アンモニウムのソースを表示

'''アンモニウム'''(ammonium)は、化学式NH<sub>4</sub><sup>+</sup>の[[分子イオン]]である<ref>代置命名法においては、NH<sub>4</sub><sup>+</sup>はアザニウム(azanium)と呼ばれる。</ref>。
[[アンモニア]](NH<sub>3</sub>)の[[プロトン化]]によって形成される[[オニウムイオン]]である。
アンモニウムは、NH<sub>4</sub><sup>+</sup>の1つ以上の[[水素]]原子が有機基に置き換わってできる、陽電荷を持った、またはプロトン化置換基を持つ[[アミン]]や、[[第四級アンモニウムカチオン]](NR<sub>4</sub><sup>+</sup>)に対する一般名でもある。「アンモニウムイオン」とも呼ばれるが、「アンモニウム」という用語自体がイオンの名前である。

{{Chembox
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| ImageSize1 =170px
| ImageAlt1 = 2-D skeletal version of the ammonium ion
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| SystematicName = Ammonium
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| Section1 = {{Chembox Identifiers
| CASNo = 14798-03-9
|  PubChem = 16741146
|  ChemSpiderID = 218
|  SMILES = [NH4+]
|  InChI = 1/H3N/h1H3/p+1
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| Formula = {{chem|N|H|4|+}}
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|  MolShape = 正四面体型
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== 酸塩基反応 ==
[[ファイル:Hydrochloric acid ammonia.jpg|thumb|塩酸とアンモニアを接触させると、塩化アンモニウムの白煙が形成される。]]
アンモニウムは、[[弱塩基]]であるアンモニアが[[ブレンステッド酸]]（プロトンドナー）と反応して形成される。
: <chem>{H^+} + NH3 -> NH4^+</chem>

<chem>NH4^+</chem> の[[酸解離定数]]{{pKa}}は、9.25である。

アンモニウムイオンは[[弱酸性]]で、ブレンステッド塩基と反応して無電荷のアンモニア分子に戻る。
: <chem>{NH4^+} + B^- -> {HB} + NH3</chem>

従って、アンモニウム塩の濃溶液を強塩基で処理するとアンモニアを生じる。アンモニアが水に溶けると、そのうち少量がアンモニウムイオンに変わる。
: <chem>{H3O^+} + NH3 \leftrightarrows {H2O} + NH4^+</chem>

アンモニアがアンモニウムイオンを形成する割合は、溶液のpHに依存する。pHが低い時は平衡は右に動き、より多くのアンモニアがアンモニウムイオンに変わる。pHが高い、つまり[[水素イオン]]濃度が低ければ平衡は左に動き、[[水酸化物イオン]]がアンモニウムイオンからプロトンを引き抜き、アンモニアを形成する。

アンモニウム化合物の形成は、気相でも起きる。例えば、アンモニア蒸気が[[塩化水素]]蒸気と接すると、[[塩化アンモニウム]]の白雲が形成され、最終的には、固相の白く薄い層となる。

== アンモニウム塩 ==
[[ファイル:Bildung Ammonium.svg|class=skin-invert-image|thumb|アンモニウムの形成]]
アンモニウムイオンは、[[炭酸アンモニウム]]、[[塩化アンモニウム]]、[[硝酸アンモニウム]]等の様々な塩で見られる。大部分の単純なアンモニウム塩は、非常に溶解性が高い。例外は[[ヘキサクロリド白金(IV)酸アンモニウム]]で、かつては、これを生成させることでアンモニウムを検出していた。硝酸塩や[[過塩素酸塩]]は爆発性が高く、この場合はアンモニウムは[[還元剤]]となる。

アンモニウムイオンが[[アマルガム]]を形成する場合もある。これは、アンモニウム溶液を[[水銀]]電極を用いて[[電気分解]]した場合に生じる<ref>[http://www.hull.ac.uk/chemistry/intro_inorganic/Chap9.htm Pseudo-binary compounds]</ref>。このアマルガムは最終的に分解してアンモニアと水素を放出する<ref>{{cite encyclopedia|encyclopedia = VIAS Encyclopedia|title = Ammonium Salts |url = http://www.vias.org/encyclopedia/chem_ammonia_salts.html}}</ref>。

== 構造と結合 ==
アンモニアの[[窒素]]原子の[[孤立電子対]]は、水素と結合を形成する。その後、4つ全てのN-H結合は等価になり、極性[[共有結合]]になる。このイオンは、[[メタン]]及び[[テトラヒドリドホウ酸イオン]]と[[等電子的]]である。イオン半径(r<sub>ionic</sub> = 175 pm)は、[[セシウム]]の陽イオン(r<sub>ionic</sub> = 183 pm)と近い。

== 検出 ==
それに金属水酸化物を加えると、[[アンモニア]]が生成される。

== 有機アンモニウムイオン ==
{{see also|アミン}}
アンモニウムイオンの水素原子は、[[アルキル基]]または他の有機基で置換され、'''置換アンモニウムイオン'''（IUPAC名では'''アミニウムイオン'''）を形成することができる。有機基の数に依って、アンモニウムイオンは、第一級から第四級と呼ばれる。第四級アンモニウムイオンを除き、有機アンモニウムイオンは弱酸性である。

アンモニウムイオンを形成する反応の例としては、[[ジメチルアミン]]((CH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>NH)と酸の反応があり、ジメチルアミニウムイオン((CH<sub>3</sub>)<sub>2</sub>NH<sub>2</sub><sup>+</sup>)を生じる。
:[[Image:Dimethylammonium-formation-2D.png|class=skin-invert-image|400px]]

第四級アンモニウムイオンでは、窒素原子に4つの有機基が結合しており、窒素原子に直接結合する水素原子はない。[[テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド]]のようなこれらのイオンは、陰イオンの[[有機溶媒]]への可溶性を向上させるために、[[ナトリウムイオン]]や[[カリウムイオン]]と置換されることがある。第一級から第三級アンモニウムイオンも同様の性質を持つが、親油性は弱い。[[相間移動触媒]]や[[界面活性剤]]としても用いられる。

== 生物学 ==
{{see also|排泄}}
アンモニウムイオンは、動物の[[代謝]]における老廃物である。[[魚類]]や水棲[[無脊椎動物]]では、水中に直接排泄される。[[哺乳類]]、[[サメ]]、[[両生類]]では、毒性を低くし貯蔵を容易にするために、[[尿素回路]]で[[尿素]]に変換される。[[鳥類]]、[[爬虫類]]、陸棲[[カタツムリ]]では、固体であるため最小限の水で排泄できる[[尿酸]]に変換される<ref>{{cite book |last=Campbell |first=Neil A. |author2=Jane B. Reece  |title=Biology |edition=6th |year=2002 |publisher=Pearson Education, Inc|location=San Francisco |isbn=0-8053-6624-5 |pages=937–938 |chapter=44}}</ref>。

アンモニウムは、多くの植物、特に低酸素土壌で生育するものにとっては、重要な窒素源である。しかし、穀物にとっては毒でもあり、単一の窒素源として用いられることは滅多にない<ref>{{cite journal|doi=10.1078/0176-1617-0774|url=http://www.utsc.utoronto.ca/~britto/publications/amtox.pdf|title=NH<sub>4</sub><sup>+</sup> toxicity in higher plants: a critical review|year=2002|last=Britto|first=DT |author2=Kronzucker, HJ| journal=Journal of Plant Physiology|volume=159|pages=567–584|issue=6}}</ref>。

== アンモニウム金属 ==
アンモニウムイオンは、重[[アルカリ金属]]と非常に似た性質を持ち、しばしば近い関係にあると考えられる<ref name = "Holleman&Wiberg">{{Holleman&Wiberg}}</ref><ref name="Stevenson" /><ref name="Bernal&Massey" />。アンモニウムは、[[天王星]]や[[海王星]]のような[[木星型惑星]]の内部等の超高圧の環境下では、金属として振る舞うと考えられる<ref name="Stevenson">{{cite journal |last1=Stevenson |first1=D. J. |date=November 20, 1975 |title=Does metallic ammonium exist? |journal=Nature |volume=258 |issue= |pages=222–223 |publisher=Nature Publishing Group |doi=10.1038/258222a0 |url=https://www.nature.com/articles/258222a0 |accessdate=January 13, 2012 |bibcode = 1975Natur.258..222S }}</ref><ref name="Bernal&Massey">{{cite journal |last1=Bernal |first1=M. J. M. |last2=Massey |first2=H. S. W. |date=February 3, 1954 |title=Metallic Ammonium |journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society |volume=114 |issue= |pages=172–179 |publisher=Wiley-Blackwell for the Royal Astronomical Society |bibcode=1954MNRAS.114..172B |url=https://articles.adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-iarticle_query?1954MNRAS.114..172B&amp;data_type=PDF_HIGH&amp;whole_paper=YES&amp;type=PRINTER&amp;filetype=.pdf |accessdate=January 13, 2012 }}</ref>。

== 関連項目 ==
* [[アンモニア輸送体]]
* {{link-zh|水素化アンモニウム|氢化铵}}
* [[ヒドロニウム]]
* [[イミニウム]]
* [[硝化作用]]
* [[オニウム化合物]]

== 出典 ==
{{reflist|2}}

{{デフォルトソート:あんもにうむ}}
[[Category:アンモニウム塩]]
[[Category:カチオン]]