オーバーラインのソースを表示

{{記号文字|&#8254;}}
'''オーバーライン''' ({{lang-en|overline}}) は、'''上線'''（じょうせん<ref name="EDRDG"/>）とも呼ばれ、文字や文字列の上に強調のために引く線のことである。また、[[空白文字]]に対しそれを行った[[約物]]のことでもある。

[[数学]]などでいくつかの用法を持つ記号であり、文脈の中では'''バー'''（{{lang-en-short|bar}}）などと呼ばれる。

== 用法 ==
類似した記号として、[[長母音]]表記などに用いられる'''[[マクロン]]'''があるので、そちらも参照のこと。

=== 傍線 ===
{{seealso|傍線}}
[[縦書き]]の[[日本語]]文章においては強調のために文字の右側に線を引くことがあるが、オーバーラインは横書きの場合の右線に相当する<ref name="EPUB"/>。これは、[[横書き]]になるよう文字の組み方を90度回転させると線は文字の上に来るためである<ref name="日外"/>。（一方で欧文では強調は下線を用いることが標準的であり、縦書きにするとこれは左線となる。）

=== 数学 ===
[[画像:Probability complementary venn.svg|thumb|集合 {{mvar|A}} とその補集合 {{math|{{overline|''A''}}}} を示す[[ベン図]]]]
[[数学]]一般において、集合の[[閉包]]を（特に[[閉包 (位相空間論)|位相の意味で]]）表すために用いられる。すなわち、{{math|{{overline|''A''}}}} で集合 {{mvar|A}} の閉包を表す。

また、他の意味と紛らわしくないとき、[[補集合]]を表すためにも用いる。

[[統計学]]においては、[[算術平均|平均値]]を表すためにこの記号を用いる。例えばデータ
:<math>x_1,x_2,\cdots,x_n</math>
について、その平均値を
:<math>\bar{x} = \frac{1}{n} \textstyle\sum\limits_{k=1}^n x_k = \dfrac{x_1 + x_2 + \cdots + x_n}{n}</math>
で表し<ref name="教養統計学"/>、「エックス・バー」と呼ぶ<ref name="小野" />。

[[画像:Adcinak.svg|thumb|線分AB]]
[[幾何学]]においては、点Aと点Bをつなぐ[[線分]]を {{overline|AB}} と表すことがある。

[[循環小数]]において循環部分を明示するために使われることもある。例えば
:<math>\frac{269}{111} = 2.423423423423 \cdots = 2.\overline{423}</math>
この他にも、上点や下線を用いる表示法もある。[[循環小数]]の項目を参照。

[[複素数]]に対しては、その[[複素共役]]を示す。つまり、複素数 {{math2|''z'' {{=}} ''a'' + ''ib''}}（{{math2|''a'', ''b''}} は[[実数]]、{{mvar|i}} は[[虚数単位]]）に対して、共役複素数は
:<math>\overline{z} = a - ib</math>
である。

=== 物理学 ===
[[結晶学]]においては[[ミラー指数]]の負の成分を示すために用いられる。

== コンピューターによる取り扱い ==
=== 文字コード ===
7ビットの文字コードである[[ISO/IEC 646]]の共通部分にはオーバーラインの文字は定義されていないが、\x7Eに例示された文字として当初はオーバーラインの文字が示されていた。

各国語版では共通部分以外には自由の文字を定義することが可能であったことから、イギリス版のISO/IEC 646もオーバーラインになっていた。日本でも一般にチルダが使用されることが稀だったことと、オーバーラインに需要があったことなどから、[[JIS X 0201]]には\x7Eにオーバーラインを定義した。

[[JIS X 0208]]では、1-17にオーバーラインが定義されている。

=== マークアップ言語における表記法 ===
[[HyperText Markup Language|HTML]]では、[[スタイルシート]]で表現が可能である。
<syntaxhighlight lang="html">
<span style="text-decoration: overline">文章</span>
</syntaxhighlight>
;表示
:<span style="text-decoration: overline">文章</span>

[[LaTeX|{{LaTeX}}]] では、<code>\overline</code> [[コマンド (コンピュータ)|コマンド]]を使う方法と <code>\bar</code> コマンドを使う方法があり、表示に差がある<ref name="latex-cmd"/>。<code>\overline</code> は内容の長さに合わせて伸び縮みする一方 <code>\bar</code>の長さは短く一定であるため、線分や循環小数を示すためには <code>\overline</code>、論理否定や複素共役を示すためには <code>\bar</code> が適する。
<syntaxhighlight lang="latex">
\overline{A} \quad \overline{A}\overline{B} \quad \overline{AB}
\bar{A} \quad \bar{A}\bar{B} \quad \bar{AB}
</syntaxhighlight>
;表示
:<math>\overline{A} \quad \overline{A}\overline{B} \quad \overline{AB}</math>
:<math>\bar{A} \quad \bar{A}\bar{B} \quad \bar{AB}</math>
なお <code>\quad</code> は空白を挿入するコマンド。

=== 全角オーバーライン問題 ===
JIS X 0201とJIS X 0208との両方にオーバーラインがあり、両方を含んだ[[Shift_JIS]]もあるので、Unicodeには、通常のオーバーラインのほかにいわゆる全角用オーバーラインも必要である。しかし、当初はU+FFE3に字形の似た記号である全角の[[マクロン]]しか定義されていなかった。この問題を解消するため、現在では、U+FFE3の文字の定義は、全角マクロンと全角オーバーラインを[[包摂 (文字コード)|包摂]]している。したがって、U+FFE3を全角文字以外の文字に変換する場合には、マクロンにするのか、オーバーラインにするのかに注意する必要がある。

=== 符号位置 ===
{| class="wikitable" style="text-align:center;"
!記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称
{{CharCode|8254|203E|1-1-17|オーバーライン、論理否定記号<br/>OVERLINE|oline}}
{{CharCode|65507|FFE3|1-1-17 包摂|オーバーライン、論理否定記号<br/>FULLWIDTH MACRON}}
{{CharCode|773|0305|-|COMBINING OVERLINE}}
|}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references>
<ref name="EDRDG">{{Citation | 和書
|title=上線
|work={{仮リンク|JMdict|en|JMdict}}
|publisher=[http://www.edrdg.org/ Electronic Dictionary Research and Development Group(EDRDG)]
|url=http://ejje.weblio.jp/content/%E4%B8%8A%E7%B7%9A
|accessdate=2012-06-29
}}</ref>

<ref name="EPUB">{{Citation | 和書
|title=EPUB3.0日本語組版要望表
|author=EPUBビューア検証チーム
|url=http://www.ebpaj.jp/images/youbou.pdf
|date=2012-06-21
|publisher=[[日本電子書籍出版社協会]]
}}</ref>

<ref name="日外">{{Citation | 和書
|title=オーバーライン
|work=コンピューター用語辞典
|publisher=日外アソシエーツ
|accessdate=2012-06-29
|url=http://ejje.weblio.jp/content/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3
}}</ref>

<ref name="教養統計学">{{Citation | 和書
|title=教養統計学
|author=鈴木義一郎
|publisher=共立出版
|isbn=4-320-01310-7
|page=28
|date=1982
}}</ref>

<ref name="小野">{{Citation | 和書
|author=小野 滋
|title=読めば必ずわかる分散分析の基礎
|edition=2
|date=2003-12-5
|url=http://elsur.jpn.org/resource/anova.pdf
}}</ref>

<ref name="latex-cmd">{{Citation | 和書
|chapter=上線・下線
|title=LaTeXコマンド集
|author=Kojo Sugita
|date=2009
|chapter-url=http://www.latex-cmd.com/equation/line.html
}}</ref>

</references>

== 関連項目 ==
* [[マクロン]]（[[長母音]]表記に使用）
* [[アンダースコア]]

{{Punctuation_marks}}
{{DEFAULTSORT:おはらいん}}
[[Category:約物]]
[[Category:タイポグラフィ]]
[[Category:数学記号]]