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'''エネルギー演算子'''(エネルギーえんざんし、{{lang-en-short|energy operator}})とは、[[量子力学]]において、[[系 (自然科学)|系]]の[[波動関数]]に作用することで[[エネルギー]]を定義する[[演算子 (物理学)|演算子]]([[作用素 (関数解析学)|作用素]])である。 == 定義 == エネルギー演算子は次のように与えられる<ref>Quantum Mechanics Demystified, D. McMahon, Mc Graw Hill (USA), 2006, ISBN 0-07-145546-9</ref>: :<math>\hat{E} = i\hbar\frac{\partial}{\partial t}</math> これは波動関数(系の異なる{{仮リンク|配位空間|en|Configuration space}}に対する{{仮リンク|確率振幅|en|Probability amplitude}}) :<math>\Psi\left(\mathbf{r},t\right)</math> に作用する。 == 応用 == エネルギー演算子は系の全エネルギーに[[対応原理|対応]]している。[[シュレーディンガー方程式]]は量子系のゆっくり変化する(非[[相対性理論|相対論]]的な)波動関数の空間・時間依存性を記述する。結合系<!-- bound system -->に対するこの方程式の解は離散的([[エネルギー準位]]で各々特徴づけられる、許容状態<!-- permitted states -->の集合)であり、このことが[[量子]]という概念をもたらす。 === シュレーディンガー方程式 === [[粒子]]の[[エネルギー保存の法則|エネルギー保存]]に関する古典的な方程式を用いる: :<math>E = H = T + V</math> ここで {{mvar|E}} は粒子の全エネルギー、{{mvar|H}} は[[ハミルトニアン]]、{{mvar|T}} は[[運動エネルギー]]、{{mvar|V}} は[[ポテンシャルエネルギー]]である。エネルギー演算子と[[ハミルトニアン#量子力学|ハミルトニアン演算子]]に置換し、 :<math>\hat{E} = \hat{H}</math> 波動関数を掛けることで、シュレーディンガー方程式を得る: :<math>\hat{E}\Psi = \hat{H} \Psi</math> これは次のように書き直せる: :<math>i\hbar\frac{\partial}{\partial t} \Psi(\mathbf{r},\,t) = \hat H \Psi(\mathbf{r},t)</math> ここで {{mvar|i}} は[[虚数単位]]、{{math|{{hbar}}}} は[[換算プランク定数]]、{{mvar|{{hat|H}}}} はハミルトニアン演算子である。 === クライン-ゴルドン方程式 === {{仮リンク|特殊相対性理論における質量|en|Mass in special relativity#The relativistic energy-momentum equation|label=相対論的な質量とエネルギーの関係式}}を考える: :<math>E^2 = (\boldsymbol{p}c)^2 + (mc^2)^2</math> ここで {{mvar|E}} は全エネルギー、{{mvar|p}} は粒子の全3次元[[運動量]]、{{mvar|m}} は[[不変質量]]、{{mvar|c}} は[[光速度]]である。この式から、シュレーディンガー方程式の場合と同様にして、[[クライン-ゴルドン方程式]]を得ることができる: :<math>\begin{align} \hat{E}^2\Psi = c^2\hat{\boldsymbol{p}}^2\Psi + (mc^2)^2\Psi \\ \end{align}</math> ここで {{mvar|{{hat|p}}}} は[[運動量演算子]]である。これは次のように書き直せる: :<math>\frac{\partial^2 \Psi}{\partial (ct)^2} = \nabla^2\Psi - \left(\frac{mc}{\hbar}\right)^2\Psi</math> 更に、ダランベルシアン {{math|□}} を用いると次のように書きなおせる。 :<math>\left[ \Box - \left(\frac{mc}{\hbar}\right)^2 \right] \Psi = 0</math> == 導出 == エネルギー演算子は[[自由粒子]]の波動関数(シュレーディンガー方程式の[[平面波]]解)を用いることで容易に導出される<ref>Quantum Physics of Atoms, Molecules, Solids, Nuclei and Particles (2nd Edition), R. Resnick, R. Eisberg, John Wiley & Sons, 1985, ISBN 978-0-471-87373-0</ref>。1次元の場合から始めよう。波動関数は、 :<math> \Psi = e^{i(kx-\omega t)}</math> {{mvar|Ψ}} の時間微分は、 :<math> \frac{\partial \Psi}{\partial t} = -i \omega e^{i(kx-\omega t)} = - i \omega \Psi</math> これに[[ド・ブロイ波|ド・ブロイの関係式]] :<math> E=\hbar \omega</math> を代入し、次の式を得る: :<math> \frac{\partial \Psi}{\partial t} = - i \frac{E}{\hbar} \Psi</math> この式を整理すると、 :<math> E\Psi = i\hbar\frac{\partial \Psi}{\partial t}</math> エネルギー因子 {{mvar|E}} は[[スカラー]]値であり、粒子が有するエネルギーであって、測定される値である。両辺の {{mvar|Ψ}} を消去すると、 :<math> E = i\hbar\frac{\partial }{\partial t}</math> [[偏微分]]は[[線型作用素]]であり、ゆえにこの表現はエネルギーに関する演算子となっている: :<math> \hat{E} = i\hbar\frac{\partial }{\partial t}</math> 結論として、スカラー {{mvar|E}} は演算子の[[固有値]]であり、{{math|{{hat|''E''}}}} は演算子であるといえる。これらの結果を要約すると、 :<math> \hat{E}\Psi = i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\Psi=E\Psi</math> 3次元平面波 :<math> \Psi = e^{i(\mathbf{k}\cdot\mathbf{r}-\omega t)}</math> に対しても、導出は全く同じであり、時間を含む項に変更がないため、時間微分となる。この演算子は線型であるため、平面波の任意の[[線型結合]]に対して有効であり、そのため波動関数や演算子の特性に影響を与えることなく任意の波動関数に作用することができる。ゆえにこれは任意の波動関数に対して真でなければならない。上記の[[クライン-ゴルドン方程式]]のように、[[相対論的量子力学]]においてもなお機能することが分かる。 == 脚注 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[プランク定数]] * [[シュレーディンガー方程式]] * [[運動量演算子]] * [[ハミルトニアン#量子力学]] * [[エネルギー保存の法則]] * [[複素数]] * [[基底状態]] * [[演算子 (物理学)]] {{物理学の演算子}} {{DEFAULTSORT:えねるきいえんさんし}} [[Category:エネルギー]] [[Category:偏微分方程式]] [[Category:量子力学]]
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