アセトアルデヒドのソースを表示

{{chembox
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|   IUPACName = ethanal
|   SystemicName = ethanal
|   OtherNames=Acetic Aldehyde<br>Ethyl Aldehyde<ref>SciFinderScholar (accessed Nov 4, 2009). Acetaldehyde (75-07-0) Substance Detail.</ref>
| Section1 = {{Chembox Identifiers
|   ChEBI_Ref = {{ebicite|correct|EBI}}
| ChEBI = 15343
| SMILES = O=CC
|   PubChem = 177
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| UNII = GO1N1ZPR3B
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| KEGG = C00084
| InChI = 1/C2H4O/c1-2-3/h2H,1H3
| InChIKey = IKHGUXGNUITLKF-UHFFFAOYAB
| SMILES1 = CC=O
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| StdInChI = 1S/C2H4O/c1-2-3/h2H,1H3
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| StdInChIKey = IKHGUXGNUITLKF-UHFFFAOYSA-N
| ChEMBL_Ref = {{ebicite|correct|EBI}}
| ChEMBL = 170365
| CASNo = 75-07-0
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|   EINECS = 200-836-8
|   RTECS = AB1925000
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| ChemSpiderID=172
  }}
| Section2 = {{Chembox Properties
|   C=2|H=4|O=1
|   RationalFormula =CH<sub>3</sub>CHO
|   Appearance = 無色透明の液体<br />強烈な果実臭
|   Density = 0.788 g cm<sup>−3</sup>
|   Solubility = 
|   MeltingPtC = −123.5
|   BoilingPtC = 20.2
|   Viscosity = ~0.215 at 20 {{℃}}

  }}
| Section3 = {{Chembox Structure
|   MolShape = 平面三角形構造(sp<sup>2</sup>) at C<sub>1</sub><br />四面体構造(sp<sup>3</sup>) at C<sub>2</sub>
|   Dipole = 2.7 D
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| Section7 = {{Chembox Hazards
|   ExternalSDS = {{ICSC-small|0009}}
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}}{{リンク切れ|date=2017年9月}}</ref>
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|   FlashPt = 234,15 K  (-39 {{℃}})
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| Section8 = {{Chembox Related
|   Function = [[アルデヒド]]
|   OtherFunctn = [[ホルムアルデヒド]]<br /> [[プロピオンアルデヒド]]
|   OtherCpds = [[エチレンオキシド]]
  }}
}}
'''アセトアルデヒド''' (acetaldehyde) は、[[アルデヒド]]の一種。[[IUPAC命名法]]では '''エタナール''' (ethanal) ともいい、他に酢酸アルデヒド、エチルアルデヒドなどの別名がある。自然界では[[植物]]の正常な[[代謝]]過程で産生され、特に[[果実]]などに多く含まれている。また、人体においては'''[[エチルアルコール|アルコール]]の[[代謝]]'''によって生成されて、一般に[[二日酔い]]の原因と見なされているほか、[[紙巻たばこ|たばこ]]の依存性を高めるともいわれ、[[発がん性]]がある。

日本国内の[[消防法]]においては、[[危険物]]第4類の引火性液体に分類され、その中でも特に引火する危険性が高い特殊引火物とされている。

産業用として大規模に製造され、その多くが[[酢酸エチル]]の製造原料として使われている。独特の臭気と刺激性を持ち、自動車の排気や[[たばこ]]の煙、[[合板]]の接着剤などに由来する大気汚染物質でもあることから、'''[[シックハウス症候群]]'''などの原因となる。

== 化学的性質 ==
低温では無色透明の液体で、[[水]]、[[ベンゼン]]、[[ジエチルエーテル]]、[[エタノール]]などと任意に混じり合う。[[沸点]]は 21 ℃と低い。容易に[[揮発]]し、特徴的な青臭い刺激臭があるが、充分希薄にすると果実臭と感じられる。[[燃焼範囲]]がきわめて広く、[[引火点]]は - 39 ℃ と非常に[[引火]]しやすい。

アセトアルデヒドには[[ケト-エノール互変異性]]があり、[[ビニルアルコール]]と[[化学平衡|平衡]]状態にあるが、常温における平衡定数は 6 × 10<sup>−5</sup>であり、ほとんどがケト（アルデヒド）型となっている<ref>March, J. “Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structures” J. Wiley, New York: 1992. ISBN 0-471-58148-8.</ref>。
:[[File:Ethanal Ethenol Tautomerie.svg|class=skin-invert-image|left|アセトアルデヒドの互変異性]]{{clearleft}}

== 製造 ==
アセトアルデヒドは[[エチレン]]から[[ワッカー酸化]]によって製造される。
: <chem>2CH2=CH2 + O2 ->[\ce{PdCl2, CuCl2}] 2CH3CHO</chem>

ワッカー法以前には、[[水銀]]触媒を用いて[[アセチレン]]を水和し、ビニルアルコール経由で合成する方法が用いられていた<ref name="Dmitry2007">{{Cite journal| title = Hydration of Acetylene: A 125th Anniversary | author = Dmitry A. Ponomarev and Sergey M. Shevchenko | journal = [[J. Chem. Ed.]] | volume = 84 | issue = 10 | year = 2007 | pages = 1725 | url = http://jchemed.chem.wisc.edu/HS/Journal/Issues/2007/OctACS/ACSSub/p1725.pdf | doi = 10.1021/ed084p1725}}</ref>。日本ではかつてこの過程で生成された[[メチル水銀]]が無処理で排出され、[[水俣病]]の原因になった。
: <chem>CH#CH + H2O ->[\ce{Hg^{2+}}] CH2=CHOH <=> CH3CHO</chem>

エタノールを酸化して製造する方法もあり、規模は小さいながらも実施されている。
: <chem>2CH3CH2OH + O2 -> 2CH3CHO + 2H2O</chem>

アセトアルデヒドの2016年度日本国内生産量は 87,066 t、工業消費量は 37,313 t である<ref>[https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu5 経済産業省生産動態統計年報　化学工業統計編]</ref>。世界における年間製造量は 100 [[万]][[トン]]（2003年）である<ref name=Ullmann>Marc Eckert, Gerald Fleischmann, Reinhard Jira, Hermann M. Bolt, Klaus Golka “Acetaldehyde” in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2006, Wiley-VCH, Weinheim.  {{DOI|10.1002/14356007.a01_031.pub2}}.</ref>。

==生化学==
肺や消化管などから吸収され、血液、肝臓、脾臓、心臓、筋肉に分布する。飲酒後の血中においては、赤血球に存在する濃度が血漿の濃度の約10倍で、ほとんどが赤血球に存在した<ref>[https://www.env.go.jp/press/108315/1202.pdf アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について] 著：中央環境審議会大気・騒音振動部会、有害大気汚染物質健康リスク評価等専門委員会 サイト：環境省</ref>。

[[肝臓]]では、[[アルコール脱水素酵素]]がエタノールを酸化してアセトアルデヒドを生じ、これが[[アセトアルデヒド脱水素酵素]]によって、[[酢酸]]へと代謝される。この2つの酸化反応は NAD<sup>+</sup> の [[NADH]] への還元と共役している。
しかし[[脳]]では、アルコール脱水素酵素の寄与は小さく、代わりに[[カタラーゼ]]がエタノールからアセトアルデヒドへの酸化を担っている<ref name="Hipolito, L. 2007">Hipolito, L.; Sanchez, M. J.; Polache, A.; Granero, L. Brain metabolism of ethanol and alcoholism: An update. Curr. Drug Metab. 2007, 8, 716-727.</ref>。アセトアルデヒドは呼気や[[皮膚ガス]]として放散され、[[体臭]]の原因となる。

この体内でのアセトアルデヒドの代謝は、人種・体質によって生まれつき差異がある。（[[ALDH2]]の項参照）抗酒癖剤[[ジスルフィラム]]はアセトアルデヒド脱水素酵素を阻害し、ひどい[[二日酔い]]に似た症状を引き起こす。そこで[[慢性アルコール中毒]]の患者に対して飲酒抑止をもたらす目的で処方されることがある。

[[細菌]]、[[植物]]、[[酵母]]などでは、[[アルコール発酵]]の最終段階として[[ピルビン酸脱炭酸酵素]]により[[ピルビン酸]]からアセトアルデヒドが合成され、それがエタノールへと変換される。この最後の反応にもアルコール脱水素酵素が逆反応の形で寄与している。

==利用==
工業的に合成したアセトアルデヒドの大半は、[[ティシチェンコ反応]]による[[酢酸エチル]]の合成に用いられる。これは[[アルコキシド]]の触媒作用により、アセトアルデヒド2分子がカルボン酸とアルコールとに[[不均化]]しながら脱水縮合して酢酸エチルを生じるものである。

かつては[[酢酸]]の合成原料としても大量に利用されていたが、現在では[[メタノール]]や[[アセチレン]]からの直接合成の方が効率的であるため下火となっている。

その他、[[ピリジン]]誘導体、[[ペンタエリトリトール]]、[[クロトンアルデヒド]]の合成前駆体として重要である。

== 毒性 ==
ラットに対する急性毒性 ([[半数致死量|LD<sub>50</sub>]]) は、経口の場合で 1930 mg/kg、皮下注射の場合で 640 mg/kg。経口摂取の場合は、[[初回通過効果]]により見かけ上、毒性が減少する。

飲酒により生成されるアセトアルデヒドは、[[DNA]]や[[タンパク質]]に結合して[[付加反応|付加体]]となり、様々な疾病に関与しているとされる。

建築材から放出されるアセトアルデヒドは[[シックハウス症候群]]の原因物質の一つとして問題視されている<ref>室内環境学会編・[[関根嘉香]]監修「住まいの化学物質－リスクとベネフィット―」東京電機大学出版局(2015）[http://www.tdupress.jp/bd/isbn978-4-501-62940-3.html シックハウス症候群]</ref>。

=== たばこ ===
アセトアルデヒドは[[たばこ]]の煙に含まれており、[[ニコチン]]と相乗作用を示して、[[タバコ]]への依存性を増加させる<ref>[http://www.universityofcalifornia.edu/news/article/6726 Nicotine's addictive hold increases when combined with other tobacco smoke chemicals, UCI study finds] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110209232332/http://www.universityofcalifornia.edu/news/article/6726 |date=2011年2月9日 }}</ref>。アセトアルデヒド自体にも[[毒性]]はあるが、[[燃焼]]することにより[[メタン]]と[[一酸化炭素]]に分解されてさらに毒性が増す。

アセトアルデヒドはたばこの添加物として、たばこ製造会社によって添加されている。その理由は[[アンモニア]]と同様、[[ニコチン]]の吸収・効果の増幅作用があり、より少量のニコチンで依存性を発揮させるため<ref>{{Cite book|和書|author=フィリップ・J・ヒルツ|translator=小林薫|title=タバコ・ウォーズ: 米タバコ帝国の栄光と崩壊|year=1998|publisher=早川書房|chapter=10章 宣誓の上で|isbn=978-4-15-208183-4}}（元B&W社研究部長ウィガンド博士の証言）</ref>や、燃焼を促進させるためなどである。[[システイン|L-システイン]]除放剤によってアセトアルデヒドを排除することで禁煙の成功率は上昇する<ref name="pmid28668855">{{cite journal |authors=Syrjänen K, Eronen K, Hendolin P, etal |title=Slow-release L-Cysteine (Acetium) Lozenge Is an Effective New Method in Smoking Cessation. A Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Intervention |journal=Anticancer Res. |volume=37 |issue=7 |pages=3639–3648 |date=2017 |pmid=28668855 |doi=10.21873/anticanres.11734 |url=http://ar.iiarjournals.org/content/37/7/3639.long}}</ref>。

=== 発がん性 ===
アセトアルデヒドについてはヒトに対する[[発がん性]]が疑われている<ref>{{Cite web|和書|title=アセトアルデヒド |url=https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-005.html |website=e-ヘルスネット 情報提供 |access-date=2022-08-20 |language=ja}}</ref>。

動物実験では、[[ラット]]や[[ハムスター]]に対してアセトアルデヒドを吸入させることによって、[[呼吸器]]にがんが生じることが示されており、また[[細菌]]や[[培養細胞]]を用いた実験でアセトアルデヒドの[[変異原性]]が認められている。
[[国際がん研究機関]]は以上の分析に基づき、ヒトに対する発がん性については研究の計画や規模に難があり証拠不十分とし、実験動物に対する発がん性については充分な証拠があるとして、アセトアルデヒドをグループ2B（人に対して発がん性があるかもしれない）に分類している<ref>{{cite book|author=[[国際がん研究機関|International Agency for Research on Cancer]]|title=Re-evaluation of Some Organic Chemicals, Hydrazine and Hydrogen Peroxide|series=IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans|volume=71|year=1999|section=Acetaldehyde|url=http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol71/mono71-11.pdf|format=PDF}}</ref>。

なおアルコール飲料は、膨大な研究の積み重ねにより十分な証拠があるとして、グループ1（ヒトに対する発がん性あり）に分類されている。エタノール以外の成分が発がん性に関わっている可能性は排除していないながらも、アルコール飲料中のエタノール、およびエタノールが代謝されて生じるアセトアルデヒドが、ヒトに対する発がん性を持つと結論している<ref>{{cite book|author=[[国際がん研究機関|International Agency for Research on Cancer]]|title=Alcohol Consumption and Ethyl Carbamate |series=IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans|volume=96|year=2010|section=Consumption of Alcoholic Beverages|pages=1278-1279|url=http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol96/mono96-6F.pdf|format=PDF}}</ref>。

==法規制==
*化管法：第一種指定化学物質(1-11)
*化審法：優先評価化学物質(2-485)
*消防法：危険物第四類特殊引火物
*労働安全衛生法：危険物引火性の物、名称等を通知すべき有害物、変異原性が認められた既存化学物質
*大気汚染防止法：有害大気汚染物質 (優先取り組み物質)
*船舶安全法：引火性液体類
*航空法：引火性液体
*港則法：引火性液体類
*悪臭防止法：特定悪臭物質
*高圧ガス保安法：可燃性ガス、液化ガス
*食品衛生法：食品添加物（香料）
*化学物質の室内濃度の指針値：0.03 ppm (厚生労働省)

== 主な化学反応 ==
*[[銀鏡反応]]
*[[フェーリング反応]]
*[[ヨードホルム反応]]

== 出典 ==
{{reflist|2}}

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Acetaldehyde}}
* [https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/75-07-0.html 安全データシート・アセトアルデヒド] - 厚生労働省
* [http://ceis.sppd.ne.jp/fs2011/factsheet/data/1-012.html 化学物質ファクトシート2011年版 アセトアルデヒド] - 環境省
* {{PDFlink|[https://www.env.go.jp/chemi/report/h14-05/chap01/03/02.pdf 化学物質の環境リスク評価 第1巻 アセトアルデヒド]}} - 環境省環境保健部環境リスク評価室
* {{PDFlink|[https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/pdf/CI_02_001/risk/pdf_hyoukasyo/011riskdoc.pdf 化学物質の初期リスク評価書 No.61 アセトアルデヒド]}} - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
* {{PDFlink|[http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol71/mono71-11.pdf IARC Monograph Volume 71 (1999): "Acetaldehyde"]}}
* {{ICSC|0009}}
* {{Kotobank}}

{{clear}}
{| class="toccolours" style="width: 20em; margin: 0 auto; text-align: center"
|-
| style="width: 33%" | C<sub>1</sub>:<br />[[ホルムアルデヒド]]
| style="width: 34%; border-left: 1px solid #aaa; border-right: 1px solid #aaa" | 飽和アルデヒド
| style="width: 33%" | C<sub>3</sub>:<br />[[プロピオンアルデヒド]]
|}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:あせとあるてひと}}
[[Category:アルデヒド]]
[[Category:香料]]
[[Category:特殊引火物]]
[[Category:特定悪臭物質]]
[[Category:肝毒素]]