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クンマー理論
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[[抽象代数学]]や[[数論]]で、'''クンマー理論'''(Kummer theory)は、基礎体の元の ''n'' 乗根の[[体の拡大|添加]]が関わっている、あるタイプの[[体の拡大]]を記述する理論である。クンマー理論は、元々は、1840年代に[[フェルマーの最終定理]]を[[エルンスト・クンマー]]が開拓しようとして発見した理論である。 クンマー理論の主な結果は、体の[[標数]]が ''n'' を割ってはいけないこと以外は体の性質に依存しておらず、従って、抽象代数学に属する。体 ''K'' の標数が ''n'' を割るときは、''K'' の巡回拡大の理論は[[アルティン・シュライアー理論]]と呼ばれる。 クンマー理論は、例えば、[[類体論]]や一般の[[アーベル拡大]]を理解する上で、基本的である。クンマー理論は、充分に多くの1の根が存在するときは、巡回拡大は冪根をとるという操作によって理解できるという理論である。類体論における主要な難所は、1の余剰な根をなしで済ませる(つまり、より小さな体へと「降下」する)ことである。それはクンマー理論と比べて非常に難しい。<!--- 原文の "which is something much more serious" の部分が、何と比較した上での「よりずっと難しい」なのかわからなかったので、一番それらしい「クンマー理論」を比較対象としました。--> == クンマー拡大 == '''クンマー拡大'''(Kummer extension)とは、ある与えられた整数 ''n'' > 1 に対し次の条件を満たすような体の拡大 ''L''/''K'' のことを言う。 *''K'' は、''n'' 個の異なる[[1の冪根|1の''n''乗根]](つまり、''X<sup>n</sup>''−1 の根)を含む。 *''L''/''K'' は[[周期群|exponent]] ''n'' の[[アーベル群|可換]][[ガロア群]]を持つ。 例えば、''n'' = 2 のとき、第一の条件は、''K'' の[[標数]]が 2 でないときはいつも満たされる。この場合のクンマー拡大の例は、''a'' ∈ ''K'' が平方数でないときの'''二次拡大'''(quadratic extensions) <math>L = K(\sqrt{a})</math> である。[[二次方程式]]の通常の解法により、''K'' の任意の 2 次拡大はこの形を持つ。この場合のクンマー拡大は、'''双二次拡大'''(biquadratic extensions)や、さらに一般的な'''多二次拡大'''(multiquadratic extensions)を含む。''K'' が標数 2 の場合は、そのようなクンマー拡大は存在しない。 ''n'' = 3 とすると、3つの 1 の立方根に対して[[複素数]]が必要となるので、[[有理数]]体 '''Q''' の次数 3のクンマー拡大は存在しない。''a'' を有理数体において立方数でない数とし、''L'' を '''Q''' 上の '''X'''<sup>3</sup> − ''a'' の分解体とすると、''L'' は 1 の 3つの立方根をもつ部分体 ''K'' を含んでいる。なぜなら α と β をその3次多項式の根としたとき、(α/β)<sup>3</sup> =1 であり、この3次多項式は[[分離多項式]]であるためである。従って、''L''/''K'' はクンマー拡大である。 より一般的に、''K'' が ''n'' 個の異なる 1 の ''n'' 乗根を含む(このことは ''K'' の標数が ''n'' を割らないことを意味する)とき、''K'' に添加すると、''K'' の任意の元 ''a'' の ''n'' 乗根は(''n'' を割るようなある ''m'' が存在し、次数 ''m'' の)クンマー拡大をなす。ここでできる体は多項式 ''X''<sup>''n''</sup> − ''a'' の[[分解体]]であるため、クンマー拡大は必然的に[[ガロア拡大]]となり、ガロア群は位数 ''m'' の[[巡回群]]となる。<math>\sqrt[n]{a}</math> の係数となる 1 の冪根を通してガロア作用を追いかけることは容易である。 == クンマー理論 == '''クンマー理論'''(Kummer theory)は逆の命題をもたらす。''K'' が n 個の異なる 1 の n 乗根を持っているとすると、exponent が ''n'' を割るような ''K'' の任意の[[アーベル拡大]]は、''K'' の元の冪根をとることにより作られる。さらに、''K''<sup>×</sup> で ''K'' のゼロではない元全体のなす乗法群を表すとすると、exponent が ''n'' である ''K'' のアーベル拡大は、 :<math>K^{\times}/(K^{\times})^n</math> の、つまり ''n'' 乗べきを[[合同式|法]]とした K<sup>×</sup> の元全体のなす群の部分群に全単射で対応する。対応関係は次のように明確に記述することができる。部分群 :<math>\Delta \subseteq K^{\times}/(K^{\times})^n</math> が与えられると、対応する体の拡大は :<math>K(\Delta^{1/n})</math> で与えられる。ここで、 :<math>\Delta^{\frac{1}{n}} = \left \{ \sqrt[n]{a}:a\in K^{\times}, a \cdot \left (K^{\times} \right )^n \in \Delta \right \}</math> とする。実際には、群 Δ の任意の[[群の生成系|生成集合]]について、それぞれの元から代表をひとつとって、その ''n'' 乗根を添加すれば十分である。 逆に、''L'' を ''K'' のクンマー拡大とすると、Δ は :<math>\Delta = K^\times \cap (L^\times)^n</math> という規則により復元される。 この場合には、同型 :<math>\Delta \cong \operatorname{Hom}_{\text{c}}(\operatorname{Gal}(L/K), \mu_n)</math> が、 :<math>a \mapsto \biggl(\sigma \mapsto \frac{\sigma(\alpha)}{\alpha}\biggr)</math> により与えられる。ここに、α は ''L'' の元 ''a'' の ''n'' 乗根である。また <math>\mu_n</math> は 1 の ''n'' 乗根がなす乗法群であり、 ''K'' に含まれる。また <math>\operatorname{Hom}_{\text{c}}(\operatorname{Gal}(L/K), \mu_n)</math> は <math>\operatorname{Gal}(L/K)</math> に[[射有限群|クルル位相]]を入れた位相群から <math>\mu_n</math> に[[離散位相]]を入れた位相群への連続群準同型全体のなす群である。 (群の演算は各点での掛け算で与えられる。) この群に離散位相を入れたものは <math>\operatorname{Gal}(L/K)</math> の[[ポントリャーギン双対]]とみなすこともできる (<math>\mu_n</math> を[[円周群]]の部分群とみなせば)。もし拡大 ''L''/''K'' が有限次拡大であれば、<math>\operatorname{Gal}(L/K)</math> は有限離散群であり、同型 :<math>\Delta \cong \operatorname{Hom}(\operatorname{Gal}(L/K), \mu_n) \cong \operatorname{Gal}(L/K),</math> が得られる。ここで、最後の同型は[[自然変換|自然]]ではない。 == 一般化 == ''G'' を[[射有限群]]、''A'' を ''G''-加群とし、π を ''A'' からそれ自身への全射準同型とする。また ''G'' は π の[[核 (代数学)|核]] ''C'' 上に自明な作用をしていて、1次コホモロジー群 H<sup>1</sup>(''G'',''A'') は自明とすると、群コホモロジーの完全系列により、''A''<sup>''G''</sup>/π(''A''<sup>''G''</sup>) と Hom(''G'',''C'') との間に同型が存在することがわかる。 クンマー理論は、''A'' が体 ''k'' の分離閉包の乗法的群であり、''G'' がガロア群であり、π が ''n'' 乗写像で、''C'' が単元の ''n'' 乗根の群である場合である、これの特別な場合である。[[アルティン・シュライアー理論]]は、正の標数 ''p'' の体 ''k'' の分離閉包の加法群で、''G'' をガロア群、π を[[フロベニウス写像]]から[[恒等写像]]を引いたもの、''C'' を位数 ''p'' の有限体とした特別な場合である。''A'' を{{仮リンク|ウィットベクトル|label=省略されたヴィットベクトル|en|truncated Witt scheme}}(truncated Witt vector)の環とすれば、exponent が ''p''<sup>''n''</sup> を割る拡大に対する[[エルンスト・ヴィット|ヴィット]]によるアルティン・シュライアー理論の一般化が得られる。 == 参照項目 == * [[二次体]] ==参考文献== * {{SpringerEOM|title=Kummer extension|urlname=Kummer_extension}} * [[Bryan John Birch|Bryan Birch]], "Cyclotomic fields and Kummer extensions", in [[J.W.S. Cassels]] and [[A. Frohlich]] (edd), ''Algebraic number theory'', [[Academic Press]], 1973. Chap.III, pp. 85–93. {{デフォルトソート:くんまありろん}} {{Normdaten}} [[Category:体論]] [[Category:代数的整数論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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