コンピュータ将棋のソースを表示

[[File:Xboard shogi.png|thumb|ボードゲームソフト[[:en:XBoard|XBoard]]の将棋版]]
{{将棋ヘッダ}}
'''コンピュータ将棋'''（コンピュータしょうぎ）は、[[コンピュータ]]による[[将棋]]の対戦、また将棋を指すコンピュータおよびその[[プログラム (コンピュータ)|プログラム]]そのものである。

== 代表的なプログラム ==
{{see also|Category:コンピュータ将棋|Category:将棋ゲームソフト|世界コンピュータ将棋選手権#歴代大会結果|en:List of shogi video games}}
[[File:Shogibrowserq.png|thumb|{{仮リンク|将棋ぶらうざQ|en|Computer shogi#Shogi Browser Q}}]]
<!-- Wikipediaに項目のあるソフトまたは著名な大会（世界コンピュータ将棋選手権か電竜戦本戦）で優勝したソフトのみ記載してください -->
{{Div col}}
=== 無料 ===
* [[Bonanza]]<ref group="注釈">[[ソースコード]]は公開されている。営利目的での利用の禁止などの制限により、[[Open Source Initiative]]による「[[オープンソース]]の定義」には合致しない。</ref>
* [[elmo (コンピュータ将棋ソフト)|elmo]]
* [[ハム将棋]]
* [[ぴよ将棋]]
* [[ミクロコスモス (将棋)#ミクロコスモスと脊尾詰|脊尾詰]]（詰将棋専用）<ref>[http://panashogi.web.fc2.com/seotsume.html 無料ダウンロード版]</ref>
* [[水匠]]5以前

==== [[オープンソース]] ====
* [[Apery]]
* [[GNU Shogi]]
* [[GPS将棋]]
* [[Puella α]]<ref>[http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/puella-620e.html Puella α ソース公開]</ref>
*[[AlphaZero]]<ref>{{Citation|title=A clean implementation based on AlphaZero for any game in any framework + tutorial + Othello/Gobang/TicTacToe/Connect4: suragnair/alpha-zero-general|last=Nair|first=Surag|date=2018-12-08|url=https://github.com/suragnair/alpha-zero-general|accessdate=2018-12-08}}</ref>
* [[技巧]]
* [[やねうら王]]

=== 有料 ===
==== [[市販ソフトウェア]] ====
* [[AI将棋]]
* [[柿木将棋]]
* [[金沢将棋]]
* [[銀星将棋]]
* [[激指]]
* [[東大将棋]]
* [[森田将棋]]

==== ダウンロード販売・Webサービス ====
* [[dlshogi]]<ref group="注釈">第2回電竜戦バージョンまで公開していたが、最新版は有料ウェブサービスの棋神アナリティクスで利用できる。</ref>
* [[水匠]]6以降<ref group="注釈">水匠5までは無料公開。水匠6から非公開。水匠10betaを有料で頒布。最新版は有料ウェブサービスの棋神アナリティクスで利用できる。</ref>
* [[tanuki-]]シリーズ<ref group="注釈">2015年の第3回将棋電王トーナメントにtanuki-として出場。以降大会ごとプログラム名を変えているが、いずれも[[タヌキ]]にちなんだ名前で出場している。以前は公開していたが、最新版は有料で頒布。</ref>
*氷彗<ref group="注釈">第5回電竜戦本戦優勝。有料ウェブサービスの棋神アナリティクスで利用できる。</ref>

=== 一般向け非公開 ===
* [[AWAKE (コンピュータ将棋ソフト)|AWAKE]]
* [[Selene (コンピュータ将棋プログラム)|Selene]]
* [[TACOS]]
* [[Ponanza]]<ref group="注釈">一度市販されたがバグのため回収。[[将棋ウォーズ]]<!--や（機能終了）[[LINE (アプリケーション)|LINE]][[ローソン]]公式アカウント-->などで体験可</ref>
* [[習甦]]
* [[ツツカナ]]

{{Div col end}}

== 歴史 ==
{{See also|将棋棋士とコンピュータの対局一覧}}

=== 1970年代まで ===
コンピュータ将棋プログラム開発の黎明期においては、指将棋よりも先行して[[詰将棋]]を解くことが試みられた。1967年には[[日立製作所]]の越智利夫を中心とするグループが同社の5020Eを使用して詰将棋を解かせることに成功。[[加藤一二三]]（当時八段）が60秒で解く問題を90秒で解くなどアマ初段の腕前とされた<ref>「電子計算機で詰め将棋 アマ初段の腕前」『朝日新聞』昭和42年7月4日朝刊、12版、15面</ref>。さらに1968年、越智らは「初の詰将棋を解くプログラム」を発表している<ref>[https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/4571.html 計算機が解く詰将棋 越智利夫/亀井達弥/徳増真司/内ヶ崎儀一郎] 数学セミナー1968年6月号 pp.44 日本評論社 2017年4月10日閲覧</ref><ref>{{cite journal|和書|url=http://id.nii.ac.jp/1001/00061041/ |journal=情報処理|year=2008|volume=49 |issue=8|title=コンピュータ将棋は止まらない : 5.棚瀬将棋の技術背景|pages= 987-992|author=棚瀬 寧}} 囲みコラム「おふぃすらん」</ref>。

[[1968年]]、[[週刊朝日]]の企画で人間対コンピュータの[[詰将棋]]早解き競争が行われた。コンピュータは「H君」（[[HITAC]]5020を使用）。人間は各界の著名人で、初心者に近い人、学生名人、詰将棋作家など多彩だったものの、多くはアマの有段者であった。一人二問で、詰将棋は一問ずつ出題され、一問ごとにタイムが競われた。結果は人間の49勝53敗であった。審判・解説の[[原田泰夫]]・[[加藤一二三]]両八段は、「H君」の詰将棋を解く棋力をアマチュア三段と認定した<ref>ルポ 電王戦―人間 vs. コンピュータの真実、松本博文、2014/6/6, pp.18-23.</ref>。

[[大山康晴]]は1968年頃既に「人間が負けるに決まってるじゃないか」と予言し<ref>[[東公平]]『升田式石田流の時代』[[河出書房新社]]、2000年9月25日初版、102頁</ref><ref>[https://shogipenclublog.com/blog/2010/03/30/%E5%A4%A7%E5%B1%B1%E3%83%BB%E5%8D%87%E7%94%B0%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%B0%86%E6%A3%8B%E8%A6%B3/ 大山・升田のコンピュータ将棋観 | 将棋ペンクラブログ]</ref>、「コンピュータに将棋なんか教えちゃいけないよ。ろくなことにならないから」と語っていた<ref>[https://news.nicovideo.jp/watch/nw579724 第2回将棋電王戦 第3局 電王戦記(筆者：大崎善生) 2013年4月11日(木)22時40分配信] - [[ニコニコニュース]] [[大崎善生]]</ref>。

逆に批評家の[[小林秀雄 (批評家)|小林秀雄]]は1964年『考えるヒント』で「機械には、物を判断する能力はない、だから機械には将棋は差せぬ」と語った<ref>[https://yaneuraou.yaneu.com/2015/03/04/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E7%A7%80%E9%9B%84%E3%81%AE%E8%A8%80%E3%81%86%E5%B8%B8%E8%AD%98%EF%BD%97%EF%BD%97%EF%BD%97/ 小林秀雄の言う常識ｗｗｗ | やねうら王 公式サイト]</ref>。

1970年10月に、[[加藤一二三]]はチェスの研究がすでに進んでいることを知り、将棋でも同じようになるだろうと予想し、以下にように寄稿した。

{{Quotation|コンピュータ（[[HITAC]]）を使って詰将棋を解くプログラムはほぼ完成されておりまして、次には指し将棋をやらせてみようという段階です。ご存知の通り、チェスの方では、すでに、かなり強い人間と勝負のできる電算機があるのですから将棋も囲碁も、用具やルールこそ違え、究極は及じ理論体系で律することのできるゲームなのでしょう。興味は、どのくらい強くなるか、また、どのくらい早く指せるかという、人間的な現象にしぼられるでしょう。

最近のソ連のチェス誌に、[[ミハイル・ボトヴィニク]]（元世界チャンピオン・工博）の談話が出て「近い将来、コンピューターの実力は、世界の一線級プレイヤーに追いつくであろう」と予言しているのですが、もしそうなったところで、決して世界何億のチェス愛好家が、チェスを見捨てたり、「興ざめだからヤメてくれ」とボトヴィニク博士に手紙を送ったりはしないでしょう。

月にロケットが到達して、ウサギがいないことを証明してみせても、子供達は童話の世界で遊ぶことをやめないでしょう。俳人は、澄んだ目で月を眺めて、新しい句を詠むでしょう。私も、そのようにありたいと思う一人ですから、積極的に数学関係の方々とのおつき合いを深めたいと思います。私の将棋の力がコンピュータと将棋、というひとつの登山ルートから、科学の山頂を攻撃するについて少しでもお役に立てば幸いです。そういう形での努力は、われわれ専門棋士にとっても大きな利益を生むはずです。

|COMPUTER ESSAY「将棋」加藤一二三(『Computer report』1970-10 日本経営科学研究所)}}

指将棋のプログラム開発が始まったのは、1970年代中ごろと言われている。当時「人工知能、知識工学の完全情報ゲームへの応用」というテーマで指将棋システムの開発をしていた、早稲田大学大学院理工学研究科 大学院生の瀧澤武信（後に[[早稲田大学政治経済学術院]]教授、[[コンピュータ将棋協会]]会長）をメイン[[プログラマー]]とするプロジェクトチームによって、1974年11月から開発され1975年5月に完成したものが、おそらくは世界で最初のコンピュータ将棋であった<ref name="shoki">{{Cite journal|和書|author=清愼一 |date=2014-03 |url=http://id.nii.ac.jp/1001/00099265/ |title=コンピュータ将棋の初期の歴史 |journal=情報処理学会研究報告. GI[ゲーム情報学] |ISSN=09196072 |publisher=情報処理学会 |volume=2014 |issue=8 |pages=1-8 |CRID=1571698602789819904}}</ref><ref>[[将棋世界]]2007年7月号より。</ref><ref group="注釈">2010年に情報処理学会が日本将棋連盟に渡した挑戦状にも、この年を起点とした「35年」という開発の歴史の年数が記されている</ref>。このプログラムは簡素な評価関数とミニマックス法を組み合わせたものだった<ref name=":1">{{Cite web |title=人間のさらにその先へ──将棋AIはまだ強くなれるのか？ 「水匠」と「やねうら王」の開発者が語る“歴史と未来” |url=https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2408/30/news119.html |website=ITmedia AI＋ |access-date=2024-09-15 |language=ja}}</ref>。瀧澤らの開発の目的は、[[作家]]の[[斎藤栄]]の「[[天野宗歩]]が現代の花形棋士（当時の[[中原誠]]や[[米長邦雄]]）と戦ったらどうなるのかコンピュータでシミュレーションしてくれませんか」という依頼に応じることであり、初の対人間戦も斎藤と行った。[[日本情報経済社会推進協会|日本情報処理開発協会]]の催しで数回実演したものの、序盤を過ぎると「目を覆いたくなるような」手を連発して、解説の中原らを困らせた<ref>共立出版 bit別冊『ゲームプログラミング』pp. 45-46</ref>。1976年には池袋[[東武百貨店]]のイベントで[[米長邦雄]]と初の対プロ戦を行い完敗した<ref name="shoki"/>。

1979年、初めてのコンピュータ同士の対戦が、電話を使って行われた。[[大阪大学]](奥田育秀、牧野寛、木沢誠)対[[玉川大学]]（瀧澤武信）で、阪大が勝利。1981年の玉川大対[[東京農工大学]]（[[小谷善行]]）は玉川大が勝利<ref name="shoki"/><ref name="ess">[http://www.yss-aya.com/shogi.html 将棋プログラムの紹介]</ref>。当時のコンピュータの速度では、対戦が終わるまで年単位かかるため、[[竹内郁雄]]による提案で2/3は人が指す「ハイブリッド対戦法」によって、瀧澤武信と小谷善行の間で、1982年から1983年にかけて対戦が行われた<ref>共立出版 bit別冊『ゲームプログラミング』p. 46</ref>。

=== 1980年代以降 ===
1980年代に入ると、初期の[[パーソナルコンピュータ]]（当時のマイコン）が普及し、将棋に先駆けてアスキーマイクロオセロリーグが1980年から行われていた。やがてパソコン用将棋ソフトも登場し、1983年に[[コムパック]]から『将棋対局』が[[PC-6001]]シリーズ向けに発売され<ref name="shoki"/>、1980年代前半には雑誌上でも『ESS』『棋動戦士ランダム』などの将棋プログラムが発表された<ref name="ess"/><ref>[https://yaneuraou.yaneu.com/2022/05/27/the-worlds-first-free-publicly-available-shogi-software/ 世界で最初に無料で公開された将棋ソフトとは？ | やねうら王 公式サイト]</ref>。また[[アーケードゲーム]]ではパソコンに先行して1982年に『本将棋』が[[アルファ電子]]より発売されている<ref name="shoki"/>。家庭用ゲーム専用機では、1985年になって[[ファミリーコンピュータ]]向けに[[セタ (企業)|セタ]]から『[[内藤九段将棋秘伝]]』が、[[スーパーカセットビジョン]]向けに[[エポック社]]から『[[スーパーカセットビジョン用ソフト#将棋入門|将棋入門]]』が相次いで発売された。

こうしてコンピュータ将棋のゲームソフトが市場に出回り始めたものの、当時はハードウェアの性能も低く、評価関数も簡単なものであったため、人間に比べて非常に弱い[[プログラム (コンピュータ)|プログラム]]であった。例えばファミコン初の将棋ソフト『内藤九段将棋秘伝』は、初形から15手でCPUを詰ます必勝手順が判明しており、2018年には『[[RTA in Japan]]』の種目として[[タイムアタック (ゲーム)|リアルタイムアタック]] (RTA) が催された<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.denfaminicogamer.jp/gamenewsplus/181231c |title=ファミコン初の将棋ゲームは今や”アクションゲーム”だった。『内藤九段将棋』で戦う謎のRTA大会が開催、熱き戦いで会場熱狂に |publisher=電ファミニコゲーマー |date=2018-12-31 |accessdate=2022-11-14}}</ref>ほどであった。

[[松原仁 (情報工学者)|松原仁]]によると、日本ではゲームの研究が白い目で見られることが多く、1990年代後半までは将棋・チェス・囲碁などのゲーム研究自体が学界で冷遇される風潮があり、自身はロボットの画像認識研究に偽装してこっそり研究していたという<ref name="matsubara-fukuhara"/><ref>[https://acaric.jp/articles/journal/2713 【東京大学 松原仁 氏】AI冬の時代からフロンティア、そしてゲーム情報学の提唱へ(2) | お役立ちコンテンツ｜アカリク]</ref><ref>{{Cite journal |和書|author=松原仁 |authorlink=松原仁 (情報工学者) |title=ゲムのプログラムについて |journal=計測と制御 |volume=42 |issue=6 |publisher=計測自動制御学会 |date=2003-06-10 |pages=512-515 |doi=10.11499/sicejl1962.42.512}}</ref>。100億円ともいわれる予算を注ぎ込んだコンピュータチェスに対して、コンピュータ将棋は個人の趣味として進められた<ref>[[リコー]]将棋部 西田文太郎 [http://www.shogi.ricoh/event/evt0090.html event-0090 イベント・レポート 第1回 国際将棋フォーラム(1日目) ]</ref>。これは、「チェスはAIの[[ショウジョウバエ]]である」としてゲーム研究を通したAI研究が盛んだった米国に比べて、日本のAI研究全体が遅れを取る結果にも繋がったともされる<ref name="matsubara-fukuhara">{{Cite web|和書|author=福原智 |url=https://gentosha-go.com/articles/-/20098 |title=ゲーム研究なんかするやつはクズだ…日本のAI開発が遅れた背景 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン |publisher=幻冬舎 |date=2019-04-30 |accessdate=2021-08-08}}</ref><ref>{{Cite book |editor=松原仁・竹内郁雄 |year=1997 |title=『ゲームプログラミング』所収「なぜ日本ではゲームの研究が疎外されてきたか」 |publisher=共立出版 |naid=10025276643}}</ref>。

将棋ソフトの普及は「どのプログラムが最も強いのか」という興味も惹くこととなり、1986年、有志らによって、『コンピュータ将棋プログラム』の会が発足した。翌年、『[[コンピュータ将棋協会]]』（略称: CSA）に改名され、その後[[世界コンピュータ将棋選手権]]を年1回開催するようになった<ref>将棋世界2007年7月号より。</ref>。第1回大会は1990年12月2日、[[日本将棋連盟|将棋会館]]で行われ、6つのソフトが参加し『永世名人』が優勝した。

並行してコンピュータによる棋譜管理システムも生まれ、1988年に初代[[竜王戦|竜王]]となった[[島朗]]はコンピュータで棋譜管理をしていることが話題となった<ref>[https://shogipenclublog.com/blog/2014/06/05/kifu/ 棋譜検索ソフト事始め | 将棋ペンクラブログ]</ref><ref>[https://bunshun.jp/articles/-/9597 初代竜王・島朗九段が考える「コンピューター将棋」と世代交代 | 観る将棋、読む将棋 | 文春オンライン]</ref>。

=== 20世紀末 ===
初期のコンピュータ将棋は、上述のように人間の初級者にも劣る棋力だったため、コンピュータがプロ棋士の棋力に達するのは当分先と思われていた。[[小谷善行]]によると、1990年時点のコンピュータソフトの棋力はアマ2〜3級程度だったという<ref name="kotani-2014">{{Cite journal |和書|author=小谷善行 |authorlink=小谷善行 |title=コンピュータ将棋の来た道 |journal=知能と情報 |volume=26 |issue=5 |publisher=日本知能情報ファジィ学会 |date=20 |pages=181-186 |doi=10.3156/jsoft.26.5_181}}</ref>。しかし1990年代に入ると、ソフトウェア開発技術やハードウェア性能の向上が進み、「[[金沢将棋]]」などのトップレベルのプログラムは1994年から1996年の間にアマチュア初段に達したとされる{{sfn|瀧澤|2012|p=22}}。

1996年に発行された『平成8年度将棋年鑑』には、「コンピュータがプロを負かす日は? 来るとしたらいつ」というプロ棋士へのアンケートが掲載された{{efn|
『平成8年度[[将棋年鑑]]』（[[1996年]]）より
*コンピュータがプロを負かす日が近い将来に来ると答えた棋士
:[[久保利明]]「来世紀」、[[内藤国雄]]「10年以内にくるような気がする」、[[土佐浩司]]「10年くらいで来る」、[[先崎学]]「10年後」、[[桐谷広人]]「来る。10年後」、[[伊藤能]]「僕くらいのレベルなら近いのではないか」、[[神吉宏充]]「5年ぐらい先か。最初に私が負けてやる」、[[斎田晴子]]「10年後」

*来ないと答えた棋士
:[[米長邦雄]]「永遠になし」、[[行方尚史]]「たぶんこないと思うけど、みなさん頑張って下さい」、[[加藤一二三]]「こないでしょう」、[[大内延介]]「当分こない」、[[深浦康市]]「こない」、[[中村修 (棋士)|中村修]]「トップは負けないと思う」、[[村山聖]]「こない」、[[阿部隆]]「こない日を祈っている」、[[畠山鎮]]「こない」、[[佐藤秀司]]「そういうことになったらプロは要らなくなるので、こないように祈るしかない」、[[勝又清和]]「否定」、[[田村康介]]「自分は負けない（他人は？）」[[中井広恵]]「こない」、[[石橋幸緒]]「こない」、[[矢内理絵子]]「こないと思う」

*「来るが、かなり遠い先である」もしくは「条件付きで来る」と答えた棋士
:[[羽生善治]]「2015年」、[[森内俊之]]「2010年」、[[屋敷伸之]]「来る。ただトップには勝てない」、[[中原誠]]「だいぶ先とは思いますがくるはずです」、[[森下卓]]「いつかは来ると思う」、[[田中寅彦]]「思います。私が生きているうち」、[[井上慶太]]「10年ではこないと思う」、[[青野照市]]「プロの仲間入りはできても、トップは負かせない」、[[塚田泰明]]「希望としては、自分が現役の内に」、[[郷田真隆]]「いつかはくる。ただし人間を超えることはできないと思う」、[[東和男]]「七冠王がプログラミングする日」、[[桐山清澄]]「20年後」、[[南芳一]]「40年ぐらい先」、[[真部一男]]「プロにも色々あるが、トップを負かすとなると百年くらい先か」、[[二上達也]]「超早指し戦だったら今でもプロが負ける場合がある。要は条件次第」、[[剱持松二]]「プロ棋士がプログラムを組めるようになった時」、[[谷川浩司]]「私が引退してからの話でしょう」、[[千葉涼子]]「50年後」、[[淡路仁茂]]「私が生きている間はない」、[[真田圭一]]「100年は負けない」

*わからないと答えた棋士
:[[高橋道雄]]「?」、[[三浦弘行]]「分からない」

*その他の回答をした棋士
:[[平藤眞吾]]「[[ゲームセンター]]の将棋に2回負けた」

*回答しなかった棋士
:[[有吉道夫]]、[[田丸昇]]、[[佐藤康光]]、[[清水市代]]<ref>https://web.archive.org/web/20101209171434/http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/14-3e8e.html</ref><ref>https://www.nikkei.com/article/DGXMZO82441030X20C15A1000000/</ref>
}}。後年の羽生は「別に深く考えずに適当に書いただけなんで……（苦笑）」と述懐している<ref>{{Cite web|和書|url=https://gendai.ismedia.jp/articles/-/43661?page=4|title=電脳戦が羽生にもたらした人工知能への興味 G2レポート・棋士道 羽生善治「将棋の神」に極意を質す（その4）|publisher=現代ビジネス[講談社]|accessdate=2019-10-29|date=2015-06-11|author=高川武将|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150613230204/https://gendai.ismedia.jp/articles/-/43661?page=4|archivedate=2015-06-13}}</ref>。また「トップレベルに到達するかどうかは分からない」とも述べていた<ref>[https://web.archive.org/web/20040218095630/http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/004/20030820fe02.htm 連載【人工知能とゲーム】（３）将棋（下） / 特集 / ネット＆デジタル / YOMIURI ON-LINE]</ref>。偶然か必然か、羽生の予想した「2015年」は、羽生との対局が実現しなかった[[情報処理学会]]がプロジェクト打ち切りを宣言した年となった（[[#2015年|後述]]）。

[[AI将棋|YSS]]開発者の山下宏は、1994年、第4回コンピュータ将棋選手権の自戦記で「8年後。これを読んでいるあなた、もしあなたがプロでない限り、あなたはコンピュータに破れます。そして2010年、たとえ羽生であろうと誰であってもコンピュータに勝てないつまらない時代がやって来る」と予測している<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.urban.ne.jp/home/khf07332/shogi/comp3.htm|title=コンピュータ将棋3 機械仕掛けの将棋指し 工学部3年|publisher=|accessdate=2019-10-29|date=|author=山下宏|archiveurl=https://web.archive.org/web/19990930042104/http://www.urban.ne.jp/home/khf07332/shogi/comp3.htm|archivedate=1999-09-30}}</ref>。

1997年にはコンピュータチェス『[[ディープ・ブルー (コンピュータ)|Deep Blue]]』が人間のチャンピオンである[[ガルリ・カスパロフ]]を破り、オセロでも『ロジステロ』が[[村上健]]を破った。しかし、その頃のコンピュータ将棋はアマチュア二段程度であり、棋士にも余裕がうかがえた<ref>[https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1710/06/news013_3.html 人間VSコンピュータオセロ 衝撃の6戦全敗から20年、元世界チャンピオン村上健さんに聞いた「負けた後に見えてきたもの」（3/3 ページ） - ねとらぼ]</ref>。一方で、この頃には詰将棋を解く技術の研究が大きく進み、1997年には最長手数の詰将棋問題『[[ミクロコスモス (将棋)|ミクロコスモス]]』がコンピュータに解かれたことが報告されている<ref name="kotani-2014"/>。[[真部一男]]は2000年の時点で、詰将棋では既にコンピュータがプロ棋士を大きく上回っていると考え、将棋ソフトによるカンニングが「200X年」の近未来に起こりかねないと危惧していた<ref name="sf">[https://shogipenclublog.com/blog/2016/10/07/manabe-10/ 李下に冠を整さず | 将棋ペンクラブログ](2016.10)、その記事で引用されているのは[[将棋世界]]2000年11月号、[[真部一男]]八段（当時）の「将棋論考」。</ref>。

=== 2001年から2004年 ===
2001年時点ではコンピュータ将棋のレベルはアマ4段程度、最大の弱点は中盤の戦いが始まる前後であり、竜王・名人を破るのは環境が揃えば十数年以内と目された<ref>{{Cite journal|和書|author=松原仁, 滝沢武信 |date=2001-05 |url=https://doi.org/10.11517/jjsai.16.3_379 |title=コンピュータ将棋はどのようにしてアマ4段まで強くなったか (<特集>「エンターテイメントとAI」) |journal=人工知能 |ISSN=09128085 |publisher=人工知能学会 |volume=16 |issue=3 |pages=379-384 |doi=10.11517/jjsai.16.3_379 |CRID=1390848647556186112}}</ref>。プロ棋士で学者の[[飯田弘之]]は、時間制限次第では[[2012年]]に名人超えと予測した<ref name="iida">[https://www.nttcom.co.jp/comzine/no001/dragnet/ COMZINE by nttコムウェア]</ref>。この頃にはプロ将棋界でも[[携帯電話]]のルールが問題となった<ref>[[米長邦雄]]ホームページ [https://web.archive.org/web/20041230020511/http://homepage1.nifty.com/yonenaga-kunio/sakusaku/2_1.htm 将棋の話]</ref>。

2001年7月[[AI将棋#YSS|YSS]]が[[将棋倶楽部24]]に参戦、12勝5敗の成績で[[イロレーティング|レーティング]]1870?を記録。

2003年6月YSSが将棋倶楽部24に参戦、39勝13敗の成績でレーティング2077を記録。

2004年5月YSSが将棋倶楽部24に参戦、41勝11敗の成績でレーティング2324を記録<ref name="#3">http://www.yss-aya.com/24rating.html</ref>。

===2005年===
同年の世界コンピュータ将棋選手権のエキシビション対局で、優勝ソフト[[激指]]がプロ棋士の[[勝又清和]]に[[将棋の手合割|角落ち]]で勝利した<ref name="comvshuman">[http://www.junichi-takada.jp/computer_shogi/comvshuman.html コンピュータ将棋 対 人間 対戦の記録]</ref>。また、2005年6月の第18回[[将棋のアマチュア棋戦#アマチュア竜王戦|アマチュア竜王戦]]に招待選手として出場した『激指』は、都道府県代表を相手に3連勝し決勝トーナメント進出・ベスト16入りを果たした<ref>[https://web.archive.org/web/20120711180142/http://hobby.nikkei.co.jp/shogi/news/2005.cfm?i=2005062507613ss 将棋ソフトの「激指」、アマ全国大会でベスト16に進出] NIKKEI 将棋王国 2005年6月25日</ref>。

5月、[[AI将棋#YSS|YSS]]が将棋倶楽部24に参戦、37勝15敗の成績でレーティング2463を記録<ref name="#3"/>。

6月2日に[[Bonanza]] ver.1.0が公開。公開直後から[[渡辺明 (棋士)|渡辺明]]が自身のブログで「プロが平手で餌食になった」「[[奨励会]]有段者もコロコロ負けているらしい」とたびたび話題にし<ref>{{Cite web|和書|url=https://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/0ec4e61968eb148e2b7059a83f953ea0|title=ボナンザとか。|date=2005-10-03|author=渡辺 明|work~渡辺明ブログ|accessdate=2013-05-08}}</ref>、渡辺自身も「10秒将棋{{efn|持ち時間を1手10秒に制限する。渡辺によれば、10秒将棋では思考・読みを行う余裕が全くないため、人間であれば直感・第一感で指すしかなく、その時間でもそれなりに読めるコンピュータが圧倒的に有利な条件であるという。}}だと10回に1、2回はやられる」と述べた<ref>{{cite journal|和書|title=渡辺明竜王×[[保木邦仁]]（Bonanza開発者） 竜王vsボナンザ 歴史的一戦にのぞむ |journal=将棋世界|year=2007|month=4}}</ref>。[[将棋倶楽部24]]でのレーティングは約2400<ref>https://web.archive.org/web/20050605011822/http://www.geocities.jp/bonanza_shogi/#news</ref>。（[[Pentium 4]] 2GHz，1手18秒）

9月18日のイベントで、[[飯田弘之]]らが開発した[[TACOS]]が[[橋本崇載]]と[[将棋の手合割|平手]]の対局を行った。結果は橋本の勝利となったが、TACOS に敗北寸前まで追い詰められた<ref>[http://www.jaist.ac.jp/news/2005/0920.html 飯田教授らが開発したコンピュータ将棋はプロ棋士に惜敗]（北陸先端科学技術大学院大学：ニュースとお知らせ）参照。</ref>。「プロ棋士対ソフト」をビジネスチャンスと捉えていた[[日本将棋連盟]]の理事会は、全棋士に無断でコンピュータと[[公開対局 (将棋)|公開対局]]を行うことを禁止した<ref>[棋士とコンピュータソフトの対局について https://web.archive.org/web/20051107023750/http://www.shogi.or.jp/osirase/news/2005-10.html] 日本将棋連盟</ref><ref>{{cite news|archiveurl=https://web.archive.org/web/20051016025542/http://www.asahi.com/national/update/1014/TKY200510140274.html|archivedate=2005-10-16|url=http://www.asahi.com/national/update/1014/TKY200510140274.html|date=2005-10-14|newspaper=朝日新聞|accessdate=2015-05-27}}</ref>。後に橋本崇載は、「TACOSは[[奨励会]]入会試験に合格できない程度の強さで、敗北寸前まで追い詰められる訳がない。（本気をだせばすぐ終わるので）緩めた。」と著書で記している<ref>棋士の一分 将棋界が変わるには (角川新書)2016/12/10</ref>。

10月、将棋世界の企画で[[激指]]（[[Pentium 4]] 2.8GHzを使用）と[[渡辺明 (棋士)|渡辺明]]が[[将棋の手合割|角落ち]]の持ち時間各40分、時間切れ後は1手40秒で対戦し、渡辺明が勝った。同じ条件で激指と[[木村一基]]が対戦し、木村一基が負けた。

10月23日、第3回[[国際将棋フォーラム]]にて、[[AI将棋#YSS|YSS]]と[[森内俊之]]が[[将棋の手合割|角落ち]]の1手30秒で対戦し、森内が勝った。

===2006年から2009年===
日本将棋連盟会長の[[米長邦雄]]は2006年を将棋普及の「改革元年」と位置付け、その一環としてコンピュータソフトVS人間の対決をプロモートしていく方針を掲げた<ref>米長邦雄ホームページ [https://web.archive.org/web/20060118123736/http://homepage1.nifty.com/yonenaga-kunio/sakusaku/2_1.htm 『将棋の話』より「抱負」]</ref>。2006年以降、コンピュータとの公開対局は、平手で行われるようになった。

2006年3月から5月にかけて、[[週刊将棋]]の連載で、第1回週刊将棋アマCOM平手戦が行われた。そこでは、アマ強豪5名と2回ずつ合計10回対戦し、コンピュータ側の7勝3敗であった。コンピュータ側は、[[激指]]・[[KCC将棋]]・[[IS将棋]]・[[AI将棋#YSS|YSS]]・[[Bonanza]]。持ち時間は1回目が60分（秒読み60秒）、2回目が20分（秒読み30秒）。

2006年5月に開かれた第16回世界コンピュータ将棋選手権にて、[[Bonanza]] ver2.0が優勝。高性能な[[ワークステーション]]を持ち込む参加者も多い中、Bonanzaは「初出場での優勝」「ノートパソコンでの優勝」「無償ソフトの優勝」という3つの初記録を成し遂げ、開発者の間で大きな話題を呼んだ<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.magnolia.co.jp/bona.html |title=第16回世界コンピュータ将棋選手権 （2006年5月3日～5日開催）にて、Bonanzaが優勝|author=広沢一郎|work=マグノリア|date=2006-05-06|accessdate=2024-01-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://news.mynavi.jp/articles/2006/05/08/shogi/ |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140215095204/http://news.mynavi.jp/articles/2006/05/08/shogi/ |author=佐藤 晃洋 |title=【レポート】フリーソフト「Bonanza」が初出場で優勝 - 第16回コンピュータ将棋選手権|work= マイコミジャーナル|date=2006-05-08 |accessdate=2024-01-26 |archivedate=2014-02-15}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://forest.watch.impress.co.jp/article/2006/05/17/bonanza.html|title= 【NEWS】世界コンピュータ将棋選手権で優勝したフリーの将棋ソフト「Bonanza」|work=窓の杜|date=2006-05-17|author=石川 敬峰|accessdate=2024-01-26}}</ref>。また、作者の保木がBonanzaの技術情報を積極的に公開した<ref>{{Cite web|和書|url=http://minerva.cs.uec.ac.jp/~ta-ito/GPW06/program.htm |title=第11回 ゲーム・プログラミングワークショップ 2006 プログラム|accessdate=2024-01-26}}</ref>ことで、将棋ソフト全体の棋力向上に繋がったとされる{{sfn|伊藤|2023|pp=9-10}}<ref>{{Cite journal |和書 |author=伊藤毅志 |authorlink=伊藤毅志 |title="I" 見聞録：第21回世界コンピュータ将棋選手権報告 |journal=情報処理 |volume=52 |issue=10 |publisher=情報処理学会 |date=2011-09-15 |pages=1346-1349 |crid=1050845762830800000}}</ref>。

2006年9月[[AI将棋#YSS|YSS]]が将棋倶楽部24に参戦、17勝11敗の成績でレーティング2508を記録<ref name="#3"/>。

2007年3月21日には、Bonanzaとタイトルホルダーである[[渡辺明 (棋士)|渡辺明]]（[[竜王戦|竜王]]）との[[公開対局 (将棋)|公開対局]]（平手）が行われた（[[Bonanza#渡辺明竜王との対局]]参照）。BonanzaはIntel [[Xeon]] X5355 2.66GHz×8cores、メモリ8GB、1秒間に400万手読む性能で、ソフトは当時公開されていたver.2.1の探索手数を大幅に増やし、戦法の選択を改善するなどチューニングをほどこしたもので、
[[将棋倶楽部24]]でのレーティングは2800<ref>https://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/44150b5b5d9e8d6d04a84292a13ce277</ref>であった。終盤の読み違いがきっかけで敗れたものの、対局者の渡辺をはじめ複数のプロから、[[新進棋士奨励会|奨励会]]の初段から三段の実力に相当するとの高い評価を受けた。これ以降、6年間にわたって男性現役プロ棋士との公開対局が行われなくなり、この次は2013年3月の第2回電王戦であった。

2007年5月[[AI将棋#YSS|YSS]]が将棋倶楽部24に参戦、41勝11敗の成績でレーティング2744を記録<ref name="#3"/>。

2007年11月、[[情報処理学会]]副会長の[[中島秀之]]は、[[松原仁_(情報工学者)|松原仁]]らとの会話をきっかけに「学会の50周年（2010年）記念イベントとしてコンピュータ将棋と[[羽生善治]]を対決させられないか」「学会の総力を挙げれば名人にも勝てるのではないか」という構想を持った。この企画は2008年1月に承認され、中島を委員長・松原を副委員長とする「トッププロ棋士に勝つためのコンピュータ将棋委員会」が発足した。同年6月に[[米長邦雄]]ら日本将棋連盟との会合が持たれ、9月にはコンピュータ将棋の主要な開発者たちを招集しての検討会が開かれた。しかし、[[リーマンショック]]の不況でスポンサー探しが難航した影響で、プロジェクトは2009年末に至るまで停滞した<ref name="akara2010-vol1">{{Cite journal |和書 |author=伊藤毅志 |authorlink=伊藤毅志 |title=あから2010勝利への道 : 1．対戦までの準備と当日の模様 |journal=情報処理 |volume=52 |issue=2 |publisher=情報処理学会 |date=2011-02-15 |pages=154-161 |url=http://id.nii.ac.jp/1001/00072780/}}</ref><ref name="akara2010-vol8">{{Cite journal |和書 |author=中島秀之 |authorlink=中島秀之 |title=あから2010勝利への道 : 8．トッププロ棋士に勝つためのコンピュータ将棋委員会の生い立ち |journal=情報処理 |volume=52 |issue=2 |publisher=情報処理学会 |date=2011-02-15 |pages=188-190 |url=http://id.nii.ac.jp/1001/00072787/}}</ref>。

2008年5月5日に行われた第18回世界コンピュータ将棋選手権のエキシビションマッチにおいて、優勝ソフトの激指がアマ名人の清水上徹を、準優勝ソフトの棚瀬将棋が朝日アマ名人の加藤幸男をそれぞれ破るという快挙を成し遂げた。この対局に対し、敗れた清水上と加藤はそれぞれ、「コンピュータの読みが上回った」「完敗だった」とコメントした<ref>{{cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20080505-OYT1T00432.htm|date=2008-05-05|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080508213452/http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20080505-OYT1T00432.htm?|archivedate=2008-05-08| title=その名も「激指」…将棋ソフト、人間に勝つ|publisher=読売新聞|accessdate=2015-05-27}}</ref>。
2008年11月8日に行われた清水上、加藤と激指、棚瀬将棋との持ち時間60分、その後1手60秒の再戦では、加藤が勝利して雪辱を果たしたものの、清水上はまたも敗北を喫した<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20081108-OYT1T00473.htm 元アマ竜王2人、1勝1敗…コンピューターとの将棋対局] {{リンク切れ|date=2011年2月}}</ref>。公式対局でプロ相手に何度も勝利を上げているトップアマの二人の敗戦はプロにとっても衝撃であり、渡辺明<ref>[https://blog.goo.ne.jp/kishi-akira/e/89b0ea3e7d4383d30c01f275bee4edb5 コンピュータ選手権の結果。] 渡辺明ブログ 2008年5月5日より「アマトップの方々は奨励会で言えばプロ手前の二段〜三段の力はあるので、そこに2連勝というのは衝撃的」</ref>、遠山雄亮<ref>[http://chama258.seesaa.net/article/95761855.html 大きな話題と小さな話題] 遠山雄亮のファニースペース 2008年5月5日より「この二人はアマチュアの方の中でもトップ、しかもトップの中のトップですから衝撃的です。将棋も強い内容でした」</ref>、[[片上大輔]]<ref>[https://blog.goo.ne.jp/shogi-daichan/e/ce6644fc8d0167bc89be21ef361e7348 衝撃] daichanの小部屋 2008年5月5日より「二人そろって完敗したと聞いて衝撃を受けました。彼らの強さは僕もよく知ってますので」</ref>らのプロ棋士がブログにその驚きを綴った。

2009年1月28日、[[Bonanza]]のソースコードが公開されると、同年の第19回世界コンピュータ将棋選手権では[[ボナンザ・チルドレン]]が台頭してきた<ref>[https://web.archive.org/web/20101202111651/http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/090609/shg0906090829000-n4.htm 【棋聖戦・梅田望夫氏観戦記】（１）将棋界は「これからの１０年」抜群に面白くなる (4/5ページ) - MSN産経ニュース]</ref>。

=== 2010年 ===
2月6日、[[週刊将棋]]の編集者で元奨励会三段の[[古作登]]が[[激指]]と持ち時間20分の公開対局を行い、コンピュータが勝利した。

同年春になって先述の「コンピュータ将棋委員会」の調整が済み、4月2日に日本将棋連盟でセレモニーが行われた<ref name="akara2010-vol8"/>。セレモニーでは、情報処理学会側が[[白鳥則郎]]会長（当時）名義で「35年の開発の末名人に伍する力ありと情報処理学会が認める迄に強いコンピューター将棋を完成致しました」などとする挑戦状を日本将棋連盟に渡した。将棋連盟は、[[米長邦雄]]会長（当時）名義で「その度胸と不遜な態度に感服した」として挑戦状を受理し、初の対戦相手として女流の[[清水市代]]（当時女流二冠）を指名した<ref>[http://www.ipsj.or.jp/03somu/shogi/index.html 情報処理学会が日本将棋連盟に「コンピュータ将棋」で挑戦状]社団法人日本情報処理学会 2010年4月2日 2010年4月2日閲覧</ref><ref>[https://www.shogi.or.jp/event/2010/04/post_272.html 「コンピュータからの挑戦状」（日本将棋連盟HP、2010年4月2日閲覧）]</ref><ref name="akara2010-vol8"/>。

5月から7月にかけて、第2回週刊将棋アマCOM平手戦が[[週刊将棋]]の連載として開催された。対戦相手は[[東京大学]]将棋部5名。それぞれ2回、合計10回対戦が行われ、棚瀬将棋が1敗して、コンピュータ側の9勝1敗であった。参加したコンピュータは、[[激指]]・[[Bonanza]] Feliz・[[AI将棋#YSS|YSS]]・[[東大将棋#棚瀬将棋|棚瀬将棋]]・[[GPS将棋]]。持ち時間は1回目が30分（秒読み60秒）、2回目が10分（秒読み30秒）。

7月23日に、[[激指]] 定跡道場2 優勝記念版（2010年[[世界コンピュータ将棋選手権]]で優勝した激指の[[思考ルーチン]]搭載）が発売され、宣伝文句として「強さはネット将棋でレーティング3000点台（[[棋士 (将棋)|プロ]]級）」を謳った。

8月23日に[[清水市代]]との対局の詳細が発表され、持ち時間は[[対局時計|チェスクロック]]使用による3時間（1分未満の考慮時間も計測される）、使い切ったあとは1手1分という[[マイナビ女子オープン]]五番勝負と同様の条件となった。また、コンピュータ側のハードウェアはクラスタなし（Intel [[Xeon]] W3680 3.33GHz 6コア）を中心に、[[GPS将棋]]が提供した[[東京大学]]のクラスタマシン（Intel Xeon 2.80GHz 4コア：109台・Intel Xeon 2.40GHz 4コア：60台・合計169台 676コア）を併用する形で、ソフトウェアは[[激指]]・[[GPS将棋]]・[[Bonanza]]・[[AI将棋#YSS|YSS]]の4種類のソフトが[[電気通信大学]]伊藤研究室の開発するマネージャの管制の下で多数決を行う合議制{{efn|合議制の重み付けは以下の通り。クラスタなしが合計7.7、クラスタありが合計1.3とクラスタなしを優先している。
* クラスタなし - Intel [[Xeon]] W3680 3.33GHz 6コア
** 激指 - 2.9
** Bonanza - 1.9
** GPS将棋 - 1.0
** YSS - 1.9
* クラスタあり - Intel Xeon 4コア、合計169台、676コア
** 激指 - 0.1
** Bonanza - 0.1
** GPS将棋 - 1.0
** YSS - 0.1}}がそれぞれ採用された。このシステムは、10の224乗という、将棋のありうる棋譜の総数10の226乗に近い数を示す語である「[[阿伽羅]]」<ref group="注釈">この語は[[華厳経]]第45巻・阿僧祇品第三十に登場する数詞の一つ（詳細は[[命数法#仏典の数詞]]を参照）。</ref>を取って、「[[あから2010]]」と名付けられた。

清水市代とあから2010の対局は10月11日に[[東京大学]]工学部で指され、86手で後手のあから2010が勝利した<ref>http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20101019/1033388/?rt=nocnt</ref>。あから2010の駒を動かすアシスタントは[[上村亘]]（当時三段）が務めた<ref>https://ameblo.jp/wataru-kamimura-ookura/entry-10677513331.html</ref>。当日は750名以上の一般来場者・70社以上のマスメディアが集い、大きな注目を集めた<ref name="akara2010-vol1"/>。

=== 2011年から2012年 ===
2011年5月16日、[[ponanza]]が[[将棋倶楽部24]]で92勝8敗の成績でレーティング3110を記録。最後に「謎の棋士」と2局対局を行い1勝1敗であった<ref>[http://www.computer-shogi.org/blog/club24_bears_the_brunt_of_ponanza/ ponanzaが将棋倶楽部２４に登場、東京道場に「記録」破り]</ref>。

2011年10月6日、[[日本将棋連盟]]会長（当時）[[米長邦雄]]が「引退棋士の代表」としてコンピュータ将棋と対局することと、同時に定期的にプロ棋士とコンピュータソフトが対局する「[[電王戦]]」が開催されることが発表された<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.shogi.or.jp/news/2011/10/post_478.html |title=「米長邦雄永世棋聖ｖｓボンクラーズ プロ棋士対コンピュータ将棋電王戦」のお知らせ！｜将棋ニュース｜日本将棋連盟 |publisher=[[日本将棋連盟]] |date=2011-10-06 |accessdate=2017-08-26}}</ref>。

2011年11月8日から翌年2012年1月12日にかけて[[Puella α|ボンクラーズ]]が[[将棋倶楽部24]]に参戦し、2406勝134敗79分（勝率91%）の成績でレーティング3364を記録。これは史上最高（当時）のレーティングで、既にほぼ名人を越える強さであったと開発者の伊藤英紀は主張している<ref>{{Cite journal |和書|author=伊藤英紀 |title=趣味で将棋ソフトを開発してたらいつの間にか名人越えちゃってました |journal=電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン |volume=12 |issue=4 |publisher=電子情報通信学会 |date=2019 |pages=297-303 |doi=10.1587/bplus.12.297 }}</ref>。

2012年1月14日に行われた第1回将棋電王戦では、米長と[[ボンクラーズ]]の本対局が将棋会館で行なわれ、113手で先手のボンクラーズが勝利した<ref>{{Cite news | url = https://web.archive.org/web/20130512063809/http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012011401001634.html | title = 米長氏、将棋ソフトに敗北 永世棋聖も歯が立たず | newspaper = 47news | date = 2012-01-14 | accessdate = 2012-01-14}}</ref><ref>{{Cite web|和書| title = 電王戦対決中!! 序盤は米長永世棋聖が有利か? 戦いの行方はニコ生を見よ!! | url = https://weekly.ascii.jp/elem/000/002/608/2608423/?r=1 | publisher = 週刊アスキー | date = 2012-01-14 | accessdate = 2012-01-14}}</ref>。

Puella α（ボンクラーズ）開発者の伊藤英紀は2012年12月に第2回将棋電王戦PVにおいて、既にプロ棋士を超えているとコメントした<ref>[https://www.nicovideo.jp/watch/1355512456 第2回将棋電王戦PV ‐ ニコニコ動画]</ref>。2013年に[[渡辺明 (棋士)|渡辺明]]（当時竜王）は、第2回将棋電王戦第3局に登場した[[ツツカナ]]について触れ、「現役棋士3分の1以上に相当する力がある」との見解を示した<ref>[https://web.archive.org/web/20130520232806/http://jp.ibtimes.com/articles/42595/20130407/375523.htm 将棋ソフトにプロ棋士が連敗、渡辺竜王「現役棋士の3分の1以上に相当する力がある」]</ref>。

=== 2013年 ===
2013年の3月から4月にかけて行われた第2回将棋電王戦はプロ棋士5名と2012年世界コンピュータ将棋選手権の上位5ソフトとの団体戦として行われ、第2局では正式ルールで行われた現役のプロ棋士戦で初めてコンピュータ（[[ponanza]]）が勝利<ref>[https://news.mynavi.jp/article/20130330-a087/ 「将棋電王戦」第二局で佐藤四段敗れる、現役プロ棋士がコンピュータに初の敗北]マイナビニュース 2013/03/30</ref>、続いて[[ツツカナ]]、[[GPS将棋]]もプロ棋士に勝利して、プロ棋士側の1勝3敗1分（[[持将棋]]）に終わった<ref>http://ex.nicovideo.jp/denousen2013/index.html</ref>。

2013年5月6日から17日にかけてponanzaが将棋倶楽部24に参戦、92勝5敗の成績でレーティング3453を記録<ref name="#4">https://www.shogidojo.net/kifu/computer/</ref>。

2013年 [[船江恒平]]と[[ツツカナ]]の練習対局、持ち時間4時間で10局から15局行って、船江はツツカナに対しての勝率が「五分五分ぐらい」と述べている<ref>https://live.nicovideo.jp/watch/lv161261701</ref>。

2013年11月から翌年2014年3月まで[[菅井竜也]]と[[習甦]]の練習対局、菅井は習甦に対して「95勝97敗」と述べている<ref>https://news.nicovideo.jp/watch/nw995987</ref><ref>https://news.mynavi.jp/article/20140319-denou/3</ref>。また菅井は、「これからはコンピュータが強くなるという意見の方が多いと思うんですけど、自分は10年ぐらいしたら人間の方が強いんじゃないのかなと思いますね」と述べている<ref>https://live.nicovideo.jp/watch/lv153046303</ref><ref>https://news.mynavi.jp/kikaku/20140904-a002/</ref>。

2013年11月から2014年3月までの[[豊島将之]]と[[AI将棋#YSS|YSS]]の練習対局、豊島は「初めの方は全然勝てなくて、最後の方は5割から7割ぐらい勝算があるかなあというような感じだった」と述べている<ref>https://www.nicovideo.jp/watch/1487735618</ref>。

2013年11月から翌年2014年3月までの[[森下卓]]と[[ツツカナ]]の練習対局、森下はツツカナに対しての勝率が「1割無かった」と述べている<ref name="#5">https://live.nicovideo.jp/watch/lv229660907</ref>。

=== 2014年 ===
2014年の3月から4月にかけて行われた第3回将棋電王戦は、プロ棋士5名と2013年の第1回[[将棋電王戦#将棋電王トーナメント|将棋電王トーナメント]]の上位5ソフトとの団体戦として行われ、プロ棋士側の1勝4敗に終わった<ref>http://ex.nicovideo.jp/denou/3rd/index.html</ref>。

2014年12月から翌年2015年3月までの[[永瀬拓矢]]と[[Selene (コンピュータ将棋プログラム)|Selene]]の練習対局、永瀬は「通算勝率は1割程度だと思います。ただ、実戦でその1割を引くことは可能だと思いました」と述べている<ref>https://www.shogi.or.jp/event/2015/03/final2_1.html</ref>。

2014年12月から翌年2015年3月までの[[村山慈明]]と[[ponanza]]の練習対局、村山はponanzaに対しての勝率が「1割無かった」と述べている<ref name="#5"/>。

[[やねうら王]]の開発者・磯崎元洋は2014年に「上位のソフトは事前貸出なしの条件であればとっくに羽生さんを超えていることは誰の目にも明らかである。超えているとは言ってもソフト側から見て勝率が50パーセントは超えるだろうという程度の意味で、勝率が90パーセントとか100パーセントとかではないので試合としては成立すると思うが…」と述べた<ref>{{Cite web|和書|title=やねうら王開発実況用スレッド その3|author=磯崎元洋|publisher=ノーゲーム・ノーライフ|date=2014-10-31|accessdate=2015-05-25|url=http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20141031}}</ref>。

=== 2015年 ===
2015年1月から2015年2月までの[[斎藤慎太郎]]と[[Apery]]の練習対局の際、斎藤は「内容的にはほぼ不利で止めてるので、どうだろう 良くて10勝30敗とか40敗ぐらいじゃないですかね」と述べている<ref>https://www.youtube.com/watch?v=-6dV4QtS9ZU&list=PL7bVmM3CEzsUjErgW9SKxn6EWq_OZVVlP&index=31</ref>。

2015年の3月から4月にかけて行われた将棋電王戦FINALは、プロ棋士5名と2014年の第2回将棋電王トーナメントの上位5ソフトとの団体戦として行われ、プロ棋士側が3勝2敗と初めて勝ち越した<ref>http://ex.nicovideo.jp/denou/final/</ref>。

2015年6月、[[千田翔太]]と[[Apery]]の練習対局で、千田は持ち時間1時間で50局以上を指したが、Aperyに対しての勝率が「2割ちょうど」だった。千田は「現在のコンピュータ将棋に勝てなくても、挑まなくてどうするのか」と述べている<ref>NHKテレビテキスト『将棋講座』 2015年11月号</ref>。

2015年10月11日、[[情報処理学会]]がコンピュータ将棋の実力は2015年の時点でトッププロ棋士に追い付いている（統計的に勝ち越す可能性が高い）という分析結果を出し「コンピュータ将棋プロジェクト」の終了を宣言した<ref>http://www.ipsj.or.jp/50anv/shogi/20151011.html</ref>。この宣言に対して、[[ponanza]]の山本一成<ref>https://twitter.com/issei_y/status/658107096139890689</ref>・[[Apery]]の平岡拓也<ref>https://twitter.com/HiraokaTakuya/status/652771722685386753</ref><ref>https://twitter.com/HiraokaTakuya/status/652772561667780608</ref>らは、将棋ソフト開発に直接携わっていない情報処理学会が一方的に声明を出したことに反発した。[[Puella α]]の伊藤英紀は、宣言が出された原因について、日本将棋連盟が[[羽生善治]]との対決に消極的である以上、情報処理学会の側には「これ以上続ける動機もリソース/予算もない」のであろうと評した<ref>https://twitter.com/aq3948/status/652821732101783552</ref><ref>https://twitter.com/aq3948/status/652822243286773760</ref>。

2015年12月7日から13日にかけてponanzaが将棋倶楽部24に参戦、69勝0敗の成績で過去最高記録のレーティング'''3455'''を記録<ref>https://ponanza.hatenadiary.jp/entry/2015/12/08/010237</ref><ref>https://ponanza.hatenadiary.jp/entry/2015/12/14/001643</ref><ref name="#4"/>（[[Intel Core i7|Core i7]]-6700K，1手 18秒）。

[[藤井聡太]]は後に「実は自分もponanzaとネットで3、4局指したんですけど、全部負けてしまいました。もちろん負けたくないと思いましたけど、将棋の長い歴史の中でコンピューターと棋士が戦った一瞬に居合わせられたことは良かったと思います」と述べた<ref>{{Cite news |和書 |url=https://web.archive.org/web/20170610060215/http://www.hochi.co.jp/topics/20170610-OHT1T50094.html |title=史上最年少棋士・藤井聡太四段、１４歳の覚悟と日常 |newspaper=[[スポーツ報知]] |date=2017-06-10 |access-date=2024-07-17 |author=[[北野新太]] |work=多事放論}}</ref>。

2015年、羽生善治は「今、将棋の人工知能は、陸上競技で言えば、[[ウサイン・ボルト]]くらいです。運が良ければ勝てるかもしれない。しかしあと数年もすれば、[[フォーミュラ1カー|F1カー]]のレベルに達するでしょう。そのとき、人間はもう人工知能と互角に勝負しようとは考えなくなるはずです」と述べた<ref>人工知能の核心(NHK出版新書 511) 2017/3/8</ref>。

=== 2016年 ===
第1期電王戦は形式が変更され、前年に新設された[[叡王戦]]を勝ち上がった[[山崎隆之]]と2015年の第3回将棋電王トーナメントを勝ち上がった[[ponanza]]による二番勝負として行われた。2015年12月から翌年2016年3月までの[[山崎隆之]]と[[ponanza]]の練習対局、山崎は「[[早指し]]でしかやった事ないんですけど、勝った時って言うのも思考を見て、見ながらでも厳しいですね」と述べている<ref>https://live.nicovideo.jp/watch/lv251252771</ref>。2016年の4月から5月にかけて行われた二番勝負では、山崎の2敗に終わった。

2016年5月22日、[[羽生善治]]が[[叡王戦]]への参戦を表明<ref>https://www.nikkei.com/article/DGXLASFG22H1Z_S6A520C1000000/</ref>。参戦に際して、「将棋の世界をある程度知ってる人たちは、プログラムが強くなってきたことに、前ほど強いアレルギーみたいなものはなくなってきてるのかな」「（対コンピュータに）私がいちばんそれに向いてるかどうかは別の話です。もちろん負けた時に、世間一般に与えるインパクトは大きいでしょうけどね」とコメントした<ref>{{Cite web|和書|url=https://r25.jp/it/00052309/|title=羽生善治、AIとの歩み「棋士は存在価値を問われてる」|publisher=R25|accessdate=2017-04-26|date=2016-08-21|author=|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160821101852/https://r25.jp/it/00052309/|archivedate=2016-08-21}}</ref>。しかし、羽生は準決勝で[[佐藤天彦]]（当時名人）に敗れ、電王戦出場を逃した<ref>[https://www.sankei.com/article/20161114-HM725XJM5ZIGJPLBH4IZQJSBUE/ 羽生善治棋聖、ソフトとの対決ならず 叡王戦敗退] 産経新聞 2016年11月14日</ref>。その後佐藤天彦は叡王戦を制し、渡辺明（当時竜王）対Bonanza以来十年ぶりとなる、コンピュータと最高位のタイトルホルダーとの対局が実現した。

同じ頃、[[三浦弘行]]の竜王戦挑戦者決定戦3番勝負での勝利（[[丸山忠久]]相手に2勝1敗）について、対局中の離席が多いとして他の棋士から不正疑惑をかけられた。詳細は[[将棋ソフト不正使用疑惑騒動]]を参照。この問題においては、「トップクラスのソフトは『スマホ上で動かしても人間のトップに匹敵する、あるいは上回る棋力を持つに至った』とする見方もある」と報じられた<ref>[https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1610/13/news125.html 将棋棋士の「スマホ不正」疑惑と「出場停止処分」について思うこと] 杉本吏，ITmedia 2016年10月13日</ref>。[[やねうら王]]開発者の磯崎元洋は「（2016年現在）ハイスペックスマホにおいて、ponanzaなら推定でR3400付近の強さになり、人類の99.99パーセントぐらいの人は勝負にもならない」という見解を示した<ref>[http://yaneuraou.yaneu.com/2016/09/29/%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%9B%E3%81%A7%E6%9C%80%E5%BC%B7%E3%81%AE%E5%B0%86%E6%A3%8B%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%92%E5%8B%95%E3%81%8B%E3%81%99%E3%81%A8%E3%81%A9%E3%82%8C%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84/ スマホで最強の将棋ソフトを動かすとどれくらいの強さですか？] やねうら王公式ブログ 2016年9月29日</ref>。

2016年12月26日、三浦弘行の不正疑惑について第三者調査委員会の[[但木敬一]]委員長は「指摘された疑惑のすべてを検討しましたが、どれもスマホの不正使用を認めるに足りる証拠力は到底なかった」と述べた<ref>https://www.sankei.com/article/20161226-352NZKJKNVLANPKE436AEWW33Y/2/</ref>。同委員会の報告書は「将棋ソフトの棋力の向上により今や将棋連盟は未曽有の危機に直面している」「将棋ソフトの棋力が最強の棋士と互角となり、これを凌駕する勢いとなった時代を迎え、対局者が将棋ソフトを使うのではないかという疑心暗鬼がプロ棋士の心の中に生じてきたことを見逃すことはできない」と指摘した<ref>https://web.archive.org/web/20161226090612/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161226/k10010820201000.html</ref>。

=== 2017年から2019年 ===
2017年2月22日、[[ドワンゴ]]の[[川上量生]]は、第2期電王戦をもって電王戦を終了することを発表した。理由について「人間とコンピュータが同じルールで真剣勝負をするという歴史的役割は終わった」としている<ref name="#2">https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/22/news130.html</ref>。

羽生は佐藤天彦とponanzaの対局に先立ち、「危機感としてあるのは、コンピューター同士の対戦のほうが人間同士の対戦よりも面白いとなると、棋士という職業がなくなってしまうということです」「人間同士の対局を魅力的なものにして、価値のあるものを作り出し続けていかなければ」と述べた<ref>[https://web.archive.org/web/20170215214122/http://media.lifenet-seimei.co.jp/2017/02/10/9121 羽生善治さんが考えるAIと棋士が共存する未来──ライフネット生命特別対談（後編） | ライフネットジャーナル オンライン]</ref>。

2017年4月から5月にかけて、今期で最後となる[[将棋電王戦#第2期電王戦|第2期電王戦]]二番勝負が行われ、前年の[[第2期叡王戦]]で優勝した佐藤天彦名人が、第4回将棋電王トーナメントを優勝した[[ponanza]]と対局した。子供の頃から将棋ソフトで遊んでいた世代である佐藤は、もはや勝つのが難しいことを悟っていたという<ref>[https://www.gizmodo.jp/2019/08/ai-ponanza-shogi-mugendai.html コンピューターに｢完敗｣した佐藤天彦九段。｢あの日｣と将棋の未来を語る | ギズモード・ジャパン]</ref>。第1局は4月1日に[[日光東照宮]]にて行われ、71手でPonanzaが勝利。第2局は5月20日に[[姫路城]]で行われ、94手でPonanzaが勝利（詳細は[[将棋電王戦#第2期電王戦]]を参照）。コンピュータが初めて現役の名人を下すこととなった。

しかし、名人との対局という節目にもかかわらず、世間のコンピュータ将棋に対する関心は低下していた。かつて数百万人が視聴していた全盛期の電王戦に対して、この頃のコンピュータ将棋は[[藤井聡太]]関連で時々話題に上る程度であった<ref>[https://bunshun.jp/articles/-/49424?page=7 (7ページ目)最強CPU将棋ソフト『水匠』ＶＳ最強GPU将棋ソフト『dlshogi』長時間マッチ観戦記 第1譜『水匠』杉村達也の挑戦 | 文春オンライン]</ref><ref>[https://bunshun.jp/articles/-/49424?page=3 (3ページ目)最強CPU将棋ソフト『水匠』ＶＳ最強GPU将棋ソフト『dlshogi』長時間マッチ観戦記 第1譜『水匠』杉村達也の挑戦 | 文春オンライン]</ref>。将棋ファンの中にもAIは「卑怯」であるとして人間超えを認めず、嫌う声も強かった<ref>[https://yaneuraou.yaneu.com/2024/05/20/lost-30-million-yen-developing-shogiai/ 将棋ソフトを開発して3000万円損した話 | やねうら王 公式サイト]</ref>。

日経ビジネスオンラインの記者・広岡延隆は、[[将棋ソフト不正使用疑惑]]への日本将棋連盟の対応の不手際を批判した上で、同連盟がタイトル保持者をコンピュータと公式に対局させるのをなかなか実現させなかったこと、「コンピュータが人間を凌駕した」ということを速やかに認められなかったことを挙げ、将棋界は囲碁界と比較してコンピュータへの対応に失敗しているとした<ref>{{Cite news |和書 |url=http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/010500382/ |title=ネットの謎棋士60連勝、熱狂生んだ陰の主役 : AI対応で明暗分かれた囲碁と将棋 |date=2017-01-06 |access-date:2024-07-17 |newspaper=[[日経ビジネス#日経ビジネスオンライン|日経ビジネスオンライン]] |author=広岡延隆}}</ref>。

2017年、山岡忠雄は[[AlphaGo]]の手法を応用したプログラム「dlshogi」の開発を開始した。2017年12月5日、[[DeepMind]]は膨大な計算資源を使い3日間学習させた[[AlphaZero]]が[[チェス]]、[[将棋]]、[[囲碁]]の世界チャンピオンプログラム（当時）である[[Stockfish]]、[[elmo (コンピュータ将棋ソフト)|elmo]]、[[AlphaGo Zero]]（3日間学習）を破ったと発表した。以降、コンピュータ将棋でも[[Graphics Processing Unit|GPU]]を使用する新しい手法に注目が集まり、[[モンテカルロ木探索]]と[[ディープラーニング]]を用いたPV-MCTS法によるソフトの開発が進められた<ref>[https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2203/28/news144.html 「CPU最強 vs. GPU最強」──進化する将棋AIのいま プロに勝利した「Ponanza」から「水匠」「dlshogi」まで：プロ棋士向け最強将棋AIマシンを組む！（1/4 ページ） - ITmedia NEWS]</ref>。

2018年、那須悠が[[CPU]]で計算する浅い[[ニューラルネットワーク]]を用いた評価関数[[NNUE]]を開発した。従来の[[アルファ・ベータ法]]による探索を用いたソフトは、評価関数にNNUEを用いることで強化が図られ、MCTS法を用いるDL系ソフトと対峙した<ref>[https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2203/28/news144.html 「CPU最強 vs. GPU最強」──進化する将棋AIのいま プロに勝利した「Ponanza」から「水匠」「dlshogi」まで：プロ棋士向け最強将棋AIマシンを組む！（1/4 ページ） - ITmedia NEWS]</ref>。

2019年5月に行われた第29回世界コンピュータ将棋選手権でやねうら王が優勝し、1位から3位をNNUE系ソフトが占めた。

=== 2020年以降 ===
[[AbemaTV]]将棋チャンネルは、2020年1月16日より将棋中継に「SHOGI AI powered by AbemaTV」によるリアルタイム分析を正式導入した<ref>[https://abematv.co.jp/posts/7655931/ 「AbemaTV」将棋チャンネルに 「SHOGI AI powered by AbemaTV」を正式導入決定 | 株式会社AbemaTV]</ref>。

2020年4月1日、第47回将棋大賞にて、[[elmo (コンピュータ将棋ソフト)|elmo]]が考案した「[[elmo囲い]]」が升田幸三賞に選出された。コンピュータ将棋ソフトの考案した戦法が選出されるのは初めて。

2020年11月に行われた第一回[[電竜戦]]でGCTが優勝し、MCTSを用いたディープラーニング系ソフトとして初めて大会を制した。

== 人間への影響 ==
=== 人間とコンピュータの対決 ===
{{See also|将棋棋士とコンピュータの対局一覧}}
2000年代前半には、コンピュータ将棋が平手でトッププロ[[棋士 (将棋)|棋士]]を破る日はさほど遠くないと考えられていた。[[松原仁 (情報工学者)|松原仁]]は2005年の時点で、2010年代から2020年までにプロ棋士がコンピュータ将棋に負けると予測し<ref>『情報処理』2005年7月号より</ref>、また、コンピュータ将棋協会会長の瀧澤武信も、2007年の時点で10年後から20年後にコンピュータがプロ棋士を上回ると予想していた<ref>『将棋世界』2007年7月号より</ref>。

[[米長邦雄]]によると、2011年には1手30秒などといった[[早指し]]ならプロ棋士に対しても7、8割以上の勝率をあげるまでになっていた。コンピュータ将棋開発者らは、2012年の段階で「数年以内にトッププロ棋士に勝つ（複数回対戦し勝ち越す）」と予想していた{{sfn|瀧澤|2012}}。実際に、{{Anchors|電王戦|将棋電王戦}}2013年3月30日の第2回将棋電王戦において、[[ponanza]]が[[佐藤慎一 (棋士)|佐藤慎一]]に勝利し、長い持ち時間（各四時間）・公開対局・相手が現役プロ棋士（除く女流）という条件で初めてコンピュータが人間に勝利した。

ボンクラーズ作者の伊藤英紀は2013年に、[[北島康介]]がモーターボートと戦わないのと同じで今後も人間は人間を応援するだろうと述べた<ref>{{Cite web|和書|url=http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/20134-fd94.html|title=A級リーグ指し手1号 現状認識＠2013年4月|date=2013-04-07|accessdate=2013-04-07}}</ref>。

[[羽生善治]]は2014年に、「将棋がコンピュータによって完全解明されてしまったらどうするか」という質問に対して「そのときは桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えればいいんです」と答えた<ref>{{Cite web|title=コンピュータが将棋を完全解明したら?羽生善治三冠の回答|author=|publisher=NEWSポストセブン|date=2014-04-24|accessdate=2015-05-14|url=https://www.news-postseven.com/archives/20140424_252628.html?DETAIL}}</ref>。ただし、ルールを変えてもコンピュータは進歩し続けるので、いずれは再対応されてしまう可能性がある。実例として、コンピュータが人間を超えた[[チェス]]では新ルールの「[[アリマア]]」というゲームが考案されたが、[[2015年]]にコンピュータプログラム「Sharp」が7勝2敗で人間を破っている<ref>{{Cite web|title=The 2015 Arimaa Challenge|author=|publisher=arimaa.com|date=|accessdate=2015-05-14|url=http://arimaa.com/arimaa/challenge/2015/}}</ref>。

松原仁は2015年10月に「数年後には人間が全く相手にならなくなるのは確実で、人間との対決を掲げたコンピューター将棋開発の時代は終わったと考えている」と述べた<ref>{{Cite web|和書|publisher=NHKニュース|title=コンピューター将棋「目的達した」終了宣言へ|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151010/k10010265711000.html|date=2015-10-10|accessdate=2015-10-11}}</ref>。

2020年、[[Ryzen Threadripper 3990X]]を購入した頃の[[藤井聡太]]二冠（当時）は、AIと人間の棋力差について、「棋士は普段平手の研究しかしていないので、駒落ちの下手を持った場合は多少棋力が落ちるんですよ。とはいえ、二枚落ちなら研究すれば、しばらくは大丈夫。大駒一枚（飛車落ち、角落ち）だと条件次第ですが、ソフトが勝つ可能性はあると思います」と述べた<ref>【増強改訂版】藤井聡太の軌跡 愛知の少年はいかにして八冠になったか Kindle版 第6章 藤井聡太は5回ジャンプした</ref>。

また、2021年に藤井は「ソフトから学んで人間もかなり進化してきました。今の棋士であれば過去のどの時代のソフトなら勝てそうでしょう？」という質問に「『将棋電王戦』で人間側が勝てたのは対コンピューター戦略を駆使したという展開が多かったので、基本は厳しい」「ソフトの棋風とか特徴を把握していない状態でやったらやっぱり厳しい。人間のほうが対応できる展開の幅が基本的に少ないと思うので、見たことがない展開になったときに上手く対応するって難しいような気がする。特定の展開を狙って誘導するみたいなのが勝ちパターンなので、そういうことをしないと結構難しい」と述べた<ref>{{Cite web|url=https://news.livedoor.com/article/detail/20882230/|title=【インタビュー】【藤井聡太×広瀬章人】将棋研究2.0 第71期王将リーグ特集|website=ライブドアニュース|publisher=|date=2021-09-19|accessdate=2025-02-09}}</ref>。

2023年6月、『水匠』開発者の杉村達也は「藤井名人と『水匠』が対局したらどうなるか？」と問われた際に「現在の将棋AIで2強となっている『水匠』と『dlshogi』は、2017年に[[佐藤天彦]]名人に勝った[[Ponanza]]に対して、計算上は99%以上の確率で勝てる。もちろん人間もこの間に強くなっているが、AIほどの成長速度ではない。人間が勝つのはたぶん無理だろう」という趣旨のコメントを述べた<ref>{{Cite web|url=https://www.asahi.com/articles/ASR61752MR5RUCVL038.html|title=藤井聡太名人、最強AI開発者が見た強さの理由 期待高まる藤井定跡|website=朝日新聞|publisher=|date=2023-06-2|accessdate=2025-02-21}}</ref>。

=== 人間によるコンピュータ将棋の利用 ===
将棋よりも早くコンピュータが人間を超えた[[オセロ (ボードゲーム)|オセロ]]では、人間の戦術がコンピュータに強く依拠するようになった<ref name="nakamori"/>。[[立教大学]]准教授<ref>{{Cite web|和書|url=https://researchmap.jp/hnakamori/social_contribution/1445639 |title=中森 弘樹 (HIROKI NAKAMORI) - マイポータル - researchmap |website=[[researchmap]] |accessdate=2022-10-22}}</ref>・強豪オセロプレイヤーの中森弘樹は、オセロのゲーム性は「最善手という真理を人間が追求する」方向から「コンピュータの弾き出す真理を人間が資源として活用する」方向へ変質したのであり、人工知能は人間同士の駆け引きを決して奪ってはいないと指摘した一方、将棋でも同じことが起こるかは断言できないとした<ref name="nakamori">{{Cite speech |author=中森弘樹 |title=オセロ界はソフトといかに向き合ってきたか |location=京都アカデメイア |date=2016-11-27 |url=https://www.slideshare.net/bakumomoki/ss-72668518 |accessdate=2022-03-08}}</ref>。同じくコンピューターが人間を超えた[[バックギャモン]]界では、[[望月正行]]が「コンピューターの影響で人間のレベルもどんどん上がる」と評している<ref>[https://web.archive.org/web/20210111010848/https://blog.goo.ne.jp/mochy3_8/e/51a5cc147458958345ca54282b0197d9 バックギャモンBotと人間、比較に意味はあるのか? - Mochy's Backgammon Today]</ref>。

将棋界でもこれらと同様の流れが起きつつあり、コンピュータがプロの実力を超えた2010年代以降、人間がコンピュータを用いて研究を行うことが盛んに行われている。[[千田翔太]]によると、かつてはコンピュータ将棋を嫌悪するプロ棋士もいたものの、コンピュータと人間の対戦イベントが数年間続くうちに、プロ棋界でもコンピュータ将棋が受け入れられていったという{{sfn|伊藤|2023|p=285}}。2016年、14歳でプロ入りした[[藤井聡太]]は「（ソフトは）強くなる為のツールという感じです。研究用に私も一応活用しています」「人間と比べるとコンピューターの能力の進化は限度がないです。そういう意味では人間とコンピューターが勝負する時代ではなくなったのかなと思います」と述べている<ref name="fujii-bunshun">{{Cite web|和書|url=http://bunshun.jp/articles/-/2105|title=14歳・藤井聡太四段対コンピューター戦と“年度内タイトル”への思い|publisher=文春オンライン|accessdate=2017-04-16|date=2017-04-12|author=}}</ref>。2020年には、[[elmo囲い]]という新戦法を生み出した将棋ソフト「elmo」が、AIとして初めて[[升田幸三賞]]を受賞している{{sfn|伊藤|2023|p=291}}。[[羽生善治]]によると、1990〜2000年代と比べて、コンピュータの活用で2023年現在では様々な定跡が知られるようになった。その影響でタイトル戦の戦い方も変化し、序盤は対局者同士がコンピュータの事前研究の通りに指し進め、定跡を外れた中盤になってから本格的な対局が始まるようになったという<ref>{{Cite web|url=https://smart-flash.jp/lifemoney/243198/1/1/|title=羽生善治九段「将棋AIは先手勝率7割」に仰天…最強ソフト開発者との対談で「“将棋の結論”を考え直します」|website=Smart FLASH|publisher=光文社|date=2023-07-09|accessdate=2025-03-15}}</ref>。こうした流れの中で、将棋AIをフル活用しようとするとハイスペックのPCが必要になり金銭面での負担が大きいことから、[[Software as a Service|SaaS]]により場所や端末に依存せず低価格で将棋AIを利用できるサービスも始まっている<ref>{{Cite web |title=最強将棋AIで研究できる「棋神アナリティクス」。Webブラウザから利用可能 |url=https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1422489.html |website=PC Watch |date=2022-07-05 |access-date=2024-09-15 |language=ja |last=株式会社インプレス}}</ref>。

2020年前後になると、コンピュータ将棋ソフトはプロ棋士の対局中継にも導入されるようになった。特に大きな変化が[[ニコニコ生放送]]で始まった評価値表示で、[[AbemaTV|ABEMA]]や[[囲碁・将棋チャンネル]]、[[日本放送協会|NHK]]でも同様のシステムが導入された<ref>{{Cite web|和書|title=ついにNHKも導入した将棋対局の「AI勝率表示」放送担当者に聞く技術革新と未来像|url=https://times.abema.tv/articles/-/8654657|website=ABEMA TIMES|accessdate=2021-06-08|date=2021-04-19}}</ref>。こうした施策を通じて将棋ソフトの強さは徐々に信頼を集め、2023年現在では、将棋ソフトの評価が模範解答のように扱われるようになってきている{{sfn|伊藤|2023|p=291, 295}}。例えば[[藤井聡太]]は、AbemaTVのAIと同じ最善手を続けて詰みを回避したことが話題を集めたり（2020年6月の棋聖戦五番勝負第1局）、AIが示した難しい手と同じ手を指したことが「AI超え」と評された（2021年3月の竜王戦2組ランキング戦準決勝）<ref>[https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/ann_000211195.html 藤井二冠「神の手」は将棋AIの歴史にも名を刻んだ]</ref>{{sfn|伊藤|2023|p=291-292}}。また、2021年12月のA級順位戦[[羽生善治]]対[[豊島将之]]では、AIが羽生94%優勢を予測する中で羽生が投了し、羽生自身も後に知って驚いたという<ref>[https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000204240.html 羽生九段「勝率94％」で投了のワケ 将棋AIの功罪]</ref>。

こうした風潮の一方、[[佐藤天彦]]はソフトに棋譜を評価されることを「評価値ディストピア」と表現し、将棋ソフトを基準とした評価について「当時の大局観や『たまたま思いついた』などの偶然や感情など、いわば人間の足跡や匂いを漂白している」と苦言を呈した<ref>[https://bunshun.jp/articles/-/46002 「評価値ディストピア」の世界をトップ棋士はどのように見ているのか | 観る将棋、読む将棋 | 文春オンライン]</ref><ref>[https://bunshun.jp/articles/-/46003?page=5 (5ページ目)ユートピアを求めて、藤井聡太との大一番で振り飛車をぶつけた理由 | 観る将棋、読む将棋 | 文春オンライン]</ref>。

=== ソフト指し問題 ===
将棋ソフトのレベルが上がった結果、ヒント機能や検討モード、対局機能などを使ってネット将棋を指すユーザーが少なからず出てきている。将棋ソフトの指し手を入力してネット将棋を指すことを「ソフト指し」という<ref name="shogiclub24-kiyaku-2016"/>。

ソフト指しの検出方法として、将棋ソフト・人間の指し手の一致率を測るという方法が用いられる場合があり、2008年の段階では「指し手が一致する確率は10億局に1局以下」とも言われていた<ref>{{Cite web |title=２４ソフト指し取締委員会（2008年版） | url=http://www.shogidojo.com/etc/softorii/index.htm | archiveurl=https://web.archive.org/web/20080131233459/http://www.shogidojo.com/etc/softorii/index.htm |website=将棋倶楽部24 |archivedate=2008-01-31 |access-date=2024-10-19}}</ref>。しかし、プロ棋士の[[西尾明]]の2016年の解析によると、実際にはソフト指しをしていなくてもソフトと人間の一致率が高くなることは珍しくなく<ref>{{Cite tweet|user=nishio1979 |number=799465504041627648 |title=条件が揃い、さらに使用ソフトや探索時間を変えて解析すると(マルチスレッドでは同条件でも)高一致率を抽出しやすい。 |date=2016-11-18 |accessdate=2023-03-23}}</ref><ref>{{Cite tweet|user=nishio1979 |number=799467948138110976 |title=チェスの論文でも言及されていましたが、短手数で高一致率が出るのはそんなに珍しいことではなさそう。手数と一致率の関係は調べておきたいですね。 |date=2016-11-18 |accessdate=2023-03-23}}</ref>、必ずしも正確な検出法とは言えない。

==== オンライン対局サイトの対応 ====
* [[81Dojo]]ではソフト指し専用アカウントを作成し名前を指定されたもの（「COM_(任意の文字列)」）にすれば、公認が無くてもソフトの思考結果を用いて指せる。ただし、名前が「COM_」がついてない場合は81Dojoでも不正行為者とみなされる<ref>[http://81dojo.com/jp/terms_jp.html 81道場利用規約]</ref>。
* [[将棋ウォーズ]]ではソフト指しを取り締まる一方で「棋神召喚」として[[ponanza]]に助けを求める機能がある<ref>[https://shogiwars.heroz.jp/topics/617fa030d170da0ad0b4d9ae ソフト指しに対する対応について - 将棋ウォーズ -日本将棋連盟公認]</ref>。
* ネット将棋大手の[[将棋倶楽部24]]では(公認を除き)他の善良な会員の皆様に種々の迷惑がかかるとして、2008年に「24ソフト指し取締委員会」を設置。将棋ソフトの指し手との一致率を基準として「ソフト指し」を認定し、不良利用者アカウントの削除などを行っている<ref name="shogiclub24-kiyaku-2012">{{Cite web|和書| url = http://www.shogidojo.com/etc/softorii/index.htm |archive-url=https://web.archive.org/web/20120301073550/http://www.shogidojo.com/etc/softorii/index.htm | title = 24ソフト指し取締委員会 | publisher = 将棋倶楽部24 | date = 2008-01-24 |archive-date=2012-03-01 | accessdate = 2023-07-23}}</ref><ref name="shogiclub24-kiyaku-2016">{{Cite web|和書| url =https://www.shogidojo.net/info/rule/soft/ | title = ２４ソフト指し取締委員会｜利用規約 | publisher = 日本将棋連盟公式 将棋倶楽部24 | date = 2016-01-17 | accessdate = 2023-07-23}}</ref>。しかしこれを突破する途中からソフト指し手法が横行していたとされる<ref>[https://yaneuraou.yaneu.com/2024/04/11/when-in-doubt-punish/ 疑わしきは罰せよについて | やねうら王 公式サイト]</ref>。

==== 公式戦における問題 ====
{{main|将棋ソフト不正使用疑惑騒動}}
将棋界において、プロ棋士のソフト指しが初めて大きな問題となったのが2016年の将棋ソフト不正疑惑騒動である。2016年に第29期の[[竜王戦]]で挑戦者に決まっていた[[三浦弘行]]九段にソフト使用の疑いがかけられ、日本将棋連盟が三浦に竜王戦と年内の公式戦の出場停止の処分を行った<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG12HB8_S6A011C1CC1000/ 三浦九段、将棋ソフト使用か 竜王戦挑戦取り消し] - [[日本経済新聞]]</ref>。またこの事態を受けて竜王戦の挑戦者は電子機器の所持を調べるため、金属探知機で検査を受けることになった<ref>[https://www.sankei.com/article/20161015-YZ6HAUB5TBKAJIQBNN4UYOOVK4/ とうとう金属探知機で身体検査 竜王戦きょう開幕 疑惑の挑戦者変更で谷川会長がお詫び - 産経WEST]</ref>。2016年10月に日本将棋連盟は、対局室にスマートフォンなど電子機器の持ち込み禁止を含めた規制策を決め発表した。6割を超える棋士から賛同が得られたという<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG05H6T_V01C16A0CR8000/ 将棋のプロ公式戦、スマホ持ち込み禁止 不正防止] 2016年10月5日 日本経済新聞</ref>。

しかし、第三者委員会による調査では'''三浦九段の不正は認められず'''、日本将棋連盟は三浦に対し謝罪した。

==== 学生棋戦における問題 ====
[[2023年]][[6月]]、[[将棋のアマチュア棋戦#学生棋戦|学生名人戦]]でソフト不正使用が発覚し、優勝者の大学生が失格処分となった<ref>{{Cite web|和書|url=https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/531041|title=将棋「学生名人戦」優勝者がAIソフト使用発覚で失格に 何度も離席 ポケットにはスマホが|accessdate=2023-06-08|publisher=TBS}}</ref>。日本将棋連盟が後援する大会でソフトの不正利用による失格処分が行われたのは初のことで、[[NHK]]や[[TBS]]、[[読売新聞]]や[[東京新聞]]等の主要メディアで大きく取り上げられた。

==== 他のボードゲーム ====
[[チェス]]では、2015年に世界トップクラスのプレイヤーだった[[ガイオズ・ニガリジェ]]のカンニングが発覚し、[[グランドマスター]]の称号が取り消された<ref>{{Cite web|和書 |title=グルジアのチェス名人、スマホでカンニング |publisher=CNN.co.jp |date=2015-04-14 |accessdate=2015-04-24 |url=https://www.cnn.co.jp/showbiz/35063137.html}}</ref>。

[[囲碁]]では、2020年に[[金恩持]]がオンライン棋戦でソフトを使用していたことが判明し、1年間の資格停止処分を下されている<ref>[http://www.baduk.or.kr/news/report/3621 韓国棋院「한국기원, 인공지능 사용 적발 김은지에게 자격정지 1년 처분」]2022.11.20</ref>。

== 特徴 ==
{{未検証|date=2022年6月|section=1}}

=== 長所  ===
==== 詰将棋の強さ ====
任意の局面における『[[詰み]]』の有無を判定する作業は、単純な情報処理が力を発揮する分野であり、コンピュータは人間をはるかに超える計算力により、容易に詰みを発見することが可能である。

[[詰将棋]]の分野では、コンピュータは早々にトップ棋士の解図力を上回った。可能な王手と玉方の応手をすべて検索するコンピュータならではの方法論により、人間を凌駕する実力を備えている。詰将棋の創作にあたって、コンピュータを使用して作品の完全性を検証することは、すでに常識となっている{{efn|コンピュータソフトを使用するのは、作品に余詰や不詰がないかを確認するためである。また作成途中の補助に使う場合もある。}}。[[谷川浩司]]は「詰将棋は自分でも作るんですけども，完成したものをコンピュータにかけるんですよ。（中略）それこそ，かなり複雑な，1年くらいかけて作った詰将棋でも，コンピュータにかけると1秒で解かれるわけです。その詰将棋がちゃんと出来てるって証明にはなるんですけども，ちょっと切ない気分にはなりますよね……（苦笑）」と述べている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20140314022/index_2.html|title=電王戦は，21世紀を生きる人類を映し出す鏡なのかも――将棋棋士・谷川浩司氏がゲストの「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき！」第16回|publisher=4Gamer.net|accessdate=2019-10-29|date=2014-04-02|author=副編集長:TAITAI|archiveurl=https://web.archive.org/web/20140404205111/https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20140314022/index_2.html|archivedate=2014-04-04}}</ref>。

手数が最長の詰将棋である「[[ミクロコスモス (将棋)|ミクロコスモス]]」すら、詰将棋プログラムは解答に成功した（[[ミクロコスモス (将棋)#ミクロコスモスと脊尾詰]]を参照）。

また、コンピュータによる詰将棋の創作も研究されている<ref>[http://toybox.tea-nifty.com/memo/2013/12/post-95bb.html 詰将棋創作プログラミング]</ref><ref>[https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1297762.html 最強の将棋ソフト「やねうら王」からクリスマスプレゼント 〜詰将棋500万問が無償公開 - 窓の杜]</ref>。「ミクロコスモス」作者の橋本孝治は2019年のインタビューで「詰将棋の世界でもコンピュータが最高の詰将棋作家になる未来図はありえるのでしょうか」という質問に、「その可能性はあると思います。それが現実になっていないのは、創作という行為が機械には代替不可能だからではなく、人間の技術力が未熟なせいだというのが私の見解です。」「コンピュータが最高の詰将棋作家になったとしても、自分で自分の好きな詰将棋を作って楽しむ行為はなくならないと思います。」と述べている<ref>[https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1912/20/news083_3.html いまだ破られぬ詰将棋の手数最長記録（1525手詰）　作者に聞く「盤上の『ミクロコスモス』はいかにして生まれたか」（3/5 ページ） - ねとらぼ]</ref>。

==== 中盤の強さ ====
第3回電王戦に出場した[[豊島将之]]はコンピュータ対策について「1000局とはいかないが3ケタは練習対局をした」「何度も逆転負けをする中で、序盤の長い将棋や中盤を省略する激しい将棋に勝ち目があると思った」と述べている<ref>{{Cite web|和書|title=将棋電王戦第3局で人間側が1勝を返す 豊島七段が「序盤、中盤、終盤、隙が無い」指し回しでYSSに圧勝|publisher=ねとらぼ|date=2014-03-31|accessdate=2015-06-03|url=https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1403/31/news139.html}}</ref>。第3回電王戦を観戦していた[[遠山雄亮]]は「豊島さんはコンピュータの中盤の強さを警戒していました。少しぐらい優位に立っても中盤の難解な局面が続くと簡単に逆転されると。だから、コンピュータに勝つには、序盤の長い将棋にして、中盤に入る時点で大きなリードを奪ってしまうか、逆に中盤のない展開にして一気に終盤で勝負するのがいいと思っているようです。本局は意識して中盤のない展開を狙っているように見えますね。」とコメントした<ref>{{Cite web|和書|title=人間が勝つ鍵はどこにあるか「第3回将棋電王戦」第3局|publisher=マイナビニュース|date=2014-04-04|accessdate=2015-05-15|url=https://news.mynavi.jp/article/20140404-denou3/5}}</ref>。また、[[産経新聞]]も電王戦FINALを総括した記事において「1秒間に数百万〜1000万手以上を読むコンピューター相手では、互角に終盤の寄せ合いに突入したらまず勝ち目はない。中盤も、棋士側が[[手筋 (将棋)|手筋]]や定跡通りに指していてもコンピューターは正確無比でミスはしない。過去2回の経験からプロ側は『序盤で過激に鬼手を連発し、中盤を飛ばして一気に終盤に持ち込む』作戦が有効と結論づけた」と報じた<ref>{{Cite web|和書|title=【話題の肝】VSコンピューター制した「人類の執念」将棋電王戦、勝因はゲリラ戦術だった|publisher=産経ニュース|date=2015-04-19|accessdate=2015-04-22|url=https://www.sankei.com/article/20150419-7QZRRL2RWRNZ7FKVJYHDZ3VNQ4/3/}}</ref>。

==== ミスの少なさ ====
[[遠山雄亮]]は、2011年に[[将棋倶楽部24]]でのボンクラーズとの対局を分析し、コンピュータは人間よりもミスをしないため、乱戦になった場合はコンピュータの方が有利になるとしている。また、[[感情]]面で動揺したり、集中力が切れたりしないのも強さであるとしている<ref name="sm16408176">[https://www.nicovideo.jp/watch/sm16408176 【将棋】「ボンクラーズ」を遠山雄亮五段が徹底解剖part1【電王戦】 - ニコニコ動画]</ref>。また、人間の[[注意]]力には限界があり、[[疲労]]や[[錯覚]]などで[[ヒューマンエラー]]を起こす場合がある{{efn|[[渡辺明 (棋士)|渡辺明]]は[[順位戦]]（1日制で[[持ち時間]]6時間）だと「だんだん眠くなってくる」と述べている。}}{{efn|[[羽生善治]]は1手詰を見逃して敗北したことがある<ref>{{Cite web|url=https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1705/02/news103.html|title=羽生三冠「もしも神様から一手だけ指し直す権利をもらえたら」──振り返るのは“あの対局あの一手”：ニコニコ超会議2017|website=ITmedia NEWS|publisher=ITmedia|date=2017-05-03|accessdate=2024-09-06}}</ref>。}}一方、コンピュータは人間と違い肉体的な疲労がないため、持ち時間の長い将棋の終盤になっても、正確に指すことができる。

また、コンピュータは、プログラムに[[バグ]]がない限り、[[二歩]]や二手指し等の反則手を指すことは無い。バグの例としては、2015年の電王戦FINAL第2局において、Seleneが角成らずの手を正しく認識できず、王手放置の反則負けをした事例がある<ref>{{Cite web|和書|title=「将棋電王戦FINAL」第2局はコンピュータが王手放置の反則負け、プロ棋士2勝目|publisher=マイナビニュース|date=2015-03-21|accessdate=2015-03-30|url=https://news.mynavi.jp/article/20150321-a163/}}</ref>。

=== 改善された弱点 ===
==== 序盤戦 ====
プロ棋士の序盤研究の多くは公開されることがなく、ソフトは限られた情報を元に序盤戦術を構築していたため、新手に適切に対応できないことがあった<ref name="sm16408176"/>。しかし[[ponanza]]を初め、序盤を既存の定跡データに頼らないソフトも開発された<ref>{{Cite web|和書|title=定跡とは何か「将棋電王戦FINAL」第4局 - 村山七段の研究不発、ponanzaが示した可能性|publisher=マイナビニュース|date=2015-04-11|accessdate=2015-05-15|url=https://news.mynavi.jp/article/20150411-denoufinal/}}</ref>。以降、ソフトの棋力向上による序盤の精度の向上や、人間の定跡に頼らない定跡を自力で作成する工夫などにより、コンピュータ将棋の序盤力は格段の向上を遂げた{{要出典|date=2017年5月}}。序盤の大局観に関しては従来のCPUを使うNNUE系ソフトよりも、GPUを使うディープラーニング系ソフトが優れていると、[[やねうら王]]開発者の磯崎元洋は述べている<ref>[https://bunshun.jp/articles/-/42974?page=19 半年後に将棋の神様が現れるかもしれない話──最強将棋ソフト開発者が語る“ディープラーニング勢の台頭による将棋ソフトの進化” | 文春オンライン]</ref>。[[藤井聡太]]も序盤の研究のためにディープラーニング系ソフト「dlshogi」を取り入れて研究している<ref name="NHK2021">“[https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pRNn34yB3R/ 棋士たちはAIとさらなる高みへ 藤井聡太は「人間とは違うレベルに到達しつつある」]”. ''クローズアップ現代''. 日本放送協会. (2021年10月7日) 2022年2月4日閲覧。</ref>。

==== 入玉模様 ====
Bonanza以降主流になった機械学習において、プロ棋士の対戦データをもとにした[[教師あり学習]]では、プロ棋士の対局では少ない入玉模様の将棋を学習しにくい。入玉模様では、相入玉において目標が詰ますことから点数計算に変わるため、適切に判断できないことが多かった。2013年の第2回将棋電王戦第4局においては、相入玉に持ち込まれたPuella αは点数計算を正しく認識できず、結果として持将棋（引き分け）成立となった。

しかし、コンピュータが生成した膨大な数の局面を教師として学習したり、学習におけるパラメータを増加させて実戦が少ない局面の評価能力を向上させた結果、コンピュータ将棋の入玉模様は大幅に向上した。2015年の第25回世界コンピュータ将棋選手権では、コンピュータ将棋の大会で初めて、Seleneがコンピュータ自身の読みと判断により[[入玉#「入玉宣言法」による持将棋|宣言法]]による勝利を上げ、同大会の独創賞を受賞した<ref>[https://web.archive.org/web/20150509003712/https://shogi1.com/selene-nyugyokusengen/ Selene、史上初の入玉宣言法による勝利を達成。世界コンピュータ将棋選手権]</ref>。強豪ソフトにおける入玉将棋の強さと宣言法の実装は標準化されており、2016年の第4回電王トーナメントにおいても、ponanzaとやねうら王が1度ずつ入玉将棋において宣言法で勝利している。

==== 駒落ち戦 ====
序盤の定跡データベースは平手戦に基づいているため、プロ棋士の公式戦で指されなくなった駒落ち戦をコンピュータは苦手としていた。例えば、駒落ち特有の大局観を持ち合わせていないコンピュータは、二枚落ちの上手で穴熊に囲って自滅してしまうことがあった<ref>{{Cite news|title=将棋における適切なハンディのつけかた|author=やねうらお(磯崎元洋)|newspaper=俺のボカロがこんなに音痴なわけがない。|date=2014-04-18|url=http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20140418#p1|accessdate=2014-09-23}}</ref>。

しかし、駒落ち戦の弱さも、教師となる局面が少ないケースでの局面評価力を向上させることで改善した。アマ高段の棋力を持つponanza開発者の山本一成は、2016年4月に二枚落ちでponanzaに連続して敗れたことを報告している<ref>{{Cite news|title= |author=山本一成|newspaper=Ponanzaに二枚落ちで負けた・・・ |date=2016-04-12|url=https://twitter.com/issei_y/status/719799363900276737|accessdate=2016-10-12}}</ref>。また、水匠U(2020年)やAoba駒落ち(2021年)など、上手を持って高段者に勝つ、駒落ちに特化したソフトの開発も行われた。

=== 弱点 ===
{{更新|date=2025年1月|section=1}}
==== アンチコンピュータ戦略 ====
対コンピュータに特化した戦法として、自陣の歩を動かさず、守備に駒を配置したあとはひたすら手待ちして相手の時間切れを目指す、「丸山スペシャル」が知られている<ref>{{Cite news|title=アピール文章 稲庭将棋|author=|newspaper=|date=2010-03-16|url=http://www2.computer-shogi.org/wcsc20/appeal/Inaniwa_Shogi/inaniwa.pdf|accessdate=2023-02-10}}</ref>。人間にとっては打開できる駒組みでも、コンピュータにとっては読む手順が難しい穴となっていたことによる。この戦法を改良した「稲庭将棋」というソフトウェアは、2010年の第20回世界コンピュータ将棋選手権に出場し、一次予選を無敗で勝ち抜いた<ref name="csa-vol22">{{Cite news|title=コンピュータ将棋協会誌 第22巻（2010年号）|author=|newspaper=|date=|url=http://www2.computer-shogi.org/journal/CSA_vol22.pdf|accessdate=2023-02-10}}（pdfファイル）</ref>。稲庭将棋が出場した当時の世界コンピュータ将棋選手権は時間切れ負けで秒読みが無かったため、有力な戦法となった。第20回世界コンピュータ将棋選手権では、「新しい技術や工夫、面白い趣向を凝らして選手権を盛り上げたプログラム」に与えられる「独創賞」として、「丸山スペシャルをさらに進化させて実装し、コンピュータ将棋の弱点をあらわにした」ことを理由に稲庭将棋が選出された<ref name="csa-vol22"/>。

第2回将棋電王戦開催記念イベント「ニコニコ本社（原宿）で誰でも[[GPS将棋]]に挑戦! 勝てたら賞金100万円!!」で、[[ponanza]]開発者の山本一成が前述の稲庭将棋の戦術を用いGPS将棋の無理攻めを誘う作戦（山本曰く「400手以上攻めないで待ってると、無理に攻めてくるバグを見つけた」<ref>{{Cite web|和書|title=GPS将棋は本当に強いの? 佐々木勇気四段に聞いた|publisher=日刊SPA!|date=2013-03-13|accessdate=2015-05-26|url=https://nikkan-spa.jp/403268}}</ref>）を取ろうとしたものの、あまりにも時間がかかるため、[[勝又清和]]の裁定によって引き分けとなった{{Efn|なお、その後のイベントでは256手目まで指して決着がつかなければ引き分けなどのルールが明文化された<ref>[http://ex.nicovideo.jp/denou/million2015/ 電王AWAKE(ノートPC)に勝てたら100万円！挑戦者求む！] 256手目の時点で勝負がついていない場合は引き分け(その場合指しなおしは無し)</ref>}}。

第2回将棋電王戦第5局の総括インタビューで[[三浦弘行]]は「事前の研究で、GPS将棋の弱点には気づきませんでしたか？」と質問されて「明らかな癖などは見つかりませんでした。でも逆に、それでよかったと思っています。もし見つかっていれば、そこを衝くべきかどうか思い悩んだでしょうから。弱点を衝いて勝ったとしても、それで勝ったといえるのかというところがありますので。ただ団体戦だから、本当はやりたくなくてもそうすべきだという考え方もありますし･･･難しいところです」と答えている<ref>https://web.archive.org/web/20221001152904/https://gendai.media/articles/-/35787?page=14</ref>。

[[高見泰地]]は「（自分が電王戦の対局者だったらどうするかとの問いに）まず貸し出されたソフトで本番と同じ環境・時間設定にして同じ作戦を試して、どのくらいの確率で使えるのか、もちろん研究はしますね。ただ使えたとしても、やはり『[[ハメ手]]』ではあるので、今回のような一発勝負のイベント対局ではいいと思うんですが、電王戦では（プロとしての）[[自尊心]]の問題も出てくると思います。難しいですね」と答えている<ref>https://nikkan-spa.jp/810264</ref>。

電王戦FINALの第二局において[[永瀬拓矢]]が[[Selene]]に対し「2七角不成」という通常あり得ない手を指した{{efn|[[打ち歩詰め]]などを避ける場合、稀に不成を選ぶ場合がある}}。多くのソフトウェアは角、飛、歩が成らない局面を省くことで探索効率を上げているため、不成によってソフトウェアに一から計算させることで持ち時間を使わせることができる。この対局においてSeleneに角不成を認識できないバグがあり、王手放置によって反則負けとなった{{efn|ただし、「不成」を指す前の局面は永瀬優勢で、仮に成ったとしても優勢は変わらないとする意見が大勢であった。それでも指した理由を、永瀬は「優勢になったと思ったが、万が一を考えて指した」「修正されているかもしれないと思っていた」としている。また、同年[[3月27日]]放送の『[[Session-22]]』にゲスト出演した際に、「敗勢になっていたら指したか？」という質問には「そのような場合は選ばなかっただろう」と答えている}}。開発者は事前にバグを認識できていなかった。

2015年2月、「電王[[AWAKE (コンピュータ将棋ソフト)|AWAKE]](ノートPC)に勝てたら100万円！ 」のイベントで、アマチュア強豪の山口直哉があえて自陣に隙を作ることでコンピュータの「2八角」を誘い勝利<ref>[http://blog.computer-shogi.org/2015/02/ 2月 | 2015 | コンピュータ将棋協会blog]</ref>{{efn|この角は馬に成ることができるが、その後捕獲されてしまう}}。この他にも「2八角」誘導に成功した参加者がいたが、その後が続かず勝ったのは山口のみだった<ref  name="csa2015-04-11">[http://blog.computer-shogi.org/denosen_final_match_5/ 将棋電王戦FINAL第五局はAWAKE開発者が投了、団体戦はプロ棋士チーム勝ち越しで決着 | コンピュータ将棋協会blog]</ref>。この戦法は、ponanza対策として以前から知られていた戦法の一つであり、コンピュータ将棋が短期的には有利と評価されても長手数後に不利になることを読めない（計算コストの問題からその前に探索を打ち切る）ことに基づく弱点（[[水平線効果]]）を突いたものである<ref>{{Cite web|和書|url=https://nikkan-spa.jp/809998|title=将棋ソフトの死角をついた“ハメ手”で100万円獲得【将棋電王戦レポート】|date=2015-03-14|accessdate=2015-04-27|publisher=日刊SPA!}} </ref>。そして、2015年4月の電王戦FINALの第五局においても[[阿久津主税]]が同様に「2八角」を誘いAWAKEに勝利した（開発者による投了）<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASFG11H2O_R10C15A4000000/ 棋士、ソフトの弱点突き速攻決着 電王戦勝ち越し] - [[日本経済新聞]]</ref>。対局前に弱点は明らかになっていたが、プログラムの修正は認められていなかった<ref name="csa2015-04-11"/>。この件は後に大幅に脚色されて[[AWAKE (2020年の映画)|映画化]]された。

==== 指導対局・接待対局 ====
プロはアマチュア相手に[[駒落ち]]あるいは平手での指導対局を行う。しかし、「うまく手抜きをして負けてあげる」などといったような指導対局・接待将棋に関しては、コンピュータ将棋は未だ発展途上にある。特に、あからさまな負け方を避けるのが難しいとされる<ref>{{Cite web |url=https://codeiq.jp/magazine/2016/11/47092/ |archiveurl=https://web.archive.org/web/20161124014947/https://codeiq.jp/magazine/2016/11/47092/ |archivedate=20161124 | accessdate=2024-01-25 |date=2016-11-24 |title=プロ棋士・羽生善治が語る、AI時代を生き抜くために「身につけるべきスキル」とは? |publisher=CodeIQ}}</ref>。

[[羽生善治]]は、接待将棋のAIについて「接待将棋を指すのって、難しいのです。接待将棋は、基本的に相手の人がどれくらいのレベルで、どれくらいの将棋を指すのかを推測できないとできない。力を加減することはできるのですけど、あからさますぎてバレバレになるのですぐわかっちゃう」「AIに仕事が奪われる、みたいな話もありますが、ぼくの答えはいつも決まっていて、『接待ゴルフのような仕事は絶対なくなりませんよ』って答えるようにしています（笑）」という見解を述べている<ref>{{Cite web|和書|url=http://wired.jp/2017/02/14/habu-ishiyama/|title=人工知能に「接待将棋」はできない──羽生善治と石山洸が語る将棋とAIの進化|publisher=WIRED.jp|accessdate=2017-03-24|date=2017-02-14|author=}}</ref>。

==== 水平線効果 ====
{{Main|水平線効果}}
[[水平線効果]]とは、読みの深さの限界により、手の選択肢の中で、のちに極端に不利となる手を選んでしまう、もしくは、小さな損を繰り返すことで、大きな損をする状態を先延ばしにし、本来よりももっと不利になってしまうことである。技術の発展により、水平線効果が見られることは少なくなっている。

また、即詰みを読んだ場合、王手ラッシュ（無駄な王手の連続）で詰みを先延ばしにする現象が知られている。将棋電王戦FINAL第1局・[[斎藤慎太郎]]対[[Apery]]で作者である平岡拓也が、対局前に負ける場合でも開発者権限での投了はせず詰みまで指すと宣言し、実際に行ったため一部で「棋譜汚しだ」と批判が起きた。この問題について、即詰みを発見したらコンピュータ将棋の判断で投了するという設定にすると、人間が詰みに気がついていない段階で投了してしまう可能性があり、まだ調整が難しい課題でもある。

似た問題として、コンピュータ将棋は「相手は最善手を指し、うっかりミスをするような手は指さない」という前提で思考するため、いわゆる「勝負手（最善手ではないが局面を複雑にして相手のミスを誘発し、自身の逆転につなげる手）」を基本的に指さない。2023年の時点では、この点ではまだコンピュータが発展途上にあるという<ref>{{Cite web |url=https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/012000221/ |title=藤井聡太五冠の「定跡」にAIが追いついた 開発者が語る（下）|website=日経ビジネス電子版|publisher=日経ビジネス|date=2023-01-20|accessdate=2025-03-13}}</ref>。

==== 機能面 ====
思考ゲーム全般として、ともすると強さを競うあまりインターフェースや表示の工夫やエンターテイメント性に欠けがちな点が指摘される。[[電気通信大学|UEC]]杯5五将棋大会ではインターフェースに送られる「プレゼンテーション賞」を設けていた<ref>[https://web.archive.org/web/20080502203756/http://minerva.cs.uec.ac.jp:80/~uec55/tournament/com/ 第1回UEC杯５五将棋大会(UEC55-2007)公式サイト::大会概要::COM部門]</ref><ref>[http://blog.computer-shogi.org/shogi_positions_in_populist_tv_programs/#more-51 一般向けTV番組に登場する将棋の局面 | コンピュータ将棋協会blog]</ref>。

=== コンピュータ将棋に特有の性質 ===
==== 振り飛車の回避 ====
コンピュータ将棋は、基本的に振り飛車を低く評価する<ref name="asahi-furi-bisha"/><ref name="nico"/>。具体的には、飛車を振る手を指した瞬間に評価値が150～200程度ほど下がる（歩1枚の価値が100点程度）といい、「振り飛車は呪いの装備」と言われることもある<ref name="asahi-furi-bisha">{{Cite web|url=https://www.asahi.com/articles/AST19165DT19UCVL04KM.html|title=振り飛車は「呪いの装備」か　将棋AI開発者が語る理不尽との戦い|website=朝日新聞デジタル|publisher=朝日新聞|date=2025-01-10|accessdate=2025-01-14}}</ref>。

そのため、コンピュータによる研究を行っている[[藤井聡太]]二冠（2021年当時）に対して、居飛車党の棋士が藤井に研究されにくい振り飛車で挑んで勝利したことがある。一方、振り飛車を好んで指すソフトも開発されている<ref name="nico">[https://news.nicovideo.jp/watch/nw8824021 半年後に将棋の神様が現れるかもしれない話──最強将棋ソフト開発者が語る“ディープラーニング勢の台頭による将棋ソフトの進 | ニコニコニュース] 2021年7月30日閲覧。</ref>。

コンピュータ将棋が振り飛車を低く評価する理由ははっきりしておらず、「飛車を動かす一手を手損とみてマイナスに見ている」「初期配置の時点で相手の弱点である角頭に飛車がロックオンしているため、その飛車をあえて角頭から外すのがマイナスになる」などの説がある<ref name="asahi-furi-bisha"/>。また、[[やねうら王]]の開発者の磯崎によると、序盤では飛車を振ることで評価値が大きく落ちるが、その後持久戦模様になった場合は評価値が回復することが多いという。このため磯崎は「振り飛車の戦法自体が悪手というわけではないと考えている」という趣旨の発言をしている<ref name="nico"/>。

==== 先手の有利さ ====
コンピュータ将棋の発展に伴い、将棋ソフト同士の対戦では先手の勝率が高くなる傾向が見られるようになった。例えば、2021年に開催された[[電竜戦]]では、先手勝率70.0%に対して後手の勝率は25.6%に留まった<ref>[https://yaneuraou.yaneu.com/2022/01/01/if-a-white-player-choose-the-turn-in-the-middle-of-a-game/ 将棋で後手が途中で先後を選べるルール | やねうら王 公式サイト]</ref>。

電竜戦では先手・後手だけで有利が決まらないよう、対戦を先手・後手を入れ替えて2戦するという方式を取っている。さらに、先手の持ち時間を後手より減らし（先手10分-後手30分）、持将棋は先手の引き分け0.4勝、後手の引き分け0.6勝として計算するなどルールを工夫している。

==== 戦型 ====
バランス重視<ref>[https://kifulog.shogi.or.jp/denou/2017/05/post-86ca.html 電王戦中継ブログ : 記者会見（４）]</ref>、「[[居玉]]でもいい形をひねり出してきたりする」などの点が指摘される<ref>[https://gendai.media/articles/-/117776?page=1&imp=0 藤井聡太「人間が囚われてきた“常識”という名のブレーキを、AIが外してくれる」（藤井 聡太,山中 伸弥） | ＋αオンライン | 講談社]</ref>。

== 大会 ==
=== 世界コンピュータ将棋選手権（WCSC）===
{{main|世界コンピュータ将棋選手権}}
[[コンピュータ将棋協会]]が主催する大会。2002年の第12回以降は毎年5月上旬の[[ゴールデンウィーク]]期間中に開催されており、毎回約40種のプログラムが参加している。また、第16回以降の大会では、開催期間中、インターネットで棋譜のライブ中継が行われている。

世界コンピュータ将棋選手権の大会ルール<ref>[http://www.computer-shogi.org/ コンピュータ将棋協会]参照。各回ごとにルールが定められ、公開されている。</ref>に、対戦のためのプロトコルも定められており、2017年現在では対戦サーバを介してオクテットストリームで行うこととされている。なお、対戦サーバが利用できない場合など（あるいは、以前は）、シリアル（[[RS-232]]）通信や手入力の規定で対戦が行われる。持ち時間は15分だが、1手指すごとに持ち時間に5秒が加算されるフィッシャールールを採用している。

=== 電王トーナメント ===
{{Main|将棋電王戦}}
株式会社[[ドワンゴ]]が主催していた大会。プロ棋士とコンピュータの棋戦「将棋電王戦」の出場者選考のため、2013年の第一回から2017年の第五回まで毎年秋に開催されていた。

=== 電竜戦 ===
{{Main|電竜戦}}
[[NPO法人]]「AI電竜戦プロジェクト」が主催する大会。オンライン主体の大会の必要性などを理由に、2020年に第一回が開催された<ref>{{Cite web |url=https://denryu-sen.jp/dr1/index.html |title=第一回電竜戦概要 |publisher=電竜戦実行委員会 |accessdate=2024-01-25}}</ref>。以降、毎年11月から12月に本戦が開催され、その他指定局面戦やハードウェア統一戦も開催されている。

== 技術 ==
{{出典の明記|section=1|date=2015年6月}}

=== 評価関数 ===
コンピュータ将棋が次の指し手を計算する際には、「[[評価関数]]」と呼ばれる基準をもとに、局面の有利さを「評価値」と呼ばれる数値に変換している。評価関数をもとに数手先の変化を予測し、相手が最善を尽くしてきたときに、もっとも自分が有利になる手を探索する。評価関数の正確さ・探索の効率の良さは、コンピュータ将棋の強さに大きく影響する。多くの評価関数は、駒の損得を中心に、玉形や駒の働きなどを評価対象としている。

強豪ソフト「水匠」<ref>{{Cite web|和書 |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/419ae777484320ebff950ac10cedde7e73033704 |title=弁護士にして最強将棋ソフト「水匠」開発者、杉村達也さん（33）インタビュー |date=2020-05-05 |accessdate=2020-08-21 |publisher=Yahoo!ニュース |author=松本博文}}</ref>の開発者・杉村達也によると、コンピュータ同士の対戦の場合、「評価値÷30＋50＝勝率」という関係が成り立つ<ref>[[将棋フォーカス]]将棋ＡＩ最前線 2019/6/9</ref>。
[[Ponanza]]の場合、評価値300点くらいで勝率6割・評価値800点で勝率8割くらいとしている<ref>https://twitter.com/issei_y/status/589642166818877440</ref>。
商用版の[[やねうら王]]に収録されているQhapaqの場合、評価値500点は勝率7割強を意味するのに対し、評価値-500点の勝率は2割未満である<ref>https://twitter.com/Qhapaq_49/status/1064120385484931072</ref>。

「水匠」開発者・杉村達也によると2020年現在の評価関数は「だいたい1手先しか読んでないコンピュータがアマ二段ぐらいある」「一つの局面における合法手がだいたい100手だとして、100手、200手（つまり1手先）しか読まないコンピュータでも『級位者だと勝てるの難しいかな』ぐらいの実力がある。もう無駄な手はあまり読んでない」と述べている<ref>{{Cite web|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4485e2579a2cc5031de80ec3e71ae8b82eed3323|title=コンピュータ将棋が6億手読むとはどういうことか？最強将棋ソフト開発者・杉村達也さん（33）に聞く|website=Yahoo!ニュース|publisher=|date=2020-07-04|accessdate=2025-02-21}}</ref>。

==== 三駒関係 ====
王を1つ以上含む三駒の組み合わせおよび位置関係から評価関数を作る方法。Bonanzaは2009年のVer. 4から採用している。YSSは王からの相対座標で三駒の組み合わせを計算している。また、4駒での組み合わせで計算しているソフトもある。

=== 機械学習 ===
かつてのコンピュータ将棋ソフトでは、開発者が手作業で評価関数を作っていた。そのため将棋ソフトの開発には将棋の実力が必要とされ、実際、強い将棋ソフトの開発者は少なくともアマチュア有段者レベルの実力を持つ者で占められていた{{sfn|伊藤|2023|p=10}}。また複雑化しすぎて人間が設定することが困難になっていった<ref name=":1" />。しかし2005年に登場した[[Bonanza]]（開発者・[[保木邦仁]]）は、プロ棋士の棋譜を[[機械学習]]することで評価関数のパラメータを自動で作成した。この方法によって、将棋ソフトは人間のトップ棋士の感覚に近い評価関数を手に入れた{{sfn|伊藤|2023|p=10}}。この方法は「'''ボナンザ・メソッド'''」と呼ばれるようになり{{efn|第18回世界コンピュータ将棋選手権参加者のレポート<ref>{{Cite web|和書|url=http://www2.odn.ne.jp/~aao62090/WCSC18/index.html |title=第１８回世界コンピュータ将棋選手権 参加記 |publisher= |date= |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150626152928/http://www2.odn.ne.jp/~aao62090/WCSC18/index.html |archivedate=2015-06-26 |accessdate=2022-06-01}}</ref>によると、元々は保木が開発者向けの発表で使った表現だったが、後には学術論文の中での利用例も見られるようになり<ref>{{Cite journal |和書|author=松井利樹 |coauthors=橋本剛、橋本隼一、野口陽来 |title=進行度を用いたボナンザメソッドの提案 |journal=情報処理学会研究報告. GI, [ゲーム情報学] |volume=2008 |issue=59(2008-GI-020) |publisher=情報処理学会 |date=2008-06-20 |pages=9-15 |naid=110006835702 |url=http://id.nii.ac.jp/1001/00058472/ }}</ref>、専門用語として定着が進んでいる。}}、コンピュータ将棋史上のブレイクスルーの一つと見なされている{{sfn|伊藤|2023|p=10}}。

[[2009年]]に開催された[[世界コンピュータ将棋選手権|第19回世界コンピュータ将棋選手権]]では、決勝に進出した8ソフトの内、シードの[[激指]]と[[AI将棋|YSS]]を除く6ソフトが「ボナンザ・メソッド」を採用した。この結果、激指は2勝5敗、YSSは1勝6敗と惨敗し、翌年の選手権では「ボナンザ・メソッド」を採用した。

開発者の棋力に左右されないことから参入のハードルが下がり、2024年に開催された第34回世界コンピュータ将棋選手権ではアマ有段以上の開発者は少なくなるなど、開発者の層が変化していることが指摘されている<ref name=":0">{{Cite web |url=https://bizgate.nikkei.com/article/DGXZQOLM22E5Y022052024000000 |title=「将棋は先手必勝」をAI予測?　世界選手権自戦記 |access-date=2024/06/17 |publisher=日経BizGate}}</ref>。

==== 強化学習 ====
上述の「ボナンザ・メソッド」は、プロ棋士の棋譜による[[教師あり学習]]に相当するものだった。教師あり学習を採用したプログラムは、ミスの少なさ・読み手数の長さでプロ棋士を超えようとした。教師あり学習の欠点として、[[入玉]]模様など過去のプロ棋士の対戦棋譜が少ないパターンが弱くなる問題があった。

コンピュータがプロ棋士の強さを超えていった時期と前後して、プロ棋士の棋譜に頼らず、人間よりも強いコンピュータ同士の自己対戦から[[強化学習]]して評価関数を作る手法が一般的になっていった{{sfn|伊藤|2023|p=11}}。自己対戦棋譜による強化に成功したNineDayFeverの登場以降、コンピュータ同士の対戦棋譜が重視されるようになった。2016年以降はプロ棋士の棋譜を使わず、自ら棋譜を生成し数億ないしは数十億局面から浅い探索での評価値を深い探索での評価値に近づけるように学習するNineDayFeverの強化学習が一般的になり、入玉の評価も大幅に改善された。

==== 深層学習 ====
2018年、CPUで高速に計算できるニューラルネットワークを使用する[[NNUE]]と呼ばれる局面評価法が開発された。これは将棋ソフトで大きな成果を上げ、αβ探索系の将棋ソフトにおいて主流の評価関数手法となった<ref>[https://www.slideshare.net/bleu48/ai-249795006 深層学習の将棋Aiへの浸透について]（2023年6月28日閲覧）</ref>。2021年には、NNUEはコンピュータチェスソフトの[[Stockfish]]にも導入された。

また2017年には、囲碁AI・[[AlphaGo]]で成功を収めた[[モンテカルロ木探索]]と[[畳み込みニューラルネットワーク]]の手法によって、[[AlphaZero]]が将棋でも好成績を残したと発表された。AlphaGoやAlphaZeroの登場以後、AlphaZeroの追試を目的としたAobaZero<ref>[http://www.yss-aya.com/aobazero/ AobaZero]</ref>や、AlphaGoに触発されて開発が始まったdlshogi<ref>[https://logmi.jp/tech/articles/324157 ディープラーニングは今までの将棋AIとどう違う？ HEROZエンジニアが開発した将棋AIが電竜戦で初優勝した理由 - ログミーTech]</ref>など、モンテカルロ木探索と畳み込みニューラルネットワークを用いた「ディープラーニング系（DL系）」と総称される将棋ソフトが盛んに開発されるようになった。2020年代になって、コンピュータ将棋の大会ではこれらの「DL系」のソフトが徐々に優勢になってきている{{sfn|伊藤|2023|p=11}}{{efn|例えば2020年の第一回電竜戦では、探索部にdlshogiを採用したGCTが優勝を果たしている<ref>[https://gist.github.com/lvisdd/9b49ab88600fa242f2138fad4eb06caf DeepLearningShogi for Google Colab · GitHub]</ref><ref>[https://tadaoyamaoka.hatenablog.com/entry/2020/11/22/220015 【電竜戦】チームdlshogiのGCTが決勝リーグで優勝しました - TadaoYamaokaの日記]</ref><ref>[https://denryu-sen.jp/dr1/result.html 第一回電竜戦 大会結果]</ref>。}}。これらDL系の将棋ソフトの登場によって、NNUEを含め[[Bonanza]]の手法をベースにすることが主流だったコンピュータ将棋の世界に根本的な革新がもたらされたとの見方もある<ref name="matsumoto-20210816">[https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a741e932f6be3a79888889ceedefe6e10a1634a7 渡辺明名人、１秒間に8000万手読むコンピュータを購入しディープラーニング系のソフトも導入（１）（松本博文） - 個人 - Yahoo!ニュース]</ref>。

[[やねうら王]]の開発者・磯崎元洋は、DL系の将棋ソフトは「序盤がメチャ強いです。大局観が優れているので」「GCTの大局観は人間と同じレベルに達している」と分析している<ref>[https://bunshun.jp/articles/-/42974?page=19 半年後に将棋の神様が現れるかもしれない話──最強将棋ソフト開発者が語る“ディープラーニング勢の台頭による将棋ソフトの進化” | 文春オンライン]</ref>。

[[谷合廣紀]]は[[自然言語処理]]を応用した「Polonaise」を開発している<ref name=":0" />。

=== 探索 ===
==== ミニマックス法 ====
{{Main|ミニマックス法}}
[[チェス]]・将棋・[[オセロ (ボードゲーム)|リバーシ]]・[[チェッカー]]等の[[二人零和有限確定完全情報ゲーム|完全情報ゲーム]]で次の手を決めるための基本アルゴリズム。数手先まで読み、その時点で評価関数により局面に点数（手番の方がプラス）をつけ、手番の方は評価値が最大の手を、手番ではない方は評価値が最小の手を選ぶとして、次の着手を選択する。局面の分岐数をN、先読みする深さをLとすると、評価が必要な局面数はN^Lとなる。世界初の将棋ソフトも採用している<ref name=":1" />。

==== αβ探索 ====
{{Main|アルファ・ベータ法}}
将棋の場合、平均着手可能手数は80通りもあるので、<math>n</math>手先までの局面数はおおよそ<math>80^n</math>という膨大な数になる。これを全て計算すると限られた時間内では深く先読みすることはできなくなる。そこで、実際に計算する局面数を少なくし、深く読めるようにすることを枝刈りと呼ぶ。枝刈りを行いながらミニマックス法を適用する方法の一つが、αβ探索である。

基本的にミニマックス法と同じだが、再帰的に局面の評価を行う関数を呼ぶときに、その時に判明している評価値の下限値（これをα値と呼ぶ）と上限値（これをβ値と呼ぶ）を引数として渡し、この範囲を外れた評価値の局面の探索を打ち切るという方法である。ミニマックス評価で評価する局面数は N^L だが、αβ探索ではおよそ N^(L/2) となる。

==== 全幅探索 ====
ある局面下で指すことが可能な手をしらみつぶしに読む手法（[[力まかせ探索]]）。探索法としては原始的でプログラムも単純になるが、計算量が増えるため効率は悪いと考えられていた。しかし保木邦仁の[[Bonanza]]は、コンピュータチェスで一般的な手法だった[[ビットボード]]を将棋に応用して高速化に成功し、全幅探索を実用化した{{sfn|伊藤|2023|p=10}}。保木によれば、選択的な探索は処理が複雑となるため、全幅探索よりもマシンに負荷がかかるという<ref>保木邦仁・渡辺明共著 『ボナンザ VS 勝負脳――最強将棋ソフトは人間を超えるか』 角川書店、2007年。ISBN 978-4-04-710107-4</ref>。

==== 実現確率探索 ====
[[激指]]などが採用している手法。まず過去の対局データを元に、どのような手がどのくらいの確率で指されているかをあらかじめ集計しておく。この集計結果を使って探索時に次の一手の実現確率を求め、実現しにくいと考えられる局面を効率的に枝刈りする{{sfn|伊藤|2023|p=9}}。激指は実現確率の計算法として[[2004年]]から[[ロジスティック回帰]]を採用した。

==== モンテカルロ木探索 ====
{{Main|モンテカルロ木探索}}
シミュレーションを繰り返し、その平均的な結果が良い候補手を優先的に探索するアルゴリズム<ref>[https://www.ipsj.or.jp/magazine/hakase/2017/GI02.html モンテカルロ木探索の改善に関する研究-情報処理学会（2023年6月28日閲覧）]</ref>。2017年に[[AlphaZero]]が本手法と[[ディープラーニング]]を組み合せて好成績を残して以降、盛んに採用されるようになった（[[#深層学習]]節も参照のこと）。

=== クラスタリング ===
かつてはマシンを疎結合[[クラスタリング]]しても強くならず、あから2010では疎結合クラスタリング無しの重み付けを大きくしたが、[[2011年]]に[[ボンクラーズ]]が6台クラスタリングで優勝し、[[2012年]]は797台の[[GPS将棋]]が優勝した。ボンクラーズを開発した伊藤英紀は、もしボンクラーズで700台のマシンを使えるのであれば、[[イロレーティング|レーティング]]が200-300程度上がるという見解を示している<ref>http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/20134-fd94.html</ref>。レーティング差が200-300だと、期待勝率は（レーティングが高い方から見て）75-85パーセント程度となる。第2回 将棋電王戦第5局を振り返り、[[三浦弘行]]は、670台のGPS将棋に対して「私の勝算は5パーセントしかなかったんです」と語った<ref>https://web.archive.org/web/20221007035354/https://gendai.media/articles/-/35787?page=13</ref>。勝算が5%だとレーティング差500程度になる。

=== 合議制 ===
複数の思考エンジンで個別に候補手を計算し、その中から次の指し手を選ぶ手法{{sfn|伊藤|2023|pp=10-11}}。2009年の第19回世界コンピュータ将棋選手権では、複数のBonanzaを搭載した「文殊」が3位という好成績を収め<ref>「将棋世界」2010年10月号 p.148、「コンピュータ将棋協会」のwebサイト、「合議アルゴリズムと文殊のページ」</ref>、2010年に[[清水市代]]に勝利した「あから2010」もこの方法を採用していた<ref name="akara2010-vol1"/>。

=== 開発者用ツール ===
==== USIプロトコル ====
ユニバーサル将棋インタフェース（Universal Shogi Interface, '''USI'''）は、将棋の思考エンジン・[[グラフィカルユーザインタフェース]]（GUI）間で用いられる[[通信プロトコル]]である。ノルウェーのコンピュータチェス開発者・Tord Romstadが、コンピュータチェスで使われている{{仮リンク|ユニバーサルチェスインタフェース|en|Universal Chess Interface}}をベースにして2007年に考案した。USIプロトコルを採用することでプログラマが自身でGUIを開発する必要がなくなり、コンピュータ将棋の本体を開発しやすくなるというメリットがある。この利便性から、USIプロトコルはコンピュータ将棋開発者の間で爆発的に広まった<ref name="yaneurao-2022-usi"/>。

USIプロトコルに対応した代表的なGUIとして、将棋所<ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20080608045000/http://www.geocities.jp/shogidokoro/index.html|title=将棋GUIソフト将棋所|accessdate=2015-05-11}}</ref><ref>[http://shogidokoro.starfree.jp/enginelink.html 将棋所で動かせるUSIエンジンのリンク] 将棋GUIソフト「将棋所」のページ</ref><ref name="yaneurao-2022-usi"/>やShogiGUIがある。現在のUSIプロトコルは将棋所が実質的な[[リファレンス実装]]となっているが、将棋所の仕様は思考エンジンの開発者にとって機能不足な点が多いとされる<ref name="yaneurao-2022-usi">{{Cite web |url=https://yaneuraou.yaneu.com/2022/01/15/new-gui-for-shogi-is-needed-to-improve-the-usi-protocol/ |title=USIプロトコルの改良のためには新たな将棋用GUIが必要 |date=2022-01-15 |accessdate=2024-01-25 |publisher=やねうら王公式サイト}}</ref>。将棋所とShogiGUIはともにクローズドソースであり、コンピュータ将棋の開発者は機能を追加したくてもできない状態が続いていたが、2024年に『ShogiHome』という[[Electron (ソフトウェア)|Electron]]製GUIが久保亮介によって公開され<ref>{{Cite web|url=https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/1600459.html|title=Mac/Linuxでも楽しめる将棋アプリ「ShogiHome」が公開 ～オープンソース、Electron製|website=窓の杜|publisher=インプレス|date=2024-06-17|accessdate=2025-03-14}}</ref>、[[クロスプラットフォーム]]かつ[[オープンソース]]であるためやねうら王の開発者の磯崎はこれを応援していると公式サイトで述べた<ref>{{Cite web|url=https://yaneuraou.yaneu.com/2024/06/08/electron-shogi-is-amazing/|title=Electron将棋が素晴らしすぎる件について|website=やねうら王 公式サイト|publisher=|date=2024-06-08|accessdate=2025-03-14}}</ref>。

その他、[[:en:XBoard|Winboard / XBoard]]やBCM Shogi<ref>{{cite web|url=http://home.arcor.de/Bernhard.Maerz/BCMGames/index.htm|title= BCMShogi Shogi Graphical User Interface|last=Maerz|first=Bernhard|accessdate=2015-05-11}}</ref>も将棋エンジンに対応したGUIである。WinBoardはUSIでない独自のプロトコルを使用するが、アダプターを介してUSI対応エンジンと接続できる<ref>{{cite web|url=http://home.hccnet.nl/h.g.muller/shokidoki.html|title= WinBoard for Shogi|last=Muller|first=Harm Geert|accessdate=2015-05-11}}</ref>。WinBoardはオープンソースであり、LinuxではXBoardとして利用可能である。

==== Floodgate ====
コンピュータ将棋ソフトのための自動対戦サーバ<ref>{{cite web|
url=http://wdoor.c.u-tokyo.ac.jp/shogi/logs/LATEST/players-floodgate.html |title=Floodgate is a computer shogi server for computers |language=|accessdate=2015-05-11}}</ref>。将棋所で動作するプログラムはFloodgateに接続することができる。Floodgateは2008年から継続的に運営されている。2008年から2010年の間、167のプレーヤーが2万8千局をFloodgate上で対戦した。人間もFloodgateで対局することができる。持ち時間は15分切れ負けである。

== コンピュータ将棋を扱った作品 ==
* 映画「[[AWAKE (2020年の映画)|AWAKE]]」（監督・脚本：[[山田篤宏]]、2020年12月25日公開、[[キノフィルムズ]]）
: 将棋ソフト「[[AWAKE (コンピュータ将棋ソフト)|AWAKE]]」の開発者・[[巨瀬亮一]]の[[伝記]]をベースとしたフィクション作品。作中での主人公の役名も「清田英一」となっている。
* [[テレビ朝日]]系テレビドラマ「[[相棒]]」 [[相棒のエピソード一覧 (season8-season13)#season11|season11 第8話「棋風」]]（脚本：[[金井寛]]、監督：[[近藤俊明]]、主演：[[水谷豊]]・[[成宮寛貴]]、2012年12月5日放送）
* コミックス「[[永遠の一手 - 2030年、コンピューター将棋に挑む -]]」（作：[[伊藤智義]]、[[作画]]：[[松島幸太朗]]、[[秋田書店]]、2017年1月6日）

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Notelist}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* {{cite book|和書|title=人間に勝つコンピュータ将棋の作り方|publisher=技術評論社|year=2012|isbn=978-4774153261|editor=瀧澤武信 |ref=harv}}
* {{Cite book |和書 |editor=伊藤毅志 |title=ゲームAI研究の新展開 |publisher=オーム社 |date=2023 |isbn=978-4-274-23077-6 |ref=harv}}
* {{Cite book |和書 |author=谷川浩司 |title=常識外の一手 |publisher=新潮新書 |date=2015 |isbn=978-4106106217}}

== 関連項目 ==
* [[コンピュータゲームにおける人工知能]]
** [[コンピュータオセロ]]
** [[コンピュータチェス]]
** [[コンピュータ囲碁]]
* [[コンピュータ将棋協会]]
* [[世界コンピュータ将棋選手権]]
* [[将棋電王戦]]
* [[電竜戦]]
* [[ボナンザ・チルドレン]]

== 外部リンク ==
* [http://www2.computer-shogi.org/ コンピュータ将棋協会 (CSA)]
* [http://www2.computer-shogi.org/wcsc22/rule.html 世界コンピュータ将棋選手権 大会ルール]
* [https://www.shogi.or.jp/ 日本将棋連盟]
* [http://www.junichi-takada.jp/computer_shogi/comvshuman.html コンピュータ将棋 対 人間 対戦の記録]/一覧表
* {{Wayback|url=http://homepage1.nifty.com/ta_ito/ito-lab/gougi/gougi.html |title=合議アルゴリズムと文殊のページ |date=20090508012010}}

{{コンピュータゲームのジャンル}}
{{将棋}}

{{DEFAULTSORT:こんひゆうたしようき}}
[[Category:コンピュータ将棋|*]]