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[[数学]]における'''カントール空間'''(カントールくうかん、{{lang-en-short|''Cantor space''}})は、[[ゲオルク・カントール]]に名を因む、古典的な[[カントール集合]]の[[位相空間論]]的抽象化である。すなわち、カントール集合に[[同相]]な[[位相空間]]をカントール空間と呼ぶ。[[集合論]]においては、位相空間 {{math|2{{exp|''ω''}}}}({{mvar|ω}} は最小の無限順序数)を「一意な」 ("the") カントール空間と呼ぶ。注意点として、ふつうは {{math|2{{exp|''ω''}}}} を単にカントール集合と呼び、カントール空間という語はより一般の {{mvar|D{{exp|S}}}} の構成のために用いる(ここで {{mvar|D}} は有限集合、{{mvar|S}} は大抵有限か可算だが非可算にもなり得る)<ref>{{citation|first=Stephen|last=Willard|title=General Topology|year=1970|publisher=Addison-Wesley Publishing|ref=harv}}. ''section 17.9c''</ref>。 == 例 == [[カントール集合]]それ自体もカントール空間であるが、カントール空間の標準的な例は{{ill2|離散二点空間|en|discrete 2-point space}} {{math|{{mset|0, 1}}}} の[[可算無限]][[直積位相空間]]である。これをふつう {{math|2{{exp|'''N'''}}}} とか {{math|2{{exp|''ω''}}}} と書く(ここでの {{math|2}} は二点集合 {{math|{{mset|0, 1}}}} に離散位相を入れたものを表している)。{{math|2{{exp|''ω''}}}} の各点は無限二値列({{math|0}} か {{math|1}} のどちらかの値しかとらない列)である。そのような列 {{math|''a''{{ind|0}}, ''a''{{ind|1}}, ''a''{{ind|2}}, …}} を実数 <math display="block">\sum_{n=0}^\infty \frac{2 a_n}{3^{n+1}}</math> へ写す写像は {{math|2{{exp|''ω''}}}} から[[カントール集合]]への同相写像を与えるから、それにより {{math|2{{exp|''ω''}}}} が実際にカントール空間となることが示せたことになる。 カントール空間は[[実解析]]においてたくさん見つけられる。例えば、任意の[[完全集合|完全]][[完備距離空間]]の部分空間としてカントール空間は存在する。(これを見るために、そのような空間において任意の空でない完全集合が交わりを持たない二つの空でない完全集合で任意に小さい直径を持つものを含むこと、したがって通常の[[カントール集合]]の構成の模倣ができることに注意する。)また任意の非可算かつ[[可分空間|可分]]な完備距離化可能空間(実解析において通常扱う種類の空間のほとんどがそう)が、その部分空間としてカントール空間を含む。 == 特徴付け == カントール空間の位相的特徴付けは[[ライツェン・エヒベルトゥス・ヤン・ブラウワー|ブラウウェル]]によって与えられた:<ref>{{citation | first= L. E. J. | last= Brouwer | authorlink= ライツェン・エヒベルトゥス・ヤン・ブラウワー | title= On the structure of perfect sets of points | journal= Proc. Koninklijke Akademie van Wetenschappen | volume= 12 | year= 1910 | pages=785–794 | url= http://www.dwc.knaw.nl/DL/publications/PU00013496.pdf | ref= harv}}.</ref> ; 定理 (L. Brouwer) : 任意の二つの空でない[[コンパクト空間|コンパクト]][[ハウスドルフ空間]]は、それが[[孤立点]]を持たず、かつ[[開かつ閉集合]]からなる可算[[基底 (位相空間論)|基底]]を持つならば、それらは互いに同相である。 開かつ閉集合からなる基底を持つという位相的性質は[[零次元]]と呼ばれる。ブラウウェルの定理は以下のように言い換えられる: ; 命題 : 位相空間がカントール空間となるための必要十分条件は、それが空でない[[完全集合|完全]]かつ[[コンパクト空間|コンパクト]]な[[完全不連結]][[距離化可能空間]]となることである。 この定理は([[ブール代数に対するストーン表現定理]]を通じて)任意の二つの[[カントール代数]](可算かつアトムを持たないブール代数)は同型であるという事実に同値である。 == 性質 == ブラウウェルの定理から期待できる通り、カントール空間は様々な形で現れるが、カントール空間の多くの性質は {{math|2{{exp|''ω''}}}} を用いて確立することができる。これは、直積空間としての構成が解析学によく馴染むことによる。 カントール空間は以下のような性質を持つ: * 任意のカントール空間の[[濃度 (数学)|濃度]]は、[[連続体濃度]] {{math|2{{exp|ℵ{{sub|0}}}}}} である。 * 二つのカントール空間の直積空間はふたたびカントールである(任意有限個あるいは可算個でも同じことが言える)。[[カントール函数]]と併せて、この事実を[[空間充填曲線]]の構成に用いることができる。 * ハウスドルフ位相空間がコンパクト距離化可能となるための必要十分条件は、それがカントール空間の連続像となることである<ref>{{citation | first= N.L. | last= Carothers | title= A Short Course on Banach Space Theory | series= London Mathematical Society Student Texts | volume= 64 | year= 2005 | publisher= Cambridge University Press}} ''Chapter 12''</ref>{{sfn|Willard|1970|loc= section 30.7}}。 {{math|''C''(''X'')}} で位相空間 {{mvar|X}} 上の実数値有界連続函数全体の成す空間を表すものとする。コンパクト距離空間 {{mvar|K}} およびカントール集合 {{math|Δ}} に対して、カントール集合は以下のような性質を持つ: * {{math|''C''(''K'')}} は {{math|''C''(Δ)}} の閉部分空間に[[等長写像|等長]]である{{sfn|Carothers|2005}}。 一般に、この等長写像は一意ではない。したがってまた、圏論的な意味での[[普遍性]]を示すものでもない。 * カントール空間の[[自己同相]]群は[[単純群|単純]]である<ref>{{citation | first= R.D. | last= Anderson | title= The Algebraic Simplicity of Certain Groups of Homeomorphisms | journal= American Journal of Mathematics |volume= 80 | year= 1958 | pages=955-963}}</ref> == 関連項目 == * [[空間 (数学)]] * [[カントール集合]] * {{ill2|カントール立方体|en|Cantor cube}} == 参考文献 == <references/> *{{cite book | author=Kechris, A. | title= Classical Descriptive Set Theory | publisher=Springer | year=1995 | isbn = 0-387-94374-9| edition=[[Graduate Texts in Mathematics]] 156}} == 外部リンク == * {{PlanetMath|urlname=CantorSpace|title=Cantor space}} * {{nlab|urlname=Cantor+space|title=Cantor space}} * {{ProofWiki|urlname=Definition:Cantor_Space|title=Definition:Cantor Space}} {{DEFAULTSORT:かんとーるくうかん}} [[Category:位相空間]] [[Category:記述集合論]] [[Category:ゲオルク・カントール]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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