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'''クント管''' (くんとかん, Kundt's tube)は物理学者[[アウグスト・クント]]が1866年に発表した<ref name=kundt_de/><ref name=kundt2/>、音を可視化する装置。音の波長の測定もできる。今日では[[定常波]]の教育に利用されることが多い。 ==基本原理== [[File:Kundt tube diagram.svg|thumb|400px|left|クント管の模式図。透明な管の中に軽い粒子を入れて、管と共鳴する波長の音を鳴らすと、粒子が規則的な模様となる。]] 長さ1mぐらいの透明な管を用意する。透明な管の中にコルク粉末などの粒子を入れておく。その管の片側に栓を付けて、栓の左右の位置を調整できるようにしておく。栓の反対側にスピーカーを置いて、ある波長の音を出す。栓の位置を調整すると、ガラス管がスピーカーに[[共鳴]]して、音が大きくなる。 共鳴している時、管の中に粒子が入っているので、空気の振動が目に見えるようになる。この工夫を考えたのが物理学者[[アウグスト・クント]]であり、この仕組みをクント管と呼ぶ。クント管の中の粒子は、大きな波模様が、小さな縞模様に分かれた構造となる。 粒子が作る模様の全体的な形は、管の端部が開放しているか閉塞しているかで変わってくるが、いずれの場合も波と波の頂点の間隔は、音の波長の半分となる<ref>{{Cite journal|和書|author=浜崎貢, 山口光臣, 陳麗, 小原益己, 三井好古, 小山佳一<!--氏名はリポジトリの表記を引用--> |year=2018 |title=音を可視化して音の速さと振動数・波長を測定する教材の開発 |url=https://hdl.handle.net/10232/00030424 |journal=鹿児島大学理学部紀要 |ISSN=1345-6938 |publisher=鹿児島大学 |volume=51 |pages=1-8 |hdl=10232/00030424 |naid=120006550393}}</ref>。クント管を使って音の波長<math>\lambda</math>の大きさを求めて、音源の周波数<math>f</math>を掛けると、音速<math>v</math>を求めることができる<ref>{{Cite web |author=日本女子大学物理コース |date= |url=https://mcm-www.jwu.ac.jp/~physm/buturi17/speaker/table_kundt.html |title=クントの実験 |accessdate=2022-05-29}} </ref>。 :<math>v = \lambda f \,</math> なお、管の両端では音が複雑に反射するため、単純な理論通りの模様にならないことが多い。 小さな縞模様の間隔は、音の周波数と関係なく、粉の粗さで決まる。細かい粒子ほど、縞模様が細かくなる<ref name=sato1960>{{Cite journal|和書|author=佐藤孝二, 子安勝, 中村俊一, 久保啓一, 宮原百合子 |year=1960 |title=粉末図形による模型室内音場分布の図示 |url=https://doi.org/10.20697/jasj.16.1_34 |journal=日本音響学会誌 |ISSN=0369-4232 |publisher=日本音響学会 |volume=16 |issue=1 |pages=34-42 |doi=10.20697/jasj.16.1_34 |naid=110003107460}}</ref>。 粉の細かな動きは、音波が管の表面の空気の[[境界層]]と相互作用することで生じる{{仮リンク|音響ストリーミング|en|acoustic streaming}}によるものである<ref>{{Cite book |last=Faber |first=T. E. |year=1995 |title=Fluid Dynamics for Physicists |publisher=Cambridge University Press |location=UK |isbn=0-521-42969-2 |page=287 |url=https://books.google.com/books?id=9LaWEx4XbvYC&pg=PA287}}</ref>。 実験に使用する粉体は、[[有機物]]だと管の表面に付着してしまい、[[無機物]]だと比重が大きくて動きにくい。そのため、[[上新粉]]と粒子径50ミクロンの[[ガラスビーズ]]を混ぜる方法が提案されている<ref>{{Cite journal|和書|author=森本睦子 |date=2019-09 |title=物理学実験「空気の振動と音速」における粉体の選定 |url=https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN10079809-20190930-0033 |journal=慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 |ISSN=0911-7237 |publisher=慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会 |volume=66 |pages=33-40 |naid=120006849066}}</ref>。 ==クントの実験== [[ファイル:Kundt tube.png|thumb|330px|1866年にクントが発表した「クント管」の説明図。Fig. 1-4が粉の状態で、Fig. 5-7が試験装置の例]] クントは粒子に[[ヒカゲノカズラ]]の[[胞子]]([[石松子]])を利用している。また、ガラス管を使い、栓には長期間乾燥させたコルクを使用している<ref name=kundt_de/>。 クント自身の説明によれば、音は、濡れた毛織物で装置を直接擦って発生させているため、周波数が分からない。当時、常温の空気中の音速を別の学者が別の手法で測って発表していたので、クントは上記の式を使ってまず発生させた音の周波数を求め、それから中の気体を入れ替えたり、温度や圧力を変えたりして、その条件での音速を求めている<ref name=kundt_de/>。 クントは試験に用いるガラス管のサイズは任意としながらも、長さ1m、断面直径1~1.5cmを推奨している<ref name=kundt_de/>。 クントは空気の他、二酸化炭素、照明用ガス、水素で実験しており、それぞれでの音速が空気中の0.8倍、1.6倍、3.56倍と報告している<ref name=kundt_de/>。 {{clear}} ==関連項目== * [[エルンスト・クラドニ]] - クントに先駆けて音の可視化を報告した物理学者。クントも論文中で言及している<ref name=kundt_de/>。 * [[ハインリヒ・ルーベンス]] - 粉体の代わりに炎を使ったルーベンス管を発表した。 [[File:RubensTube.png|thumb|ルーベンス管の実験の様子]] ==参考文献== {{Reflist|refs= <ref name=kundt_de>{{Cite journal | last = Kundt | first = A. | year = 1866 | title = Ueber eine neue Art Akustischer Staubfiguren und über die Anwendung derselben zur Bestimmung der Shallgeschwindigkeit in festen Körpern und Gasen | language=de | journal = Annalen der Physik | publisher = J. C. Poggendorff | location = Leipzig | volume = 127 | issue = 4 | pages =497–523 | bibcode = 1866AnP...203..497K | doi = 10.1002/andp.18662030402 | url = https://books.google.com/books?id=NXMEAAAAYAAJ&pg=RA1-PA497 |access-date=2009-06-25}}</ref> <ref name=kundt2>{{Cite magazine2 | last = Kundt | first = August | date = January–June 1868 | title = Acoustic Experiments | magazine = The London, Edinburgh, and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science | publisher = Taylor & Francis | location = UK | volume = 35 | issue = 4 | pages =41–48 | url = https://books.google.com/books?id=qlEEAAAAYAAJ&pg=PA41 | access-date = 2009-06-25}}</ref> }} ==関連文献== * Hortvet, J. (1902). A manual of elementary practical physics. Minneapolis: H.W. Wilson. [https://archive.org/details/amanualelementa00hortgoog/page/n148 Page 119+]. {{音響学}} {{DEFAULTSORT:くんとかん}} [[Category:音響学]]
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