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カップリング反応
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'''カップリング反応'''(カップリングはんのう、{{lang-en-short|coupling reaction}})とは、2つの[[化学物質]]を選択的に[[化学結合|結合]]させる反応のこと。特に、それぞれの物質が比較的大きな構造(ユニット)を持っているときに用いられることが多い。[[天然物化学|天然物]]の[[有機合成化学#全合成|全合成]]などで多用される。 == 概要 == 結合する2つのユニットの構造が等しい場合は'''ホモカップリング'''、異なる場合は'''クロス(交差)カップリング'''(または'''ヘテロカップリング''')と言う。一般式としては以下のように表される: *ホモカップリング: <chem>R-X\ + R-X -> R-R</chem> *クロスカップリング: <chem>R-X\ + R'-Y -> R-R'</chem> カップリング反応として様々な方法が開発されている<ref name="Nakano">{{Cite journal |和書|author=中野幸司|title=講座:世の中を変えた反応・材料・理論 クロスカップリング反応 —その発見と展開—|date=2019|publisher=日本化学会|journal=化学と教育|volume=67|issue=4|pages=180-183|doi=10.20665/kakyoshi.67.4_180}} </ref>。近年は特に触媒量の[[遷移金属]][[化合物]]の存在下で、[[有機金属化学|有機金属化合物]]あるいは[[不飽和炭化水素]]化合物が[[有機ハロゲン化合物]]と縮合するカップリング反応がいろいろ知られてきている<ref name="Nakano"/>。従来の有機反応では実現できなかった、二重結合や三重結合を有する炭素同士の結合が実現できた点が画期的である、と評されている<ref name="Nakano"/>。信頼性が高い反応として、天然物合成などで多用されるようになった。また産業分野でも医薬品や農薬、液晶材料など幅広い分野で利用されている<ref name="Nakano"/>。 2010年の[[ノーベル化学賞]]はこのカップリング反応のうち、[[ヘック反応]]・[[根岸カップリング]]・[[鈴木・宮浦カップリング]]の合成方法を確立した3者に授与された<ref name="Nakano"/>。 == 銅を用いたカップリング == [[ウルマン反応]]を代表とする、芳香族[[ハロゲン]]化物のハロゲン化[[銅]]を用いた'''ホモカップリング'''反応。[[触媒]]反応ではなく、銅は試薬量が必要。 === ウルマン反応 === {{main|ウルマン反応}} 銅を用いた芳香族ハロゲン化物を[[ビフェニル]][[誘導体]]とする'''ホモカップリング'''反応。系中でアリールハロゲン化銅が生成する。 :<chem>2 Ar-X\ + Cu2O</chem>(触媒)<chem> -> Ar-Ar</chem> === グレーサー反応 === {{main|グレーサー反応}} [[当量]]または触媒量の銅化合物を用いた末端[[アルキン]]([[アセチレン]])の[[酸化]]的'''ホモカップリング'''反応。 : <chem>2 R-C{\equiv}C-H\ + CuCl2</chem>(触媒)<chem> +\ O2 -> R-C{\equiv}C-C{\equiv}C-R</chem> == パラジウムを用いたカップリング == ハロゲン化[[アリル]]またはハロゲン化[[アリール]]等が π-[[パラジウム]][[錯体]]を経由して触媒サイクルに導入されるクロスカップリング反応。収率は悪いが[[ニッケル]]触媒でも同様な反応が進行する。 [[画像:説明 パラジウムクロスカップリング反応.png|パラジウムクロスカップリング反応]] 溝呂木・ヘック反応が元となり、ビニル-パラジウム錯体から、アリール-パラジウム錯体へと反応種が展開した。また金属-パラジウム間のカップリング基の交換反応の応用で、カップリングの対象となる[[官能基]]が広がった。1990年代後半からパラジウム触媒の[[配位子]]に関して研究が進み、かさ高く[[電子密度]]の高い配位子を用いることで反応性がはるかに向上することが明らかにされた。塩化アリールなど、従来は反応性が低く用いることができないとされていた基質も、近年では十分な効率でカップリング反応が行えるようになってきている。 === 溝呂木・ヘック反応 === {{main|ヘック反応}} パラジウム触媒の存在下で有機ハロゲン化物と末端アルケンから内部アルケンや[[スチレン]]誘導体を生成する反応<ref name="Nakano"/>。日本では溝呂木・ヘック反応と呼ばれる場合もある。 : <chem>{Ar-X} + {H2C=CHR} + Pd</chem>触媒<chem> -> Ar-HC=CHR</chem> === 根岸カップリング === {{main|根岸カップリング}} 有機[[亜鉛]]を用いるカップリング<ref name="Nakano"/>。 : <chem>{Ar-X} + {R-Zn-X} + Pd</chem>触媒 <chem> -> Ar-R</chem> === 右田・小杉・スティルカップリング === {{main|右田・小杉・スティルカップリング}} 有機[[スズ]]を用いる<ref name="Nakano"/>。 : <chem>{Ar-X} + {R-Sn-R'3} + Pd</chem>触媒 <chem> -> Ar-R</chem> === 薗頭カップリング === {{main|薗頭カップリング}} 銅も用いて[[アルキン]]との結合を作る反応<ref name="Nakano"/>。 : <chem>{Ar-X} + {R-C{\equiv}C-H} + Pd</chem>触媒 <chem> +\ </chem>塩基 <chem> -> Ar-C{\equiv}C-R</chem> === 檜山カップリング === {{main|檜山カップリング}} 基質として[[有機ケイ素化合物]]を用いるカップリング反応<ref name="Nakano"/>。[[フッ化物]]イオンによりケイ素化合物を活性化する必要がある<ref name="Nakano"/>。フッ化物イオンを必要としない、檜山・デンマークカップリングもある。 : <chem>{Ar-X} + {R-SiR'3} + {F^-} + Pd</chem>触媒 <chem> -> Ar-R</chem> === 鈴木・宮浦カップリング === {{main|鈴木・宮浦カップリング}} 触媒に有機[[パラジウム]]化合物(無機パラジウムでも反応は進行する)、基質に有機[[ホウ素]]化合物を用いる<ref name="Nakano"/>。 *原料が安定で扱いやすい *反応条件が穏和で操作が簡便 *有害な廃棄物をほとんど出さない(生成物はカップリング生成物と通常[[ホウ酸]]) など優れた特長を併せ持ち、実験室レベルから工業規模での合成まで広く応用されている、極めて重要な反応となっている。 : <chem>{Ar-X} + {R-B(OH)2} + Pd</chem>触媒 '''+''' 塩基 <chem> -> Ar-R</chem> === バックワルド・ハートウィッグアミノ化反応 === {{main|バックワルド・ハートウィッグアミノ化}} ハロゲン化アリールと[[アミン]]を反応させ、アリールアミンを作る反応<ref name="Nakano"/>。形式としては銅触媒を用いる[[ウルマン反応]]と同じ反応となる。 : <chem>{Ar-X} + {R-NH2} + Pd</chem>触媒 '''+''' 塩基 <chem> -> Ar-NHR</chem> == ニッケルを用いたカップリング == ニッケルもパラジウムと同様な触媒サイクルの反応機構でカップリング反応を行なう。 === 熊田・玉尾・コリューカップリング === {{main|熊田・玉尾・コリューカップリング}} 有機金属種として有機[[マグネシウム]]化合物([[グリニャール試薬]])を用い、触媒にはニッケルを用いる<ref name="Nakano"/>。同様の反応はパラジウム触媒でも進行する。最初に発見されたクロスカップリング反応であるとされる<ref name="Nakano"/>。 : <chem>{Ar-X} + {R-Mg-X} + Ni</chem>触媒 <chem> -> Ar-R</chem> == ジアゾカップリング == {{main|ジアゾニウム化合物}} [[アゾ化合物]]を用いるカップリング反応。この反応は[[求電子置換反応]]であり、触媒反応ではない。 : <chem>{Ar-N2^+} + Ar'H -> Ar-N=N-Ar'</chem> ==出典== {{Reflist}} ==関連文献== *{{Cite journal |和書|author =辻二郎|authorlink =辻二郎|title =日進月歩のパラジウム, ニツケル触媒の化学 -増大する有機合成化学へのインパクト-|date =2001|publisher =有機合成化学協会|journal =有機合成化学協会誌|volume =59|issue =6|doi=10.5059/yukigoseikyokaishi.59.607|pages =607-616|ref = }} == 関連項目 == * [[ロサルタン]] - クロスカップリング反応技術を利用した高血圧治療薬 == 外部リンク == * [http://nu-lotan.jp/ ニューロタン®] - クロスカップリング反応技術を利用した高血圧治療薬 {{Normdaten}} {{chem-stub}} {{DEFAULTSORT:かつふりんくはんのう}} [[Category:炭素-炭素結合形成反応]] [[Category:有機金属化学]]
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