コラッツの問題のソースを表示

[[File:Collatz-graph-50-no27.svg|thumb|upright=0.6|コラッツマップ下の軌道を[[有向グラフ]]にしたもの。コラッツ予想は、すべてのパスが1に至るということと同値である。]]
'''コラッツの問題'''（コラッツのもんだい、Collatz problem）は、[[数論]]の[[数学上の未解決問題|未解決問題]]のひとつである。問題の結論の予想を指して'''コラッツ予想'''と言う。伝統的に[[ローター・コラッツ]]の名を冠されて呼ばれる<ref name="Lagarias (1985)" />が、固有名詞に依拠しない表現としては'''3n+1問題'''とも言われ、また初期にこの問題に取り組んだ研究者や場所の名を冠して、'''[[角谷静夫|角谷]]の問題'''、'''[[米田信夫|米田]]の予想'''、'''[[スタニスワフ・ウラム|ウラム]]の予想'''、'''[[シラキュース大学|シラキュース]]問題'''などとも呼ばれる。

数学者[[ポール・エルデシュ]]は「数学はまだこの種の問題に対する用意ができていない」と述べた。また、[[ジェフリー・ラガリアス]]は2010年に、コラッツの予想は「非常に難しい問題であり、現代の数学では完全に手が届かない」と述べた{{sfn|Lagarias|2010|page={{google books quote|id=hekJ7JDMEVkC|page=4|4}}}}。

2019年9月、[[テレンス・タオ]]はコラッツの問題がほとんどすべての正の整数においてほとんど正しいとする[[プレプリント]]を発表し<ref name=":1" /><ref name=":2" />、論文は2022年5月に出版された<ref>{{cite journal|last=Tao|first=Terence|title=Almost all orbits of the Collatz map attain almost bounded values|year=2022|journal=Forum of Mathematics, Pi|volume=10|pages=E12|doi=10.1017/fmp.2022.8}} {{OA}}</ref>。

== 概要 ==
[[File:Collatz-stopping-time.svg|thumb|1から9999までの数に対して、1にいたるまでのステップ数をグラフにしたもの。]]
[[File:CollatzStatistic100million.png|thumb|1から10<sup>8</sup>までの、1に至るまでのステップ数のヒストグラム。{{mvar|x}}軸がステップ数で、頻度が{{mvar|y}}軸である。]]
[[File:Collatz-10Million.png|thumb|2から10<sup>7</sup>までの、1にいたるまでのステップ数をグラフにしたもの。]]
[[File:Collatz Gif.gif|alt=Stopping Time: Graphed 250, 1000, 4000, 20000, 100000, 500000|thumb|ステップ数: 250, 1000, 4000, 20000, 100000, 500000までをそれぞれグラフ化したもの。]]
任意の正の[[整数]] {{Mvar|n}} に対して、以下で定められる操作について考える。
*{{Mvar|n}} が[[偶数]]の場合、{{Mvar|n}} を 2 で割る
*{{Mvar|n}} が[[奇数]]の場合、{{Mvar|n}} に 3 を掛けて 1 を足す
このとき、「どんな初期値から始めても、有限回の操作のうちに必ず 1 に到達する（そして 1→4→2→1 というループに入る）」という主張が、コラッツの予想である。

[[合同算術|モジュラ計算]]の表記を用いて、上記の操作を関数 {{Mvar|f}} として定義する。
:<math>f(n) = \begin{cases} n/2 &\mbox{if } n \equiv 0 \\ 3n+1 & \mbox{if } n\equiv 1 \end{cases} \pmod{2}</math>
任意の正の整数 {{Mvar|n}} に対して、この関数 {{Mvar|f}} ('''コラッツ写像'''とも呼ばれる) を繰り返し適用することで整数の無限列 {{Math|{''a''<sub>''i''</sub>}<sub>''i'' ≧ 0</sub>}}を得る。数式としての定義は次のようになる。
:<math>a_i = \begin{cases}n & \mbox{for } i = 0 \\ f(a_{i-1}) & \mbox{for } i > 0\end{cases}</math>
このとき、コラッツ予想を形式的に書くと、以下のようになる。
:<math> \forall n \isin \mathbb{N}^{+} \ \exists i \isin \mathbb{N}: (a_0 = n \Rightarrow a_i = 1)</math>
すなわち、任意の正整数 {{Mvar|n}} に対して {{Mvar|f}} を繰り返し適用していると、{{Math|1=''f''(''f''(…''f''(''n'')…)) = 1}} がいつかは成り立つという主張がコラッツ予想である。1に到達して以降は、この数列は 1, 4, 2 を繰り返すのみとなるため、以降では最初に1に到達して以降の数は表記しないことにする。

コラッツ予想が誤りであるなら、1 を含まない数列を生成する初期値が存在するということになる。そのような数列は、1 を含まない繰り返し数列に突入するか、もしくは際限なく増大していくかのいずれかである。そのような数列はいまだ見つかっていない。

コンピュータを用いた計算により、2<sup>68</sup> までの初期値には反例がないことが確かめられている。

== 例 ==

* 初期値を 6 にしたとき、6, 3, 10, 5, 16, 8, 4, 2, 1 という1に到達する[[数列]]を得る。

* 初期値を 11 とすると、11, 34, 17, 52, 26, 13, 40, 20, 10, 5, 16, 8, 4, 2, 1 となり、1 に到達するまでにより長くかかる。
* 初期値として 27 を選ぶと、以下のように数列の項数は112にまで及び、その値は最終的に 1 に到達する前に最大 9232 まで増大する。
{{Indent|27, 82, 41, 124, 62, 31, 94, 47, 142, 71, 214, 107, 322, 161, 484, 242, 121, 364, 182, 91, 274, 137, 412, 206, 103, 310, 155, 466, 233, 700, 350, 175, 526, 263, 790, 395, 1186, 593, 1780, 890, 445, 1336, 668, 334, 167, 502, 251, 754, 377, 1132, 566, 283, 850, 425, 1276, 638, 319, 958, 479, 1438, 719, 2158, 1079, 3238, 1619, 4858, 2429, 7288, 3644, 1822, 911, 2734, 1367, 4102, 2051, 6154, 3077, 9232, 4616, 2308, 1154, 577, 1732, 866, 433, 1300, 650, 325, 976, 488, 244, 122, 61, 184, 92, 46, 23, 70, 35, 106, 53, 160, 80, 40, 20, 10, 5, 16, 8, 4, 2, 1 ({{OEIS|A008884}})}}

[[File:Collatz5.svg|frameless|center|360x360ピクセル|初期値27のときの {{Math|''a''<sub>i</sub>}} の値のグラフ]]

*各整数において1になるまでの回数は{{OEIS|A006577}}を，各整数に対する最大値は{{OEIS|A025586}}を参照。
*「3を掛けて1を加えた後、奇数になるまで2で割る」という1回の作業で1となる数値は、{{数列|1|5|21|85|341}} と無限に存在する。

== 歴史 ==
1930年代ごろ、学生であったコラッツは数論的関数を有向グラフとして表現して、そのグラフの性質が関数のふるまいとどのように関連付けられるかに興味を持った。この時の彼のノートには、現在知られるものとは異なる関数について調べられている。コラッツはこれらの関数についての問題を出版することはなかったが、1950年の[[国際数学者会議]]をきっかけに広くこの問題が知られるようになり、1963年に初めて (1930年代にコラッツが研究していた形のものが) 紙面に取りあげられた<ref name="Lagarias (1985)" />。その後、この問題に興味を持った数学者によって研究される間に、様々な別名を得ることとなった。「ハッセのアルゴリズム」は[[ヘルムート・ハッセ]]に、「シラキュース問題」は[[シラキュース大学]]に、「角谷の問題」は[[角谷静夫]]に、「ウラムの問題」は[[スタニスワフ・ウラム]]に由来する<ref name="Lagarias (1985)" />。

コラッツ予想の解決にはいくつかの懸賞金がかけられており、[[ハロルド・スコット・マクドナルド・コクセター|コクセター]]が50ドル、[[ポール・エルデシュ|エルデシュ]]が500ドル、ブライアン・スウェイツ{{Enlink|Bryan Thwaites}}は1000[[ポンド (通貨)|ポンド]]を申し出ている。

2011年度[[大学入試センター試験]]数学IIB第6問に題材として取り上げられた<ref>{{PDF|[https://web.archive.org/web/20110124192525/http://www.47news.jp/47topics/pdf/23sugaku2b_q.pdf 数学Ⅱ・数学B（2011年1月24日時点のインターネットアーカイブ）]}} - [https://web.archive.org/web/20110123173553/http://www.47news.jp/47topics/e/185758.php 【センター試験】２０１１年度大学入試センター試験速報－問題と正解（47NEWS）（2011年1月23日時点のインターネットアーカイブ）]</ref>。

2019年、[[テレンス・タオ]]は「{{Math|1=lim<sub>''N''→∞</sub> ''f''(''N'') = +∞}} を満たす任意の関数 {{Math|''f'' : &#x2115;<sup>+</sup> → &#x211d;}} について、{{Mvar|N}} から始まるコラッツ数列の最小値は ([[:en:Logarithmic density|Logarithmic density]]の意味で) [[ほとんど (数学)|ほとんど全て]]の自然数 {{Mvar|N}} において {{Math|''f''(''N'')}} より小さい」ことを証明し<ref name=":1">{{Cite web |url=https://arxiv.org/abs/1909.03562 |title=Almost all orbits of the Collatz map attain almost bounded values |accessdate=2021-10-15 |publisher=arXiv |date=2019-09-08}}</ref>、コラッツ予想は「『ほとんど』全ての自然数で『ほとんど』正しい」<ref name=":2">{{Cite news|title=Mathematician Proves Huge Result on ‘Dangerous’ Problem|newspaper=Quanta Magazine|date=2019-12-11|last=Hartnett|first=Kevin|url=https://www.quantamagazine.org/mathematician-proves-huge-result-on-dangerous-problem-20191211|accessdate=2022-02-20|language=en|archiveurl=https://web.archive.org/web/20211008005902/https://www.quantamagazine.org/mathematician-proves-huge-result-on-dangerous-problem-20191211|archivedate=2021-10-08}}</ref>ことが示された。帰結として例えば、{{Mvar|N}} から始まるコラッツ数列の最小値はほとんど全ての自然数 {{Mvar|N}} において {{Math|log log log log ''N''}} より小さくなることが従う<ref name=":1" />。

2021年7月7日、株式会社音圧爆上げくんが、「コラッツ予想の真偽を明らかにした方に懸賞金1億2000万円を支払います」と発表した<ref>{{Cite web|和書|title=コラッツ予想 懸賞金1億2000万円 |url=https://mathprize.net/ja/posts/collatz-conjecture/ |website=Mathprize |accessdate=2022-02-21 |publisher=Mathprize |date=2021-07-07 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20220121194731/https://mathprize.net/ja/posts/collatz-conjecture/index.html |archivedate=2022-01-21}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=数学者も恐れる「ハマると病む難問」 解けたら1億円、企業が懸賞金 |url=https://www.asahi.com/articles/ASP937HM6P8ZULBJ00T.html |website=朝日新聞デジタル |accessdate=2022-02-21 |publisher=朝日新聞社 |date=2021-09-24 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20210915114852/https://www.asahi.com/articles/ASP937HM6P8ZULBJ00T.html |archivedate=2021-09-15}}</ref>。

==この予想を支持する論拠==
コラッツの予想は未解決だが、この問題を研究した多くの数学者は正しいだろうと考えている。そう予想される理由を以下に挙げる。

=== 経験的証拠 ===
この予想は、初期値が2<sup>68</sup> ≈ 2.95×10<sup>20</sup>までは成り立つことがコンピュータで確認されている<ref name=Barina>{{cite journal | last = Barina | first = David | title = Convergence verification of the Collatz problem | journal = The Journal of Supercomputing | year = 2020 | doi = 10.1007/s11227-020-03368-x | s2cid = 220294340 }}</ref>。この数値は、コンピュータのスピードアップとテスト技術の向上に伴って更新され続けている。

しかしこういったコンピューターでの検証は、予想が真であるという証拠にはならない。[[ポリア予想]]、{{仮リンク|メルテンス予想|en|Mertens conjecture}}、[[スキューズ数]]の場合に示されているように、非常に大きな数において予想の反例が見つかることがある。

=== ヒューリスティクス ===
厳密な議論ではない[[ヒューリスティクス]]であるが、ステップを経るごとに数の大きさがどのようになるかを考察する。今、''n'' が偶数ならば、次のステップで大きさは半分になる。また、''n'' が奇数ならば、次のステップで 3''n'' + 1 になるが、これは必ず偶数であるから、その次に (3''n'' + 1)/2 になることまでは確定している。ここまでを一つのステップと解釈すれば、このステップで大きさは約 3/2 倍になる。1回のステップを経た後に偶数になるか、奇数になるかが半々であると考えると、1/2 の確率で数の大きさは 1/2 倍になり、残る 1/2 の確率で数の大きさは 3/2 倍になる。よって、1回のステップで、数の大きさは (1/2)<sup>1/2</sup> &times; (3/2)<sup>1/2</sup> 倍になると期待される。これは 1 より小さな値であるから、ステップを経るごとに「確率的に」小さくなると考えられる。この意味で、いつかは 1 に到達するとの予想は確からしい。

確率論の言葉を用いるとこれは無限のステップ数を取る極限で1に平均収束するということであり、厳密には予想の確からしさとは無関係である。{{要出典範囲|[[ストレンマイヤー]]は1957年にマルティンゲールの理論を用いて上記の議論を精密化し、任意のコロモゴルフ測度の下で有限ステップ内に数の大きさが1に[[概収束]]（確率1で収束）することを証明した。|date=2023年10月11日 (水) 15:00 (UTC)}}

== コラッツの数列を計算するプログラミング例 ==
以下は[[擬似コード]]によるプログラミング例である。与えられた初期値に対するコラッツ数列を計算できる。
 '''def''' collatz(n)
   '''show''' n
   '''if''' n.odd? '''and''' n > 1
     collatz(3n + 1)
   '''else if''' n.even?
     collatz(n / 2)

このプログラムは 1, 4, 2, 1 の無限サイクルを省くために 1 に到達すると停止するようになっている。もしコラッツ予想が正しければ、いかなる正の整数の初期値を与えても停止する。

この問題を、初期のコンピュータで計算することで研究したのが[[スタニスワフ・ウラム]]であった。

== サイクル ==
{{Mvar|n}} が奇数であるときに {{Math|3''n'' + 1}} は必ず偶数になることから、コラッツ写像の「ショートカット」形式が次の定義で与えられる：
: <math> T(x) = \begin{cases} x/2 &\text{if } x \equiv 0 \pmod{2},\\ (3x+1)/2 & \text{if } x\equiv 1 \pmod{2}. \end{cases}</math>

コラッツ数列の'''サイクル'''とは相異なる正整数からなる数列 {{nowrap|<math>(a_0, a_1, \ldots, a_q)</math>}} であって、<math>T(a_0)=a_1</math>, <math>T(a_1)=a_2</math>, ..., <math>T(a_q)=a_0</math> を満たすものである。唯一知られているサイクルは長さ2の <math>(1,2)</math> で、これは自明なサイクルと呼ばれる。

===サイクルの長さ===
自明ではないサイクルの長さは少なくとも {{Val|17087915|fmt=commas}} である<ref>{{Cite journal|last=Eliahou|first=Shalom|date=1993-08-01|title=The 3x+1 problem: new lower bounds on nontrivial cycle lengths|url=|journal=Discrete Mathematics|volume=118|issue=1|pages=45–56|doi=10.1016/0012-365X(93)90052-U}}</ref>。Eliahouは1993年の論文で、サイクルの最小値が {{Math|2<sup>40</sup>}} を超えるならば、周期の長さ {{Mvar|p}} が 
:<math>p = 301994 a + 17087915 b + 85137581 c</math> 
となることを示した。ここで<math>a,b,c</math>は非負整数で、<math>b \geq 1</math> かつ <math> ac=0</math>である。この結果は、<math>\log 3 / \log 2</math>の [[連分数]]展開と関連している。最新の検証では、{{Math|2<sup>68</sup>}}までコラッツ予想が正しいと判明しているので、同様の論法によりサイクルの長さの下限は{{val|114208327604}} (「ショートカット」無しなら {{val|186265759595}}) であると言える。

===''k''-サイクル===
{{Mvar|k}}-サイクルとは、奇数が連続する増加列 {{Mvar|k}} 個と偶数が連続する減少列 {{Mvar|k}} 個の {{Math|2''k''}} 個の部分で全体が構成されたサイクルである。例えばサイクルが、奇数による増加列1個と、偶数による減少列1個で構成されたなら、1-サイクルと呼ぶ<ref name="Simons & de Weger (2003)"/>。Steiner (1977)は、1-サイクルが、自明なサイクル(1;2)のみであることを証明した<ref name="Steiner (1977)"/><ref name=":0" />。ジョン・サイモンズ{{Small|&nbsp;(John L. Simons)&nbsp;}}は、Steinerの方法を使って、2-サイクルが存在しないことを証明した<ref name=":0">{{cite journal |last=Simons |first=John L. |year=2005 |title=On the nonexistence of 2-cycles for the 3x+1 problem |journal=Math. Comp. |volume=74 |issue= |pages=1565–72 |mr=2137019 |doi=10.1090/s0025-5718-04-01728-4|bibcode=2005MaCom..74.1565S }}</ref>。サイモンズとde Wegerはこの証明を拡張して、{{Math|1=''k'' = 68}} までの場合において、非自明な''{{Mvar|k}}''-サイクルが存在しないことを示した<ref name="Simons & de Weger (2003)"/>。また、{{Mvar|k}} が69以上の場合においては、存在した場合のサイクルの最小値の範囲を与えた。例えば {{Math|1=''k'' = 69}} の場合は、サイクルの最小値は {{Val|3.3389|e=17}}より大きく {{Val|6.4877|e=17}}より小さいことが示されている<ref name="Simons & de Weger (2003)" />。

== コラッツ予想の他の形式 ==
===ボトムアップ方式===
[[File:Collatz-tree, depth=20.svg|thumb|upright=2|ボトムアップ方式で作成した21ステップまでの''コラッツ[[グラフ理論|グラフ]]'' 。グラフには、軌道長が21以下のすべての数値が含まれている。]]
別のアプローチをとってみる：ボトムアップ方式でいわゆる''コラッツグラフ''を作成してみる。
コラッツグラフは、以下のように操作を逆にして定義する。

: <math> R(n) = \begin{cases} \{2n\} & \text{if } n\equiv 0,1,2,3,5 \\[4px] \left\{2n,\frac{n-1}{3}\right\} & \text{if } n\equiv 4 \end{cases} \pmod 6. </math>

したがって、すべての正の整数が最終的に1になることを証明する代わりに、1がすべての正の整数に逆方向につながることを証明すればよい。
任意の整数{{mvar|n}}, {{math|''n'' ≡ 1 (mod 2)}} ⇔ {{math|3''n'' + 1 ≡ 4 (mod 6)}} である。ゆえに、
{{math|{{sfrac|''n'' − 1|3}} ≡ 1 (mod 2)}} ⇔ {{math|''n'' ≡ 4 (mod 6)}}である。
推測的に、この逆関係は、1–2–4ループ（この記事の問題の説明のセクションで定義されている変更されていない関数{{mvar|f}}の4–2–1ループの逆）を除いてツリーを形成する。

操作{{math|3''n'' + 1}}を、ショートカット操作{{math|{{sfrac|3''n'' + 1|2}}}}に置き換えた場合は、
コラッツグラフの定義は以下のようになる。

: <math> R(n) = \begin{cases} \{2n\} & \text{if } n\equiv 0,1 \\[4px] \left\{2n,\frac{2n-1}{3}\right\} & \text{if } n\equiv 2 \end{cases} \pmod 3. </math>

任意の整数{{mvar|n}}, {{math|''n'' ≡ 1 (mod 2)}} ⇔ {{math|{{sfrac|3''n'' + 1|2}} ≡ 2 (mod 3)}}。ゆえに、
{{math|{{sfrac|2''n'' − 1|3}} ≡ 1 (mod 2)}} ⇔ {{math|''n'' ≡ 2 (mod 3)}}である 。推測的に、この逆関係は、1–2ループ（上記のように修正された関数f（n）の1–2ループの逆）を除いてツリーを形成する。

===剰余列===
本節では、コラッツ関数を少し変形したものを考える：

: <math> f(n) = \begin{cases} n/2 &\text{if } n \equiv 0 \\ (3n +1)/2 & \text{if } n \equiv 1 \end{cases} \pmod{2}.</math>

''n''が奇数の場合には3''n''&nbsp;+&nbsp;1が必ず偶数になるので上記のようにできる。

{{math|P(''x'')}}をxの2で[[剰余演算|割った余り]]とする。P(2''n'')&nbsp;=&nbsp;0 で、P(2''n''&nbsp;+&nbsp;1) =&nbsp;1 である。整数''n''の剰余列を、''p<sub>i</sub>'' = P(''a<sub>i</sub>''), ただし''a''<sub>0</sub> = ''n'', and ''a''<sub>''i''+1</sub> = ''f''(''a''<sub>''i''</sub>)
と定義する。
(3''n'' + 1)/2 または ''n''/2、どちらの操作が適用されるかは、剰余に依存する。剰余列は''fによる''操作の場合分けに等しい。
''f''(''n'')に対してこの形式を適用すると、２つの整数''m'' と''n''の剰余列は、''m'' と''n''が2<sup>''k''</sup>を法として合同の場合のみ、最初の''k''項で一致するこが示される。これは、すべての整数が剰余列により一意に識別されること意味し、さらに複数のコラッツ数列がある場合、対応する剰余列が異なる必要があることを意味する<ref name="Lagarias (1985)">{{cite journal|last=Lagarias|first=Jeffrey C.|year=1985|title=The 3x + 1 problem and its generalizations|journal=[[:en:The American Mathematical Monthly]]|volume=92|issue=1|pages=3–23|doi=10.1080/00029890.1985.11971528|jstor=2322189}}</ref><ref>{{citation
 | last = Terras | first = Riho
 | year = 1976
 | title = A stopping time problem on the positive integers
 | journal =  Acta Arithmetica
 | mr = 0568274
 | volume = 30
 | issue = 3
 | pages = 241–252
 | url = http://matwbn.icm.edu.pl/ksiazki/aa/aa30/aa3034.pdf | doi=10.4064/aa-30-3-241-252
}}</ref>。

''n''=''a''·2<sup>''k''</sup>&nbsp;+&nbsp;''b'' に関数 ''f'' を ''k'' 回適用すると、''a''·3<sup>''c''</sup>&nbsp;+&nbsp;''d''となる。ここで''d''は''b''に関数''f''を''k''回適用した結果で、''c''はその過程で3倍の演算を行った（増加した）回数である。（例えば、''a''·2<sup>5</sup>&nbsp;+&nbsp;1 では、1が2,1,2,1と変化し最後に2になるので、3回の増加がある。よって結果は''a''·3<sup>3</sup>+2 である。''a''·2<sup>2</sup>&nbsp;+&nbsp;1 では、1が2に増加しその後1になるので、結果は3''a''&nbsp;+&nbsp;1 となる。） ''b''が2<sup>''k''</sup>&nbsp;-&nbsp;1の場合には、 ''k''回の増加があり、結果は2a·3<sup>''k''</sup>&nbsp;-&nbsp;1となる。''a''に掛かる係数は、''a''には無関係で、''b''にのみ依存する。これにより、特定の形式の数値が特定の反復回数の後、常により小さい数値になることを予測できます。例えば、4''a''&nbsp;+&nbsp;1 は、2回の''f''操作により3''a''&nbsp;+&nbsp;1となり、16''a''&nbsp;+&nbsp;3は4回の''f''操作により9''a''&nbsp;+&nbsp;2となる。これらの小さくなった数が1へとつながるかどうかは、 ''a''の値に依存する。

===法の一般化===
本節ではショートカット版を、たんにコラッツ写像と称する。

{{mvar|α}}を2以上の整数として
:<math>
\rho_{\alpha}(x) =[0,\alpha) \cap (x+\alpha\mathbb{Z})
</math>
という、各整数に{{mvar|α}}を[[商群#例|法]]とした[[除法の原理#整数に対する除法の原理|非負の最小の余り]]を返す関数を導入すると、コラッツ写像は{{Math| ((''ρ{{sub|2}}''&thinsp;(''x'') + ''ρ{{sub|2}}''&thinsp;(''&minus;x'') + 1)''x'' + ''ρ{{sub|2}}''&thinsp;(''&minus;x''))/2 }}と書ける。このことから、
:<math>
T_{\alpha}(x) = 
\frac
{
(\rho_{\alpha}(x)+ \rho_{\alpha}(-x)+1)x
+
\rho_{\alpha}(-x)
}
{\alpha}
</math>
と定めると、法{{mvar|α}}について一般化されたコラッツ写像{{mvar|T{{sub|α}}}}が得られる。
この写像は以下の特徴を持つ。
*{{math|1=
''x''&in;{{open-closed|''&minus;&alpha;'',0}}&cap;'''Z''' ⇔ ''T{{sub|α}}''&thinsp;(''x'') = ''x''
}}.
*{{math|1=
''x''&in;{{open-open|0,''&alpha;''}}&cap;'''Z''' ⇔ ''T{{sub|α}}''&thinsp;(''x'') = ''x'' + 1
}}.
*{{math|1=
0 < ''x'' ⇔ 0 < ''T{{sub|α}}''&thinsp;(''x'')
}}.
したがって、とくに1の周期軌道と、整数上の不動点の分布が、どの{{mvar|α}}に於いてもオリジナルのコラッツ写像と酷似する。これらの周期軌道を自明な軌道と呼ぶことにすると、既に10未満の{{mvar|α}}に於いては、{{math|1=
''α''=3,4,6,9}}に於いて、正の範囲に非自明な周期軌道が確認されている。<ref name=PDF>[https://www.lab2.toho-u.ac.jp/sci/is/shirayanagi/lab/dl/2014/yamanaka.pdf  コラッツ予想の変形について]</ref>このことから次の命題が興味の対象となる。
{{Quotation|{{mvar|T{{sub|α}}}}において、正の整数上に非自明な周期軌道が存在せず、かつ、任意の正の整数が[[周期点#定義|前周期的]]となるような法{{mvar|α}}はどのような整数か？}} 
"そのような法すべて"からなる集合に2が含まれるか?
がオリジナルのコラッツの問題に相当する。

==定義域の拡張==
===整数全体への拡張===
正整数だけではなく、負数も含む任意の整数から開始するコラッツ数列について考えることができる。このとき、自明なサイクル0→0を除いて、合計4つの既知のサイクルがあり、知られている限りでは任意の0でない整数は以下に示された4つのサイクルのいずれかに到達する。

以下の表において、奇数の値は太字で示されている。また各サイクルは、最小絶対値の要素を先頭にしている。

{| class="wikitable" style="text-align: center;"
! サイクル !! 奇数値のサイクル長 !! 全サイクル長
|-
| style="text-align: left;" | <span style="font-size:120%">'''1'''</span>, 4, 2, <span style="font-size:120%">'''1'''</span> ... || 1 || 3
|-
| style="text-align: left;" | <span style="font-size:120%">'''−1'''</span>, −2, <span style="font-size:120%">'''−1'''</span> ... || 1 || 2
|-
| style="text-align: left;" | <span style="font-size:120%">'''−5'''</span>, −14, <span style="font-size:120%">'''−7'''</span>, −20, −10, <span style="font-size:120%">'''−5'''</span> ... || 2 || 5
|-
| style="text-align: left;" | <span style="font-size:120%">'''−17'''</span>, −50, <span style="font-size:120%">'''−25'''</span>, −74, <span style="font-size:120%">'''−37'''</span>, −110, <span style="font-size:120%">'''−55'''</span>, −164, −82, <span style="font-size:120%">'''−41'''</span>, −122, <span style="font-size:120%">'''−61'''</span>, −182, <span style="font-size:120%">'''−91'''</span>, −272, −136, −68, −34, <span style="font-size:120%">'''−17'''</span> ... || 7 || 18
|}

一般化されたコラッツの予想は、{{mvar|f}} による反復の下で、すべての整数が最終的に上記の4つのサイクルの1つ (または0→0の自明なサイクル) に入るという主張である。

=== 分母が奇数である有理数への拡張 ===
コラッツ写像は、分母が奇数である既約分数に拡張できる。ここで偶奇性の判定は分子の偶奇性によって判定し、それ以外は定義域が整数の場合と同様に行う。すなわち、分子が偶数であれば2で割り、奇数であればその有理数に3を掛けて1を足すこととする。「ショートカット」した定義を使用する場合、任意の周期的かつ既約なパリティ列は[[一意性 (数学)|一意]]な有理数によって生成されることが知られている<ref>{{Cite journal|last=Lagarias|first=Jeffrey|date=1990|title=The set of rational cycles for the 3x+1 problem|url=https://eudml.org/doc/206298|journal=Acta Arithmetica|volume=56|issue=1|pages=33–53|issn=0065-1036|doi=10.4064/aa-56-1-33-53|doi-access=free}}</ref>。逆に、分母が奇数であるすべての有理数は、周期的なパリティ列を持っていると予想されている (周期性予想、periodicity conjecture<ref name="Lagarias (1985)" />)。

長さ {{mvar|n}} のパリティ列が奇数を正確に {{mvar|m}} 個含むとして、そのインデックスを {{math|''k''<sub>0</sub> < … < ''k''<sub>''m''−1</sub>}} で表すとすると、パリティサイクルを生成する有理数が次のように決定される：

{{NumBlk|:|<math>\frac{3^{m-1} 2^{k_0} + \cdots + 3^0 2^{k_{m-1} } }{2^n - 3^m}</math>|{{EquationRef|1}}}}

例えば、長さ7のパリティサイクル {{nowrap|(1 0 1 1 0 0 1)}} は、0, 2, 3, 6 の位置にパリティ1 (すなわち奇数) が存在している。従って {{Math|1=''m'' = 4}}, {{Math|1=''k''<sub>''i''</sub> = 0, 2, 3, 6 (for 0 ≦ ''i'' ≦ 3)}} と置くと、周期列を生成する有理数が次のように求まる。
:<math>\frac{3^3 2^0 + 3^2 2^2 + 3^1 2^3 + 3^0 2^6}{2^7 - 3^4} = \frac{151}{47}</math>
これは、下記の有理数のサイクルとなり、パリティは確かに {{nowrap|(1 0 1 1 0 0 1)}} の周期となっていることがわかる。
:<math>\frac{151}{47} \rightarrow \frac{250}{47} \rightarrow \frac{125}{47} \rightarrow \frac{211}{47} \rightarrow \frac{340}{47} \rightarrow \frac{170}{47} \rightarrow \frac{85}{47} \rightarrow \frac{151}{47} </math>

{{nowrap|(1 0 1 1 0 0 1)}} の巡回置換は、上記の分数の1つに関連付けられる。例えば、サイクル {{nowrap|(0 1 1 0 0 1 1)}} から同様の手順で有理数を得ると
:<math>\frac{3^3 2^1 + 3^2 2^2 + 3^1 2^5 + 3^0 2^6}{2^7 - 3^4} = \frac{250}{47}</math>
となり、先の例で得たサイクルの2番目に対応している。

コラッツ予想が正しいことを仮定すると、{{nowrap|(1 0)}} と {{nowrap|(0 1)}} が正の整数（それぞれ1と2）によって生成される唯一のパリティサイクルであることが示される。

有理数の分母が3の倍数でない場合、この拡張されたコラッツ数列はすべて同じ分母を持ち、このとき分子の列はコラッツ関数の「{{math|3''n'' + ''d''}}」への一般化を適用することによって得ることができる。
: <math> T_d(x) = \begin{cases} \frac{x}{2} &\text{if } x \equiv 0 \pmod{2},\\[4px] \frac{3x+d}{2} & \text{if } x\equiv 1 \pmod{2}. \end{cases}</math>

=== 2-進整数環への拡張 ===
有理数と類似の拡張として、コラッツ写像の[[P進数|2-進整数]]環 <math>\mathbb{Z}_2</math> への拡張が挙げられる。この環は部分環として奇数分母の有理数全体からなる環を含んでいる。このとき写像は

<math display="block">T(x)=
\begin{cases}
  \frac{x}{2} &\textrm{if}\ x\equiv 0\mod 2\\
  \frac{3x+1}{2} &\textrm{if}\ x\equiv 1\mod 2
\end{cases}</math>で与えられ、これは <math>\mathbb{Z}_2</math> 上で[[well-defined]]な連続写像であり、かつ[[ハール測度]]を保存する<ref>{{Cite journal|author=Marc Chamberland|year=2003|title=Una actualització del problema 3x + 1|url=http://revistes.iec.cat/index.php/BSCM/article/view/9784/9778|journal=Butlletí de la Societat Catalana de Matemàtiques|volume=18|issue=1|pages=19–45|language=it|accessdate=2022-01-25}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://chamberland.math.grinnell.edu/papers/3x_survey_eng.pdf |title=An Update on the 3x+1 Problem |accessdate=2022-02-21 |publisher=Marc Chamberland |author=Marc Chamberland |year=2003 |format=PDF}}</ref>。加えて、その力学系は[[エルゴード理論|エルゴード]]であることが知られている<ref name="Lagarias (1985)" />。

===実数・複素数への拡張===
[[File:Collatz Cobweb.svg|thumb|実関数として拡張したコラッツ写像上で、コラッツ数列 10 → 5 → 8 → 4 → 2 → 1 → ... を[[クモの巣図法]]で表示したもの。]]

コラッツ写像は、整数時に元々の定義と一致するように実数に拡張することができる。
これは[[補間]]関数と呼ばれる。
これを行うには、下記を満たす２つの関数を適当に決めればよい。

:<math>g_1(n) = \begin{cases}1, &n\text{ is even,}\\ 0, &n\text{ is odd,}\end{cases}</math>
:<math>g_2(n) = \begin{cases}0, &n\text{ is even,}\\1, &n\text{ is odd,}\end{cases}</math>

そしてこれらを使って下記のようにコラッツ写像を定義できる：
:<math>f(x) \triangleq \frac{x}{2}\cdot g_1(x) \,+\, \frac{3x + 1}{2}\cdot g_2(x)</math>.

<math>g_1</math> と <math>g_2</math> の選択肢として、例えば、
<math>g_1(x) \triangleq \cos^2\left(\tfrac{\pi}{2} x\right)</math> と <math>g_2(x) \triangleq \sin^2\left(\tfrac{\pi}{2} x\right)</math> を選ぶことができる。

実直線上でのこの写像の反復については、マーク・チェンバーランド{{Small|&nbsp;(Marc Chamberland)&nbsp;}}の研究によると、この関数は実直線上に無限に多くの[[不動点]]を持ち、また反復合成について単調に無限大に発散する軌道も持つ<ref name="Chamberland (1996)" />。

{{Math|''f''(''x'')}} の正の不動点を小さい方から {{Math|0 < μ<sub>1</sub> < μ<sub>2</sub> < μ<sub>3</sub> < …}} とおく。このとき、{{Math|[μ<sub>1</sub>, μ<sub>3</sub>]}} の範囲には周期アトラクターがちょうど2つ存在して、1つは {{Math|{1, 2&#x7d;}}、もう1つは {{Math|{1.192531907..., 2.138656335...}&nbsp;}}である。
[[ファイル:CollatzFractal.png|サムネイル|複素コラッツ写像の[[ジュリア集合]]。色がついている点はすべて無限遠へ発散する。]]
Letherman, Schleicher および Wood はこの関数の研究を複素平面へと拡張した<ref name="Letherman, Schleicher, and Wood (1999)" />。ほとんどの複素平面上の点は無限遠へと発散するが、境界となる[[ジュリア集合]]は[[フラクタル]]図形を描く。

[[File:Exponential Collatz Fractal.jpg|thumb|right|複素指数関数による定義でのジュリア集合。]]

複素関数で定義する方法は他にもたくさんある。たとえば、正弦関数と余弦関数の代わりに 複素指数関数を使用する方法がある：

<math>f(z) \triangleq \frac{z}{2} + \frac14(2z + 1)\left(1 - e^{i\pi z}\right)</math>

この場合異なるダイナミクスを示す。例えば
<math>\operatorname{Im}(z) \gg 1</math>では、<math>f(z) \approx z + \tfrac14</math>となり発散する。
この定義に対応するジュリア集合は、右図のようになる。"haris"や"rays"と呼ばれる無数の構造がある。

== 検証計算の最適化 ==
===時間と空間のトレードオフ===
上記の ''[[#パリティシーケンス（偶奇列）|パリティシーケンス]]'' により、コラッツ数列の計算の高速化が可能である。

（パリティシーケンス節の {{math|''f''}} 関数を使ったとして）{{math|<var>k</var>}} ステップ先にジャンプするために、まず現在の数値を2つに分割する： {{math|<var>b</var>}}（2進数表記で下位 {{math|<var>k</var>}} ビット）と、{{math|<var>a</var>}}（残りの上位ビット）。{{math|<var>k</var>}} ステップをジャンプした結果は以下になる：

:<math>{f^k}\left(a\ {2^k}+b\right)=a\ {3^{c\left(b\right)}}+d\left(b\right)</math>.

{{math|''c''}} (もしくは {{math|3<sup>''c''</sup>}})と {{math|''d''}} 配列は、{{math|<var>k</var>}} ビットの数すべてについて事前計算しておく。{{math|''d''(<var>b</var>)}} は {{math|<var>b</var>}} に {{math|''f''}} 関数を {{math|<var>k</var>}} 回行った数で、{{math|''c''(<var>b</var>)}} はその間に登場した奇数の数である<ref>{{citation |last=Scollo |first=Giuseppe |year=2007 |contribution=Looking for Class Records in the 3x+1 Problem by means of the COMETA Grid Infrastructure |title=Grid Open Days at the University of Palermo |url=http://www.dmi.unict.it/~scollo/seminars/gridpa2007/CR3x+1paper.pdf}}</ref>。例えば {{math|<var>k</var> {{=}} 5}} なら5ステップのジャンプが可能で、そのために下位5ビットを分割して、下記配列を使う：

:<math>c\left(0\dots31\right)=\left\{0,3,2,2,2,2,2,4,1,4,1,3,2,2,3,4,1,2,3,3,1,1,3,3,2,3,2,4,3,3,4,5\right\}</math>
:<math>d\left(0\dots31\right)=\left\{0,2,1,1,2,2,2,20,1,26,1,10,4,4,13,40,2,5,17,17,2,2,20,20,8,22,8,71,26,26,80,242\right\}</math>

これは、{{math|2<sup><var>k</var></sup>}} 個の事前計算とストレージが要求される。これにより計算速度が {{math|<var>k</var>}} 倍高速化出来るが、[[時間と空間のトレードオフ]]である。

===剰余類による制限===
コラッツ予想の反例を探すにあたって、上記の事前計算を使うと加速させることができる。もし、与えられた {{math|<var>b</var>}} と {{math|<var>k</var>}} で、不等式

:<math>{f^k}\left(a\ {2^k}+b\right)=a\ {3^{c\left(b\right)}}+d\left(b\right)<a\ {2^k}+b</math>

が成り立ったとすると、すべての {{math|<var>a</var>}} についても成立する。そうすると、最初の反例（存在するとして）は、 {{math|2<sup><var>k</var></sup>}} を法として {{math|<var>b</var>}} と合同ではないと言える<ref>{{Cite journal|last=Garner|first=Lynn E.|date=1981|title=On the Collatz 3𝑛+1 algorithm|url=https://www.ams.org/proc/1981-082-01/S0002-9939-1981-0603593-2/|journal=Proceedings of the American Mathematical Society|volume=82|issue=1|pages=19–22|language=en|doi=10.1090/S0002-9939-1981-0603593-2|issn=0002-9939}}</ref>。

例えば、最初の反例は必ず奇数である。なぜならば {{math|''f'' (2<var>n</var>) {{=}} <var>n</var>}} で、{{math|2<var>n</var>}} よりも小さいからである。同様に、最初の反例は {{math|mod 4}} で3と合同である。なぜならば、{{math|''f'' <sup>2</sup>(4<var>n</var> + 1) {{=}} 3<var>n</var> + 1}} で、{{math|4<var>n</var> + 1}} より小さいからである。コラッツ予想の反例でないすべての {{math|<var>a</var>}} には、上記不等式が成立する {{math|<var>k</var>}} が存在する。なので、ある数のコラッツ予想の検証するとき、合同なクラスを検証するとよい。{{math|<var>k</var>}}  が増加したときの検証は、より小さい {{math|<var>k</var>}} で除外されなかった {{math|<var>b</var>}} についてのみ検証すればよい。指数関数的に小さい割合だけが残ることになる{{refnest|name="Lagarias (1985) Th. D"| <ref name="Lagarias (1985)"/>Theorem D.}}。例えば {{math|mod 32}} では、{{math|<var>b</var> {{=}} 7, 15, 27, 31}} だけが残る。

== 類似の問題 ==
関数 ''f'' の定義を少し変えることにより、コラッツの問題の類似を考えることができる。
===変数''n''が奇数の時の乗数の奇数一般への拡張による類似問題===
例えば「任意の正の[[整数]] ''n'' に対して
*''n'' が偶数の場合、''n'' を 2 で割る
*''n'' が奇数の場合、''n'' に 2''m'' – 1 (''m'' &ge; 1)をかけて 1 を足す
という操作を繰り返すと、有限回で 1 に到達する」という命題を考える。''m'' = 1 のとき（''n''が奇数なら単に1を足す）は、この命題が正しいことを簡単に証明できる。''m'' = 2 の場合が上述のコラッツの問題である。''m'' &ge; 3 の場合は、''m''の値と''n''の初期値によっては、1を含まない繰り返し数列、もしくは際限なく増大していく数列が得られるため、この命題は一般に成り立たない。たとえば ''m'' = 3 の場合、nの初期値を13に設定すると、13, 66, 33, 166, 83, 416, 208, 104, 52, 26, 13 という1を含まない数列のサイクルが得られる。これは上記のヒューリスティクスの観点からして、''m''が大きくなるほど1に到達する可能性は低くなると予想されることとも符合する。

===変数''n''が奇数の時の加算数の奇数一般への拡張による類似問題===
また、もう一つの類似として、「任意の正の[[整数]] ''n'' に対して
*''n'' が偶数の場合、''n'' を 2 で割る
*''n'' が奇数の場合、''n'' に 3をかけて 2''l'' - 1 (''l'' &ge; 1) を足す
という操作を繰り返すと、有限回で 1 に到達する」という命題を考える。
ここで、''l'' = 1 のときが上述のコラッツの問題である。しかし、''l'' &ge; 2の場合、1を含まない繰り返し数列が得られる場合があるので、この命題は一般に成り立たない。

たとえば、''l'' = 2として、初期値''n'' = 43を与えた場合、43, 132, 66, 33, 102, 51, 156, 78, 39, 120, 60, 30, 15, 48, 24, 12, 6, 3, 12, 6, 3という数列が得られ、この命題は成り立たない。初期値''n''が1, 2などなら有限回で1に到達するが、他の初期値に対しては3, 12, 6, 3と、3を繰り返すサイクルになると思われる。そこで''l'' = 2に対してコラッツの予想を応用し、「任意の正の[[整数]] ''n'' に対して、上記の操作を行えば、有限回で1または3に到達する」という命題を代わりに立てれば、これが成り立つと予想される。

この二つの予想を一般化して、「任意の正の[[整数]] ''n'' に対して
*''n'' が偶数の場合、''n'' を 2 で割る
*''n'' が奇数の場合、''n'' に 3をかけて 2''l'' – 1 (''l'' &ge; 1) を足す
という操作を繰り返すと、有限回で1または2''l'' – 1 (l &ge; 1) に到達する」という命題を立てたとしても、''l'' &ge; 3以上の場合には、この命題は一般に成り立たない。たとえば''l'' = 3の場合、任意の自然数''n''が1または5に到達するという命題になるが、''n''＝13の時、13, 44, 22, 11, 38, 19, 62, 31, 98, 49, 152, 76, 38, 19と、19を繰り返す無限ループになり、1にも5にも到達しない。

ただし、上の、2''l'' – 1 (''l'' &ge; 1) が、0以上の整数''a''を用いて3<sup>''a''–1</sup> (''a'' &ge; 1) で表されるときには、上記のプロセスを繰り返せば、有限回数で1または3<sup>''a''–1</sup> (''a'' &ge; 1) に到達することは予想される。''a'' = 1の場合がコラッツの問題である。''a'' = 2の場合は、上記で''l'' = 2のケースである。

===変数''n''が奇数の時の乗数と加算数双方の、奇数一般への拡張による類似問題===
以上のことから、一般化は困難ではあるが、個別に考えるなら、さらに進んで、「任意の正の[[整数]] ''n'' に対して
*''n'' が偶数の場合、''n'' を 2 で割る
*''n'' が奇数の場合、''n'' に 2''m'' – 1 (''m'' &ge; 1) をかけて、2''l'' – 1 (''l'' &ge; 1) を足す
という操作を繰り返すとき、''n''、''m''、''l''の値に応じてどのような数列が展開されるか」

という問題にも拡張できるなど、コラッツの問題の類似問題の幅は広い。

== ギャラリー ==
<gallery widths="180px" heights="250px">
Collatz_orbits_of_the_all_integers_up_to_1000.svg|最初の1000個の数字の数列を示す有向グラフ。
CollatzConjectureGraphMaxValues.jpg|{{mvar|x}}軸は初期値を表し、{{mvar|y}}軸は、1に至るまでの間での最大値を示す。このプロットでは、{{mvar|y}}軸の範囲を制限している：いくつかの{{mvar|x}}では、途中の最大値が{{val|2.7e7}}にもなる。({{math|''x'' {{=}} 9663}}の場合)
All Collatz sequences of a length inferior to 20.svg|20ステップ未満のすべてのツリー。
</gallery>

== 参考文献 ==
* {{cite book |editor1-last=Lagarias |editor1-first=Jeffrey C. |year=2010 |title=The ultimate challenge: the {{math|3x + 1}} problem |publisher=American Mathematical Society |location=Providence, R.I. |isbn=978-0-8218-4940-8 |url = {{google books|hekJ7JDMEVkC|plainurl=yes}} |mr=2663745 |zbl=1253.11003 |ref={{sfnref|Lagarias|2010}} }}

== 関連文献 ==
*『数学100の問題』 日本評論社 {{ISBN2|978-4535606142}} 　「角谷の問題」として取り上げられている。
*『数学の魔法の宝箱』 [[イアン・スチュアート (数学者)]] ソフトバンク クリエイティブ {{ISBN2|978-4-7973-5982-4}}：「コラッツ＝シラキュース＝ウラム問題」として紹介されている。

== 関連項目 ==
*[[タグシステム]]
*[[FRACTRAN]]

== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=CollatzProblem|title=Collatz Problem}}
* {{Wayback|url=http://www.geocities.co.jp/HeartLand/2327/rada/korattsu.html |title=コラッツ予想 |date=20011123190651}} コラッツ予想計算
* [https://www.usamimi.info/~geko/arch_acade/elf027_collatz/index.html コラッツ予想に関するプログラム集。]　コラッツ予想計算、拡張問題にも対応可能。
* {{PDFlink|[https://web.archive.org/web/20120330191814/http://risweb2.ris.ac.jp/faculty/earth_env/yamasita/open/p-col.pdf コラッツ問題のある一般化について]}}（2012年3月30日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]）
* [https://boinc.thesonntags.com/collatz/ Collatz Conjecture] コラッツの問題を検証する為の[[分散コンピューティング]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|30em|refs=

===Papers===
<ref name="Chamberland (1996)">{{cite journal |first=Marc  |last=Chamberland |title=A continuous extension of the 3''x''&nbsp;+&nbsp;1 problem to the real line |journal=Dynam. Contin. Discrete Impuls Systems |volume=2 |issue=4 |pages=495–509 |year=1996 |doi= |url=}}</ref>
<ref name="Letherman, Schleicher, and Wood (1999)">{{cite journal |first1=Simon |last1=Letherman |first2=Dierk |last2=Schleicher |first3=Reg |last3=Wood |title=The (3''n''&nbsp;+&nbsp;1)-Problem and Holomorphic Dynamics |journal=Experimental Mathematics |volume=8 |issue=3 |pages=241–252 |year=1999 |doi= 10.1080/10586458.1999.10504402|url=}}</ref>
<ref name="Steiner (1977)">{{cite book |first=R. P. |last=Steiner |chapter=A theorem on the syracuse problem |chapterurl= |editor= |title=Proceedings of the 7th Manitoba Conference on Numerical Mathematics |location= |year=1977 |isbn= |pages=553–9 |mr=535032}}</ref>
<ref name="Simons & de Weger (2003)">{{cite journal |first=J. |last=Simons |first2=B. |last2=de Weger |title=Theoretical and computational bounds for ''m''-cycles of the 3''n''&nbsp;+&nbsp;1 problem |journal=Acta Arithmetica |volume=117 |issue=1 |pages=51–70 |year=2003 |doi=10.4064/aa117-1-3 |url=http://deweger.xs4all.nl/papers/%5B35%5DSidW-3n+1-ActaArith%5B2005%5D.pdf |bibcode=2005AcAri.117...51S }}</ref>
}}

{{DEFAULTSORT:こらつつのもんたい}}
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[[Category:数学に関する記事]]
[[Category:整数の類]]
[[Category:予想]]
[[Category:数学のエポニム]]
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