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{{出典の明記|date=2022年12月}} [[数学]]における'''グロタンディーク宇宙'''(グロタンディークうちゅう、{{lang-en-short|Grothendieck universe}}、{{lang-fr-short|Univers de Grothendieck}})は次の性質をもった[[集合]] ''U'' である{{sfn|Broubaki|1972|loc=[http://library.msri.org/books/sga/sga/4-1/4-1t_185.html Définition 1]}}: #''x'' ∈ ''U'', ''y'' ∈ ''x'' ⇒ ''y'' ∈ ''U''( ''U'' は[[推移的集合]]) #''x'', ''y'' ∈ ''U'' ⇒ {''x'', ''y''} ∈ ''U'' #''x'' ∈ ''U'' ⇒ ''x'' のベキ集合 ''P''(''x'')'' ∈ ''U'' #<math>\{x_\alpha\}_{\alpha\in I}</math>が ''U'' の元の族で ''I'' ∈ ''U'' ⇒ <math>\bigcup_{\alpha\in I} x_\alpha</math> ∈ ''U'' 宇宙のアイデアは、[[アレクサンドル・グロタンディーク]]が[[代数幾何]]において[[真のクラス]]を回避する方法として導入したことに起因する。 グロタンディーク宇宙は、すべての数学が実行可能な集合を与える(実際には、集合論のためのモデルを与える)。 == 性質 == 例として、簡単な命題を証明する。 ;命題. :もし <math>x \in U</math> かつ <math>y \subseteq x</math> ならば <math>y \in U</math>. ;証明. :<math>y \in P(x)</math> なぜなら <math>y \subseteq x</math>. <math>P(x) \in U</math> なぜなら <math>x \in U</math>, よって <math>y \in U</math>. 同様に、グロタンディーク宇宙 ''U'' が以下のようなものを含むことが容易に証明される: * ''U'' の各元のすべてのシングルトン。 * ''U'' の元によって添え字付られた ''U'' の元のすべての族のすべての積。 * ''U'' の元によって添え字付られた''U'' の元のすべての族のすべての直和。 * ''U'' の元によって添え字付られた''U'' の元のすべての族のすべての共通集合。 * ''U'' の2つの元の間のすべての関数。 * [[濃度 (数学)|濃度]]が ''U'' の元となる ''U'' のすべての部分集合。 == グロタンディーク宇宙と到達不能基数 == グロタンディーク宇宙の2つの簡単な例がある: * 空集合 * すべての[[遺伝的有限集合]] の集合 <math>V_\omega</math> 。 他の例は構成がより困難である。大まかに言うと、これはグロタンディーク宇宙が[[到達不能基数]]と同値なためである。より形式的に言えば、次の2つの公理が同値である: : (U) すべての集合 ''x'' に対して、''x'' <math>\in</math> ''U'' となるグロタンディーク宇宙 ''U'' が存在する。 : (C) すべての基数 κ に対して、κ よりも巨大な強到達不能基数 λ が存在する。 この事実を証明するために、関数 '''c'''(''U'') を以下のように定義する: :<math>\mathbf{c}(U) = \sup_{x \in U} |x|</math> ここで |''x''| は ''x'' の濃度を意味している。すると任意の宇宙 ''U'' に対して、'''c'''(''U'') は強到達不能となる:''U'' の任意の元の冪集合は ''U'' の元で、''U'' のすべての元は ''U'' の部分集合であるため、これは[[強極限基数]]である。厳密に言えば、''c''<sub>λ</sub> が ''I'' によって添え字付られた濃度の集まりとすれば、各 ''c''<sub>λ</sub> の濃度と ''I'' の濃度は '''c'''(''U'') よりも小さい。そして、'''c'''(''U'') の定義によって、''U'' の元の中に''I''および各 ''c''<sub>λ</sub> と同じ濃度の元がある。''U'' の元によって添え字付られた ''U'' の元の和集合は ''U'' の元となる、ゆえに ''c''<sub>λ</sub> の和(合併)は ''U'' の元の濃度となる。それゆえに '''c'''(''U'') よりも小さい。基礎の公理によって、それ自身を含む集合は存在しないので、'''c'''(''U'') が |''U''| と等しいことを示すことができる。(この公理を仮定しない場合の反例は[[ブルバキ]]の論文を参照。) 強到達不能基数 κ が存在するとする。集合 ''S'' は任意の列 ''s<sub>n</sub>'' <math>\in</math> ... <math>\in</math> ''s<sub>0</sub>'' <math>\in</math> ''S'' に対し |''s<sub>n</sub>''| < κ となるとき、型 κ であると呼ぶことにしよう。(''S'' 自身は空列に対応している。) すると、型 κ である集合全体の集合 ''u''(κ) は濃度 κ のグロタンディーク宇宙となる。(この証明は長くなるため、詳細は参考文献のブルバキの論文を参照。) 巨大基数の公理 (C) から宇宙の公理 (U) が導かれることを示すため集合 ''x'' を選ぶ。''x<sub>0</sub>'' = ''x'' かつすべての ''n'' に対して ''x<sub>n+1</sub>'' = <math>\bigcup</math> ''x<sub>n</sub>'' を ''x<sub>n</sub>'' の元の和集合とする。''y'' = <math>\bigcup_n</math> ''x<sub>n</sub>'' とおく。(C) によって、|y| < κ となるような強到達不能基数 κ が存在する。''u''(κ) を前項の宇宙とする。''x'' は型 κ であり、''x'' <math>\in</math>''u''(κ)。宇宙の公理 (U) から巨大基数の公理 (C) が導かれることを示すために κ を基数とする。κ は集合なのでグロタンディーク宇宙 ''U'' の元である。''U'' の濃度は κ より大きな強到達不能基数となる。 実際、任意のグロタンディーク宇宙はある κ に対し ''u''(κ) の形となる。これはグロタンディーク宇宙と強到達不能基数の間の別の同値性を与えるものである: :グロタンディーク宇宙 ''U'' に対して、|''U''| は零、<math>\aleph_0</math>、もしくは強到達不能基数のいずれかとなる。また、κ が零、<math>\aleph_0</math>、もしくは強到達不能基数ならば、グロタンディーク宇宙 u(κ) が存在する。さらに、u(|''U''|) = ''U'' かつ |''u''(κ)| = κ となる。 強到達不能基数の存在は [[公理的集合論|ZFC]] からは証明できないため、空集合と <math>V_\omega</math> 以外の宇宙の存在はどれも ZFC から証明することができない。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 参考文献 == *{{citation | first = Nicolas | last = Bourbaki | authorlink = ニコラ・ブルバキ | year = 1972 | contribution = Univers | contribution-url = http://library.msri.org/books/sga/sga/4-1/4-1t_185.html | title = Séminaire de Géométrie Algébrique du Bois Marie - 1963-64 - Théorie des topos et cohomologie étale des schémas - (SGA 4) - vol. 1 | series = Lecture Notes in Mathematics | volume = 269 | editor = [[マイケル・アルティン|Michael Artin]], [[アレクサンドル・グロタンディーク|Alexandre Grothendieck]], [[ジャン・ルイ・ヴェルディエ|Jean-Louis Verdier]] | publisher = [[Springer Science+Business Media|Springer-Verlag]] | location = Berlin; New York | language = French | pages = 185–217 | mr = 0354652 | zbl = 0234.00007 }} == 関連項目 == *[[構成可能集合]] *[[到達不能基数]] *[[宇宙 (数学)]] *[[フォン・ノイマン宇宙]] {{DEFAULTSORT:くろたんていいくうちゆう}} {{Normdaten}} [[Category:集合論的宇宙]] [[Category:圏論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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