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{{Otheruses|ねじりコイルばね|ねじり棒ばね|トーションバー}} [[File:Vinutá zkrutná pružina.jpg|thumb|ねじりコイルばねの図。形状と使用例。]] '''ねじりコイルばね'''({{lang-en|helical torsion spring}})は、[[コイルばね]]の一種で、コイル中心軸まわりに[[ねじりモーメント]]を受けるばねである{{Sfn|JIS B 0103|2015|p=7}}{{Sfn|門田|2016|p=66}}。構造として回転運動をさせる箇所などで用いられる{{Sfn|山田|2010|p=164}}。ばねの素線自体には曲げ[[応力]]が加わり、荷重による[[弾性エネルギー]]は曲げ弾性エネルギーとして蓄えられる{{Sfn|渡辺・武田|1989|p=40}}{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|p=228}}。 == 特徴 == [[File:Ressort hélicoïdal de torsion.png|thumb|ねじりコイルばねの例。端末部はフック形状となっており、巻き方は密着巻きとなっている。荷重(矢印)は巻き込み方向にかかっている。]] コイルから先の端末部分の形状は、ねじりコイルばねをどのように取り付けるか、どのような場所に取り付けるかによって様々となっている{{Sfn|渡辺・武田|1989|p=43}}。正常に動作させるために、コイル部分の内側に案内棒を入れて使われることが多い{{Sfn|門田|2016|p=66}}。大きさは小形のものが一般的で、日用品や家電製品などで利用される{{Sfn|渡辺・武田|1989|p=40}}。身近なものとしては[[洗濯ばさみ]]で使用されている{{Sfn|小玉|1985|p=129}}。 ねじりコイルばねを製作するときは[[冷間加工]]で行われることが一般的で、加工後に[[残留応力]]が残っている{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|p=228}}。端末部分をコイルの巻き方向に合わせた方向にねじりを加えると、残留応力とねじによる応力が打ち消し合い、強度上有利になる{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|p=228}}。逆の方向にねじりを加えると、残留応力と応力は加算されて強度上不利になる{{Sfn|山田|2010|p=183}}。そのため、ねじりコイルばねは必ず巻き込み方向に使うことが望ましいとされる{{Sfn|山田|2010|pp=171, 183}}{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|p=228}}。 コイルの巻き方は、素線同士を密着させる「密着巻き」と隙間を作って密着させない「ピッチ巻き」の2通りがある{{Sfn|門田|2016|p=66}}。製作は密着巻きの方が容易であり、密着巻きのねじりコイルばねが一般的である{{Sfn|山田|2010|p=171}}。ただし密着巻きにするとコイル間での摩擦が起こり、予想のばね特性と相違することがある{{Sfn|小玉|1985|p=133}}。そのため、正確なばね特性を得たいときはピッチ巻きを選択することもある{{Sfn|山田|2010|p=171}}。 ==計算式== [[File:Helical torsion spring with Japanese description.svg|thumb|ねじりコイルばね各部の説明]] ねじりコイルばねの[[ばね定数]]や発生ねじり角、発生応力については、簡易的な計算式が用意されている{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|pp=3–6}}。計算式は *端末部腕長さを考慮しない場合 *端末部腕長さを考慮する場合 の2通りに大きく分けられる{{Sfn|門田|2016|pp=122–123}}。どちらの場合も、 *コイル巻数 ''N'' が3以上である *ばね指数 ''c'' = ''D''/''d'' が3以上である *コイルのピッチ角が小さい *コイル内側に案内棒が挿入されている *コイル巻き込み方向へ荷重が加わる といった条件が計算式の前提となっている{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|pp=229, 231}}。素線が円形断面ではなく長方形断面の場合の計算式もある{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|pp=231–233}}。ここでは円形断面の場合の計算式を示す。 ===腕長さを考慮しない場合=== [[File:Short arm helical torsion spring.svg|thumb|腕長さを考慮しない場合のねじりコイルばねの例]] 端末に鉛直にかかる荷重を ''P''、コイル中心から荷重までの距離を ''r'' とすると、端末部腕長さを考慮しない場合のねじり角度 ''φ'' とねじりモーメント ''M'' = ''Pr'' の関係は以下のように与えられる{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|pp=3–4}}。 :<math>\phi =\frac{64DN}{Ed^4}M</math> ここで、''D'' はコイル平均直径、''N'' はコイル巻数、''E'' はばね材料の[[縦弾性係数]]、''d'' は素線径で、''φ'' の単位は[[ラジアン]]である{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|pp=3–4}}。ばね定数 ''k<sub>T</sub>'' は ''φ''/''M'' より得られるから、 :<math>k_T=\frac{E d^4}{64 D N }</math> となる{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|p=4}}。素線に内側に発生する最大応力 ''σ<sub>max</sub>'' は以下のようになる{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|p=231}}。 :<math>\sigma_{max} =\kappa_1 \frac{32M}{\pi d^3}</math> :<math>\kappa_1 = \frac{4 c^2 - c -1}{4c(c-1)}</math> 一方、素線に外側に発生する最小応力 ''σ<sub>min</sub>'' は、 :<math>\sigma_{min} =\kappa_2 \frac{32M}{\pi d^3}</math> :<math>\kappa_2 = \frac{4 c^2 + c -1}{4c(c+1)}</math> である{{Sfn|日本ばね学会(編)|2008|p=231}}。 ===腕長さを考慮する場合=== [[File:Long arm helical torsion spring.svg|thumb|腕長さを考慮する場合のねじりコイルばねの例]] 腕が長くなってくると、腕自体の曲げ変形が大きく影響し出す{{Sfn|小玉|1985|p=132}}。この影響を含めるために腕長さを考慮する場合の計算式では、ねじり角度 ''φ'' とねじりモーメント ''M'' の関係は以下のように与えられる{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|p=6}}。 :<math>\phi =\frac{64}{E \pi d^4} \left [ \pi D N + \frac{1}{3}(a_1 + a_2) \right ] M</math> ここで、''a''<sub>1</sub> は一方の端末部の腕長さ、''a''<sub>2</sub> はもう一方の端末部の腕長さを意味する{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|p=5}}。''a''<sub>1</sub> 側にかかる荷重を ''P''<sub>1</sub> として、''a''<sub>2</sub> 側にかかる荷重を ''P''<sub>2</sub> とすれば、''M'' = ''P''<sub>1</sub>''a''<sub>1</sub> = ''P''<sub>2</sub>''a''<sub>2</sub> である{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|p=5}}。この場合のばね定数は、 :<math>k_T=\frac{E \pi d^4}{64 \left [ \pi D N + \frac{1}{3}(a_1 + a_2) \right ] }</math> で与えられる{{Sfn|JIS B 2709-1|2009|p=6}}。腕長さを考慮しない場合と比較して分母に ''a''<sub>1</sub> と ''a''<sub>2</sub> が加わり、考慮しない場合よりもばね定数が小さくなることがわかる{{Sfn|山田|2010|p=177}}。 腕長さを考慮する必要があるかないかは、腕長さの全長とコイル部分の全長の比率が目安となる{{Sfn|小玉|1985|p=132}}。''a''<sub>1</sub> + ''a''<sub>2</sub> が 0.09''πDN'' よりも大きい場合は腕長さを考慮し、小さい場合は腕長さを考慮しなくてよいとされる{{Sfn|山田|2010|p=175}}。 ==ギャラリー== <gallery caption="ねじりコイルばねの使用例" mode="packed" height="220"> File:Clothespin-0157e3.jpg|[[洗濯ばさみ]] File:Helical torsion spring for battery lid.jpg|[[デジカメ]]バッテリー蓋の開閉機構 File:Helical torsion spring for battery lid, closeup.jpg|拡大版 File:Safety Pin.jpg|[[安全ピン]] File:Pince a usage photographique.jpg|クリップ </gallery> ==脚注== {{Reflist|2}} ==参照文献 == * {{Cite book ja-jp |editor=日本ばね学会 |title=ばね |year=2008 |edition=第4版 |publisher=丸善出版 |isbn =978-4-621-07965-2 |ref={{Sfnref|日本ばね学会(編)|2008}} }} *{{cite book ja-jp |author=日本工業標準調査会 |title=JIS B 0103 ばね用語 |year=2015 |ref={{Sfnref|JIS B 0103|2015}} }} *{{cite book ja-jp |author=日本工業標準調査会 |title=JIS B 2709-1 ねじりコイルばね―第1部:基本計算方法 |year=2009 |ref={{Sfnref|JIS B 2709-1|2009}} }} *{{cite book ja-jp |author=渡辺彬・武田定彦 |title=ばねの基礎(訂正版) |series=基礎シリーズ(5) |publisher=パワー社 |year=1989 |edition=訂正1版 |isbn=4-8277-1245-X |ref={{Sfnref|渡辺・武田|1989}} }} *{{cite book ja-jp |author=門田和雄 |title=トコトンやさしいばねの本 |series=今日からモノ知りシリーズ |publisher=日刊工業新聞社 |year=2016 |edition=初版 |isbn=978-4-526-07632-9 |ref={{Sfnref|門田|2016}} }} *{{cite book ja-jp |author=小玉正雄 |title=ばねのおはなし |series=おはなし科学・技術シリーズ |publisher=日本規格協会 |year=1985 |edition=第1版 |isbn=4-542-90109-2 |ref={{Sfnref|小玉|1985}} }} *{{cite book ja-jp |author=山田学 |title=めっちゃ、メカメカ! 2 ばねの設計と計算の作法―はじめてのコイルばね設計 |publisher=日刊工業新聞社 |year=2010 |edition=初版 |isbn=978-4-526-06578-1 |ref={{Sfnref|山田|2010}} }} ==外部リンク== {{Commonscat}} {{DEFAULTSORT:ねしりこいるはね}} [[Category:ばね]]
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