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'''エネルギー貯蔵'''(エネルギーちょぞう)あるいは'''蓄エネルギー'''(ちくエネルギー、{{Lang-en-short|energy storage}})とは、[[エネルギー]]を後で利用するために一時的に蓄えることである。短縮して'''蓄エネ'''ともいう<ref>[https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01855/00002/ 日経クロステック「蓄エネ技術を徹底比較 発電コストでLIB超えでもあの指標で大差」]</ref><ref>[https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1237.html 「省エネ・創エネ・蓄エネの違いについて教えてください。」]</ref>。 == 概説 == エネルギー貯蔵を行うためのシステムを'''エネルギー貯蔵システム'''や'''蓄エネルギーシステム'''({{Lang-en-short|energy storage system}}、'''ESS''')<ref>[https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/service/kankyo/pdf/tikuene.pdf 国土交通省「畜エネルギーシステム」]</ref><ref>[https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00078/00001/ 日経クロステック「蓄電池の大量導入が急加速、新旧蓄エネ技術も続々参戦へ」]</ref>と言う。 エネルギーを貯蔵する手法としては、[[位置エネルギー]]、[[運動エネルギー]]、[[化学エネルギー]]、熱エネルギー(内部エネルギー)などがある。→[[#種類・分類]] 現代の揚水蓄電(ダムへ水をくみ上げる蓄電方式)は水の位置エネルギーとしてエネルギーを蓄えておいて、必要な時に水を落下させタービンをまわし発電(揚水発電)に使う。最近注目されるようになってきた重力電(コンクリートなど重量物の位置を上げることで蓄電する方式)も位置エネルギーとしてエネルギーを蓄える。時計の[[ぜんまいばね|ぜんまい]]も位置エネルギーを蓄える(これはばねの弾性力による位置エネルギーとして蓄えている)。[[蓄電池]]([[二次電池]])は電気エネルギーを物質の形(化学エネルギーの形)に変換しエネルギーを貯蔵している。 氷の貯蔵タンクは、夜間に氷([[内部エネルギー|熱エネルギー(負の熱エネルギー)]])を蓄え、ピーク時の冷房需要に備える。 近年では再生可能エネルギーで[[メタン]]を製造するエネルギー貯蔵法も研究されている。→[[#メタン]] 水素を使う蓄エネルギーは、再生可能エネルギーの電力で電気分解して水素を得る方法と組み合わせることで、[[持続可能性|持続可能な]]エネルギーシステム、社会インフラを構築できると考えられている。→[[#水素]] 他にもエネルギー貯蔵の手法としては地下の洞窟に圧縮空気を貯蔵する方式など、様々な手法の研究も行われている。 太古の昔から植物は光合成で蓄エネルギーを行っている。→[[#歴史]]。 == 種類・分類 == 畜エネには次のような種類がある。分類して挙げてみる。 *化学的貯蔵 ** [[水素]]によるもの ** [[アンモニア]]によるもの <!-- **[[バイオ燃料]] ---> **[[液体窒素]]によるもの <!-- **[[酸水素ガス]] ---> **[[過酸化水素]]によるもの <!-- *生物学的貯蔵 **[[デンプン]] **[[グリコーゲン]] --> *電気化学的貯蔵 **[[二次電池]]:[[レドックス・フロー電池]]、[[ナトリウム・硫黄電池]] <!-- **[[燃料電池]] ---> *電気的貯蔵 **[[コンデンサ]]:[[電気二重層コンデンサ]] **[[超伝導磁気エネルギー貯蔵]] (SMES) *力学的貯蔵 ** 重力蓄電([[重力]]による[[位置エネルギー]]{{Efn|物体の上下位置、つまり地球(の重心)に対する位置により持つ位置エネルギー。}}を使う方式) ***[[揚水発電]] ***コンクリートバッテリー **[[ばね]] **[[圧縮空気エネルギー貯蔵]] (CAES) **[[フライホイール・バッテリー]] **[[アキュムレータ (機械)|アキュムレータ]] *熱的貯蔵 **氷貯蔵 <!-- **[[溶融塩]] **[[液体窒素]] **[[季節間蓄熱]] ---> **[[ソーラーポンド]] **[[蒸気アキュムレータ]] <!-- **[[無火機関車]] **[[共晶]] *燃料保存による貯蔵 ---> == 電力エネルギーの貯蔵 == <!--電気は閉回路内を流れるが、閉回路は基本的には電気エネルギーそのままの形で貯蔵することができない。送電網の場合も同様であり、送電網に電力エネルギーを貯蔵できる蓄エネルギーシステムを接続しそこにエネルギーを貯蔵すれば、電力需要の急激な変化が起きても、供給低下(電圧低下や停電)を防ぐことができる。[[再生可能エネルギー]]を電力網に接続して使う場合も、単体で使う場合もエネルギー貯蔵システムが必要となる。{{Efn|再生可能エネルギーは、単体で使う場合でも、風は間欠的に吹くので無風状態の期間を埋めるために貯蔵が必要だし、太陽エネルギーも天気が悪い間は使えないので使えない間の補填のための貯蔵が必要となる。また電力網に接続する場合でも、天候によって再生エネの発電量が変動しても電力網に供給される電力が安定するように、そして電力網に悪影響を与えないようにするために必要となる。}} --> 国によっては、余裕がある時間帯に水をポンプで組みあ上げて位置エネルギーの形で貯蔵し、電力需要ピーク時にその水を使ってタービンを回して発電するということが行われている(これは通常、後で発電に使うことも含めて「[[揚水発電]]」呼んでいる。)。揚水発電規模は世界の蓄電能力の94%に相当する<ref name="IEEI">[https://ieei.or.jp/2020/11/column201126/ IEEI「揚水発電、世界規模で拡充の動き」]</ref>。IHAの推計で、世界全体で少なくとも9,000 GWhの蓄電規模となっている<ref name="IEEI" />。そして、世界規模で揚水発電を拡充する傾向になっていると報告されていると2020年時点で報告されている<ref name="IEEI" />。以前は揚水発電の柔軟性のメリットは見過ごされることが多かったが、変動性のある再生可能エネルギーの急増が送電系統に与える影響を抑制するために、耐用年数が長くて長期的に見たコストが低い揚水発電への投資を今後増強する必要がある、と各地で判断されている模様である<ref name="IEEI" />。なお日本の揚水発電は2019年時点で約40か所で、合計26GWの設備容量でこれは世界全体の約16.25%{{Efn|1 回当たり5 時間発電するとして130GWh/回の蓄電容量、年間約40TWh/y の蓄電量(設備利用率17%)}}に相当するが、利用実績つまり設備利用率は3%と低い(海外では10%程度)<ref name="IEEI" />。日本では現状、大規模な揚水発電施設が多く地域分散の再生可能エネルギーに対応しにくいので、今後は全国に約2,700 か所ある多目的ダムを利用した中小揚水発電所の建設が今後の蓄電システムとして有効だと考えられるという<ref name="IEEI" />。[[アメリカ合衆国]]でも[[ワシントン州]]や[[オレゴン州]]、[[イギリス]]の[[ウェールズ]]で揚水発電が行われている。 電力を大規模に貯蔵するということは、揚水発電を除けば、これまであまり行われてこなかったが、今後はその状況に変化が予想されている。[[2009年アメリカ復興・再投資法]]に基づき、エネルギー貯蔵法と[[スマートグリッド]]への応用の研究が行われている<ref name="Read_Smart_Grid">[http://www.oe.energy.gov/DocumentsandMedia/DOE_SG_Book_Single_Pages(1).pdf Read Smart Grid: An Introduction]</ref>。 2010年代から世界的に[[脱炭素]]、すなわち火力発電を減らしたり廃止して[[再生可能エネルギー]]による発電へシフトすることが加速してきており、その結果、風力発電所やソーラー発電所など時間帯により発電量が変化する発電方式でも社会に電力を安定的に供給するために大規模なエネルギー貯蔵システムが必要だと認識され注目が集まるようになってきている。その中で有力な候補として急浮上してきているのが、古くて新しい{{ill2|重力蓄電|en|Gravity battery}}システムであり、(解体工事現場などから出る廃コンクリートなども利用して作った)コンクリートの巨大な塊などを、電力供給に余力がある時間帯に持ち上げ、それにより位置エネルギーとして蓄電し、発電量が減る時間帯にこのシステムから電力を供給する方式である<ref>[https://energy-shift.com/news/59859468-eb2c-4600-b512-3accfea5176c EnergyShift、脱炭素を面白く「再エネの拡大と同時に必要になってくる調整力として今注目を集めている「重力蓄電」。位置エネルギーを使ったこの古くて新しいバッテリーとは。」]</ref>。 一部ではモータで[[フライホイール]]を回転させたりその回転速度を上げて電気エネルギーを貯蔵するという方法([[フライホイール・バッテリー]])も使われている。 == 熱エネルギーの貯蔵 == 熱エネルギー貯蔵のよくある形式は、'''[[氷]]'''を貯蔵しておいて冷却する方式である。氷は水よりも少ない量でより多くのエネルギーを貯蔵でき、[[燃料電池]]やフライホイールより安価である。熱エネルギー貯蔵は日中のピーク電力需要をギガワット単位でシフトさせ、コストもかからず、35カ国以上の3,300以上の建物で使われている。TESは、夜間の安い電力で氷を作って熱エネルギーを貯蔵し、翌日の日中にその建物の空気を冷やすのにその氷を使う。 [[:en:the Solar Project|the Solar Project]] や [[:en:Solar Tres Power Tower|Solar Tres Power Tower]] では、太陽熱エネルギーを貯蔵するのに溶融塩を使い、必要に応じて発電に使う方式を研究中である。太陽熱で熱した溶融塩を断熱コンテナに貯蔵し、必要なときに水をそれで熱し、発生した蒸気でタービンを回して発電する。 == 水素 == [[水素]]は電力貯蔵媒体としても研究されている。水素はまず何らかのエネルギー源を使って製造する。現在、特に焦点が当てられているのは、[[再生可能エネルギー]]を使い水素を製造する方法である。 (中学生が理科の授業で習うことからも分かるように、水から水素を得ることは簡単であり)[[水]]を[[電気分解]]することによって水素を得ることができ、逆に水素から電力を得るには[[燃料電池]]という水素と酸素を反応させ電力を得る装置を使えばよい。水素を使ったシステムの特徴は水素を燃やしても(つまり酸素と反応させても)、CO<sub>2</sub>を排出せず、ただの水が排出されるだけで、無害で、環境に非常に良い、ということである<ref name="TOYTA_SUISO">[https://toyota.jp/sp/fcv/h2guide/]</ref>。水素によるエネルギー貯蔵は再生可能エネルギーを普及させる上でも重要なファクターになると見なされている。 水素は定位置に保存しておく方法もあるが、また水素をタンクに入れて輸送することもできエネルギーの輸送手段にもなる。 太陽エネルギーや風力エネルギーなどの天候によって出力が変動する再生可能エネルギーと組み合わせておいて、貯蔵システムから電力網へと電力を供給するシステムがひとつの有用な用途である。(電力需要の20%未満であれば、経済への影響はあまり大きくないが)電力需要の20%を超える部分を再生可能エネルギーと水素貯蔵がまかなうようになれば重要性を帯びてくる。再生可能エネルギーで水素を作貯蔵しておけば、電力需要が増えた時など必要なときに使うことができる。[[ニューファンドランド島]]の南岸にある小さな島 (Ramea) で、2007年から5年間の計画で[[風力原動機]]と水素発生装置を使った実験が行われている<ref>[http://www.ieawind.org/wnd_info/KWEA_pdf/Oprisan_KWEA_.pdf Introduction of Hydrogen Technologies to Ramea Island]</ref>。同様のプロジェクトは[[ノルウェー]]の小さな島 (Utsira) でも2004年から継続中である。 また、エネルギーを水素の形で貯蔵しておいて、それを[[水素自動車]]で使うという方法もある(これも車載の燃料電池で電気自動車を動かすしくみにはなっている)。 日本では[[トヨタ自動車]]や[[川崎重工業]]や[[岩谷産業]]などが中心となって、水素の大規模なサプライチェーンを構築するための取り組みを進めている。 なお、エネルギー資源を扱う大きな会社が、水素を扱うための専業的な部門を持ち、大規模な事業として大量の水素を製造・貯蔵・輸送したり、電力網へ電力を供給する方法もあるが、他方、小さな法人や個人が再生可能エネルギーによる[[自家発電]]で水素を製造しタンクに貯蔵しておいて必要な時にその水素を使って発電する装置も一応は構築可能である。 [[水素貯蔵]]はいくつかの方式がある。タンクに貯蔵するのがオーソドックスな手法であるが、[[地下水素貯蔵]]は、地下の[[洞窟]]や[[岩塩ドーム]]、あるいは枯渇した油田やガス田に水素を貯蔵する方式である。[[インペリアル・ケミカル・インダストリーズ|ICI]]は大量の水素ガスを地下の洞窟に長年貯蔵しているが、特に困難は発生していない<ref>[http://www.hyweb.de/Knowledge/Ecn-h2a.html 1994 - ECN abstract]</ref>。地下に大量の水素ガスを貯蔵することで余剰電力を貯蔵することができる。[[ターボエキスパンダー]]を使って水素ガスを200[[バール (単位)|バール]]まで圧縮するのに要する電力量は圧縮する水素のエネルギー量の2.1%である<ref>[http://www.iea.org/textbase/nppdf/free/2005/hydrogen2005.pdf Energy technology analysis] [[国際エネルギー機関]]、70ページ</ref>。 なお、エネルギーを水素で貯蔵する場合、貯蔵タンクなどから水素が漏れないように配慮する必要はある<ref name="TOYTA_SUISO" />。 また(他のエネルギー貯蔵システムでもそうだが)水素貯蔵サイクルでも、[[電気分解]]で水素を製造して液化または圧縮しそれを再び電力に変換する場合、やはりエネルギーの損失がある<ref name='physorg.com/news85074285'>{{cite news | first=Lisa | last=Zyga | coauthors= | title=Why a hydrogen economy doesn't make sense | date=2006-12-11:15-44 | publisher=Physorg.com | url = http://www.physorg.com/news85074285.html | work =Physorg.com web site | pages = | accessdate = 2007-11-17 | language = }}</ref>。これは、[[バイオ水素]]を使って93%の[[マイクロCHP]]のような[[燃料電池]]を製造し<ref>[http://www.green-energy-news.com/arch/nrgs2005/20050081.html Home heat and power: Fuel cell or combustion engine]</ref>、そこから電力を得る場合でも同様である。 1kgの水素を製造するには約50kWh(180MJ)の電力を必要とし、この電力消費量は発電以外の用途に水素を使う場合でも明らかに重要である。[[アメリカ合衆国]]ではピーク時以外の電気料金はkWh当たり0.03ドルであり、1kgの水素を作るのに1.50ドルの電気を必要とする。アメリカで1.50ドルぶんの[[ガソリン]]を自動車で使った場合、1kgの水素を使った燃料電池と走行可能距離がほぼ同じとなる。<!--意味不明な文章 水素ガスから燃料電池を作るには、圧縮または液化し、工場まで輸送する必要があり、これらのコストは小さいとは言えない。--> {{Efn|なお、日本では現状{{いつ|date=2023年8月}}では、通常25円/kWh程度であり水素1kgの価格は1250円、夜間電力10円/kWhとすると500円程度となりアメリカと比べ非常に割高な状態である。今後改善してゆく見込みである。}} == 合成炭化水素燃料 == 実験室レベルでは、大気中の二酸化炭素を炭化水素燃料に変換できるが、何らかのエネルギー源を必要とする。産業化するには、太陽光をエネルギー源として人工光合成と呼ばれる技術を使うことになる<ref>[http://www.bnl.gov/bnlweb/pubaf/pr/PR_display.asp?prID=03-63a Designing a Better Catalyst for “Artificial Photosynthesis”]</ref><ref>[http://www.lbl.gov/Science-Articles/Archive/sabl/2005/May/01-solar-to-fuel.html Science@Berkeley Lab: Solar to Fuel: Catalyzing the Science]</ref>。他のエネルギー源としては、太陽光発電や太陽熱や原子力が考えられる<ref>[http://www.newscientist.com/article.ns?id=dn2620 Carbon dioxide turned into hydrocarbon fuel - 02 August 2002 - New Scientist]</ref><ref>[http://www.americanenergyindependence.com/recycleco2.aspx CO2 Recycling]</ref>。水素に比べて体積が格段に小さい、既存のエンジン技術にすぐ利用できる、既存の燃料供給基盤をそのまま使えるという利点がある。合成炭化水素燃料の製造が実現すれば、製造した燃料を燃やすまでは大気中の二酸化炭素を減少させることができ、燃やしても製造前に比べて大気中の二酸化炭素量が増えない。燃料の消費量を上回る製造量を技術的に達成できれば、二酸化炭素による温室効果を克服することができる。なお、たとえエネルギー貯蔵を目的にしないとしても、液体燃料を使うしかない航空機の燃料として、さらには、プラスチックなどの工業原料として石油に類する人工合成物質は必要であり、炭化水素の人工合成は将来の必須技術といえる。 === メタン === [[メタン]]は分子式が CH{{sub|4}} という最も単純な炭化水素である。メタンは再生可能エネルギーによる電力で生産可能である。メタンは水素よりも貯蔵と輸送が簡単で、燃焼方法も確立している。 まず、[[電気分解]]で水から酸素と水素を作る。 : <chem>2H2O -> 2H2 + O2</chem> 次に[[サバティエ反応]]によって水素と[[二酸化炭素]]を反応させ、メタンと水を作る。 : <chem>CO2 + 4H2 -> CH4 + 2H2O</chem> メタンは貯蔵しておき、後で発電に使う。水はリサイクルして電気分解でき、それによって必要な純水の量を減らすことができる。電気分解で発生した酸素も別に貯蔵して発電時にメタンを燃焼させるのに使えば、[[窒素酸化物]]の発生を抑えることができる。メタンを燃焼させると、二酸化炭素と水が生成される。 : <chem>CH4 + 2O2 -> CO2 + 2H2O</chem> 生成した二酸化炭素を再利用してサバティエ反応を加速させることができ、水は電気分解用にリサイクルできる。するとメタンの燃焼で生じた二酸化炭素は再びメタンになるので、温室効果ガスが全く発生しない。このようにメタン製造と発電を隣り合わせて行えば、全体でサイクルを形成できる。 == ホウ素、ケイ素、亜鉛 == [[ホウ素]]<ref>[http://www.eagle.ca/~gcowan/boron_blast.html Boron: A Better Energy Carrier than Hydrogen? (12 June 2007)]</ref>、[[ケイ素]]<ref>[http://opus.zbw-kiel.de/volltexte/2004/2219/pdf/PROD0000000000079095.pdf Silicon as an intermediary between renewable energy and hydrogen]</ref>、[[リチウム]]、[[亜鉛]]<ref name="#1">[https://ergosphere.blogspot.com/2005/06/zinc-miracle-metal.html The Ergosphere: Zinc: Miracle metal?]</ref>は、エネルギー貯蔵手段として提案されている。 == 力学的貯蔵 == エネルギー貯蔵手段として、水を高い場所に汲み上げて[[揚水発電]]に使ったり、空気を圧縮したり、[[フライホイール・バッテリー|フライホイール]]を回したりという方法がある。 1kgの質量を1000m持ち上げると、9.81KJのエネルギーを貯蔵できる。これは1kgの質量を秒速140mに加速するのと等価である。これと同じエネルギーを使えば、1kgの水の温度を2.34[[セルシウス度|℃]]上昇させることができる。明らかに不公平な比較だが、1m{{sup|3}} の安価な岩や砂、コンクリートの塊でも高い場所に移動させれば、1m{{sup|3}}の[[鉛蓄電池]]より大量のエネルギーを蓄えることができる。鉄道を利用したシステムが試験されている<ref>[http://www.vox.com/2016/4/28/11524958/energy-storage-rail The train goes up, the train goes down: a simple new way to store energy]</ref>。 圧縮空気の形でエネルギーを貯蔵するには夜間の安価な電力を使えばよく、圧縮空気は地下の空洞に溜めればよい。そして、電力需要のピークの時間帯にこれを解放し、普通の燃焼型タービンの排気熱でその空気を熱する。熱した空気を膨張タービンに使えば発電できる。[[圧縮空気エネルギー貯蔵]] (CAES) 施設は1991年に[[アラバマ州]]マッキントッシュに建設され、稼動に成功している。Walker Architects は二酸化炭素ガスを使ったCAESによるエネルギー貯蔵を2008年10月24日に提案している<ref>[http://www.prlog.org/10483660-walker-architects-energy-storage.html Walker Architects & Energy Storage] PRLog</ref>。 いくつかの企業は、圧縮空気を自動車の動力源とする研究([[圧縮空気車]])を行っている<ref name="#1"/>。 == 再生可能エネルギーの貯蔵 == [[太陽光発電]]や[[風力発電]]といった[[再生可能エネルギー]]は、間欠的に動力を生成する。この場合、安定したエネルギー供給にするにはエネルギー貯蔵が必須である。再生可能エネルギーの普及には、電力網におけるエネルギー貯蔵、需要に対応した供給、エネルギーの変動相場制が必要となる。そういった対策を講じないと、間欠的なエネルギー源で全電力の20%から30%以上を供給することができない。電力供給の損失とコストを管理できれば、様々な間欠的な電力源を接続しても、電力網全体の信頼性を増大させることができる。 間欠的でない再生可能エネルギー源には、[[水力発電]]、[[地熱発電]]、[[集光型太陽熱発電]] (CSP)、[[潮力発電]]、[[:en:energy tower (downdraft)|Energy tower]]、[[ソーラーアップドラフトタワー]]、[[海洋温度差発電]]、[[高高度風力発電]]、[[バイオ燃料]]、[[宇宙太陽光発電]]などがある。太陽光発電は技術的には間欠性があるが、ピーク需要時間帯である昼間はある程度発電できる。しかし、場所によっては太陽光が最も強い時間帯と電力需要がピークに達する時間帯は一致しないことがあるため、より効率的なエネルギー貯蔵法の研究が盛んに行われている。 == 熱エネルギー貯蔵 == {{Main|蓄熱}} 熱貯蔵(蓄熱)は、後で使用するために一時的に熱を蓄えるか、または熱を除去することである。例えば、太陽熱を日中に集め、夜間の暖房などに使用する。実際にはこの逆で冷房のための蓄熱利用の方が多い。夜間の安価な電力で氷を作り、それを日中の冷房に利用するといった方式がある。 == 電力網におけるエネルギー貯蔵 == [[ファイル:Stwlan.dam.jpg|thumb|300px|right|ウェールズにあるダムと貯水池。夜間電力を使って水を汲み上げ、昼にその水で発電する([[揚水発電]])。電力需要が増大して発電の必要が生じると、1分以内に360メガワットを発電できる。ダムの大きさは下の方に停車中の自動車で判断できる。]] 電力網におけるエネルギー貯蔵(grid energy storage または large-scale energy storage)とは、[[発電所]]が余分な電力を一時的な電力貯蔵施設に[[送電]]しておき、電力需要が大きくなったときにそこが電力を供給する側になるという方式である。これは、夜間と昼間の電力の需要と供給を一致させる方式の1つとして注目されている。 <!-- 当記事で扱うべき内容からはズレている。 == バイオ燃料 == [[バイオディーゼル]]、[[植物油燃料]]、[[アルコール燃料]]、バイオマスといった[[バイオ燃料]]は、炭化水素燃料の代替となりうる。様々な化学プロセスを使えば、石炭、天然ガス、[[バイオマス]]、有機性廃棄物などに含まれる炭素と水素を既存の炭化水素燃料の代替となる短い炭化水素に変換できる。例えば、[[フィッシャー・トロプシュ法]]によるディーゼル燃料、[[メタノール]]、[[ジエチルエーテル]]、[[合成ガス]]などである。第二次世界大戦中のドイツでは石油の入手が困難だったため、これらをディーゼルエンジンに使っていた。今日では南アフリカが同様の理由で石炭からディーゼル燃料を作っている<ref>[http://www.eere.energy.gov/afdc/pdfs/epa_fischer.pdf Clean Alternative Fuels: Fischer-Tropsh]</ref>。原油価格が長期に渡って35ドル以上となれば、このような合成液体燃料を大規模に製造すれば経済的に見合うことになる可能性もある([[石炭]]参照)。このような変換プロセスにおいても、エネルギー損失がある。歴史的には石炭そのものを[[蒸気機関]]で使っていた。また、天然ガスを使った[[天然ガス自動車]]もある。 --> == 歴史 == 自然の過程としてのエネルギー貯蔵は、宇宙そのものと同じぐらい古くからある。[[宇宙]]が生まれたとき存在したエネルギーは[[太陽]]などの恒星に貯蔵し、人類はそれを直接的(すなわち[[太陽エネルギー|太陽熱]])または間接的(すなわち、作物の成長や[[太陽電池]]で電気に変換するなど)に利用している。エネルギーを貯蔵することで人類はエネルギーの需要と供給のバランスをとることができる。今日商用で使われているエネルギー貯蔵システムは大まかに、力学、電気、化学、生物、熱、核に分類できる。 エネルギー貯蔵は意図的な活動として有史以前から存在していたが、エネルギーを貯蔵していると明確に意識して行われていたわけではない。力学的エネルギーを意図的に貯蔵した例としては、丸太や石を古代の砦の防御に使った方法がある。丸太や石を丘や城壁の上など高いところに集め、そうして蓄えた位置エネルギーを敵方が範囲内に入ってきたときの攻撃に使った。 古くから、高い位置にある貯水池などに水を蓄え必要に応じてその位置エネルギーを運動エネルギーに変換して水車を回すことは行われた。 19世紀末にガソリンやケロシン、天然ガスなどの精製化学燃料や電気の使用が広く普及したことで、エネルギー貯蔵が経済発展の重要なファクターとなった。だが[[電気]]に関してはそれまでの木や石炭などによるエネルギー貯蔵とは異なり、[[発電]]したものを即座に使うという使い方だった<ref name="Read_Smart_Grid" />。電気を貯蔵する手段としては、まず[[電池]]という電気化学装置が開発された。しかし、容量が小さくコストが高いため、発電システムでの利用は今まで限定的だった。同様の問題の似たような解決策としては[[コンデンサ]]がある。1980年代、[[空気調和|空調]]への電力需要増を満たすため、一部の製造業者は慎重に[[熱エネルギー貯蔵]] (TES) を研究した<ref>[http://www.calmac.com/whatsnew/a6maccracken1.pdf Thermal Energy Storage Myths]</ref>。今日ではごく少数の企業がTESの製造を行っている。 [[燃料電池]]という電気化学装置は、かなり古い時期、電池とほぼ同時期に発明されがしばらくは様々な理由から開発が進まなかった。その状況が変わったのは、[[ジェミニ計画]](1961年-1966年の有人宇宙船)で軽量で発熱しない(高効率の)電力源を必要としたことが発端だった。近年では、炭化水素や水素燃料の形で貯蔵したエネルギーを高効率で電気エネルギーに変換すべく、燃料電池の開発が進んでいる。 === 光合成による太陽光エネルギーの貯蔵 === なお、[[植物]]は[[太陽光]]で[[光合成]]を行うことで[[太陽エネルギー]]を主に[[炭水化物]]などの形で化学的に蓄えている。そして植物由来の[[食品]]には太陽のエネルギーが貯蔵されている。{{Efn|[[芋]]類や[[落花生]]や、砂糖の原料となる[[てんさい]]などは地中につまり根やその周囲などに太陽光のエネルギーを蓄える。植物はまた[[種子]]([[実]])にエネルギーを蓄えることも行っており、たとえばトウモロコシやムギやイネの「実」の部分にも蓄えられている。人が「植物性食品を食べる」ということ、特に炭水化物類を食べるということは、植物がその組織内に蓄えた化学エネルギーを人体内に取り込んでいるということである。人体はそれを[[脂肪]]という形に変換したり(結果、[[肥満|太っ]]たり)、あるいは[[クエン酸回路|クエン酸回路(TCA回路)]]を使い筋肉運動や代謝などのために使っている。[[食品表示]]の「栄養成分表示」に[[炭水化物]]([[糖質]])(☓☓ キロ[[カロリー]])と示されている成分を摂るということは、植物が光合成で蓄えた太陽エネルギーを(露骨に)体内に取り込んでいる、ということである。}} 石炭や石油といった[[化石燃料]]は、基本的には大昔(太古)の植物が太陽エネルギーを化学エネルギーに変換して保存したものであり、地下に保存されることになったものである(なお、うまく地下に埋蔵されることになったそれを人類が掘り出して使ってしまうと、[[地球温暖化]]の進行が激しくなってしまう)。植物が行っていることに倣って{{Efn|生物が行っていることを観察し模倣し、人間の技術として活かすことを[[バイオミメティクス]]という。}}、人工的な光合成([[人工光合成]])を行い太陽エネルギーを貯蔵して活かす技術の研究も行われている。 現状では、エネルギー輸送や発電で使われている割合が高いエネルギー貯蔵の形式は、[[石炭]]、[[ガソリン]]、[[軽油]]、[[天然ガス]]、[[液化石油ガス]] (LPG)、[[プロパン]]、[[ブタン]]などである。なかでも輸送の際の形式としては液体の炭化水素燃料が支配的である。これらは輸送された先で、[[熱機関]]([[タービン]]などの[[内燃機関]]、[[ボイラー]]などの[[外燃機関]])を使って、熱エネルギーや運動エネルギーや電気エネルギーに変換できるが、燃焼の際に大量の[[二酸化炭素|二酸化炭素(CO<sub>2</sub>)]]を発生させる。つまり[[温室効果ガス]]が発生する。地下に埋蔵されている原料を掘り出して使うと、いずれにせよ、地球の温暖化の進行を早めてしまうという問題があり、近年ではこれの使用量をどのように減らしてゆくかが課題となっている。自動車、列車、船舶、航空機でこうしたものを燃料として使うとやはりCO<sub>2</sub>(温室効果ガス)が発生するという問題があり、ある種のエタノールやバイオディーゼル燃料などを使い炭酸ガスの実質的な発生量を抑制する手法は、そうした問題への対応策のひとつとはなっている。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} ;注釈 <references group="注釈"/> ;出典 {{reflist}} == 関連項目 == {{Commons category|Energy storage}} *[[分散型電源]] *[[エネルギー]] *[[エネルギー密度]] *[[動力]] == 外部リンク == * [http://www.energystorage.org/ Electricity Storage Association] * [http://www.tuat.ac.jp/~naoi/homepage/kenkyunaiyousyoukai/energychozou/energychozou.html エネルギー貯蔵について] - 東京農工大学 直井研究室 * 高野富裕、[https://doi.org/10.1541/ieejpes.126.857 自然エネルギー発電と電力貯蔵技術] - 電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) 2006年 126巻 9号 p.857-860, {{doi|10.1541/ieejpes.126.857}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:えねるきいちよそう}} [[Category:エネルギー]] [[Category:エネルギー貯蔵|*]]
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