アスタリスクのソースを表示

{{otheruses|記号}}
{{混同|Ӿ|スターマーク|x1=キリル文字の|x2=類似記号（⚹）の}}
{{特殊文字|対象=節}}
{{記号文字|*}}
'''アスタリスク''' または'''アステリスク'''（{{lang-en-short|asterisk}}）は、[[約物]]のひとつで、中心点から放射状に伸びる数本の線分で構成される記号である（右図参照）。

英語の {{en|asterisk}} は[[後期ラテン語]]を介して[[古代ギリシア語]]の「小さな星」を意味する言葉に由来している。

日本語において、'''星号'''、'''星印'''、'''星'''、'''アスタ'''とも呼ばれる。

== 形状 ==
[[File:asterisk.svg|100px|thumb|5本線のアスタリスク]]
註釈などいくつかの用途では[[上付き文字|上に寄せた形]]で書かれるため、印刷[[活字]]やコンピュータの[[フォント]]では最初から上に寄せてデザインされていることも多いが、中央に書かれることもある<ref>[[MS 明朝]]・[[MS ゴシック]]シリーズやHG明朝・HGゴシックシリーズなど、[[リコー]]が開発した日本語フォントでは中央配置になっている。</ref>。[[Unicode]] では高い位置に書かない「&#x204E; U+204E LOW ASTERISK」が用意されている。

中心点から伸びる線分の本数はフォントによって異なる。多くの場合、中心点から伸びる5本<ref>[[Arial]]・[[Century (書体)|Century]]・[[Helvetica]] など。</ref>または6本の線分で表される。「[[×]]」（掛ける、クロス）に縦線を重ねた形がよく知られているが、「×」に横線を重ねた形<ref>[[:File:ASCII Code Chart-Quick ref card.jpg|TermiNet 300 のASCIIコードチャート (1972)]]</ref>（すなわち[[スターマーク]]と同じ形）で書かれることもある。

== 名称 ==
[[ギリシャ語]]から[[ラテン語]]に入った語で、「星 (aster、アステル)」の[[指小形]]（小さな星）に由来する。

[[日本国語大辞典]]、[[広辞苑]]をはじめ、一般的な国語辞書では、[[英語]]風の「アスタリスク」ではなくラテン語風の「アステリスク」で立項されている。

[[日本産業規格]] [[JIS X 0213]] における名称は、「星印」または「アステリスク」となっている。

== 用途 ==
=== 脚注記号 ===
{{main|脚注|注釈}}
アスタリスクは一般的に[[脚注]]を示す記号として用いられる。脚注記号としては[[短剣符]]（†）や[[二重短剣符]]（‡）を用いることも一般的である。

アスタリスクと短剣符を脚注記号として混在させる場合、第一の脚注にアスタリスク、第二の脚注に短剣符、第三の脚注に二重短剣符をそれぞれあてる慣習がある。4番目以降の脚注について明確に決まった記号は存在せず、著者や出版者の都合によりまちまちである。

アスタリスクのみを脚注記号として用いる場合、複数の脚注を指示するために以下のいずれかの方法がとられる：
* アスタリスクを複数並べる（*, **, ***, ……）
* 脚注番号を添える（*1, *2, *3, ……）

翻訳書の場合、原書に存在する注釈と翻訳者の注釈を区別するために一方をアスタリスクで示し、他方を別の記号で示すことがある。

=== コンピュータ ===
[[コンピュータ]]での文字表現において、特に[[プログラミング]]の文脈で、アスタリスクは特別な意味を持つことがある。例えば、[[乗法|乗算]]や[[冪乗]]を表す演算子を表したり、文字検索における[[ワイルドカード (情報処理)|ワイルドカード]]としての利用されることがある。

==== 演算子 ====
演算子として、[[プログラム (コンピュータ)|コンピュータプログラム]]の[[ソースコード]]上で、アスタリスクは乗算や類似の二項演算を表す記号として用いられることが多い（例えば <math>a \times b</math> の意味で {{mono|a * b}} と書く）。アスタリスクが乗算記号に採用された経緯は、[[FORTRAN]] が設計された際に、[[IBM 721]] 系のカードパンチ機に乗算記号 × のキーが存在しなかったため、アスタリスク <code>*</code> で代用した名残といわれる。

また FORTRAN や [[JavaScript]], [[Python]] などの[[プログラミング言語]]では[[冪乗]]を二重アスタリスク <code>**</code> で表すことができる（例えば <math>a^b</math> の意味で {{mono|a ** b}} と書く）。

[[C言語]]や[[C++]]などの[[ポインタ (プログラミング)|ポインタ]]演算を提供する言語では、ポインタ型の変数や関数の宣言および定義において、またポインタ型の値に対する[[間接参照]]のためにアスタリスクを使用する。

==== 任意の要素を示す記号 ====
[[正規表現]]においてアスタリスクは、直前の表現の0回以上任意回の繰り返しを示す。例えば {{mono|/[0-9]*/}} は任意の長さの数字の列に一致する。アスタリスクで示された正規表現の繰り返しは[[クリーネ閉包]]と呼ばれる。

[[グロブ]]においてアスタリスクは、文字数不定の任意の文字列に一致する[[ワイルドカード (情報処理)|ワイルドカード]]として用いられる。

[[SQL]]においてアスタリスクは、[[SELECT (SQL)|SELECT 句]]ですべての列を示すために用いられる（例えば {{mono|SELECT * FROM FooTable}} はテーブル {{mono|FooTable}} に定義されたすべての列を照会する）。

[[統一モデリング言語]] (UML) の[[クラス図]]においてアスタリスクは、クラス間の関連の多重度が任意の数であることを示す記号として用いられる（例えば、{{mono|1..*}} は多重度が 1 以上の任意の整数であることを表し、また {{mono|*}} は {{mono|0..*}} と同義である）。
[[File:Association Class Diagram.jpg|thumb|[[統一モデリング言語|UML]]の多重度「0..*」]]

==== マークアップ ====
[[C言語]]などのプログラミング言語では、斜線とアスタリスクを組み合わせてソースコードにコメントを記述することができる。<code>/* コメント */</code> のように <code>/*</code> と <code>*/</code> で囲まれた部分はコメントを表す。
このコメント記法の起源は、[[B言語]]に遡る。

[[MediaWiki]]では、[[箇条書き]]用の[[マークアップ言語|マークアップ]]記号としてアスタリスクを用いる（[[Help:箇条書き]]も参照）。

[[Markdown]]では、[[太字]]や[[斜体]]、[[箇条書き]]、[[水平線]]の記述のためにアスタリスクを用いることができる。

==== その他特定言語における機能 ====
[[Perl]]では、[[型グロブ]]を表すためにもアスタリスクを用いる。

[[Common Lisp]]では、スペシャル変数（[[グローバル変数]]）を <code>*XXX*</code> のようにアスタリスクで囲んで表す。

=== 数学 ===
アスタリスクは[[数学]]において多くの使い方がある。以下に一般的な使用法をリストするが、完全なものではない。
;単独で
* ある集合の任意の一元。例えば[[リーマン和]]を計算するときとか単連結集合を単元集合 { ∗ } に収縮するときなどに使われる。
;[[単項演算子]]（[[前置記法]]）
* ベクトル空間上の[[ホッジ双対]]作用素 <math>*\colon A^k \rightarrow A^{n-k}.</math>
;単項演算子（{{仮リンク|下付き添え字|en|subscript}}）
* [[滑らかな多様体]]の間の{{仮リンク|滑らかな写像|en|smooth map}} ''f'' の[[微分写像]]を ''f''<sub><span style="font-size:100%;">∗</span></sub> と書く。
* より一般に、どの関手が意味されているか疑いの余地がないとき任意の共変[[関手]]の適用。
;単項演算子（{{仮リンク|上付き添え字|en|superscript}}）
* [[複素数]]の[[複素共役]]（<math>\bar{z}</math> の方が一般的）<ref>[http://mathworld.wolfram.com/ComplexConjugate.html Complex Conjugate - from Wolfram MathWorld<!-- Bot generated title -->]</ref>。
* [[行列]]の[[共役転置]]、エルミート転置、あるいは随伴行列。
* [[エルミート共役]]。
* [[環 (数学)|環]]、特に[[可換体|体]]、の[[乗法群]]。例えば <math>\mathbb{C}^* = \mathbb{C}-\{0\}.</math>
* [[ベクトル空間]] ''V'' の[[双対空間]] ''V<sup>*</sup>''.
* 対象の添え字付けられた集まりの結合、例えば、すべての[[コホモロジー群]] ''H<sup>k</sup>''(''X'') を結合して[[コホモロジー環]] ''H''<sup>*</sup>(''X'').
* 統計学では、''z<sup>*</sup>'' と ''t<sup>*</sup>'' はそれぞれ ''z'' 分布と ''t'' 分布の与えられた臨界点。
;[[二項演算子]]（[[中置記法]]）
* 任意の二項演算子に対する記法。
* 2つの[[群 (数学)|群]]の[[自由積]]。
* ''f'' ∗ ''g'' は ''f'' の ''g'' との[[畳み込み]]。

アスタリスクは数学のすべての分野で同じ文字によって表される2つの量の間の対応を示すために用いられる。一方はアスタリスクをつけて、一方はつけずに。

[[A*]]のように、上記の記法をもとにアルゴリズムの命名に使用されるケースもある。

==== 数学のタイポグラフィ ====
上質な数学のタイポグラフィでは、[[Unicode]]文字 {{unichar|2217|asterisk operator}} (HTML では、<code>&amp;lowast;</code>) が利用可能である。この文字は Windows や Macintosh の OS や多くのプリンターに含まれている ''Symbol'' フォントの [[PostScript]] symbol 文字集合の regular asterisk の位置にも現れる。上質なタイポグラフィでは他の数学の演算子と並ぶ大きいアスタリスクを使わなければならない。

=== 言語学 ===
* 文法的に不適格な文（非文 ungrammatical sentence）の先頭に付ける。また[[括弧]]と組み合わせて、あると非文あるいは無いと非文になるものを表す。
*: {{lang|en|I'm not / *I amn't}} : 後者は死語表現。
*: {{lang|en|go (*to) home}} : {{lang|en|to}} があると非文
*: {{lang|en|go *(to) the station}} : {{lang|en|to}} が無いと非文
* [[比較言語学]]では、[[音声]]表現の先頭に添えて、史料などで実証されていない論理的な[[再構 (言語学)|再構]]形であることを示す。
*: {{lang|en|*ainlif > endleofan > eleven}}
* 同様に[[音韻論]]などでは、[[音素]]表現の先頭に添えて、発音不可能な仮構形などを表す場合がある。
* [[国際音声符号|IPA]] では[[固有名詞]]の語頭につけることが提案されたが、あまり用いられない。

=== その他 ===
* [[英語|英文]][[電子メール]]では、強調したい語句を* *で囲むことが行われる。
* [[天文学]]では、点状源を意味することがあり、スターと読む。例: [[いて座A*]]は、広がりを持つ[[電波源]]いて座Aの中の点状電波源を意味する。
* [[バイオグラフィー]]などで、[[出産|誕生]]や生を意味する。対応する記号は[[死]]を意味する「[[短剣符|†]]」。
* [[パスワード]]入力時などの[[伏字]]として使われる。「[[●]]」が使われることも多い。
* 事前にフォーマットとして印刷されている文字を抹消する際に用いる。例として、[[預金通帳]]の項目内の取引で事前に書かれている文字に該当しない取引があった際に印字されるなどのケースで見られる。
* [[メジャーリーグベースボール|MLB]]の記録において、[[ドーピング|薬物使用]]疑惑など「注釈付き」「参考記録」と判断された選手の名前にはアスタリスクが印字される。
* 表などの空欄を埋めるのに、連続した * が使われる。未記入等ではなく[[N/A]]であることを明示したり、改竄防止の効果がある。
* [[地上天気図#国際式天気図|国際天気図記号]]では[[雪]]を表す。個数や配置でさまざまな降り方を表し、単なる「*」は「弱い断続性の雪」である。
* △と▽を合わせた「&#x2721;」を、[[籠目]]ないし、[[ダビデの星]]、[[六芒星]]と呼び、アスタリスクで表すことがある。
* [[競走馬の血統#馬名の表記について|馬産]]では馬名の前に付し、その馬が外国からの輸入馬であることを示す。

== 類似の記号 ==
* 日本では、星印というと「☆」「★」が一般的である。また、「[[※]]」（米印）を「星印」と呼ぶこともある。
* アスタリスクを90度回転させると、プッシュ式[[電話機]]におけるボタンの一つである「[[ファイル:Sextile symbol.svg|15px]]」（[[スターマーク]]）となる。[[モデム#ヘイズATコマンド|ATコマンド]]などでは星印はアスタリスクで代用される。ダイヤル回線使用時に、[[DTMF|トーン信号]]出力へ切り替えるという機能を割り当てているものがある。
* 縦にアスタリスクを2つ並べた記号を[[ダブルアステ]] (⁑) という。主に和文で用いられる。
* アスタリスクを正三角形状に3つ並べた記号を[[アステリズム (記号)|アステリズム]] (⁂) という。節の区切りを示すために用いられる。

== 符号位置 ==
{{特殊文字|説明=さまざまなアスタリスク}}
{| class="wikitable" style="text-align:center;"
!記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称
{{CharCode|42|002A|1-1-86|星印/アステリスク ([[半角]])<br/>ASTERISK|ast}}
{{CharCode|857|0359|-|COMBINING ASTERISK BELOW}}
{{CharCode|8258|2042|1-12-94|アステリズム<br/>ASTERISM}}
{{CharCode|8270|204E|-|LOW ASTERISK}}
{{CharCode|8273|2051|1-12-93|ダブルアステ<br/>TWO ASTERISKS ALIGNED VERTICALLY}}
{{CharCode|8432|20F0|-|COMBINING ASTERISK ABOVE}}
{{CharCode|8727|2217|-|ASTERISK OPERATOR|lowast}}
{{CharCode|8859|229B|-|CIRCLED ASTERISK OPERATOR|circledast}}
{{CharCode|10018|2722|-|FOUR TEARDROP-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10019|2723|-|FOUR BALLOON-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10020|2724|-|HEAVY FOUR BALLOON-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10021|2725|-|FOUR CLUB-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10033|2731|-|HEAVY ASTERISK}}
{{CharCode|10034|2732|-|OPEN CENTRE ASTERISK}}
{{CharCode|10035|2733|-|EIGHT SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10042|273A|-|SIXTEEN POINTED ASTERISK}}
{{CharCode|10043|273B|-|TEARDROP-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10044|273C|-|OPEN CENTRE TEARDROP-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10045|273D|-|HEAVY TEARDROP-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10051|2743|-|HEAVY TEARDROP-SPOKED PINWHEEL ASTERISK}}
{{CharCode|10057|2749|-|BALLOON-SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|10058|274A|-|EIGHT TEARDROP-SPOKED PROPELLER ASTERISK}}
{{CharCode|10059|274B|-|HEAVY EIGHT TEARDROP-SPOKED PROPELLER ASTERISK}}
{{CharCode|10694|29C6|-|SQUARED ASTERISK}}
{{CharCode|10862|2A6E|-|EQUALS ASTERISK|easter}}
{{CharCode|42611|A673|-|SLAVONIC ASTERISK}}
{{CharCode|65121|FE61|-|SMALL ASTERISK}}
{{CharCode|65290|FF0A|1-1-86|星印/アステリスク ([[全角]])<br/>FULLWIDTH ASTERISK}}
{{CharCode|128943|1F7AF|-|LIGHT FIVE SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128944|1F7B0|-|MEDIUM FIVE SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128945|1F7B1|-|BOLD FIVE SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128946|1F7B2|-|HEAVY FIVE SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128947|1F7B3|-|VERY HEAVY FIVE SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128948|1F7B4|-|EXTREMELY HEAVY FIVE SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128949|1F7B5|-|LIGHT SIX SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128950|1F7B6|-|MEDIUM SIX SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128951|1F7B7|-|BOLD SIX SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128952|1F7B8|-|HEAVY SIX SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128953|1F7B9|-|VERY HEAVY SIX SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128954|1F7BA|-|EXTREMELY HEAVY SIX SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128955|1F7BB|-|LIGHT EIGHT SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128956|1F7BC|-|MEDIUM EIGHT SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128957|1F7BD|-|BOLD EIGHT SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128958|1F7BE|-|HEAVY EIGHT SPOKED ASTERISK}}
{{CharCode|128959|1F7BF|-|VERY HEAVY EIGHT SPOKED ASTERISK}}
|}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
<!-- 関連するウィキリンク、ウィキ間リンク -->
* [[節記号|節記号( § )]]
* [[段落記号|段落記号( ¶ )]]
* [[ダブルアステ]]「⁑」（アスタリスクが2つの記号）
* [[アステリズム (記号) ]]「⁂」（アスタリスクが3つの記号）
* [[※]]（米印）
* [[スター (記号)]]（★、☆）
* [[スターマーク]]（電話機のボタンに記されているアスタリスクに似た記号）
* [[短剣符|短剣符 / ダガー (dagger) ( † )]]
* [[短剣符|二重短剣符 / ダブルダガー (double dagger) ( ‡ )]]

{{Punctuation marks}}
{{DEFAULTSORT:あすたりすく}}
[[Category:約物]]