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'''ガルバニ電池'''(ガルバニでんち、{{lang-en-short|galvanic cell}})とは、異種の[[電気伝導体]]の[[相]]が直列につながっていて、そのうち少なくとも1つが[[イオン (化学)|イオン]]伝導体の相であり、かつ両端の相が同じ化学的組成の[[電子]]伝導体である[[電気化学]]的な[[システム|系]]である<ref>玉虫伶太『電気化学(第2版)』, [[東京化学同人]], 2頁 (1991)</ref>。ガルバニ電池のうち、一般的に、[[化学エネルギー]]から[[電気エネルギー]]への変換を目的とするものは[[電池#化学電池|化学電池]]または[[電池]]と呼ばれ、電気エネルギーから化学エネルギーへの変換を目的とするものは[[電気分解|電解槽]]と呼ばれる。(注:化学電池についてのみを「ガルバニ電池」とする流儀もある<ref>Peter Atkins, Julio de Paula, 千原 秀昭(訳), 稲葉 章(訳)『アトキンス 物理化学要論 (第4版)』, 東京化学同人, 189頁 (2007)</ref>。) == 歴史 == イタリアの医師、解剖学者[[ルイージ・ガルヴァーニ]]は、解剖したカエルの足の筋肉に電気を通じることで、筋肉が活動することを発見している([[ガルヴァーニ電気]])。実験では[[ライデン瓶]]に蓄積した静電気を用いた。これに先立ち、生きているカエルの足に電気を通じた場合に痙攣が起きることは確認していた。一連の実験をくり返すうちに、1780年、電気を通じない場合にも、カエルの筋肉が収縮する場合があることを見いだす。絶縁体であるガラスを用いた実験などを工夫し、さまざまな説を検討した結果、電気の源を筋肉自体にあるとした。ガルヴァーニは[[ベンジャミン・フランクリン]]による1752年の実験結果を知っていたため、雷雨によってカエルの筋肉が動くかどうかを1780年代の後半に実験し、雷雨の影響も確認している。フランクリンの理論は電気を流体と考えており、ガルヴァーニは神経がこの電気流体を伝えると考えた。ガルヴァーニの理論は、ボローニャにおいて1791年に発表された論文 ''De viribus electricitatis in motu musculari :Commentarius'' において体系化された。一方、ガルヴァーニの実験を追試した[[アレッサンドロ・ボルタ]]は、電気が筋肉や神経ではなく、実験に用いた2種類の金属の接触に由来すると考えた<ref>Alexander Volta, “On the Electricity excited by the mere Contact of conducting Substances of different kinds”, ''[[フィロソフィカル・トランザクションズ|Phil. Trans. Royal Soc.]]'', vol.90, pp.403–431(1800)</ref>。ガルヴァーニとボルタは同時代人であり、互いの説のどちらが正しいのか、科学者の間で当時から論争となった。結局、ボルタの説が正しいことが分かり、ボルタによる最初のガルバニ電池である[[ボルタ電池]]の発明にいたっている。 == 概要 == [[ファイル:Galvanic cell-ja.png|サムネイル|300px|ガルバニ電池の例([[ダニエル電池]])<br><nowiki>Cu | Zn | ZnSO</nowiki><sub>4</sub><nowiki>(aq) || CuSO</nowiki><sub>4</sub><nowiki>(aq) | Cu</nowiki>]] [[電池図式]]という方法で表すと、例えば、 #<math>\rm{M_1 \mid M_2 \mid S \mid M_3 \mid M_1}</math> #<math>\rm{M_1 \mid M_2 \mid S \mid M_1}</math> #<math>\rm{M_1 \mid M_2 \mid S_1 \mid S_2 \mid M_3 \mid M_1}</math> #<math>\rm{M_1 \mid M_2 \mid S_1 \mid S_3 \mid S_2 \mid M_2 \mid M_1}</math> となる系はガルバニ電池である。ここで、'''M'''は電子伝導体(例えば[[金属]])の相、'''S'''はイオン伝導体(例えば[[電解質]]水溶液)の相、'''|'''は相の境界を表す。 M<sub>1</sub>のように電池図式の両端に置かれる同一組成の電子伝導体の相は'''[[端子]]'''と呼ばれる。端子は電池図式において省略されることがある。M<sub>2</sub>やM<sub>3</sub>のようにイオン伝導体と接している電子伝導体の相を'''[[電極]]'''という。(M<sub>2</sub>|SやS|M<sub>3</sub>のように、電子伝導体の相とイオン伝導体の相が接している系について'''電極系'''〈広義の電極〉または'''[[半電池]]'''〈はんでんち、half-cell〉ということがある。)2つめの例のM<sub>1</sub>のように電極が端子を兼ねる場合もある。3つめの例のS<sub>1</sub>|S<sub>2</sub>のように、異なるイオン伝導体の相が接している部分を'''液絡'''(えきらく、liquid junction)という。液絡では、電気的接続(イオン伝導)を確保しつつ溶液の混合を防ぐために、[[ガラス]]や[[セラミックス]]でできた多孔性の板や[[半透膜]]、[[イオン交換膜]]などが用いられる。また、4つめの例のように、S<sub>1</sub>とS<sub>2</sub>を直接に液絡させず、第3のイオン伝導体の相S<sub>3</sub>を介して接続することもある。このとき用いられるS<sub>3</sub>のようなイオン伝導体の相を'''[[塩橋]]'''(えんきょう、salt bridge)という。 図式の左の端子の[[電位]]に対する右の端子との電位差をガルバニ電池の電位差([[電圧]])とし、電池図式中を正電荷が左から右へ進む方向の[[電流]]を正の符号と約束する(1953年の[[国際純正および応用化学連合|IUPAC]]勧告。解説は例えば<ref>J. A. Christiansen, “Manual of Physico-Chemical Symbols and Terminology”, ''[[米国化学会誌|J. Am. Chem. Soc.]]'', vol.82, p.5517(1960)</ref>)。このとき、電子伝導体からイオン伝導体へ正電荷が移動する電極(電池図式のM|S部分)を[[アノード]]、イオン伝導体から電子伝導体へ正電荷が移動する電極(電池図式のS|M部分)を[[カソード]]という。すなわち、電池図式において、アノードは左側、カソードは右側に配置される。 == ガルバニ電池の例 == === ボルタ電池 === [[ボルタ電池]]は、[[亜鉛]]板と[[銅]]板を[[硫酸]]水溶液中に浸した電池で、電池図式では次のように表すことができる。 :<math>\mathrm{Cu \mid Zn \mid H_2SO_4(aq) \mid Cu}</math> 右側の銅電極は端子も兼ねている。(左の銅端子については、'''銅'''線を使って電池に接続することだと考えるとわかりやすい。) === ダニエル電池 === [[ダニエル電池]]は、亜鉛板を[[硫酸亜鉛]]水溶液中に、銅板を[[硫酸銅(II)|硫酸銅]]水溶液中に浸した電池で、電池図式では次のように表すことができる。 :<math>\mathrm{Cu \mid Zn \mid ZnSO_4(aq) \parallel CuSO_4(aq) \mid Cu}</math> ダニエル電池には硫酸亜鉛水溶液と硫酸銅水溶液との液絡がある。(液絡の部分が||〈二重縦線〉になっているが、これは[[液間電位]]を無視できることを示す。) == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 参考文献 == * Marco Bresadola (1998) “{{PDFlink|[https://web.archive.org/web/20160304134246/http://utenti.unife.it/marco.piccolino/historical_articles/Galvani_Life_Bresadola.pdf Medicine and science in the life of Luigi Galvani (1737–1798)]|1.3 [[メビバイト|MiB]]}}” ''Brain Research Bulletin'' (46) No.5 pp.367–380 - ボローニャ大学の研究者による論文 == 関連項目 == {{Commonscat}} * [[ボルタ電池]] * [[ダニエル電池]] * [[起電力]] * [[電極電位]] {{ガルバニ電池}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:かるはにてんち}} [[Category:電気化学]] [[Category:電池]] [[Category:腐食]] [[Category:化学のエポニム]]
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