのじょご」：出雲弁を話す、たたら場で働く女性が出てくる。
** 『[[たたら侍]]』（[[2016年]] 日本） - [[錦織良成]]監督・脚本。[[2017年]][[5月20日]]日本公開<ref>{{Cite web|和書|url = https://tatara-samurai.jp/category/news/|title = たたら侍|accessdate = 2017-6-6}}</ref>。
* ドラマ
** 『[[VIVANT]]』（2023年 日本） - [[福澤克雄]]監督・原作。主人公は[[奥出雲町]]のたたら製鉄の名家出身。
* ドキュメンタリー
** 『玉鋼の十二人 奇跡の鉄を生み出せるのか』（2022年6月22日、[[NHK BS1]]）<ref>{{Cite web|和書|url=https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=34674 |title=日本のものづくりの神髄に迫る群像ドキュメンタリー |date=2022-06-22 |publisher=NHK |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220622060514/https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=34674 |archivedate=2022-06-22 |accessdate=2022-06-22}}</ref>
* ゲーム
** 『[[原神]]』（中国） - 日本をモチーフとしたエリア「稲妻」に「たたら砂」と呼ばれる地域がある。刀鍛造のため[[玉鋼]]を製造していた。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注釈"|2}}
=== 出典 ===
{{Reflist|3}}

== 参照文献 ==
;単行本
*{{Anchors|Amada 2004}}[[天田昭次]]、2004年 『鉄と日本刀』 [[慶友社]]。{{ISBN|4874492355}}
*{{Anchors|Kawase 1997}}河瀬正利、1997年 『たたら吹製鉄の技術と構造の考古学的研究』 [[渓水社]]。{{ISBN|4874403581}}
*{{Anchors|Suzuki 1990}}鈴木卓夫、1990年 『たたら製鉄と日本刀の科学』 [[雄山閣]]。{{ISBN|4639009720}}
*{{Anchors|Tawara 1910}}[[俵国一]]、1910年 『鐵と鋼―製造法及性質』 [[丸善]]。
*{{Anchors|Tawara 1933}}俵国一、1933年 『古來の砂鐵製錬法―たゝら吹製鐵法』 丸善。
*{{Anchors|Tawara 1953}}俵国一、1953年 『日本刀の科學的研究』 日立評論社。
;雑誌論文
*{{Anchors|Iida 1980}}飯田賢一、1980年 「古代日本製鉄技術考」『鉄と鋼』第66年第5号、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Katayama, Kitamura & Takahashi 2005}}片山裕之・北村寿宏・高橋一郎、2005年 「江戸時代における奥出雲たたら製鉄の経営の展開」『鉄と鋼』Vol. 91 No. 1、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Kitamura, Katayama, Takahashi 1997}}北村寿宏・片山裕之・高橋一郎、1997年 「環境調和型製鉄法へのアプローチ―奥出雲の『企業たたら』の歴史に学ぶ鉄鋼業の環境対応技術の方向」『島根大学総合理工学部紀要』シリーズA 第31号、[[島根大学]]、1997年10月 。
*{{Anchors|Kiyonaga 1994}}清永欣吾、1994年 「たたら製鉄とその金属学」『まてりあ』第33巻第12号、日本金属学会。
*{{Anchors|Kozuka 1966}}小塚寿吉、1966年 「日本古来の製鉄法 “たたら” について」『鉄と鋼』第52年第12号、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Saitou, Sakamoto & Takatsuka 2012}}齋藤努・坂本稔・高塚秀治、2012年 「大鍛冶の炉内反応に関する検証と実験的再現」『国立歴史民俗博物館研究報告』第177集、[[国立歴史民俗博物館]]、2012年11月。
*{{Anchors|Suzuki, Nagata 1999a}}鈴木卓夫・[[永田和宏 (冶金学者)|永田和宏]]、1999年a 「たたら製鉄（鉧押し法）の復元と村下安部由蔵の技術」『鉄と鋼』Vol. 85 No. 12、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Suzuki, Nagata 1999b}}鈴木卓夫・永田和宏、1999年b 「たたら生産物『玉鋼』の性質に及ぼす『籠り砂鉄』使用の影響」『鉄と鋼』Vol. 85 No. 12、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Suzuki 2001}} {{Cite thesis|和書|author=鈴木卓夫 |title=たたら製鉄の復元と「日刀保たたら」の操業技術の解明 |volume=東京工業大学 |series=博士 (学術) 乙第3543号 |year=2001 |naid=500000256728 |url=https://t2r2.star.titech.ac.jp/cgi-bin/publicationinfo.cgi?q_publication_content_number=CTT100725882}}
*{{Anchors|Suzuki 2005}}鈴木卓夫、2005年 「鉄仏の製作年代と古伝書『古今鍛冶備考』からみた銑押し法と鉧押し法の成立期の検討」『鉄と鋼』Vol. 91 No. 1、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Tachi 2005}} {{Cite journal|和書|author=舘充 |title=わが国における製鉄技術の歴史 |url=https://doi.org/10.2355/tetsutohagane1955.91.1_2 |journal=鉄と鋼 |ISSN=00211575 |publisher=日本鉄鋼協会 |year=2005 |volume=91 |issue=1 |pages=2-10 |doi=10.2355/tetsutohagane1955.91.1_2 |naid=110001457794}}
*{{Anchors|Nagata 1998}} {{Cite journal|和書|author=永田和宏 |title=小型たたら炉による鋼製錬機構 |journal=鉄と鋼 |ISSN=00211575 |publisher=日本鉄鋼協会 |year=1998 |volume=84 |issue=10 |pages=715-720 |doi=10.2355/tetsutohagane1955.84.10_715 |url=https://doi.org/10.2355/tetsutohagane1955.84.10_715}}
*{{Anchors|Nagata, Suzuki 2000}}永田和宏・鈴木卓夫、2000年 「たたら製鉄の炉内反応機構と操業技術」『鉄と鋼』Vol. 86 No. 1、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Nagata, Hanyuu & Suzuki 2001}}永田和宏・羽二生篤・鈴木卓夫、2001年 「たたら製鉄炉地下構造における小舟の役割」『鉄と鋼』Vol. 87 No. 10、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Nagata 2004}}永田和宏、2004年 「たたら製鉄の発展形態としての銑鉄製錬炉『角炉』の構造」『鉄と鋼』Vol. 90 No. 4、日本鉄鋼協会。
*{{Anchors|Nagata 2005}}永田和宏、2005年 「たたらを現代に」『NIPPON STEEL MONTHLY』11月号、新日本製鐵。

=== 関連文献 ===
*{{Anchors|Kakuda 2019}}角田徳幸、2019年『たたら製鉄の歴史』吉川弘文館〈[[歴史文化ライブラリー]]484〉。{{ISBN|9784642058841}}
*{{Anchors|Kurotaki 2011}}黒滝哲哉、2011年『美鋼変幻：たたら製鉄と日本人』[[日刊工業新聞|日刊工業新聞社]]。{{ISBN|9784526066573}}
*{{Anchors|Kurotaki 2021}}黒滝哲哉、2021年『たたら製鉄から再考する近代科学：「日刀保たたら」という思想』雄山閣。{{ISBN|9784639027812}}
*{{Anchors|Nagata 2021}}永田和宏、2021年『たたら製鉄の技術論：日本古来の鉄作りが現代によみがえる』アグネ技術センター。{{ISBN|9784867070048}}
*{{Anchors|Sasabe, Tate&Terashima 2003}}雀部実・館充・寺島慶一編、2003年『近世たたら製鉄の歴史』丸善プラネット。{{ISBN|4901689231}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat}}
* [[加計隅屋]]
* [[たたら研究会]]
* [[木原明]]
* [[隻眼]] - [[谷川健一]]などは、日本の隻眼の神など（[[ダイダラボッチ]]など）の多くがたたら製鉄などに関連するとしている。
* [[キュクロープス]]（英:サイクロプス） - [[ギリシャ神話]]。鍛冶神[[ヘパイストス]]に仕える単眼の巨人。
* [[たたら祭り]] - [[埼玉県]][[川口市]]で例年、開催されている市民祭り。[[キューポラ]]の街にちなむ。

== 外部リンク ==
* {{Cite web|和書|url = https://www.hitachi-metals.co.jp/tatara/index.htm|archiveurl = https://web.archive.org/web/20210124080054/hitachi-metals.co.jp/tatara/index.htm|title = たたらの話|publisher = [[日立金属]]|accessdate = 2015-10-13|archivedate = 2021-01-24|url-status=dead|url-status-date=2022-01-08 }}
* {{Cite web|和書|url = http://www.wakou-museum.gr.jp/iron-01|title =たたらの話し|publisher =[[和鋼博物館]]|accessdate =2018-4-3}}

{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:たたらせいてつ}}
[[Category:製鉄]]
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[[Category:技術史]]
[[Category:日本の科学技術史]]