ゲル電気泳動のソースを表示

{{Infobox chemical analysis
| name = <!-- Gel electrophoresis -->ゲル電気泳動
| image = Gel electrophoresis apparatus.JPG
| caption =<!-- Gel electrophoresis apparatus – an agarose gel is placed in this buffer-filled box and an electrical current is applied via the power supply to the rear. The negative terminal is at the far end (black wire), so DNA migrates toward the positively charged anode (red wire). -->
ゲル電気泳動装置 - この[[緩衝液]]で満たされた箱に[[アガロース]]ゲルを入れ、ゲルに[[デオキシリボ核酸|DNA]]サンプルを注入し、後方の電源から電流を流す。奥側に陰極（黒線）があり、マイナスに帯電したDNAは手前側の陽極（赤線）に向かって移動する。
| acronym = 
| classification =<!-- [[Electrophoresis]] -->[[電気泳動]]
| analytes = 
| manufacturers = 
| related = <!-- [[:en:Capillary electrophoresis|Capillary electrophoresis]]<br>[[:en:Polyacrylamide gel electrophoresis|SDS-PAGE]] <br>[[:en:Two-dimensional gel electrophoresis|Two-dimensional gel electrophoresis]]<br>[[:en:Temperature gradient gel electrophoresis|Temperature gradient gel electrophoresis]]<br /><br /> -->
[[キャピラリー電気泳動]]<br />
[[ポリアクリルアミドゲル電気泳動|SDS-PAGE (ポリアクリルアミドゲル電気泳動)]]<br />
[[二次元電気泳動]]<br />
[[変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法]]
| hyphenated = 
}}

[[File: Gel Electrophoresis.svg|right|thumb|200px|上の画像は、アガロースゲルを用いた電気泳動中に、小さなDNAフラグメントが大きなDNAフラグメントよりも遠くまで移動する様子を示している。右のグラフは、DNAフラグメントの大きさと移動距離の非線形関係を示している。]]

[[File:Gel Electrophoresis in DNA Fingerprinting.svg|right|thumb|200px|ゲル電気泳動プロセスの説明図。ゲル電気泳動は、DNAサンプルに電流を流して、サンプル間の比較に利用できる断片を作成するプロセスである。<br />1) DNAを抽出する。<br />2) DNAの単離と増幅。<br />3) ゲルウェルにDNAを加える。<br />4) ゲルに電流を流す。<br />5) DNAの大きさごとにバンドが区切られる。<br />6) DNAバンドを染色する。]]

'''ゲル電気泳動'''（ゲルでんきえいどう、{{Lang-en-short|gel electrophoresis}}）は、[[高分子]]（[[デオキシリボ核酸|DNA]]、[[リボ核酸|RNA]]、[[タンパク質]]）とそのフラグメント（断片）を、その大きさや電荷に基づいて分離および分析する方法である。[[臨床化学]]では、タンパク質を電荷または大きさで分離するために用いられ、[[生化学]]および[[分子生物学]]では、DNAおよびRNAフラグメントの混合種個体群を長さで分離したり、大きさを推定したり、タンパク質を電荷で分離するために用いられる<ref>{{cite journal |authors=Kryndushkin DSTer-Avanesyan MD, Kushnirov VV | title= Yeast [PSI+] prion aggregates are formed by small Sup35 polymers fragmented by Hsp104  |journal= Journal of Biological Chemistry |volume= 278 |issue= 49 |pages= 49636–43  |year=2003 |pmid= 14507919 |doi= 10.1074/jbc.M307996200|doi-access= free }}</ref>。

[[核酸]]分子は負に帯電しているため、[[電場]]を印加して[[アガロース]]または他の物質の[[マトリックス]]を通して移動させることで分離される。短い分子は、長い分子よりもゲルの細孔を通過しやすいため、速くそして遠くまで移動する。この現象はふるい分けと呼ばれる<ref>Sambrook J, Russel DW (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd Ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor, NY.</ref>。タンパク質の場合は、ゲルの細孔が小さすぎてふるいにかけることができないため、アガロース中の電荷によって分離される。ゲル電気泳動は、[[ナノ粒子]]の分離にも利用できる。

ゲル電気泳動は、電流による荷電粒子の移動である電気泳動において、ゲルを対流媒質またはふるい媒質として使用するものである。ゲルは、電場の印加による熱対流を抑制し、分子の通過を妨げるふるい媒体としても機能する。また、ゲルは、電気泳動後の染色を行うために、単に分離状態を維持する役割も果たす<ref name="Stryer">{{cite book|author=Berg JM, Tymoczko JL, Stryer L |title = Biochemistry|edition = 5th|publisher = WH Freeman|year = 2002|url = https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?&rid=stryer.section.438#455|isbn = 978-0-7167-4955-4}}</ref>。DNAゲル電気泳動は、通常、[[ポリメラーゼ連鎖反応]]（PCR）でDNAを増幅した後、分析目的で行われる他、[[質量分析法|質量分析]]、[[RFLP]]、PCR、[[クローニング]]、[[DNAシークエンシング]]、[[サザンブロット]]などの他の方法を使用する前の分取技術として、さらなる特性評価のために利用される。

== 物理的基盤 ==
{{Main|電気泳動}}[[Image:SDS-PAGE_Electrophoresis.png|thumb|500px|ゲル電気泳動の概要。]]
[[電気泳動]]（electrophores）とは、大きさに基づいて分子を選別するプロセスである。電場を利用して、[[アガロース]]や{{仮リンク|ポリアクリルアミド|en|Polyacrylamide}}で作られたゲルの中を、DNAなどの分子を移動させることができる。電場は、一方の端にある負の電荷と（ゲルを通して分子を押し出す）、もう一方の端にある正の電荷（ゲルを通して分子を引き出す）から構成されている。選別される分子は、ゲル材料のウェル（たて穴）内に分注する。このゲルを電気泳動室に入れ、電源に接続する。電場が印加されると、大きな分子はゲル内をゆっくりと移動し、小さな分子は速く移動する<ref>{{Cite book|title=Wilson and Walker's Principles and Techniques of Biochemistry and Molecular Biology.|publisher=Cambridge University Press|date=19 April 2018|isbn=9781316614761|editor-last=Hofmann|editor-first=Andreas|location=Great Britain|editor-last2=Clokie|editor-first2=Samuel}}</ref>。

ここで言う「[[ゲル]]（gel）」という用語は、標的分子を含み、分離するためのマトリックスを指す。異なる大きさの分子は、ゲル上に明確なバンドを形成する。ほとんどの場合、ゲルは[[架橋|架橋ポリマー]]であり、その組成および多孔性は、分析対象物の特定の重量と組成に基づいて選択される。タンパク質や小さな[[核酸]]（[[デオキシリボ核酸|DNA]]、[[リボ核酸|RNA]]、[[オリゴヌクレオチド]]）を分離する場合、ゲルは通常、さまざまな濃度の[[アクリルアミド]]と[[架橋剤]]で構成され、さまざまな大きさのポリアクリルアミドのメッシュ状ネットワークを作成する。より大きな核酸（数100[[核酸塩基|塩基]]を超える）を分離する場合に好ましいマトリックスは精製されたアガロースである。いずれの場合も、ゲルは固体でありながら多孔質のマトリックスを形成する。ポリアクリルアミドとは対照的に、アクリルアミドは[[神経毒]]であるため、中毒を避けるために適切な安全対策を講じて取り扱う必要がある。アガロースは、電荷を持たない炭水化物の長い非分岐鎖で構成されており、架橋がないため、大きな細孔を持つゲルとなり、高分子や{{仮リンク|アフィニティー電気泳動|en|Affinity electrophoresis|label=高分子複合体}}の分離が可能である<ref>{{Cite book|last=Boyer|first=Rodney F.|title=Modern Experimental Biochemistry|publisher=Pearson, 3rd edition|date=20 August 2000|isbn=978-0805331110|location=US}}</ref>。

電気泳動とは、[[起電力]]（EMF）を利用して分子をゲルマトリックス内で移動させることを指す。ゲルのウェルに分子を入れて電場をかけると、すべての種の電荷対質量比（Z）が均一である場合、分子は主にその質量によって決定されるさまざまな速度でマトリックス内を移動する。しかし、電荷がすべて均一でない場合、電気泳動手順によって生成された電場によって、分子は電荷に応じて異なる移動をすることになる。正味の正電荷を持つ種は、負に帯電した陰極に向かって移動し（[[ガルバニ電池]]ではなく{{仮リンク|電解槽|en|Electrolytic cell}}であるため）、一方、正味の負電荷を持つ種は正に帯電した陽極に向かって移動する。分子の質量は、これらの不均一に帯電した分子がマトリックス中をそれぞれの電極に向かう移動速度に影響する要因である<ref>{{cite book|title=Biochemical Techniques Theory and Practice|publisher=Waveland Press|year=1990|isbn= 978-0-88133-556-9|author1=Robyt, John F.  |author2=White, Bernard J.}}</ref>。

ゲルの隣接したウェルに複数のサンプルを注入した場合、それらは個々のレーンで平行して走行する。各レーンでは、異なる分子に応じて、元の混合物から分離された成分を1成分につき1本の個別のバンドとして示す。成分の分離が不完全な場合は、バンドが重なったり、複数の未解決の成分を示す区別できないスミア（にじみ）が生じることがある{{citation needed|date=January 2011}}。上流から同じ距離にある異なるレーンのバンドは、同じ速度でゲルを通過した分子を含んでおり、通常は、ほぼ同じ大きさであることを意味する。大きさが既知の分子の混合物を含む{{仮リンク|分子量マーカー|en|Molecular-weight size marker}}を利用することができる。このようなマーカーを未知のサンプルと平行してゲルの1レーンに走らせれば、観察されたバンドを未知のものと比較してその大きさを決定することができる。バンドが移動する距離は、分子の大きさの対数にほぼ反比例する{{citation needed|date=January 2011}}。

電気泳動技術には限界がある。ゲルに電流を流すと加熱するため、電気泳動中にゲルが溶けてしまうことがある。電気泳動は、電場によるpH変化を抑えるためにバッファー（緩衝液）中で行われる。これは、DNAやRNAの電荷がpHに依存しているために重要だが、長時間実行すると溶液の緩衝能力を使い果たすことがある。また、特に未知のタンパク質の分子量を求めようとする場合、ポリアクリルアミドゲル電気泳動（[[SDS-PAGE]]）による分子量の決定にも限界がある。特定の生物学的変数を最小化することは困難または不可能であり、電気泳動の移動に影響を与える可能性がある。そのような要因としては、[[タンパク質構造|タンパク質の構造]]、[[翻訳後修飾]]、および[[アミノ酸]]組成があげられる。たとえば、[[トロポミオシン]]は、SDS-PAGEゲル上で異常に移動する酸性タンパク質である。この原因は、酸性残基が負に帯電した[[ドデシル硫酸ナトリウム|SDS]]に反発し、質量電荷比と移動が不正確になるためである<ref>{{Cite web|url=http://www.bio-rad.com/LifeScience/pdf/Bulletin_3133.pdf|title=Molecular Weight Determination by SDS-PAGE|website=www.bio-rad.com|accessdate=2021-06-19}}</ref>。さらに、形態学的あるいはその他の理由によって、異なって調整された遺伝物質が互いに一貫して移動しない場合もある。

==ゲルの種類==

もっとも一般的に使用されるゲルの種類は、アガロースゲルとポリアクリルアミドゲルである。それぞれのゲル種は、分析対象物の種類や大きさに適している。ポリアクリルアミドゲルは、通常、タンパク質に使用され、DNAの小さなフラグメント（5～500 bp（塩基対））に対して非常に高い分解力を持っている。一方、アガロースゲルは、DNAに対する分解力は低くなるが、分離範囲が広いため通常は50～20,000 bp程度のDNAフラグメントに使用され、[[パルスフィールドゲル電気泳動]]（PFGE）では6 Mb以上の分解能が得られる<ref>{{cite book |title=Molecular Cloning - A Laboratory Manual |author1=Tom Maniatis |author2=E. F. Fritsch |author3=Joseph Sambrook |edition=3rd |volume=1 |chapter=Chapter 5, protocol 1 |page=5.2–5.3  |isbn=978-0879691363 |year=1982 }}</ref>。ポリアクリルアミドゲルでは垂直方向に走行し、アガロースゲルでは水平方向にサブマリンモード（ゲルを緩衝溶液に沈めて電気泳動する）で走行するのが一般的である。また、アガロースは熱的に硬化するのに対し、ポリアクリルアミドは化学的な重合反応で形成されるなど、キャスティング（流し込み）方法にも違いがある。

=== アガロース ===
[[File:Recombinant DNA- southern blot (1).jpg|thumb|アガロースゲル]]
[[File:Gel_electrophoresis_insert_comb.jpg|thumb|アガロースゲル電気泳動槽にゲルコームを挿入する]]

{{main|アガロースゲル電気泳動}}
アガロースゲルは、[[海藻]]から抽出した天然の[[多糖類]][[重合体|ポリマー]]から作られている。アガロースゲルは、化学的な変化ではなく物理的な変化でゲルが固まるため、他のマトリックスに比べてキャスティングや取り扱いが簡単である。また、サンプルの回収も容易である。実験終了後、得られたゲルはビニール袋に入れて冷蔵庫で保存することができる。

アガロースゲルの細孔径は均一ではないが、200 kDa以上のタンパク質の電気泳動に最適である<ref>{{Cite journal | last1 = Smisek | first1 = D. L. | last2 = Hoagland | first2 = D. A. | doi = 10.1021/ma00195a048 | title = Agarose gel electrophoresis of high molecular weight, synthetic polyelectrolytes | journal = Macromolecules | volume = 22 | issue = 5 | pages = 2270–2277 | year = 1989 | bibcode = 1989MaMol..22.2270S }}</ref>。また、アガロースゲル電気泳動は、50[[塩基対]]から数メガ塩基（数百万塩基）までの範囲のDNAフラグメントの分離にも使用でき{{Citation needed|date=January 2021}}、その最大のものには専用の装置を必要とする。長さの異なるDNAバンド間の距離は、ゲル中のアガロースのパーセンテージ（割合）に影響を受け、パーセンテージが高いほどより長時間かかり、場合によっては数日が必要になる。代わりに、高パーセンテージのアガロースゲルを[[パルスフィールド電気泳動]]（'''PFE'''）またはフィールドインバージョンゲル電気泳動（'''FIGE'''）で実行する必要がある。

『ほとんどのアガロースゲルは、0.7%（5～10 kbの大きなDNAフラグメントを良好に分離または解像する）から2%（0.2～1 kbの小さなフラグメントを良好に解像する）のアガロースを電気泳動用のバッファーに溶かして作られている。非常に小さなフラグメントを分離するためには最大3%で使用できるが、この場合は垂直ポリアクリルアミドゲルの方が適している。低いパーセンテージのゲルは非常に弱く、持ち上げようとすると壊れることがある。高いパーセンテージのゲルはしばしば脆く、均一に固まらない。1%のゲルは多くの用途で一般的である。』<ref>{{cite web|title=Agarose gel electrophoresis (basic method)|url=http://www.methodbook.net/dna/agarogel.html|work=Biological Protocols|access-date=23 August 2011}}</ref>

=== ポリアクリルアミド ===
{{main|ポリアクリルアミドゲル電気泳動}}

ポリアクリルアミドゲル電気泳動（Polyacrylamide gel electrophoresis、PAGE）は、ポリアクリルアミドゲルの均一な細孔径を利用して、大きさが5～2,000 kDaのタンパク質を分離する方法である。ゲルの細孔径は、アクリルアミドとビスアクリルアミド粉末の濃度を調整することで管理される。アクリルアミドは液体や粉末の形態では強力な神経毒であるため、この種類のゲルを作成するときは注意を要する。

{{仮リンク|マキサム-ギルバート法|en|Maxam–Gilbert sequencing|label=マキサム-ギルバート法}}や{{仮リンク|サンガー法|en|Sanger sequencing|label=サンガー法}}などの従来の[[DNAシークエンシング]]技術では、ポリアクリルアミドゲルを使用して、長さが1塩基対の異なるDNAフラグメントを分離し、その配列を読み取ることができる。現在では、ほとんどの最新のDNA分離法はアガロースゲルを使用している（特に小さなDNAフラグメントは除く）。これは現在、[[免疫学]]およびタンパク質分析の分野で最もよく用いられており、異なるタンパク質や同じタンパク質の[[アイソフォーム]]を別々のバンドに分離するためによく使われる。これらを[[ニトロセルロース]]や[[ポリフッ化ビニリデン|PVDF]]膜に転写し、[[ウェスタンブロット]]のように抗体や対応するマーカーでプローブ（探索）することができる。

一般的に分離ゲル<!-- resolving gel -->は、6%、8%、10%、12%、または15%で作成される。その分離ゲルの上にスタッキングゲル（5％）<!-- stacking gel -->を流し込み、ゲルコームを挿入するウェルを形成し、タンパク質、サンプルバッファー、およびラダーを配置するレーンを定義する）。選択されるパーセンテージは、サンプル内で識別またはプローブしたいタンパク質の大きさによって異なる。判明している分子量が小さいほど、使用するパーセンテージは高くなる。ゲルの緩衝系を変更すると、非常に小さい大きさのタンパク質をさらに分離することができる<ref>{{cite journal|last=Schägger|first=Hermann|title=Tricine–SDS-PAGE|journal=Nature Protocols|year=2006|volume=1|issue=1|pages=16–22|doi=10.1038/nprot.2006.4|pmid=17406207|s2cid=209529082}}</ref>。

=== デンプン ===

部分[[加水分解]]された[[デンプン]]は、タンパク質電気泳動用のもう一つの非毒性媒体になる。そのゲルは、アクリルアミドやアガロースよりもわずかに不透明である。非変性タンパク質を、電荷や大きさに応じて分離することができる。これらは、ナフトールブラック<!-- Napthal Black -->または{{仮リンク|アミドブラック10B|en|Amido black 10B|label=アミドブラック}}染色を用いて可視化される。一般的なデンプンゲルの濃度は5%～10%である<ref>{{Cite book |last=Gordon |first=A.H. |year=1975 |title=Electrophoresis of proteins in polyacrylamide and starch gels |publisher=American Elsevier Publishing Company, Inc |location=New York}}</ref><ref name="smithies">{{Cite journal |last=Smithies |first=O. |year=1955 |title=Zone electrophoresis in starch gels: group variations in the serum proteins of normal adults |journal=Biochem. J. |volume=61 |pages=629–641 |pmid=13276348 |issue=4 |pmc=1215845|doi=10.1042/bj0610629 }}</ref><ref>{{Cite journal |last1=Wraxall |first1=B.G.D. |last2=Culliford |first2=B.J. |year=1968 |title=A thin-layer starch gel method for enzyme typing of bloodstains |journal=J. Forensic Sci. Soc. |volume=8 |pages=81–82 |doi=10.1016/S0015-7368(68)70449-7 |pmid=5738223 |issue=2}}</ref>。


== ゲルの状態 ==

=== 変性ゲル ===
[[File: TTGE profiles representing the bifidobacterial diversity of fecal samples journal pone 0050257 g004.png|thumb|400px|健康なボランティア2名（AおよびB）に対するAMC（経口アモキシシリン-クラブラン酸）投与前後の糞便サンプルのビフィズス菌多様性を表すTTGEプロファイル]]

変性ゲル（denaturing gels）は、分析対象物の[[天然状態|天然構造]]を破壊して、線型鎖に展開する条件下で実行する。したがって、各[[高分子]]の移動度は、その鎖長と質量電荷比にのみ依存する。このように、{{仮リンク|生体分子構造|en|Biomolecular structure}}の二次、三次、四次構造が破壊され、一次構造のみが分析対象となる。

核酸は[[尿素]]を含む緩衝液で変性させることが多く、タンパク質は[[SDS-PAGE]]プロセスの一環として[[ドデシル硫酸ナトリウム]]（SDS）を使用して変性させることが多い。また、タンパク質を完全に変性させるためには、タンパク質の[[三次構造]]や[[四次構造]]を安定化させる共有[[ジスルフィド結合]]を還元する必要もあり、この方法を還元PAGEという。還元条件は通常、[[β-メルカプトエタノール]]や[[ジチオトレイトール]]の添加によって維持される。タンパク質サンプルでは、還元PAGEが最も一般的な{{仮リンク|タンパク質のゲル電気泳動|en|Gel electrophoresis of proteins|label=タンパク質電気泳動}}の形式である。

RNAの分子量を適切に推定するためには変性条件が必要である。RNAはDNAよりも多くの分子内相互作用を形成でき、その結果、[[電気泳動移動度]]が変化することがある。RNAの構造を破壊する変性剤として、尿素、[[DMSO]]、[[グリオキサール]]がもっともよく使用される。もともとRNA電気泳動の変性には毒性の強い水酸化[[メチル水銀]]がよく使われており<ref>{{cite journal|last=Buell|first=GN|author2=Wickens, MP |author3=Payvar, F |author4= Schimke, RT |title=Synthesis of full length cDNAs from four partially purified oviduct mRNAs.|journal=The Journal of Biological Chemistry|date=10 April 1978|volume=253|issue=7|pages=2471–82|pmid=632280}}</ref>、サンプルによってはこの方法が選択されることもある<ref>{{cite journal|last=Schelp|first=C|author2=Kaaden, OR|title=Enhanced full-length transcription of Sindbis virus RNA by effective denaturation with methylmercury hydroxide.|journal=Acta Virologica|date=May 1989|volume=33|issue=3|pages=297–302|pmid=2570517}}</ref>。

変性ゲル電気泳動は、DNAおよびRNAのバンドパターンに基づく方法である[[温度勾配ゲル電気泳動法]]（TGGE）<ref name="pmid12460271">{{cite journal |authors = Fromin N, Hamelin J, Tarnawski S, Roesti D, Jourdain-Miserez K, Forestier N, Teyssier-Cuvelle S, Gillet F, Aragno M, Rossi P |title = Statistical analysis of denaturing gel electrophoresis (DGE) fingerprinting patterns |journal = Environ. Microbiol. |volume = 4 |issue = 11 |pages = 634–43 |date = November 2002 |pmid = 12460271 |doi = 10.1046/j.1462-2920.2002.00358.x |url = http://doc.rero.ch/record/6047/files/Fromin_N._-_Statistical_analysis_of_denaturing_gel_20061020.pdf }}</ref>や[[変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法]]（DGGE）<ref name="pmid369706">{{cite journal |authors = Fischer SG, Lerman LS |title = Length-independent separation of DNA restriction fragments in two-dimensional gel electrophoresis |journal = Cell |volume = 16 |issue = 1 |pages = 191–200 |date = January 1979 |pmid = 369706|doi = 10.1016/0092-8674(79)90200-9 |s2cid = 9369012 }}</ref>で使用される。

=== 天然ゲル ===

[[File:Glucose-6-Phosphate Dehydrogenase activity stain.jpg|thumb|特異的な酵素結合染色： {{仮リンク|熱帯熱マラリア原虫|en|Plasmodium falciparum}}（''Plasmodium falciparum）''に感染した赤血球中の[[グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ]][[アイソザイム]]<ref>{{cite journal |authors=Hempelmann E, Wilson RJ |title= Detection of glucose-6-phosphate dehydrogenase in malarial parasites | journal = Molecular and Biochemical Parasitology | volume = 2 | issue = 3–4 | pages = 197–204 |pmid = 7012616 | doi=10.1016/0166-6851(81)90100-6 |year= 1981}}</ref>]]

天然ゲル（native gels）は、分析対象物の[[天然状態|天然構造]]が維持されるように、非変性条件で実行される。これにより、[[タンパク質フォールディング|折りたたまれた]]、あるいは組み立てられた[[タンパク質複合体|複合体]]の物理的な大きさが移動度に影響を与え、生体分子構造の4つのレベルすべてを分析することができる。生体サンプルでは、[[界面活性剤]]は[[細胞]]内の[[脂質二重層|脂質膜]]を[[溶菌|溶かす]]ために必要な範囲でのみ使用する。複合体は、ほとんどの場合、細胞内と同じように結合し、折りたたまれたままである。ただし、1つの欠点は、分子の形状や大きさが移動度にどのように影響するかを予測することが難しいため、複合体がきれいに、または予測どおりに分離しない可能性である。この問題を特定して解決することが{{仮リンク|QPNC-PAGE|en|QPNC-PAGE|label=分取電気泳動}}（QPNC-PAGE）<!-- quantitative native PAGE -->の主要な目的である。

変性ゲル法とは異なり、天然ゲル電気泳動は負担のかかる[[変性]]剤を使用しない。そのため、分離される分子（通常は[[タンパク質]]または[[核酸]]）は、[[分子量]]や固有の電荷だけでなく断面積も異なり、全体的な構造の形状に応じて異なる電気泳動力を受けることになる。タンパク質は天然状態のままなので、一般的なタンパク質染色試薬だけでなく、特異的な酵素結合染色でも可視化することができる。

天然ゲル電気泳動の応用としての具体的な実験例には、タンパク質精製時にサンプル中の酵素の存在を確認するために酵素活性を調べることがあげられる。たとえば、タンパク質アルカリホスファターゼの場合、染色液は[[トリス緩衝液]]に4-クロロ-2-2メチルベンゼンジアゾニウム塩と3-ホスホ-2-ナフトエ酸-2'-4'-ジメチルアニリンを混合したものである。この染色液は、ゲルを染色するためのキットとして市販されている。タンパク質が存在する場合、反応のメカニズムは以下の順序で行われる。まず、アルカリホスファターゼによる3-ホスホ-2-ナフトエ酸-2'-4'-ジメチルアニリンの脱リン酸化から始まる（反応には水が必要）。リン酸基が放出され、水からアルコール基に置換される。求電子試薬である4-クロロ-2-2メチルベンゼンジアゾニウム（ファストレッドTRジアゾニウム塩）がアルコール基を置換し、最終生成物である赤色アゾ染料を形成する。その名前のとおり、これは反応の最終的な可視赤色生成物である。学部でのタンパク質精製の実験では通常、結果を可視化して精製が成功したかどうかを結論づけるために、市販の精製サンプルと隣り合わせてゲルを実行する<ref>{{Cite book|title = Fundamental Approaches to Biochemistry and Biotechnology|author = Ninfa AJ, Ballou DP |publisher=Bethesda, Md: Fitzgerald Science Press|year=1998|isbn= 9781891786006}}</ref>。

[[プロテオミクス]]や{{仮リンク|メタロミクス|en|Metallomics}}では、[[天然状態|天然]]ゲル電気泳動が一般的に用いられる。けれども、ネイティブPAGEは、[[一本鎖高次構造多型]]分析のように、未知の変異について遺伝子（DNA）をスキャンするのにも使われる。

== バッファー ==
ゲル電気泳動では、電流を流すイオンを供給し、[[水素イオン指数|pH]]を比較的一定に維持するために、[[緩衝液|バッファー]]（緩衝液）を使用する。これらのバッファーには、電気を通すために必要なイオンが多く含まれている。蒸留水やベンゼンのようなものにはイオンがほとんど含まれていないので、電気泳動での使用には不向きである<ref>{{Cite book|title=fundamental laboratory approaches for biochemistry and biotechnology|last1=Ninfa|first1=Alexander J.|last2=Ballou|first2=David P.|last3=Benore|first3=Marilee|publisher=Wiley|year=2009|isbn=978-0470087664|location=Hoboken, NJ|pages=161}}</ref>。電気泳動では、さまざまな種類のバッファーが使用されている。最も一般的なものは、核酸用の{{仮リンク|TAE緩衝液|en|TAE buffer|label=トリス/酢酸塩/EDTA}}（TAE）、{{仮リンク|TBE緩衝液|en|TBE buffer|label=トリス/ホウ酸塩/EDTA}}（TBE）である。他にも多くのバッファーが提案されており、たとえば、[[PubMed]]ではホウ酸リチウム（LB）がまれに使われ、等電点ヒスチジン、pK適合[[グッドバッファー]]がある。ほとんどの場合、理論的根拠とされているのは、イオン移動度に一致するより低い電流（より少ない発熱）であり、これによりバッファー寿命を長くする。ホウ酸塩の問題点は、ホウ酸塩がRNAに含まれるようなシス型ジオールと重合あるいは相互作用することがある。TAEの緩衝能力は最低であるが、大きなDNAに対して最も優れた分解能を発揮する。これは、より低い電圧と多くの時間を意味するが、より良い結果である。LBは比較的新しく、5 kbp以上のフラグメントの分離には効果がない。ただし導電性が低いため、はるかに高い電圧（最大35 V/cm）で使用でき、定型の電気泳動の分析時間が短かくなることを意味する。極めて低い伝導率の媒体（1 mMのホウ酸リチウム）を使用した3%アガロースゲルでわずか1塩基対の大きさの違いを分離できた<ref>{{cite journal | url = http://www.cc.ahs.chula.ac.th/Molmed/DNA%20electro%27s%20conductive%20media.pdf | pmid = 15351274 | doi=10.1016/j.ab.2004.05.054 | volume=333 | issue=1 | title=History and principles of conductive media for standard DNA electrophoresis |date=October 2004 | journal=Anal. Biochem. | pages=1–13 |authors=Brody JR, Kern SE }}</ref>。

ほとんどのSDS-PAGEタンパク質分離は、ゲル内のバンドの鮮明さを大幅に向上させる{{仮リンク|タンパク質のゲル電気泳動|en|Gel electrophoresis of proteins|label=不連続バッファーシステム}}（またはDISC）を使用して行われる。不連続ゲルシステムでの電気泳動では、電気泳動の初期段階でイオン勾配が形成され、すべてのタンパク質が単一の鋭いバンドに集中する{{仮リンク|等速電気泳動|en|Isotachophoresis}}と呼ばれるプロセスが起こる。タンパク質の大きさによる分離は、ゲルの下部にある「分離」領域<!-- "resolving" region -->で行われる。この分離ゲル<!-- resolving gel -->は通常、細孔径が非常に小さいため、タンパク質の電気泳動移動度を決定するふるい分け効果が得られる。

== 視覚化 ==
{{Further|{{ill2|核酸のゲル電気泳動|en|Gel electrophoresis of nucleic acids}}|{{ill2|タンパク質のゲル電気泳動|en|Gel electrophoresis of proteins}}}}

電気泳動が完了した後、ゲル内の分子を[[染色 (生物学)|染色]]して可視化（目に見えるように）することができる。DNAは、[[臭化エチジウム]]を用いて可視化することができ、DNAに挿入された臭化エチジウムは[[紫外線]]下で[[蛍光]]を発する。タンパク質は、[[銀染色]]や[[クマシーブリリアントブルー]]色素を用いて視覚化することができる。また、他の方法を使用して、ゲル上の混合物の成分の分離を可視化することもできる。分離する分子に[[放射能]]が含まれている場合、たとえば[[DNAシークエンシング]]のゲルでは、ゲルの[[オートラジオグラム]]を記録することができる。多くの場合、{{仮リンク|Gel Doc|en|Gel doc}}システムを使用してゲルの[[写真]]を撮ることができる。

== 下流側工程 ==

分離後、[[等電点電気泳動]]や{{仮リンク|SDS-PAGE|en|SDS-PAGE}}などの追加の分離方法を用いてもよい。その後、ゲルを物理的に切断し、各部分からタンパク質複合体を別々に抽出する。その後、各抽出物は、[[ゲル内消化]]の後、[[ペプチドマスフィンガープリンティング]]や{{Ill2|de novoペプチドシークエンシング|en|De novo peptide sequencing}}などによって分析することができる。これにより、複合体中のタンパク質の同一性に関する多くの情報を得ることができる。

== 用途 ==
*[[制限酵素]]消化後のDNA分子の大きさの推定（例 クローンDNAの制限マッピング）。
*[[ポリメラーゼ連鎖反応|PCR]]産物の分析（たとえば、分子[[着床前診断|遺伝子診断]]や[[DNA型鑑定|遺伝子指紋法]]）
*[[サザンブロット|サザン法]]前に[[制限酵素|制限処理]]された[[ゲノム]]DNAの分離、または[[ノーザンブロット|ノーザン法]]前のRNAの分離。
ゲル電気泳動は、[[法化学]]、[[分子生物学]]、[[遺伝学]]、[[微生物学]]、[[生化学]]の分野で使用されている。その結果は、紫外線とゲルイメージング装置でゲルを可視化することで、定量的に分析できる。この画像をコンピュータ制御のカメラで記録し、関心のあるバンドまたはスポットの強度を測定し、同じゲルにロードされた標準物質やマーカーと比較する。測定と分析は、主に専用のソフトウェアで行われる。

実行する分析の種類に応じて、ゲル電気泳動の結果と合わせて他の手法を導入することが多く、分野に応じた幅広い用途を提供する。

=== 核酸 ===
{{Main|{{ill2|核酸のゲル電気泳動|en|Gel electrophoresis of nucleic acids}}}}

[[File: Pcr gel.png|thumb|[[ポリメラーゼ連鎖反応|PCR]]産物をDNAラダーと比較したアガロースゲル。]]

[[核酸]]の場合、負電極から正電極への移動の方向は、[[砂糖|糖]]-[[リン酸塩|リン酸]][[主鎖]]が持つ自然の負電荷によるものである<ref name="Lodish">{{cite book|author = Lodish H|title = Molecular Cell Biology|edition = 5th|publisher = WH Freeman: New York, NY|year = 2004|url = https://archive.org/details/molecularcellbio00harv|isbn = 978-0-7167-4366-8|author2 = Berk A|author3 = Matsudaira P|url-access = registration}}</ref>。

二本鎖DNAフラグメントは本来長い棒のように振るまうので、ゲル内での移動はその大きさに比例し、環状フラグメントの場合はその[[断面回転半径]]に比例する。ただし、[[プラスミド]]のような環状DNAは複数のバンドを示すことがあり、移動速度は、弛緩しているか高次コイルであるかによって異なる。一本鎖のDNAやRNAは、複雑な形状の分子に折りたたまれ、その三次構造に基づいて複雑な挙動でゲル内を移動する傾向がある。そこで、[[水酸化ナトリウム]]や[[ホルムアミド]]などの[[水素結合]]を破壊する薬剤を用いて核酸を変性させ、再び長尺の棒として振るまえるようにする<ref>Troubleshooting DNA agarose gel electrophoresis. Focus 19:3 p.66 (1997).</ref>。

大きなDNAまたはRNAのゲル電気泳動は、通常、アガロースゲル電気泳動によって行われる。ポリアクリルアミド製のDNAシークエンシングゲルの例は、{{仮リンク|サンガー法|en|Sanger sequencing|label=サンガー法}}の「鎖切断法」<!-- Chain termination method -->を参照のこと。核酸またはフラグメントのリガンド相互作用による特性評価は、移動度シフト{{仮リンク|アフィニティー電気泳動|en|Affinity electrophoresis}}によって行うことができる。

RNAサンプルを電気泳動することで、ゲノムDNAの混入や、RNAの分解を確認することができる。[[真核生物]]のRNAは、28sおよび18s [[リボソームRNA|rRNA]]の明瞭なバンドを示し、28sバンドは18sバンドの約2倍の強度を示す。分解したRNAは、バンドが鮮明ではなく、外観が不鮮明で、強度比は2:1未満である。

=== タンパク質 ===
{{Main|{{ill2|タンパク質のゲル電気泳動|en|Gel electrophoresis of proteins}}}}

[[File:SDSPAGE.png|thumb|right|SDS-PAGE[[オートラジオグラフィー]] - 表示されたタンパク質は、2つのサンプル内で異なる濃度で存在する。]]
[[タンパク質]]は核酸とは異なり、電荷が変化したり、形状が複雑のため、サンプルに負から正の起電力を印加しても、ポリアクリルアミドゲルへの移動速度が一様でないか、またはすべて移動しない場合がある。そのため、タンパク質は通常、[[ドデシル硫酸ナトリウム]]（SDS）などの[[界面活性剤]]の存在下で変性され、タンパク質は負電荷で覆われる<ref name="Stryer" />。一般的に、結合するSDSの量はタンパク質の大きさに比例するので（通常、タンパク質1 gあたり1.4 gのSDS）、その結果、変性したタンパク質は全体的に負の電荷を持ち、すべてのタンパク質が同様の電荷対質量比を持つようになる。変性したタンパク質は複雑な三次構造を持たず、長い棒のように振るまうので、結果として得られたSDSで覆われたタンパク質がゲル内を移動する速度は、その大きさにのみ相対的であり、電荷や形状には関連しない<ref name="Stryer" />。

[[タンパク質]]の分析には、通常、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動（[[SDS-PAGE]]）、[[ゲル電気泳動#天然ゲル|天然ゲル電気泳動]]、{{仮リンク|QPNC-PAGE|en|QPNC-PAGE|label=分取電気泳動}}<!-- preparative gel electrophoresis -->（QPNC-PAGE）、または[[二次元電気泳動]]が用いられる。

リガンド相互作用による特性評価は、{{仮リンク|エレクトロブロッティング|en|Electroblotting}}、アガロースでの{{仮リンク|アフィニティー電気泳動|en|Affinity electrophoresis}}、または[[キャピラリー電気泳動]]を使用し、{{仮リンク|結合定数 (化学)|en|Binding constant|label=結合定数}}の推定や[[レクチン]]結合による[[グリカン]]（糖鎖）含有量などの構造的特徴を決定することができる。

=== ナノ粒子 ===

ゲル電気泳動の新たな用途として、金属または金属酸化物の[[ナノ粒子]]（Au、Ag、ZnO、SiO<sub>2</sub>など）の大きさ、形状、表面化学的に関して、分離したり特徴評価することがあげられる。その目的は、より均質なサンプル（たとえば、粒度分布がより狭い）を得ることであり、これをさらなる製品/プロセスに使用することができる（たとえば、自己組織化プロセスなど）。ゲル内でのナノ粒子の分離では、メッシュサイズに対する粒子径が重要なパラメータであり、粒子径<math>\ll</math>メッシュサイズの無制限メカニズムと、粒子径がメッシュサイズに近い制限メカニズムの2つの移行メカニズムが確認された<ref>Barasinski, M.; Garnweitner, G. Restricted and Unrestricted Migration Mechanisms of Silica Nanoparticles in Agarose Gels and Their Utilization for the Separation of Binary Mixtures. ''J. Phys. Chem. C.'' '''2020''', 124, 5157-5166. https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.jpcc.9b10644</ref>。

== 歴史 ==
* 1930s - ゲル電気泳動に[[スクロース|ショ糖]]を使用した最初の報告
* 1955 - [[デンプン]]ゲルの導入、並の分離（Smithies）<ref name="smithies"/>
* 1959 - アクリルアミドゲルの導入。ディスク電気泳動（OrnsteinとDavis）。細孔径や安定性などのパラメータの正確な制御（RaymondとWeintraub）
* 1966 - [[寒天]]ゲルの最初の使用<ref>{{cite journal |journal=Virology |year=1966 |volume=29 |issue=2 |pages=234–9 |title=Electrophoretic separation of polyoma virus DNA from host cell DNA |author=Thorne HV |pmid= 4287545 |doi=10.1016/0042-6822(66)90029-8}}</ref>
* 1969 - [[変性剤]]の導入、特に[[ラウリル硫酸ナトリウム|SDS]]によるタンパク質[[サブユニット]]の分離（WeberおよびOsborn）<ref>{{cite journal|last1=Weber|first1=K|last2=Osborn|first2=M|title=The reliability of molecular weight determinations by dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis|journal=The Journal of Biological Chemistry|volume=244|issue=16|pages=4406–12|year=1969|pmid=5806584}}</ref>
* 1970 - [[T4ファージ]]の28成分をスタッキングゲルとSDSで分離（Laemmli）
* 1972 – 臭化エチジウム染色を施したアガロースゲル<ref>{{cite journal |journal=Biochim Biophys Acta |year=1972 |volume=269 |issue=2 |pages=192–200 |title=The gel electrophoresis of DNA |authors=Aaij C, Borst P |pmid=5063906 |doi=10.1016/0005-2787(72)90426-1}}</ref>
* 1975 - 2次元ゲル - [[等電点電気泳動]]の後、SDSゲル電気泳動（O'Farrell）
* 1977 - [[DNAシークエンシング|シークエンシング]]でゲル使用
* 1983 - [[パルスフィールドゲル電気泳動]]（PFGE）で大きなDNA分子の分離が可能になる
* 1983 - [[キャピラリー電気泳動]]の導入
* 2004 - アクリルアミドゲルの[[重合反応|重合]]時間を[[工業規格|標準化]]し、天然タンパク質をきれいに、かつ予測可能に分離できる（Kastenholz）<ref>{{cite journal |journal=Analytical Letters |year=2004 |volume=37 |issue=4 |pages=657–665 |title=Preparative native continuous polyacrylamide gel electrophoresis (PNC‐PAGE): an efficient method for isolating cadmium cofactors in biological systems |author=Kastenholz B |doi=10.1081/AL-120029742|s2cid=97636537 }}</ref>

ミラン・ビア（Milan Bier）による電気泳動に関する1959年に出版された本には1800年代からの文献を引用されている<ref>{{cite book|author = Milan Bier|title = Electrophoresis. Theory, Methods and Applications|publisher = Academic Press|page = 225|edition = 3rd |year = 1959|oclc = 1175404|id = LCC 59-7676}}</ref>。しかし、[[オリヴァー・スミティーズ]]は多大な貢献をしている。ビアは次のように述べている。『スミティーズの方法は、… その独自の分離力のために、幅広い用途が見いだされている』。文脈から考えると、ビアはスミティーズの方法が改良されていると明らかに示唆している。

== 参照項目 ==
* {{仮リンク|電気泳動の歴史|en|History of electrophoresis}}
* [[電気泳動移動度シフトアッセイ]] (EMSA)
* [[ゲル抽出]]
* [[等電点電気泳動]] (IEF)
* [[パルスフィールドゲル電気泳動]]（PFGE）
* [[:en:Nonlinear frictiophoresis|Nonlinear frictiophoresis]]
* [[二次元電気泳動]]
* [[:en:SDD-AGE|SDD-AGE]]
* {{仮リンク|酵素電気泳動|en|Zymography}}
* {{仮リンク|高速並列タンパク質分解|en|Fast parallel proteolysis}}<ref>{{Cite journal|author= Minde DP|title= Determining biophysical protein stability in lysates by a fast proteolysis assay, FASTpp |journal= PLOS One|volume= 7 |pages= e46147 |year= 2012 |doi= 10.1371/journal.pone.0046147|issue= 10 |pmid=23056252 |pmc=3463568|bibcode= 2012PLoSO...746147M}}</ref>

== 脚注 ==
{{Reflist}}

== 外部リンク ==
{{Commons category}}
* [https://learn.genetics.utah.edu/content/labs/gel/ バイオテクニック研究所 電気泳動デモ] - ユタ大学遺伝子科学ラーニングセンターより
* [https://archive.today/20121217205427/http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/113343976/ABSTRACT 不連続なネイティブタンパク質ゲル電気泳動]
* [https://web.archive.org/web/20090210181129/http://maradydd.livejournal.com/417631.html 飲料用ストローの電気泳動] (英語)
*[https://web.archive.org/web/20110927050058/http://arbl.cvmbs.colostate.edu/hbooks/genetics/biotech/gels/index.html DNAやRNAのゲルを作成する方法] (英語)
*[https://web.archive.org/web/20110927050110/http://arbl.cvmbs.colostate.edu/hbooks/genetics/biotech/gels/virgel.html 制限酵素フラグメントのアガロースゲル電気泳動] (英語)
*[https://web.archive.org/web/20151020012948/http://web.mit.edu:80/7.02/virtual_lab/RDM/RDM1virtuallab.html ゲルを流してDNAを抽出するまでの手順写真] (英語)
*[[wikiversity:Agarose_gel_electrophoresis|wikiversityからの典型的な方法]] (英語)

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