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アルティン環
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'''アルティン環'''(アルティンかん、<em lang=en>Artinian ring</em>、アルチン環とも)とは、[[降鎖条件]]から定まるある種の有限性をもった[[環 (数学)|環]]のこと。名称は[[エミール・アルティン]]にちなむ。 == 定義 == 環 ''R'' に対し次の二条件は同値である{{sfn|Lam|2001|p={{google books quote|id=2T5DAAAAQBAJ|page=18|18}}}}。 *([[降鎖条件]]): ''R'' の左[[イデアル]]からなる任意の降鎖は有限の長さで停止する: *:<math>I_1 \supseteq I_2 \supseteq \cdots, (I_k\text{ : ideal}, k=1,2,\dots) \Rightarrow \exists N \text{ such that } I_N = I_{N+1} = \cdots. </math> *(極小条件): ''R'' の左イデアルからなる空でない任意の族は包含関係に関する[[順序集合|極小元]]を持つ: *:<math>\varnothing \ne L := \{I_\lambda \subseteq R \mid I_\lambda \text{ : ideal}, \lambda \in \Lambda\} \Rightarrow \exists I \in L \text{ such that } I\ \not\supset\ I_\lambda \text{ for all }\lambda. </math> これらの同値な条件を満たす環 ''R'' は'''左アルティン的''' (<span lang=en>left Artininan</span>) であると言い、また左アルティン的である環を'''左アルティン環'''と呼ぶ。また、上記条件中の「左イデアル」と「右イデアル」とを取り替えて'''右アルティン環''' (<span lang=en>right Artininan ring</span>) が定義される。環 ''R'' が左右両側でアルティン的 (<span lang=en>two sided Artininan</span>) であるとき、''R'' は'''両側アルティン環'''であるという。考えている環 ''R'' が[[可換環]]であるならば左右の区別なく単に'''アルティン環'''あるいは可換環であることを強調して可換アルティン環あるいはアルティン的可換環などと呼ぶ。文脈によっては左アルティン環、右アルティン環あるいは両側アルティン環のことを単にアルティン環と略称する。 == 例 == === アルティン環である例 === * 有限環はアルティン環である。 * [[可換体|体]]上の有限次元[[結合多元環|多元環]]はアルティン環である。特に体はアルティン環である。 * ''R'' がアルティン環ならば[[全行列環]] M<sub>''n''</sub>(''R'') もアルティン環である。 === アルティン環でない例 === * [[整数環]]はアルティン環ではない(が、[[ネーター環]]である)。 * [[可除環]]でない[[非可換整域|域]]は、左(右)アルティンでない。 * 環 <math>\begin{bmatrix} \mathbb{R} & \mathbb{R} \\ 0 & \mathbb{Q} \end{bmatrix}</math> は左アルティン環であるが、右アルティン環ではない{{sfn|Anderson|Fuller|1992|p=130}}。 == 性質 == === 環 === * アルティン環は[[ネーター環]]となる([[ホプキンス・レヴィツキの定理|ホプキンス-レヴィツキ-秋月]])。よってアルティン環は[[組成列]]を持つ。また逆に、ネーター環であって、[[冪零]]な[[ジャコブソン根基]]を持ち、ジャコブソン根基による剰余環が半単純であるような環はアルティン環である。また、可換環に限れば、アルティン環であることと[[クルル次元]] 0 のネーター環であることとは同値である。 * 環がアルティン的[[単純環]]となる必要十分条件は適当な[[斜体 (数学)|斜体]]上のある次数の[[正方行列|全行列環]]と同型になることである{{sfn|Auslander|Buchsbaum|2014|loc={{google books quote|id=MVEuBAAAQBAJ|page=289|Theorem 1.1}}}}。一般に、[[半単純環]]は(斜体や次数が同じでなくてもよい)全行列環の有限個の直積である。詳細は「[[アルティン-ウェダーバーンの定理]]」および「[[半単純環]]」を参照。 * アルティン環の[[ジャコブソン根基]]による[[剰余環]]は[[半単純環|半単純]]である。特に半単純環はジャコブソン根基が消えているアルティン環として特徴づけられる{{sfn|Auslander|Buchsbaum|2014|loc={{google books quote|id=MVEuBAAAQBAJ|page=296|Theorem 2.3}}}}。 * 環 ''R'' が左(または右)アルティン環であることと、適当なイデアル ''I'' に対して ''R''/''I'' および ''I'' が左(または右)アルティン的であることとは同値である(ここで、''I'' がアルティン的であるとは ''I'' を ''R'' 加群とみて[[アルティン加群|アルティン的]]であることをいう)。 * 左アルティン環が[[域]]であれば[[可除環]]である。 === イデアル === * アルティン環の[[極大イデアル]]は有限個である{{sfn|Auslander|Buchsbaum|2014|loc={{google books quote|id=MVEuBAAAQBAJ|page=295|Theorem 2.2}}}}。 * アルティン環の[[ジャコブソン根基]]は最大の[[冪零イデアル]]である。 * アルティン環の素イデアルは[[極大イデアル]](すなわち[[クルル次元]]が 0 )である。特に、可換アルティン環は[[整域]]ならば可換体である。 === 加群 === * アルティン環上の[[既約加群]]の同型類は有限個である{{sfn|Auslander|Buchsbaum|2014|loc={{google books quote|id=MVEuBAAAQBAJ|page=295|Theorem 2.2}}}}。 == 脚注 == {{reflist|2}} == 参考文献 == * {{cite book |last1 = Anderson |first1 = Frank W. |last2 = Fuller |first2 = Kent R. |year = 1992 |title = Rings and categories of modules |url = {{google books|MALaBwAAQBAJ|Rings and Categories of Modules|plainurl=yes}} |edition = Second |publisher = [[Springer-Verlag]] |series = Graduate Texts in Mathematics |volume = 13 |isbn = 0-387-97845-3 |mr = 1245487 |zbl = 0765.16001 |ref = harv }} *{{cite book |last1 = Auslander |first1 = Maurice |last2 = Buchsbaum |first2 = David |year = 2014 |origyear = 1974 |title = Groups, Rings, Modules |url = {{google books|MVEuBAAAQBAJ|plainurl=yes}} |publisher = Dover |isbn = 978-0-486-49082-3 |ref = harv }} * {{cite book |last1 = Lam |first1 = T. Y. |year = 2001 |title = A first course in noncommutative rings |edition = Second |series = Graduate Texts in Mathematics |volume = 131 |url = {{google books|2T5DAAAAQBAJ|plainurl=yes}} |publisher = [[Springer-Verlag]] |isbn = 0-387-95183-0 |mr = 1838439 |zbl = 0980.16001 |ref = harv }} == 関連項目 == *[[アルティン加群]] *[[ネーター環]] {{DEFAULTSORT:あるていんかん}} [[Category:環論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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