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{{出典の明記|date=2016-8-13}} [[数学]]において、'''コーシーの主値'''({{lang-en-short|Cauchy principal value}})とは、ある種の[[広義積分]]に対して定められる値のことである。 == 定義 == コーシーの主値は,[[特異点]]の種類によって以下のいずれかで定義される. i) 有限の積分範囲のとき {{math|''a'' < ''x'' < ''c''}} で定義される関数 {{math|''f'' (''x'')}} に対して、{{math|''a'' < ''b'' < ''c''}} なる {{mvar|b}} について :<math>\lim_{u\rightarrow b-0}\int_a^u f(x)\,dx=\pm\infty</math> :<math>\lim_{v\rightarrow b+0}\int_v^c f(x)\,dx=\mp\infty</math> である場合に([[プラスマイナス記号|複号同順]]) :<math>\lim_{\varepsilon\rightarrow 0+} \left(\int_a^{b-\varepsilon} f(x)\,dx+\int_{b+\varepsilon}^c f(x)\,dx\right)</math> で定められる値を'''コーシーの主値'''という。 ii) 無限のとき 関数 {{mvar|f}} に対して :<math>\int_{-\infty}^0 f(x)\,dx=\pm\infty</math> :<math>\int_0^\infty f(x)\,dx=\mp\infty</math> が成り立つ場合に([[複号同順]]) :<math>\lim_{a\rightarrow\infty}\int_{-a}^a f(x)\,dx</math> で定められる値を'''コーシーの主値'''という。 もし<math>b(-\infty<b<\infty)</math>においてi)と同じ条件が成り立っている、つまり<math>b</math>と無限の両方が[[特異点]]であるとき、'''コーシーの主値'''は次のように定義される:<math display="block">\lim_{\varepsilon \to 0^+}\left(\int_{b-1/\varepsilon}^{b-\varepsilon}f(x)\operatorname{d}\!x+\int_{b+\varepsilon}^{b+1/\varepsilon}f(x)\operatorname{d}\!x \right).</math>iii) 複素線積分における定義 [[複素関数]]<math>f(z) (z=x+iy\in\mathbb{C}, x,y\in \mathbb{R})</math>が経路<math>C</math>上に[[極 (複素解析)|極]]を持つとする。ここで<math>C(\varepsilon)</math>を、極を中心とする半径<math>\varepsilon</math>の円盤内の経路をその円盤の縁に沿うように<math>C</math>を変形したものとする。また<math>f(z)</math>は、どんな小さな<math>\varepsilon</math>に対しても経路<math>C(\varepsilon)</math>上で可積分であるとする。このとき<math display="block">\lim_{\varepsilon \to 0^+}\int_{C(\varepsilon)}f(z)\operatorname{d}\!z</math>で定められる値を'''コーシーの主値'''という。 [[ルベーグ積分]]論において、これは普通の積分の定義と同じものである。 <math>f(z)</math>が[[有理型関数]]のとき、{{ill|Sokhotski–Plemelj理論|en|Sokhotski–Plemelj theorem}}によってコーシーの主値と積分路を上下に少しずらした積分の平均値が対応する。従って[[留数定理]]を適用することが出来る。 コーシーの主値は、[[ヒルベルト変換]]において中心的な役割を持つ。 == 表記法 == コーシーの主値の表し方は特に決まっておらず、著者によって様々である。概ね、以下の :<math>PV \int f(x)dx,</math> :<math>\mathcal{P}\int f(x)dx </math> のように、P.V., ''PV'', ''P'', ''P''<sub>''v''</sub>, (''CPV''), V.P. のような記号を符牒として積分の通常の記法に付して用いるが、特にこれらに限られるというわけでもなく、{{math|⨍ ''f''(''x'') ''dx''}} なども用いられ<ref>{{dlmf |title=Definite Integrals |id=1.4#v }}</ref>、その時の前後の文脈から判断する必要があるといえる。 == 例 == 次の式は、一つ目はコーシーの主値を計算しているが、二つ目は積分区間が少し違うために結果も異なる。 :<math>\lim_{a\rightarrow 0+}\left(\int_{-1}^{-a}\frac{dx}{x}+\int_a^1\frac{dx}{x}\right)=0,</math> :<math>\lim_{a\rightarrow 0+}\left(\int_{-1}^{-a}\frac{dx}{x}+\int_{2a}^1\frac{dx}{x}\right)=-\ln 2.</math> このように少しの違いで値が異なってしまうため注意が必要である。 広義積分の仕方によっては :<math>\int_{-1}^1\frac{dx}{x}</math> は、{{math|±∞}} の両方の値を取り得る。 同じように :<math>\lim_{a\rightarrow\infty}\int_{-a}^a\frac{2x}{x^2+1}dx=0,</math> :<math>\lim_{a\rightarrow\infty}\int_{-2a}^a\frac{2x}{x^2+1}dx=-\ln 4</math> の場合も :<math>\int_{-\infty}^\infty\frac{2x}{x^2+1}dx</math> は、{{math|±∞}} の両方の値を取り得る。 == 超関数 == <math>C_0^\infty(\mathbb{R})</math> を[[実数|数直線]] <math>\mathbb{R}</math> 上の[[関数の台#コンパクト台付きの函数|コンパクトな台]]を持つ滑らかな関数の集合とする。このとき、写像 : <math>\operatorname{p.\!v.}\left(\frac{1}{x}\right)\,: C_0^\infty(\mathbb{R}) \to \mathbb{C}</math> を、コーシーの主値を用いて :<math> \operatorname{p.\!v.}\left(\frac{1}{x}\right)(u)=\lim_{\varepsilon\to 0+} \int_{| x|>\varepsilon} \frac{u(x)}{x} \, dx</math> for <math>u\in C_0^\infty(\mathbb{R})</math> と定義すると、これは[[超関数]]である。この超関数は、例えば[[ヘヴィサイドの階段関数]]の[[フーリエ変換]]などに現れる。 == 脚注 == {{reflist}} == 外部リンク == * [https://doi.org/10.11540/jsiamt.30.4_375 平山弘, 小宮聖司:「Taylor級数法によるCauchyの主値積分の数値積分法」、2020 年 30 巻 4 号 p. 375-392 。] {{DEFAULTSORT:こうしいのしゆち}} [[Category:解析学]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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