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{{otheruses|化学物質のアミン}} [[Image:Amine-2D-general.png|class=skin-invert-image|thumb|150px|アミンの一般構造式]] '''アミン'''({{lang-en-short|amine}})とは、[[アンモニア]]の[[水素原子]]を[[炭化水素]]基または[[芳香族化合物|芳香族]]原子団で[[置換反応|置換]]した[[化合物]]の総称である。 置換した数が1つであれば'''第一級アミン'''、2つであれば'''第二級アミン'''、3つであれば'''第三級アミン'''という。また、[[アルカン|アルキル基]]が第三級アミンに結合して'''[[第四級アンモニウムカチオン]]'''となる。一方、アンモニアもアミンに属する。 [[塩基]]、[[配位子]]として広く利用される。 {| class="wikitable" style="text-align:center;" ! 第一級アミン !! 第二級アミン !! 第三級アミン |- | [[File:Primary-amine-2D-general.svg|class=skin-invert-image|150px|primary amine]] | [[File:Secondary-amine-2D-general.svg|class=skin-invert-image|150px|secondary amine]] | [[File:Amine-2D-general.svg|class=skin-invert-image|150px|tertiary amine]] |} == アミノ基 == アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素を除去した1価の官能基(-NH<sub>2</sub>,-NHR,-NRR')を'''アミノ基'''と呼ぶ。芳香環上に置換すると[[電子供与基]]としての性質を示す。 == 物性 == アミンは塩基性を有し、[[水素イオン|プロトン]](水素陽イオン)が配位結合する。これは、[[窒素]]原子が[[非共有電子対]]を持つためである。アミンの塩基性の強さは窒素原子に結合している[[アルキル基]]と密接な関係がある。炭素数が同じ場合、第二級アミンは第一級アミンより塩基性が強い。これは、アルキル基が持つ電子供与性によって窒素原子が負に分極することに拠る。しかし、第三級アミンは第二級アミンよりも塩基性が小さい。これは、アルキル基が3つ存在することで[[立体障害]]をもたらすためである。また、一般に芳香環に直結したアミンは塩基性が低い。これは芳香族炭化水素のもたらす非局在化による。 一般的なアミンの窒素原子はピラミッド型の構造をとる。このため3つ違う置換基のついたアミンは一見光学活性となりそうに見えるが、実際には窒素が反転を起こしやすいため、特殊な場合を除いて[[キラリティ]]を持たない。しかし、[[1991年]]に初めて合成された[[トリイソプロピルアミン]]は[[イソプロピル基]]のかさ高さのために平面構造をとることが判明している<ref>[http://blog.livedoor.jp/route408/archives/51085078.html トリイソプロピルアミン]、有機化学美術館・別館</ref>。 [[自然界]]のアミン類は微生物による発酵・腐敗生成物中<ref name=cookeryscience.47.341 /><ref name=jhs1956.37.379>井部明広、田村行弘、上村尚 ほか、[https://doi.org/10.1248/jhs1956.37.379 市販味噌及び醤油中の不揮発性アミンの分析法及びその含有量] 衛生化学 37巻 (1991) 5号 p.379-386, {{doi|10.1248/jhs1956.37.379}}</ref>に普通に存在し、醸造酒中<ref>梅津雅裕、[https://doi.org/10.6013/jbrewsocjapan1915.73.171 洒のアミン] 日本釀造協會雜誌 73巻 (1978) 3号 p.171-174, {{doi|10.6013/jbrewsocjapan1915.73.171}}</ref>にも存在する。ヒスタミン、チラミン、フェネチルアミンなどいくつかの物質は、アレルギー様症状、高血圧、偏頭痛の生理作用を引き起こす事が知られている<ref name=jhs1956.37.379 />。 == 命名法 == 他に[[カルボン酸]]や[[アルコール]]がある場合はそちらを優先し、アミノ基を置換基とする。 === 単純な形のアミン === 窒素原子に結合したアルキル基にアミンを続けて表記する。 * {{chem|CH|3|NH|2}} – メチルアミン * {{chem|(CH|3|)|2|NH}} – ジメチルアミン * {{chem|(CH|3|)|3|N}} – トリメチルアミン === IUPAC命名法 === 以下に示すような方法がある。主鎖のとり方などの詳細については[[IUPAC命名法]]を参照。 #母体化合物 NH<sub>3</sub> をアザンとし、これを置換基名に付加する(この方法はあまり用いられていない)。 #化合物の名称に対し、主基として接尾語「–アミン」を付加する(接合命名法)。 #基の名称に対し、接尾語「–アミン」を付加する(基官能命名法)。 #接頭語「アミノ–」を用いる(置換命名法)。 #窒素を含むように主鎖をとり、その主鎖の中でメチレン (-CH<sub>2</sub>-) 基が窒素に置き換わった位置を「n–アザ–」の形で示す(代置命名法)。長鎖ポリアミンなどで利用される。 * {{chem|CH|3|NH|2}} *#メチルアザン *#メタンアミン *#メチルアミン *#アミノメタン *#アザエタン * {{chem|(CH|3|)|2|CHN(CH|3|)|2}} *#ジメチル(プロパン-2-イル)アザン *#''N'',''N''-ジメチルプロパン-2-アミン *#ジメチル(プロパン-2-イル)アミン *#2-(ジメチルアミノ)プロパン *#2,3-ジメチル-2-アザブタン また、許容慣用名が認められている化合物がいくつかある。 * {{chem|C|6|H|5|NH|2}} – [[アニリン]] * {{chem|CH|3|C|6|H|4|NH|2}} (パラ置換) – [[トルイジン]] * {{chem|H|2|N|-C|6|H|4|-C|6|H|4|-NH|2}} (いずれもパラ置換) – [[ベンジジン]] === CA命名法 === IUPAC命名法の 2 を用いる。ただし位置番号は置換基の前に付ける。 * {{chem|(CH|3|)|2|CHN(CH|3|)|2}} – ''N'',''N''-ジメチル-2-プロパンアミン == 合成法 == === 置換反応 === アミンは[[ハロゲン化アルキル]]や[[スルホン酸]]アルキル[[エステル]]などに対し、[[アンモニア]]やアミンなどが求核剤としてはたらく置換反応により合成される。ただし、立体障害の小さい基質の反応などでは、生成したアミンがさらに求核剤としてはたらき、二級、三級のアミン、さらに四級の[[アンモニウム]]となる副反応が起こってしまう。このことは、特に一級アミンを合成したい場合に問題となる。その解決法として、[[フタルイミド]]カリウムとハロゲン化アルキルを反応させて N-アルキルフタルイミドとし、続く[[加水分解]]などで一級アミンを得る、[[ガブリエル合成]]が行われる。またハロゲン化アルキルと[[アジ化ナトリウム]]などを反応させてアルキルアジドとし、これを還元(後述)する方法も有用である。 [[アリール]]基(芳香族基)をアミン上に導入する置換反応は、その芳香環上の適当な位置に[[電子求引基]]があるハロゲン化アリールの場合は S<sub>N</sub>Ar 機構により進むことがある。活性の低いハロゲン化アリールでも、[[ウルマン反応]]や[[ブッフバルト・ハートウィッグ反応]]といった、[[銅]]や[[パラジウム]]化合物を媒介とする反応によりアリールアミンへと変換できる。 === 還元反応 === アミンはまた、[[ニトロ基]]、[[アジド]]、[[アミド]]、[[イミン]]、[[オキシム]]、[[ニトリル]]、[[アゾ化合物]]などの還元によっても得ることができる。[[水素化アルミニウムリチウム]](LAH)、パラジウム触媒-[[水素]]系などが用いられる。 [[還元的アミノ化]]などの手法によれば、[[アルデヒド]]や[[ケトン]]から、イミンを経由してワンポットでアミンを得ることができる。酸性条件下、[[シアノ水素化ホウ素ナトリウム]](NaBH<sub>3</sub>CN)や[[ピリジン]]-[[ボラン]]錯体などを用いて還元を行うのが普通である。この形式の人名反応として[[ロイカート反応]]、[[エシュバイラー・クラーク反応]]の例がある。 === 加水分解 === アミンは、アミド、イミン、[[イソシアネート]]などを加水分解すると、対応するアミンが得られる。イソシアネートは[[ホフマン転位]]、[[クルチウス転位]]などの生成物であるため、それらの反応を含水系で行った場合は生成物としてアミンが得られることになる。 === 人名反応 === アミンを生成物とする[[人名反応]]としては、上記に挙げたもののほか、[[ロッセン転位]]、[[シュミット反応|シュミット転位]]、[[ゾムレー・ハウザー転位]]、[[スチーブンス転位]]、[[バンバーガー転位]]などの転位反応や、[[マンニッヒ反応]]、[[ストレッカー反応]]、[[チチバビン反応]]などの求核的反応が挙げられる。 == 反応 == 第一級および第二級アミンは[[カルボン酸ハロゲン化物]]や[[カルボン酸無水物]]と縮合して[[アミド]]を作る。また、[[N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド|DCC]]などの適切な脱水剤や脱水反応により、[[カルボン酸]]と反応させて[[アミド]]とすることができる。 第一級アミンは[[アルデヒド]]や[[ケトン]]と縮合すると[[イミン]]に変わる。第二級アミンは同様に[[イミニウムカチオン]]を与える。 第二級、第三級アミンは酸化銀などの存在下で[[ホフマン脱離]]を起こし、一級下位のアミンと[[アルケン]]となる。この反応では[[ホフマン則]]という位置選択則が働く。 アミンは酸化によって[[ヒドロキシルアミン]]、[[オキシム]]、[[ニトロソ化合物]]、[[ニトロ化合物]]となる。 第一級アミンに[[亜硝酸]]あるいは亜硝酸エステルを作用させると[[ジアゾニウム]]イオンとなる。これは[[ザンドマイヤー反応]]や[[シーマン反応]]など、[[求核置換反応]]の基質となる。 アミンを用いる人名反応としては、これまでにすでに述べたものや合成法として述べたもののほか、[[ウギ反応]]、[[ストークエナミン合成]]などが知られる。 === 微生物による産生 === 食品腐敗の際に微生物によってもアミノ酸から産生される<ref name=cookeryscience.47.341>井部明広、[https://doi.org/10.11402/cookeryscience.47.341 食品に含まれるアミン類] 日本調理科学会誌 47巻 (2014) 6号 p.341-347, {{doi|10.11402/cookeryscience.47.341}}</ref>。例えば、アミノ酸の[[脱炭酸]]反応によるものとして、 [[image:L-Alanin - L-Alanine.svg|class=skin-invert-image|left|90px]]<chem>-> [CO2 \uparrow][Bacteria] </chem>[[image:Methylamine-2D.png|class=skin-invert-image|90px]] * グリシン<chem> -> </chem>メチルアミン * ヒスチジン<chem> -> </chem>ヒスタミン * チロシン<chem> -> </chem>チラミン * オルニチン<chem> -> </chem>プトレシン * トリプトファン<chem> -> </chem>トリプタミン * リジン<chem> -> </chem>カダベリン == 主な化合物 == === 脂肪族アミン === * [[メチルアミン]] * [[ジメチルアミン]] * [[トリメチルアミン]] * [[エチルアミン]] * [[ジエチルアミン]] * [[トリエチルアミン]] * [[エチレンジアミン]] * [[トリエタノールアミン]] * [[N,N-ジイソプロピルエチルアミン]] (Hunig's base) * [[テトラメチルエチレンジアミン]] (TMEDA) * [[ヘキサメチレンジアミン]] * [[スペルミジン]] * [[スペルミン]] * [[アマンタジン]] === 芳香族アミン === * [[アニリン]] * [[カテコールアミン]] * [[トルイジン]] * [[フェネチルアミン]] * [[ベンジジン]](ベンチジン) * [[1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン]](プロトンスポンジ) === 複素環式アミン === * [[ピロリジン]] * [[ピペリジン]] * [[ピペラジン]] * [[モルホリン]] * [[キヌクリジン]] * 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン ([[DABCO]]) * [[ピロール]] * [[ピラゾール]] * [[イミダゾール]] * [[ピリジン]] * [[ピリダジン]] * [[ピリミジン]] * [[ピラジン]] * [[オキサゾール]] * [[チアゾール]] * [[4-ジメチルアミノピリジン]] === アミン誘導体 === * [[エーテルアミン]] * [[アミノ酸]] == 脚注 == {{Reflist|2}} == 関連項目 == {{Commonscat|Amines}} * [[酸塩基抽出]] * {{仮リンク|金属アンミン錯体|en|Metal ammine complex}} {{官能基}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:あみん}} [[Category:アミン|*]] [[Category:有機化合物]] [[Category:有機窒素化合物]] [[Category:官能基]]
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