エチレンのソースを表示

{{Chembox
|\mathrm{1\div2}
| Name =エチレン
| ImageFileL1 = Ethene structural.svg
| ImageSizeL1 = 100px
| ImageAltL1 = エチレン
| ImageFileR1 = Ethylene-3D-vdW.png
| ImageSizeR1 = 100px
| ImageAltR1 = エチレン
| IUPACName =エテン
| OtherNames =
| Section1 = {{Chembox Identifiers
| CASNo=74-85-1
| KEGG = C06547
| SMILES=C=C }}
| Section2 = {{Chembox Properties
| Formula =C<sub>2</sub>H<sub>4</sub>
| MolarMass =28.0 g mol<sup>-1</sup>
| Appearance =無色気体（常温常圧）
| 密度= | 相=
| 相対蒸気密度=0.98
| MeltingPtC=&minus;169.2 | 融点注=
| BoilingPtC=&minus;104 | 沸点注= }}
}}
'''エチレン'''（ethylene、[[IUPAC命名法]]では '''エテン''' (ethene) ）は、[[分子式]] C<sub>2</sub>H<sub>4</sub>、[[構造式]] CH<sub>2</sub>=CH<sub>2</sub> で、[[二重結合]]で結ばれた炭素2個を持つ[[炭化水素]]。もっとも単純な[[アルケン]]である。二重結合エチレンはこの化合物に高度な反応性を持たせ、化学工業で使用されるエチレンの体積は他の有機化合物よりも大きい<ref>{{Cite web | url=https://www.guidechem.com/encyclopedia/ethylene-dic469.html
 | title=ETHYLENE | accessdate = 2023-06-20}}</ref>。

== 構造 ==
[[ファイル:Ethylene-CRC-MW-3D-balls.png|170px|thumb|エチレンの分子モデル]]
[[ファイル:Ethylene-CRC-MW-dimensions-2D.png|class=skin-invert-image|thumb|250px|エチレンの構造]]

エチレンの炭素‐炭素間の二重結合は[[σ結合]]と[[π結合]]からなる。[[混成軌道|sp<sup>2</sup>混成]]した[[電子]]が正面から結合し、σ結合を作る。また、混成していない[[p軌道]]の電子が側面から結合を作る事によって生じるのがπ結合である。σ結合は切れにくい強い結合であるのに対し、π結合は切れやすい結合である。エチレンは二重結合を持つので、[[エタン]]のように炭素鎖を回転をすることは出来ない。そのため、1,2-ジクロロエチレンなどのエチレン誘導体は[[幾何異性体|シス-トランス異性体]]を生じうる。

エチレンは平面構造を取り、二つの炭素原子がsp<sup>2</sup>混成軌道を取るため、すべての結合角は約120ﾟである。

== 性質と反応 ==
かすかに甘い臭気を有する無色の[[気体]]で、強力な[[酸化剤]]と反応しやすく、また[[引火]]しやすい。

[[チーグラー・ナッタ触媒]]で[[重合]]すると[[ポリエチレン]]になる。反応性が高く、様々な化合物の原料として用いられている。例えば[[アセチレン]]はエチレンを[[ハロゲン]]と反応させて1,2-ジハロエタンを作り、[[水酸化カリウム]]でハロエテン、[[水素化アルミニウムリチウム]]で還元して作られる。[[エタノール]]を 160–170 ℃ 程度で[[脱水反応|脱水]]して得ることも出来る（分子内脱水）。

[[ワッカー酸化]]により、[[アセトアルデヒド]]を生成する。

=== 水和 ===
[[水和反応]]によりエタノールが生成されるが、高温高圧環境<ref>久郷昌夫, 栗林浩、「[https://doi.org/10.1252/kakoronbunshu1953.31.928 エチレンの水和によるエタノールの合成に関する研究 冷エチレン注入式固定床反応器]」 『化学工学』 1967 年 31 巻 9 号 p. 928-929,a1, {{DOI|10.1252/kakoronbunshu1953.31.928}}, 化学工学会</ref>が必要である。工業的な合成アルコール（エタノール）の生産方法のひとつである<ref>[http://www.j-s-a.co.jp/pro/outline.html 合成アルコールの製造方法] 日本合成アルコール株式会社</ref>。
* 直接水和法
: <chem>C2H4 + H2O -> C2H5OH</chem>
* 間接水和法
: <chem>C2H4 + H2SO4 -> C2H5OSO3H</chem>
: <chem>C2H5OSO3H + H2O -> C2H5OH + H2SO4</chem>

== 工業的製法 ==
{{main|エチレンプラント}}工業的には、日本では[[ナフサ]]を主とする[[炭化水素]]を[[水蒸気]]と混合して800－900℃程度の高温で[[熱分解]]し、生成物を[[蒸留]]分離してエチレンを生産する。この生産設備は[[エチレンプラント]]と呼ばれ、[[石油化学]]工場の中核設備である。

工業製品としてエチレンの2016年度日本国内生産量は 6,278,821 t、工業消費量は 1,344,762 t である<ref>[https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu5 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編]</ref>。

一方中東、アメリカでは天然ガスに含まれるエタンを熱分解する方法が進んでいる。

== 工業用途 ==
エチレンが石油化学コンビナートの生産力の指標にもなることからわかるように、エチレンは大多数の石油化学製品の原材料として重要である。

例として、[[塩化ビニル]]、[[アクリロニトリル|アクリルニトリル]]、[[酢酸ビニル]]などがエチレンを元に作られる<ref>{{Cite web |url=https://www.kagawa-nct.ac.jp/libraryI/kagawakiyou/7/7-59.pdf |title=高等学校の有機化学の誤りを正す アセチレンからエチレンへ |access-date=2022.12.19 |publisher=[[香川高等専門学校]]}}</ref>。

== 植物におけるエチレン ==
{{seealso|{{仮リンク|植物ホルモンとしてのエチレン|en|Ethylene as a plant hormone}}}}
植物においては[[メチオニン]]→S-アデノシルメチオニン(SAM)→1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)→エチレンという経路を通して合成される<ref>兵藤宏、「[https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu1962.22.339 エチレン生合成の調節]」『化学と生物』 1984年 22巻 5号 p.339-344, {{DOI|10.1271/kagakutoseibutsu1962.22.339}}</ref>。この過程では、SAMからACCへの合成にACC合成酵素が、ACCからエチレンの合成に[[アミノシクロプロパンカルボン酸オキシダーゼ|ACC酸化酵素]]が関与する。

[[植物ホルモン]]の1つでもある。一般的には[[成長|生長]]を阻害し、[[花芽形成]]も抑制する。例えば、[[ジャガイモ]]の場合、エチレンにより萌芽が抑制される性質がある。一方、[[パイナップル]]など一部の[[植物]]では、エチレンにより花芽形成が促進される場合もある。

水が過剰に与えられたとき、エチレンにより根の[[細胞]]の一部に[[アポトーシス]]が誘発され、[[シュノーケル]]と同様の機能を持つエアチューブが形成される。

また、エチレンは[[果実]]の「色づき」「軟化」といった成熟にも関与している。これはエチレンが[[セルラーゼ]]に関与し、[[細胞壁]]組織の破壊が誘導されるためと考えられている。また、[[バナナ]]などの[[クライマクテリック型]]の果実では一般に成熟直後に生成量のピークを示し、それ以後は逓減する。[[リンゴ]]はエチレンガスを発生させるので、バナナの傍で保管すると、バナナの成熟が早く進む。リンゴとジャガイモを一緒に保存するとエチレンによりジャガイモの発芽が抑制され、また、リンゴと[[ホウレンソウ]]を一緒に保存するとホウレンソウがエチレンにより黄変してしまうといった性質がある<ref name="zatsugakuomoshirojiten_p32">管野浩編 『雑学おもしろ事典』 p.32 日東書院 1991年</ref>。

リンゴのほか[[メロン]]、[[セイヨウナシ]]、[[アボカド]]は特に多くエチレンを放出する<ref name="zatsugakuomoshirojiten_p32"/>。

さらに、エチレンは病原菌（[[カビ]]や[[細菌]]など）の感染や組織が傷害を受けた時に生成され、これらに対する防御応答を誘導することが知られている。例えば、エチレンにより[[抗菌]]作用を持つ[[タンパク質]]が誘導され、病原菌の感染が広がるのを防ぐといった防御機構が考えられている。また、エチレンは[[気体]]であるため、病害を受けた植物に隣接する他の植物に対しても作用し、防御応答を誘導すると考えられている。

== 国別の生産量 ==
2008年における国別の生産量は以下の通りである<ref>地理 統計要覧 2014年版 ISBN 978-4-8176-0382-1 P,100</ref>。
{| class="wikitable"
!順位
!国
!生産量<br>（万トン）
!全世界での割合<br>(%)
|-
|style="text-align:center"|1
|{{USA}}
|style="text-align:right"|2,355
|style="text-align:right"|21.3
|-
|style="text-align:center"|2
|{{CHN}}
|style="text-align:right"|1,024
|style="text-align:right"|9.3
|-
|style="text-align:center"|3
|{{KOR}}
|style="text-align:right"|707
|style="text-align:right"|6.4
|-
|style="text-align:center"|4
|{{JPN}}
|style="text-align:right"|688
|style="text-align:right"|6.2
|-
|style="text-align:center"|5
|{{CAN}}
|style="text-align:right"|428
|style="text-align:right"|3.9
|- style="font-weight:bold"
|style="text-align:center"|‐
|style="text-align:center"|世界計
|style="text-align:right"|11,048
|style="text-align:right"|100.0
|}

日本国内にはエチレン生産設備が12基ある（石油化学工業協会の資料から作製）。茨城県（三菱ケミカル）、千葉県（丸善石油化学、丸善石油化学と住友化学、三井化学、出光興産）、神奈川県（ENEOS（2基））、三重県（東ソー）、大阪府（三井化学）、岡山県（旭化成と三菱ケミカル）、大分県（レゾナック）、山口県（出光興産）<ref>{{Cite web|url=https://www.asahi.com/articles/DA3S15961097.html|title=エチレン生産設備、集約向け動く各社　人口減で需要低迷・中国では増強：朝日新聞デジタル|accessdate=2024-06-18|publisher=朝日新聞}}</ref>。

== 出典 ==
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
* [[エタン]]
* [[アセチレン]]
* [[1-メチルシクロプロペン]]
* [[ポリエチレン]]
* [[ビニル基]]
* [[植物ホルモン]]

{{アルケン}}
{{植物ホルモン}}{{General anesthetics}}{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:えちれん}}
[[Category:植物ホルモン]]
[[Category:アルケン]]
[[Category:炭化水素]]
[[Category:モノマー]]