エルンスト・イジングのソースを表示

{{Infobox Scientist
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}}'''エルンスト・イジング'''（Ernst Ising({{IPA-de|ˈiːzɪŋ|lang}})、[[1900年]][[5月10日]] - [[1998年]][[5月11日]]）は、ドイツの[[物理学者]]。[[磁性体]]の[[イジング模型]]は彼の名に因む。イジング模型は、彼の博士課程の指導教官であった{{仮リンク|ヴィルヘルム・レンツ|en|Wilhelm Lenz}}によって考案され、イジングは１次元の場合についての結果を与えた<ref>{{Cite journal|author=Stephen G. Brush|title=History of Lentz-Ising Mode|journal=Rev.Mod.Phys.|year=1967|volume=39|pages=883|doi=10.1103/RevModPhys.39.883|ref=brush1968}}</ref>。1976年に退官するまで{{仮リンク|ブラッドリー大学|en|Bradley University}}の物理学教授を務めた<ref>{{Cite journal|last=Stutz, Conley|last2=Williams, Beverly|date=March 1999|title=Obituary: Ernst Ising|url=http://www.physicstoday.org/resource/1/phtoad/v52/i3/p106_s1?bypassSSO=1|journal=Physics Today|volume=52|issue=3|pages=106–108|bibcode=1999PhT....52c.106S|DOI=10.1063/1.882538}}</ref>。

== 生涯 ==
1900年に[[ケルン]]で生まれる。父は商人の {{de|Gustav Ising}} で母は {{de|Thekla Löwe}} である。[[ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲン|ゲッティンゲン大学]]と[[ハンブルク大学]]で[[物理学]]と[[数学]]を学んだ。1922年、{{仮リンク|ヴィルヘルム・レンツ|en|Wilhelm Lenz}}の指導の下で[[強磁性]]の研究を始めた。1924年に博士論文を提出しハンブルク大学で物理学の[[Doctor of Philosophy|Ph.D]]を取得した（この博士論文の抜粋や要約は1925年に科学ジャーナルにarticleとして発表されたため、多くの人が1925年に完全な論文を発表したと勘違いしている。以下参照<ref>{{Cite web|url=http://www.hs-augsburg.de/~harsch/germanica/Chronologie/20Jh/Ising/isi_intr.html|title=Bibliotheca Augustana|accessdate=2020-02}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.physik.tu-dresden.de/itp/members/kobe/isingconf.html|title=Ernst Ising and the Ising model|accessdate=2020-02}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.hs-augsburg.de/~harsch/anglica/Chronology/20thC/Ising/isi_fm00.html|title=Bibliotheca Augustana|accessdate=2020-02}}</ref>）。イジングの博士論文は教官のレンツにより提案された問題の特殊な場合を研究したものである。イジングは上向きと下向きの2状態のみをとる[[磁気モーメント]]が一次元の[[格子点]]上に並び、隣接する磁気モーメント同士で[[相互作用]]するような状況を考えた。[[イジング模型]]として今日知られるこの模型は、続く[[ルドルフ・パイエルス]]、[[ヘンリク・アンソニー・クラマース|ヘンリク・クラマース]]、[[グレゴリー・ワニエ]]、[[ラルス・オンサーガー]]らの仕事により、（2次元以上の系において）[[強磁性]]・[[常磁性]]間の[[相転移]]を示すことが証明された<ref name="stutz">{{Cite journal|last=Stutz|first=Conley|last2=Williams|first2=Beverly|date=March 1999|title=Ernst Ising (Obituary)|url=http://ptonline.aip.org/getpdf/servlet/GetPDFServlet?filetype=pdf&id=PHTOAD000052000003000106000001&idtype=cvips|journal=[[Physics Today]]|volume=52|issue=3|pages=106–108|publisher=American Institute of Physics|location=New York|accessdate=2009-01-09|format=[[Portable Document Format|PDF]]|bibcode=1999PhT....52c.106S|DOI=10.1063/1.882538|ISSN=0031-9228}}{{リンク切れ|date=December 2017}}</ref><ref name="kobe">{{Cite journal|last=Kobe|first=Sigismund|date=December 2000|title=Ernst Ising 1900-1998|url=http://www.sbfisica.org.br/bjp/Vol30/Num4/v30_649.pdf|journal=[[Brazilian Journal of Physics]]|volume=30|issue=4|pages=649–653|publisher=Sociedade Brasileira de Física|location=São Paulo|accessdate=2009-01-09|bibcode=2000BrJPh..30..649K|DOI=10.1590/S0103-97332000000400003|ISSN=0103-9733}}</ref>。

博士号取得後、短期間ビジネスの世界で働いた後、Salem、[[シュトラウスベルク]]、クロッセンなどで教師を務めた。1930年には経済学者のDr. Johanna Ehmerと結婚した。若手のドイツ系ユダヤ人科学者であったため、[[アドルフ・ヒトラー|ヒトラー]]が権力を握った1933年に教育と研究を禁じられた。1934年、公立の学校から追い出されたユダヤ人学生のための[[ポツダム]]近くCaputhにあったユダヤ人学校で教師をし、その後校長にもなった。Caputhはアインシュタイン家の夏の住居の近くでもあり妻とともに住んだ。1938年、Caputhの学校はナチスにより破壊され、1939年にイジングは[[ルクセンブルク]]に逃げそこで羊飼いと鉄道職員として働いた。[[ドイツ国防軍]]がルクセンブルクを占領した後は、軍隊で働くことを強制された。1947年に家族でアメリカへ移住し、[[イリノイ州]][[ピオリア (イリノイ州)|ピオリア]]のブラッドリー大学の教授となったが、再び論文などを発表することはなかった。1998年、98歳の誕生日の翌日にピオリアの自宅で亡くなった。

== 業績 ==

=== イジング模型 ===
{{see also|イジング模型}}

イジング模型は1または−1をとるスピンと呼ばれる変数の離散的に集めたもので定義される。スピン <math>S_i</math> はペアで相互作用をし、2つのスピンが同じ場合は1つの値のエネルギーを持ち、2つのスピンが異なる場合は2番目の値のエネルギーを持つ。

イジング模型のエネルギーは次のように定義される。

: <math>
E = - \sum_{ij} J_{ij} S_i S_j
\,</math>

ここで、和はスピンの各ペアを1度だけカウントしている。スピンの積は2つのスピンが同じ（整列）場合は+1であり、異なる（不整列）場合は−1になる。Jは2つの可能性の間のエネルギーの差の半分である。磁気相互作用はスピンを互いに整列させようとする。熱エネルギーが相互作用の強度よりも大きい場合、スピンはランダム化される。

それぞれの組み合わせにおいて

:: <math>J_{ij} > 0 </math> のとき、この相互作用は強磁性と呼ばれる。
:: <math>J_{ij} < 0 </math> のとき、この相互作用は反強磁性と呼ばれる。
:: <math>J_{ij} = 0 </math> のとき、このスピンは相互作用していない。

[[強磁性]]相互作用はスピンを整列させる傾向があり、[[反強磁性]]はスピンを反整列させる傾向がある。

スピンは[[グラフ理論|グラフ]]上にあると考えることができる。このグラフの各ノードに1つのスピンがあり、各エッジが2つのスピンを非ゼロのJの値で接続している。全てのJが等しい場合、Jの単位でエネルギーを測定すると都合がよい。模型はグラフとJの符号により完全に明示される。

反強磁性1次元イジング模型は次のエネルギー関数を持つ。

: <math>
E = \sum_{i} S_{i} S_{i+1}
\,</math>

ここでiは全ての整数で実行される。これにより最近接の各ペアが接続される。

1924年の博士論文において、このモデルの1次元の場合を解決した。1次元では解から[[相転移]]は認められない。この結果に基づき、イジングは自身の模型はどの次元でも相転移を示さないという誤った結論を出した。

科学文献においてこの模型が達成した重要性をイジングが知ったのは博士論文から25年後の1949年であった。今日、毎年この模型を使った約800の論文が発表されており、ニューラルネットワーク、タンパク質フォールディング、生体膜、社会的行動などの多様な分野の問題を対処している<ref name="stutz">{{Cite journal|last=Stutz|first=Conley|last2=Williams|first2=Beverly|date=March 1999|title=Ernst Ising (Obituary)|url=http://ptonline.aip.org/getpdf/servlet/GetPDFServlet?filetype=pdf&id=PHTOAD000052000003000106000001&idtype=cvips|journal=[[Physics Today]]|volume=52|issue=3|pages=106–108|publisher=American Institute of Physics|location=New York|accessdate=2009-01-09|format=[[Portable Document Format|PDF]]|bibcode=1999PhT....52c.106S|DOI=10.1063/1.882538|ISSN=0031-9228}}{{リンク切れ|date=December 2017}}</ref><ref name="sandia">{{Cite web|url=http://www.sandia.gov/LabNews/LN04-21-00/sorin_story.html|title=Three-dimensional proof for Ising model impossible, Sandia researcher claims to have shown|publisher=Lab News, Sandia National Laboratories|first=Neil|author=Singer|accessdate=2008-02-27}}</ref>。

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 外部リンク ==

* [https://arxiv.org/pdf/1706.01764.pdf The Fate of Ernst Ising and the Fate of his Model]
* [http://www.hs-augsburg.de/~harsch/anglica/Chronology/20thC/Ising/isi_fm00.html Ernst Ising's 1924 PhD thesis] (English translation)
* [https://web.archive.org/web/20160301212619/http://www.bradley.edu/academic/departments/physics/why/ising.dot Article from Bradley University about Ising]
* {{MathGenealogy}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:いしんく えるんすと}}
[[Category:ドイツの物理学者]]
[[Category:イリノイ州ピオリア出身の人物]]
[[Category:ケルン出身の人物]]
[[Category:ハンブルク大学出身の人物]]
[[Category:ゲッティンゲン大学出身の人物]]
[[Category:ドイツユダヤ系アメリカ人]]
[[Category:ユダヤ系ドイツ人]]
[[Category:1998年没]]
[[Category:1900年生]]