サツマイモのソースを表示

{{統合文字|薩}}
{{生物分類表
|名称 =サツマイモ
|色 = lightgreen
|画像 = [[画像:Ipomoea batatas.jpg|250px|サツマイモの花]]
|画像キャプション = サツマイモの花
|界 = [[植物界]] [[w:Plantae|Plantae]]
|門階級なし = [[被子植物]] {{Sname||Angiosperms}}
|綱階級なし = [[真正双子葉類]] {{Sname||eudicots}}
|下綱階級なし = [[キク類]] {{Sname||Asterids}}
|目 = [[ナス目]] [[w:Solanales|Solanales]]
|科 = [[ヒルガオ科]] [[w:Convolvulaceae|Convolvulaceae]]
|属 = [[サツマイモ属]] ''[[w:Ipomoea|Ipomoea]]''
|種 = '''サツマイモ''' ''I. batatas''
|学名 = {{Snamei||Ipomoea batatas}} ({{AU|L.}}) {{AU|Lam.}} {{small|([[1793年|1793]])}}<ref name="YList">{{YList|id=2863|taxon=Ipomoea batatas (L.) Lam.　サツマイモ（標準）|accessdate=2023-05-09}}</ref>
|シノニム = 
* {{Snamei|Ipomoea batatas}} ({{AU|L.}}) {{AU|Lam.}} var. {{Snamei|edulis}} ({{AU|Thunb.}}) {{AU|Kuntze}} {{small|([[1891年|1891]])}}<ref name="YList_21468">{{YList|id=21468|taxon=Ipomoea batatas (L.) Lam. var. edulis (Thunb.) Kuntze　サツマイモ（シノニム）|accessdate=2023-05-09}}</ref>
|和名 = {{ubl|'''サツマイモ'''（薩摩芋）|カンショ（甘藷）}}
|英名 = [[w:sweet potato|Sweet potato]]
}}

'''サツマイモ'''（薩摩芋{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}、[[学名]]: {{Snamei|Ipomoea batatas}}）は、[[ヒルガオ科]][[サツマイモ属]]の[[多年生植物]]。あるいはその食用部分である[[根#さまざまな根|塊根]]（養分を蓄えている肥大した根、[[芋]]）。別名で、'''甘藷'''（かんしょ）、唐芋（からいも）ともよばれる。[[ラテンアメリカ|中南米]]の原産で、[[ヨーロッパ]]、[[中国]]、[[日本]]などへ広まり、各地で栽培されている。食用される塊根は[[デンプン]]や[[ビタミン]]類を豊富に含み、[[焼酎]]原料や[[飼料]]にも利用される。
== 名称 ==
[[和名]]'''サツマイモ'''は、江戸時代に[[琉球王国]]（現・[[沖縄県]]）を経て[[薩摩国]]（現・[[鹿児島県]]）に伝わり、そこでよく栽培された事に由来する<ref name=どこ>{{Cite web|url=https://www.maff.go.jp/j/agri_school/a_tanken/satu/01.html |title=サツマイモ 「どこからきたの?｣|website=農林水産省こどもページ |accessdate=2018年12月6日}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0108/03.html |title=どうして、鹿児島県のシラス台地でさつまいもがよく栽培されるのですか |website=農林水産省こどもページ |accessdate=2021年4月2日}}</ref>{{sfn|主婦の友社編|2011|p=194}}。サツマイモは「[[薩摩藩]]から全国に広まった芋」を意味している{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。別名として'''甘藷'''（かんしょ）があり{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}、中国植物名も甘藷である{{sfn|貝津好孝|1995|p=34}}。甘藷は「甘味のある芋」の意味である{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。

[[英語]]では {{en|Sweet potato}}（スウィート・ポテト）{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}、[[フランス語]]では patate douce（パタートゥ・ドゥース）{{sfn|講談社編|2013|p=180}}、[[イタリア語]]では patata dolce（パタータ・ドルチェ）といい、いずれも「甘い[[ジャガイモ]]」という意味をもつ{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}。イタリア語では potata americana（パタータ・アメリカーナ：アメリカの芋の意）とも表現され{{sfn|講談社編|2013|p=180}}、和名にも「アメリカイモ」の別名もある<ref name="YList"/>。英語圏の一部では、サツマイモ「{{en|sweet potato}}」を「'''{{en|Yam}}'''」（ヤム）などの別の名前で呼んでいる<ref name="ipc1">{{Cite web |title=Roots and tubers in the global food system: A vision statement to the year 2020 |author=Scott, Best, Rosegrant, and Bokanga |year=2000 |publisher=International Potato Center, and others |date= |isbn=92-9060-203-1 |url=http://www.cipotato.org/publications/pdf/002468.pdf|accessdate=2016.10.20}}</ref><ref group="注釈">ニュージーランドでは'''kumara'''と呼ぶ。</ref>。[[ヤム|ヤム芋]]を育てていた[[アフリカ系アメリカ人|アフリカ系]][[奴隷]]が、[[アメリカ合衆国]]で作られた水っぽい「ソフトスイートポテト品種」がヤム芋と似ていたことから「ヤム」と呼ぶようになったことに由来する。アメリカなどでは本来のヤム芋は輸入食料品店ぐらいにしか置いていないことから、ヤムと表示されていれば「ラベルに注意書き」が無い限り「ソフト」スイートポテトのことである<ref>{{Cite web|url=https://www.loc.gov/rr/scitech/mysteries/sweetpotato.html |title=What is the difference between sweet potatoes and yams?（ヤム芋とスイートポテトの違いって何?）|publisher=[[アメリカ議会図書館]] |language=en |accessdate=2016-10-20}}</ref><ref>{{Cite book|和書|author=Harold McGee |title=マギー キッチンサイエンス |year=2008 |publisher=共立出版 |isbn=978-4320061606 |page=294}}</ref>。

地方により、また歴史的にも呼称は変遷し、たとえば日本本土では「唐芋（からいも、とういも）」や「琉球薯（りゅうきゅういも）」、[[野國總管]]が[[沖縄本島]]に導入した当時は「蕃薯（ばんしょ、はぬす、はんす、はんつ）」と呼ばれていた。他に「とん」「うむ（いもの琉球発音）」等とも呼ばれる。唐芋は「中国から伝わった芋」という意味を含んでいる{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。中国（[[唐]]）から伝来した由来により、特に九州では「唐芋」とも呼ばれる場合が多い<ref>{{Cite web|url=https://kumaque.com/kumamoto-dialect/5732 |title=今週の熊本弁【からいも】どぎゃん言うと?熊本方言講座|accessdate=2020-01-13}}</ref>。[[長崎県]]の[[対馬]]では「孝行いも」と呼ばれている<ref>{{Cite web |title=サツマイモが原料の対馬の郷土料理｜農畜産業振興機構 |url=https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000141.html |website=農畜産業振興機構 |access-date=2024-10-26 |language=ja}}</ref>。[[李氏朝鮮]]は対馬から伝わったが、その際に「孝行いも」が変化して、[[韓国語]]ではコグマ(고구마)と言う<ref>{{Cite web |title=由来：4．日本から入ったサツマイモの「고구마」とその名の由来 {{!}} 韓国語教室ブログ(アーキ・ヴォイス) |url=https://www.archi-voice.info/contents/kor_blog/2008/06/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8B%E3%82%89%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%B5%E3%83%84%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%81%AE%E3%80%8C%EA%B3%A0%EA%B5%AC%EB%A7%88%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%90%8D/ |date=2008-06-20 |access-date=2024-10-26 |language=ja}}</ref>。

== 特徴 ==
各地で栽培されるつる性の[[多年生植物|多年草]]{{sfn|貝津好孝|1995|p=34}}。高温や乾燥に強く、痩せ地でも良く育つ丈夫な[[野菜]]で、芋（塊根）などを食用にする{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}。[[葉]]は、[[ヨウサイ]]や[[アサガオ]]に外見が似ている{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}。[[花]]は[[ピンク]]色でアサガオに似るが、高温[[光周性|短日性]]であるため、[[日本]]の[[本州]]など[[温帯]]地域では開花しにくく、日長要因だけではなく何らかのストレスによってまれに開花する程度である{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}。また、花の数が少なく[[受粉]]しにくい上に、受粉後の寒さで枯れてしまうことが多いため、[[品種改良]]では[[種子]]を効率よく採るためにアサガオなど数種類の近縁植物に[[接木]]して、台木から送られる養分や[[植物ホルモン]]等の働きによって開花を促進する技術が使われる。[[デンプン]]を多く含む芋は、根が肥大したもの（塊根）で、茎が肥大した塊茎を持つジャガイモと相違がみられる{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}。

[[1955年]]（[[昭和]]30年）に[[西山市三]]が[[メキシコ]]で祖先に当たる[[倍数性|二倍体]]の野生種を見つけ、イポメア・トリフィーダ（''Ipomoea trifida''）と名付けた。後に他の学者達によって[[ラテンアメリカ|中南米]]が原産地とされた。若い[[葉]]と[[茎]]を利用する専用の品種もあり、[[主食]]や[[野菜]]として食用にされる{{要出典|date=2023年7月}}。

芋の皮の色は紅色や赤紫色の他、黄色や白色がある{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。芋の中身は主に白色から黄色で、中には橙色や紫色になる品種もある{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。特に全体が紫で、芋の中身が[[アントシアニン]]に由来して紫色のサツマイモを、'''[[紫芋]]'''（むらさきいも）と呼んでいる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}。

== 歴史 ==
原産地は[[中央アメリカ]]の[[メキシコ]]中央部から[[グアテマラ]]にかけてとする説が有力である{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。紀元前3000年以前から、メキシコ地域で栽培化されていたとみられている{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。その後は[[南米]]の[[ペルー]]に伝わり、古代ペルーの遺跡からサツマイモの葉や花、根を描いた土器や綿布が発見されていることから、重要作物になっていったと考えられている{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。

[[ヨーロッパ]]・[[アジア]]・[[オセアニア]]においては[[外来]]植物である。

15世紀末に[[クリストファー・コロンブス]]が新大陸を発見し、[[スペイン]]の[[イザベル女王]]へ献上したこと契機に、アメリカ大陸からヨーロッパへと広まった{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。しかし、もともと熱帯作物であったため、ヨーロッパでは[[ジャガイモ]]のように普及することはなかった{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。[[イギリス]]では[[エリザベス朝]]の頃に、その甘さから好意的に受け入れられた。[[イギリス人]]はこの芋をペルーでの塊茎を意味する言葉 batata から patate と呼んだ。[[18世紀]]末に甘くないジャガイモ（potato）が一般化するにつれ、サツマイモは sweet potatoと呼ばれるようになった<ref>{{Cite book|和書 |author=マグロンヌ・トゥーサン＝サマ |translator=玉村豊男 |title=世界食物百科 |date=1998 |publisher=[[原書房]] |isbn=4562030534 |ref=harv}}p.61</ref>。

[[大航海時代]]の1498年に、コロンブスが[[ベネズエラ]]を訪れて以降、[[1519年]]には[[ポルトガル]]の[[フェルディナンド・マゼラン]]が[[スペイン]]船隊を率いて南端の[[マゼラン海峡]]を発見。[[16世紀]]に頻繁に[[南アメリカ]]大陸にやってきた[[スペイン人]]あるいは[[ポルトガル人]]により[[東南アジア]]に導入された{{要出典|date=2023年6月}}。[[ルソン島]]（[[フィリピン]]）から[[中国]]を経て、[[17世紀]]の初め頃に[[琉球諸島|琉球]]、[[九州]]へと伝わった{{要出典|date=2023年6月}}。

[[ニュージーランド]]へは[[10世紀]]頃に伝播し、「クマラ」(kumara) の名称で広く消費されている{{要出典|date=2023年6月}}。{{要出典範囲|[[西洋人]]の来航前に既に[[ポリネシア]]域内では広く栽培されていた|date=2024年5月}}。

日本へは、17世紀初めに[[中国]]から[[琉球諸島|琉球]]にもたらされ、やがて[[薩摩]]へ伝わり、九州南部で栽培されたのが「薩摩の芋」として、全国へ広まり定着した{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。なお、1597年に[[宮古島]]に伝わったとの説もあるが、年代に疑義がある上、宮古島から他の地域へは伝播しなかった。西日本の大飢饉の折に、鹿児島で餓死者を出さなかったことから、凶作の年でも収穫が見込める[[救荒作物]]として重要視されるようになり{{sfn|講談社編|2013|p=183}}{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}、[[江戸時代]]に飢饉を救う救荒作物として栽培が奨励された{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}。飢饉対策に腐心していた江戸幕府8代将軍・[[徳川吉宗]]の命によって、1735年、[[蘭学者]]の[[青木昆陽]]が薩摩から[[江戸]]に種芋を取り寄せて、小石川御薬園（現：[[小石川植物園]]）などでサツマイモを試作し、これをきっかけに東日本各地でも栽培が広がった{{sfn|講談社編|2013|p=183}}{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}。20世紀の[[第二次世界大戦]]（[[太平洋戦争]]）中は、軍事統制下の深刻な食糧難からサツマイモ栽培が大いに奨励された{{sfn|講談社編|2013|p=183}}（日本列島における普及史については、「[[#日本列島における栽培と普及史|日本列島における栽培と普及史]]」も参照）。

== 品種 ==
[[File:Satsumaimo in Japan Cultivate Area 2020.png|thumb|right|300px|日本におけるサツマイモの品種別栽培面積]]
[[画像:Ipomoea batatasL ja01.jpg|250px|thumb|掘り出したサツマイモ]]
世界には4000種あるといわれているが、日本で栽培されるのは40品種程度である{{sfn|講談社編|2013|p=180}}。紅あずま、紅こまち、[[紅赤]]（べにあか）、安納紅、安納こがね、紅はるか、シルクスイート、[[金時]]などの[[品種]]がある。なかでも、関東では紅あずま、関西および九州では高系14号が主流となっている{{sfn|講談社編|2013|p=180}}。[[デンプン]]原料用としては、シロユタカ、シロサツマ、[[コガネセンガン]]（黄金千貫）などがある。[[天然着色料]]の原料としても使用される品種に<ref>{{Cite web|url=http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/07/10/1007.html |title=目がテン!『焼きイモ』 |accessdate=2010-10-15 |url-status=dead|url-status-date=2020-03-09|archivedate=2016-08-15 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160815090036/http://www.ntv.co.jp/megaten/library/date/07/10/1007.html}}</ref>、七福人参（[[カロテン|カロテン色素]]を抽出する。）、琉球紫（[[アントシアニン|アントシアニン色素]]を抽出する。）、パープルスイートロード（アントシアニン色素を抽出する。）がある。葉を楽しむ観葉植物用の品種も市販されている。

* '''[[紅あずま]]'''（べにあずま） - 東日本でポピュラーな品種。芋の外皮が濃い紅紫色で中身が濃い黄色。繊維が比較的少なく甘味が強い。粉質でホクホクした食感が特徴{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。焼き芋や菓子の材料の他、家庭料理全般に向く{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。流通量が多く、農林水産省の統計によれば、紅あずまの全国作付け面積は2012年産で7358ヘクタール、2019年産で4472ヘクタールである<ref name="digital.asahi.com">[https://www.asahi.com/articles/DA3S15147814.html 舟和」芋ようかん値上げ　「紅あずま」仕入れ難航　焼き芋人気、「紅はるか」転作続々] 朝日新聞、2024年2月2日閲覧</ref>。
* '''[[高系14号]]'''（こうけい14ごう） - 西日本でポピュラーな品種。芋の外皮は赤褐色、中身が淡黄色。糖度は8%ほどで甘味が強く、ややねっとりしている。焼き芋には最適で、各生産地で「鳴門金時」「土佐紅」「千葉紅」などの独自ブランド名をつけて出荷流通する{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。
** '''[[鳴門金時]]'''（なるときんとき） - 西日本でポピュラーな徳島県鳴門の砂地で栽培される品種。甘味が強くホクホクした食感が特徴。天ぷら・大学芋・菓子材料に向く{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。流通量が少ないことで知られる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}。
** '''紅はるか'''（べにはるか） - 鳴門金時と同じ高系14号系の品種。「九州121号」と「春こがね」を交配させて誕生した。<ref>{{Cite web |title=べにはるか {{!}} 農研機構 |url=https://www.naro.go.jp/collab/breed/0100/0102/001374.html |website=www.naro.go.jp |access-date=2024-07-31}}</ref>名前の由来は、食味や外観が既存品種よりも「はるか」に優れていることから。甘味が強く、水分が多めで、蒸し芋や干し芋にすると美味しい{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。農林水産省の統計によれば、紅はるかの全国作付け面積は2012年産で2037ヘクタール、2019年産で5301ヘクタールである。また高値のつく形やサイズのよいものが多く取れ、害虫にも強い<ref name="digital.asahi.com"/>。
** '''坂出金時'''（さかいできんとき） - 高系14号系の[[香川県]]の品種。粉質のホクホクした食感で、ほどよい甘さがあり、料理や菓子に向く{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。
** '''五郎島金時'''（ごろうじまきんとき） - 高系14号系の[[石川県]][[金沢市]]・五郎島地区の砂丘地で栽培される品種{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}。江戸時代の元禄期に、鹿児島から加賀に種芋を持ち帰って栽培されたといわれる伝統品種。中央がふっくらした紡錘形で身の色が白く、上品な甘さと粉質でホクホクした食感がある{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。
* '''[[紅赤]]'''（べにあか） - かつて関東地方の代表的な品種で、皮が鮮やかな赤紫色で細長いのが特徴。細すぎるのは繊維が多い。加熱すると中が濃い黄色になって甘味が強く、焼き芋や栗金団用に人気がある{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''紅さつま'''（べにさつま） - 鹿児島県でもっとも多く栽培されている青果・加工用の芋。皮は濃赤色で中は黄白色。例年5月下旬から、日本一早い「新芋」として出荷される。ホクホクした食感で甘味があり、焼き芋やふかし芋、天ぷらなどに向く{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''大隅甘いも'''（おおすみあまいも） - 小ぶりで中が濃い色の鹿児島県の品種。加熱するとねっとりした食感で、甘味が強い{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。
* '''アヤコマチ''' - 中が橙色に近い濃い色の芋で、カロテンを多く含む。焼き芋・蒸し芋・サラダに向く{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。
* '''いずみいも''' - 外皮が白っぽい色で、中が濃い黄色の芋。甘味が強く、こくがあってねっとりした食感をもち、茨城県産の干し芋として人気がある{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。
*'''シルクスイート''' - 農林水産省の登録品種で、登録名 HE306。外皮は赤褐色で中身は淡黄色。絹のような滑らかな食感と強い甘さを持つ{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}。
* '''隼人芋'''（はやといも） - 鹿児島県の在来種で、別名「にんじん芋」「かぼちゃ芋」。外皮が薄い茶橙色で、加熱すると中身がニンジンのようなオレンジ色になる。カロテン含有量が多く、甘味が強くやわらかい。蒸し芋や焼き芋にするほか、焼酎の原料にも使われる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''紅はやと'''（べにはやと） - 皮は赤紫色で、中はカロテン含有量が多くオレンジ色をしている。柔らかく繊維が少ないことから、大学芋や菓子、シャーベットなどに利用される{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''種子島紫'''（たねがしまむらさき） - 種子島の在来種で、沖縄県・鹿児島県に多い[[紫芋]]の一種。外皮は白く、中身は鮮やかな紫色が特徴。ホクホクした食感で甘味が強く、デンプン質も多く含まれている。焼き芋、蒸し芋のほか、菓子加工用にも向き、紫芋独特の上品な甘さの焼酎にも加工される{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
** '''種子島ゴールド'''（たねがしまゴールド） - 1999年に「種子島紫」から品種選抜して育成された品種で、皮が白色で中が斑入りの鮮やかな紫色。紫芋の中では甘味があり、焼き芋、ふかし芋、天ぷらに向き、また和洋菓子の材料としても利用される{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
** '''種子島ロマン'''（たねがしまロマン） - 1999年に「種子島紫」から品種選抜して育成された品種で、皮は赤紫色で中は淡紫色。外観もよく、ふかし芋、天ぷらに向く{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
* '''[[安納いも]]'''（あんのういも） - 鹿児島県種子島産・安納地区の在来種{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}。甘味が強く、焼くと水分の多いねっとりとした食感で、「蜜イモ」とも呼ばれている。干し芋や焼き芋のほか、デザートの原料にも使われる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}。
** '''安納紅'''（あんのうべに） - 2000年に「安納いも」から品種選抜されたもので、在来種よりも優れている。皮は赤褐色で中が淡黄色。粘度が高く、甘味が強い。蒸し芋や焼き芋にすると美味しい{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''[[黄金千貫]]'''（こがねせんがん） - 外皮も中身も黄白色で、もともとデンプン原料として栽培され、主に芋焼酎の原料として使われる品種。ホクホクした食感とあっさりした甘味があり、天ぷら、焼き芋、ふかし芋揚にも向く{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''栗こがね'''（くりこがね） - 皮は淡黄褐色で中が黄白色。九州で人気があり、ホクホクした食感で甘味が強い。天ぷらや焼き芋をはじめ、様々な食べ方に使われる{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''こがねむらさき''' - 種子島で古くから栽培された紫芋から味の良いものを選抜した品種。生産数が少なく「幻のサツマイモ」として珍重される。皮は灰白色で中が薄紫色。熱を通すと濃い紫色になる。肉質は緻密で、和菓子のような上品な甘さがある。天ぷら、ふかし芋、焼き芋に適している{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
* '''山川紫'''（やまかわむらさき） - 海外から導入されて鹿児島県山川地方で栽培される品種。皮は赤色で中は濃い紫色。糖分が少なく青果には不向きである代わりに、色の濃い紫を活かして、アイスクリームや芋飴などの着色料として利用する{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
* '''パープルスイートロード''' - 外皮は赤紫色や暗紫色で中身が濃紫色をした、青果用の紫芋として育成された品種。ホクホクした食感と、ほどよい甘味があり、焼き芋やふかし芋の他、料理や菓子と用途は幅広く使われる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=107}}{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
* '''えいむらさき''' - 鹿児島県[[頴娃町]]で生産される在来種で、外皮は赤色で中はわずかに霜降り状になっている濃い紫色。さっぱりした甘さで、蒸し芋や天ぷらの他、菓子の原料に使われる{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
* '''[[紅芋]]'''（べにいも） - 沖縄特産の紫芋。肉質はきめ細かく、ほどよい甘さがあり、ふかし芋や焼き芋の他に、菓子やソフトクリームなどにも加工される{{sfn|講談社編|2013|p=185}}。
* '''タマユタカ'''（玉豊） - 「かんしょ農林22号」という干し芋用・デンプン原料用・飼料用にされる品種で、芋はずんぐりした短紡錘形で、外皮は黄白色で中身が白い。掘ったばかりのものは甘味は少ないが、干し芋に加工することで甘味が出る{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}。
* '''ベルベット''' - 大正時代にアメリカから日本へ導入された鹿児島で栽培される品種。皮は紅色、中身がオレンジ色でその周囲が紫色をしているのが特徴。粘質で、天ぷらや干し芋にされる{{sfn|講談社編|2013|p=184}}。
* '''シモンイモ''' - 南アメリカ原産の白甘藷（英語：[[:en:Ipomoea batatas|Ipomoea batatas]]）は、日本では「シモン芋」とも呼ばれる{{要出典|date=2023年7月}}。

== 栽培 ==
[[画像:Sweet-potato-field,katori-city,japan.JPG|thumb|right|200px|サツマイモ畑]]
サツマイモは種芋ではなく、発芽させてから苗をつくり、畑に植え付けて栽培する。植え付けまでは手間がかかるが、植え付け後は収穫するまで放任栽培で生育する。[[連作障害]]は出にくく栽培は容易であるが、窒素分が多い肥えた畑では茎葉が育ちすぎてイモができなくなる「つるボケ」になるため、肥料は少なく調整する。

=== 栽培法 ===
苗となるツルを初夏に定植してから約4か月ほどで、イモの収穫時期となる{{sfn|市川啓一郎|2021|p=142}}。サツマイモは[[繁殖]]能力が高く、[[窒素固定菌|窒素固定細菌]]（クレブシエラ・オキシトーカ (''Klebsiella oxytoca'') 、パントエア・アグロメランス (''Pantoea agglomerans'') ）など<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.20710/dohikouen.50.0_54_3 |title=サツマイモ及びサトウキビに内生する窒素固定エンドファイト細菌の分離と同定 |journal=日本土壌肥料学会講演要旨集 |volume=50 |issue=54 |date=2004-09-14}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/narc/2005/common05-20.html |title=サツマイモ体内からのエンドファイト窒素固定遺伝子の検出 |publisher=[[農業・食品産業技術総合研究機構]]（農研機構） |work=2005年の成果情報 |accessdate=2014-03-20}}</ref>との[[共生]]により[[窒素固定]]が行えるため、痩せた土地でも育つ。ナス科のジャガイモは[[連作]]を非常に嫌う性質を持つ一方で、サツマイモは連作には強く[[連作障害]]は少ない方であるが{{Sfn|金子美登|2012|p=178}}、同じ畑では1 - 2年あけるようにする{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}{{sfn|市川啓一郎|2021|p=141}}。野菜のうちでは最も高温性で、生育適温は25 - 30度以上、発芽適温は20 - 30度、イモ肥大の適温は20 - 30度が必要とされている{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}{{sfn|板木利隆|2020|p=394}}。強い光を好み、乾燥にもよく耐えて生育する{{sfn|板木利隆|2020|p=394}}。栽培に適する土壌酸度は [[水素イオン指数|pH]] 5.0 - 6.0{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}、土壌の適応性は幅広く、どんな土壌でも栽培は可能であるが、耕土が深くて通気が良いことが芋の肥大には不可欠となる{{sfn|板木利隆|2020|p=394}}。有機物の多い肥沃な土地では、[[つる植物|ツル]]ばかりが伸びて葉が茂り、塊根が太らなくなる「つるぼけ」になってしまうことがある{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}{{sfn|主婦の友社編|2011|p=199}}。従って、肥料は窒素過多によって茎葉が茂りすぎる「つるぼけ」を防ぐため、肥沃な畑では肥料をごく少なくする{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}{{sfn|板木利隆|2020|p=394}}。施肥するとすればデンプン生成に必要な[[カリ]]（つまり[[灰]]）を施肥するだけでも十分効果がある{{sfn|市川啓一郎|2021|p=142}}。栄養繁殖で栽培するため、前年に収穫したイモを次年栽培用の種芋とするが、低温には弱いため10度以上で保存する必要があるといわれる{{sfn|市川啓一郎|2021|p=140}}。

サツマイモは種芋を植えるのではなく、種芋から芽を出して育苗して、7 - 8枚の葉が付いたツル（さし苗）を切り取って土に挿すという形で定植し<ref group="注釈">種まきとは種子（特に真性種子）に対して使われる言葉であり、種芋やツル苗あるいは球根などの栄養繁殖の場合は定植（ていしょく）という言葉が一般的。</ref>、さし苗の葉の付け根の節から出る[[不定根]]を発生させるため浅い角度で茎が埋まるように斜めに挿す{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}。その後、不定根が十分に肥大してやがて芋になるので{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=115}}、これを[[収穫]]する方法が一般的である。[[農家]]では前年に収穫した種芋を土の中で貯蔵しておき、種芋の両端を切り落として温床をつくって伏せ込み、その種芋から伸びたツルを切り取って苗とする{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=133}}{{Sfn|金子美登|2012|pp=178&ndash;179}}。植え付ける前に、苗のしおれが戻るまで水に挿しておく{{sfn|板木利隆|2020|p=395}}。苗をつくる場合は、健全な種芋を育苗土を入れた発泡スチロール箱に埋め、日当たりのよい場所を選んで箱の下半分を地面に埋めて、上方をビニールシートで覆い、さらにビニールトンネルをかけておく{{sfn|板木利隆|2020|p=397}}。温度上昇に伴って芽が出したら、徐々に覆いを外して日に当て、長さ30&nbsp;cmの苗に仕上げる{{sfn|板木利隆|2020|p=397}}。切り取った苗はコンテナなどにそのまま入れて冷暗所に1週間ほどおき、時々水やりをして発根を促しておくとよい{{Sfn|金子美登|2012|p=180}}。

水はけと通気性の良い環境を好むため、高さ30センチメートルほどの高畝で育てる{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}{{sfn|板木利隆|2020|p=394}}。[[畝]]は地中の温度を上げ、除草のために[[マルチング]]を行うときもある{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=115}}。春、高畝にした畑に苗を水平、または斜めに差すようにして、30 - 40&nbsp;cmずつ開けて植え付ける{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=135}}。苗は、ややしおれ気味になった苗のほうが根が出やすくなり、植え込んでから1週間ほどで活着する{{sfn|市川啓一郎|2021|p=142}}。植え付け後の追肥は一般的には不用である{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=115}}。ツルが四方に伸びてくると、畝間など周囲の土にも根付いてしまうので、根付いた部分から余計な芋がつくのを防止するため、また栄養成長を抑えて芋を充実させるために、ツルを持って根を引き剥がして裏返すように置く「つる返し」を何度か行う{{sfn|金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編|2011|p=135}}{{Sfn|金子美登|2012|p=181}}{{sfn|市川啓一郎|2021|p=142}}。晩夏から秋にかけて、地上部のツルを刈り取って、芋を傷つけないようにまわりの土を掘ってほぐし、株元をつかんで引き抜いて収穫する{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=115}}。霜に当たるとサツマイモが腐ったり、貯蔵性が悪くなったりするため、霜が降りる前に収穫を終えるようにする{{sfn|丸山亮平編|2017|p=103}}。

[[肥料]]、特に窒素肥料が効き過ぎると葉や茎が育ちすぎる「つるぼけ」になるため禁物である。葉の色を見て特に淡すぎるようであれば少量与えてもよいが、普通の畑ならばほとんど無肥料で良い{{sfn|板木利隆|2020|p=396}}。サツマイモは痩せた土地でも育つので、前作で野菜を作っている畑の場合では、全く肥料を与える必要はない{{sfn|丸山亮平編|2017|p=102}}。苗が植物[[ウイルス]]に感染すると収量低下を起こすため、[[ウイルスフリー]]苗が利用されることもある<ref>{{Cite web|url=http://www.city.yokkaichi.mie.jp/farm/report/2002/sweetpotato.html |title=サツマイモのウイルスフリー苗の作出 |publisher=[[四日市市]]農業センター |accessdate=2014-03-20 |url-status=dead|url-status-date=2020-03-09 |archivedate=2005-01-20 |archiveurl=https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/237232/www.city.yokkaichi.mie.jp/farm/report/2002/sweetpotato.html}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/noushin/portal/nougyou/bio/why.html |title=培養苗はなぜ必要？ |publisher=[[静岡県]][[浜松市]]農業バイオセンター |accessdate=2014-03-20}}</ref>。

特殊な栽培法であるが、[[乾燥]]地ではツル苗の活着率が悪いため、種芋を直接または種芋を適当な大きさに分割して、ジャガイモのように圃場に直接植えつける（直播）こともある。栽培の省力化を目論んで種芋直播用農機具の技術開発が行われている<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.4035/jsfwr.48.103 |title=サツマイモ直播栽培用の種イモ切断装置および電動播種機の開発 |journal=農作業研究 |volume=48 |year=2013 |issue=3 |pages=103-109 |issn = 0389-1763}}</ref>。

=== 病虫害 ===
病虫害はあまり発生しない方であるが{{sfn|丸山亮平編|2017|p=102}}、発生する場合は以下のようなものがある。
; 病気
* [[つる割病]]、[[基腐病]]<ref>{{cite news|quote=九州・沖縄地方だけでなく[[四国]]や[[本州]]にも侵入。|url=https://www.chunichi.co.jp/article/175367 |title=サツマイモ「基腐病」県内初確認|publisher=[[中日新聞]]|date=2020年12月24日|accessdate=2021年1月5日}}</ref>、黒斑病{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}、[[カンキツグリーニング病|立枯病]]、[[かいよう病]]、軟腐病、帯状粗皮病<ref>{{Cite web|title=サツマイモ｜基本の育て方と本格的な栽培のコツ {{!}} AGRI PICK|url=https://agripick.com/2328|website=AGRI PICK|accessdate=2021-02-16}}</ref>
; [[害虫]]
* コガネムシの幼虫{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}、サツマイモネコブセンチュウ{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}、[[ヨトウムシ]]{{sfn|市川啓一郎|2021|p=142}}、[[ドウガネブイブイ]]、チャイロムナボソコメツキ、イモキバガ、ナカジロシタバ、[[エビガラスズメ]]

沖縄県全域、[[奄美群島]]、[[トカラ列島]]、[[小笠原諸島]]では[[アリモドキゾウムシ]]<ref>{{Cite journal|last=Himuro|first=Chihiro|last2=Kohama|first2=Tsuguo|last3=Matsuyama|first3=Takashi|last4=Sadoyama|first4=Yasutsune|last5=Kawamura|first5=Futoshi|last6=Honma|first6=Atsushi|last7=Ikegawa|first7=Yusuke|last8=Haraguchi|first8=Dai|editor-last=Papadopoulos|editor-first=Nikos T.|date=2022-05-12|title=First case of successful eradication of the sweet potato weevil, Cylas formicarius (Fabricius), using the sterile insect technique|url=https://doi.org/10.1371/journal.pone.0267728|journal=PLOS ONE|volume=17|issue=5|pages=e0267728|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0267728|issn=1932-6203|pmc=9098069|pmid=35551267}}</ref>、イモゾウムシ<ref>{{Cite web|url=https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60110.html |title=イモゾウムシ |accessdate=2011-02-07 |work=侵入生物データベース |publisher=国立環境研究所}}</ref>、サツマイモノメイガ<ref>{{Cite web|url=http://www.jpmoth.org/Crambidae/Pyraustinae/Omphisa_anastomosalis.html |title=サツマイモノメイガ Omphisa anastomosalis (Guenée, 1854) |accessdate=2011-02-07}}</ref>による被害が問題となっているが、根絶に向け不妊虫放飼法による対策も行われている<ref>{{Cite web|url=http://www.rada.or.jp/database/home4/normal/ht-docs/member/synopsis/020227.html |title=不妊虫放飼法による久米島でのイモゾウムシの根絶防除 |website=放射線利用技術データベース |accessdate=2011-02-07}}</ref>。

== 産地 ==
=== 世界 ===
{| class="wikitable" border="1" cellpadding="3" cellspacing="0" style="float:right"
! colspan=3|2019年のサツマイモ生産量上位10ヶ国
|-
! 国
! 生産量 ([[トン|t]])
! シェア
|-
| {{flag|China}}||align=right|51,793,916||align=right|56.4%
|-
| {{flag|Malawi}}||align=right|5,908,989||align=right|6.4%
|-
| {{flag|Nigeria}}||align=right|4,145,488||align=right|4.5%
|-
| {{flag|Tanzania}}||align=right|3,921,590||align=right|4.3%
|-
| {{flag|Uganda}}||align=right|1,949,476||align=right|2.1%
|-
| {{flag|Indonesia}}||align=right|1,806,339||align=right|2.0%
|-
| {{flag|Ethiopia}}||align=right|1,755,855||align=right|1.9%
|-
| {{flag|Angola}}||align=right|1,680,146||align=right|1.8%
|-
| {{flag|USA}}||align=right|1,450,250||align=right|1.6%
|-
| {{VNM}}||align=right|1,402,350||align=right|1.5%
|-
|- style="background:#ccc"
| 世界計||align=right| '''91,820,929'''||
|-
|colspan=5 style="font-size:.7em"|
|}
[[国際連合食糧農業機関]]（FAO）が発表した[[統計]]資料によると、[[2019年]]（[[令和]]元年）の全世界における生産量は9182万[[トン]]であり、主食にするイモ類では[[ジャガイモ]]（同3億7043万トン）、[[キャッサバ]]（同3億0356万トン）に次ぐ。生産地域は[[中華人民共和国]]に極端に集中しており、その大部分は[[酒類]]への加工用である。ただし、中華人民共和国においては転作が進んでおり、作付け面積及び生産量は減少傾向にあり、2005年までは生産量1億トンを超えていたが、2012年以降6000万トンを下回っている。その影響で、全世界での生産状況も低下傾向を示しており、2005年までは1億2000万トンから1億5000万トンの収穫量があったが、2006年約1億1000万トンを記録して以降減少し続け、近年は9000万トン程度で推移している。なお、2019年の日本の生産量は74.8万トン。

長期の保管に適していないため、自国における生産消費が大部分であり、貿易量は、世界総計で年間30万トン程度と極めて少ない<ref>{{Cite web|url=https://www.fruitrop.com/en/Articles-by-subject/Economic-analyses/2016/Sweet-potato|title=FruiTrop on line/ Articles by subject/ Economic analyses/ Sweet potato|publisher=FruiTrop|accessdate=2021-09-07}}</ref>。主要な輸出国は、[[アメリカ合衆国]]、[[ベトナム]]、[[ラオス]]、[[エジプト]]などで、特に米国は総輸出量の2/3程度を占めている。一方主要な輸入国は、[[英国]]、[[オランダ]]、[[カナダ]]、[[フランス]]、[[日本]]である<ref>{{Cite web|url=http://www.fao.org/faostat/en/#data/TCL/visualize|title=FAOSTAT|publisher=FAO|accessdate=2021-09-07}}</ref>。

=== 日本 ===
サツマイモは、比較的痩せた土壌でも生育が可能であり、肥料流通や土壌改良が進まない中でも作付けが容易であったため、1960年代初頭には年間600万トン程度の収穫量があった<ref name="農水省資料">{{Cite web|title=令和4年度いも・でん粉に関する資料・かんしょの生産等・生産状況 |date=2023-08 |publisher=農林水産省 |url=https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/r4shiryo-3.pdf |accessdate=2023-12-04}}</ref>。しかし、1960年代から1970年代前半にかけ土壌改良等により商品価値の高い作物への転作が急激に進み、1974年には140万トンにまで減少した<ref name="農水省資料"/>。それからも、緩慢に減少を続け2000年代に100万トン台、2010年以降は100万トンを割る生産量となっている<ref name="農水省資料"/>。

; 日本における主産地
[[鹿児島県]]、[[茨城県]]、[[千葉県]]、[[宮崎県]]、[[徳島県]]が全国のトップ5県<ref name="農水省資料"/><ref name="農水省統計">{{Cite web|title=令和4年産かんしょの作付面積及び収穫量 |date=2023-02-07 |publisher=農林水産省 |url=https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kome/kansyo/r4/index.html |accessdate=2023-12-04}}</ref>。このうち上位4県で全国の8割を占め、とりわけ鹿児島県は全国の生産量約69万トンの3割程度を産する<ref name="農水省資料"/><ref name="農水省統計"/>。同県ではデンプン原料用や酒造原料用としての作付けも多い<ref name="農水省資料・用途別">{{Cite web|title=令和4年度いも・でん粉に関する資料・かんしょの生産等・かんしょの用途別消費の推移 |date=2023-08 |publisher=農林水産省 |url=https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/attach/pdf/r4shiryo-8.pdf|accessdate=2023-12-04}}</ref>。産地の偏在にはいくつか理由がある。まず、鹿児島県内および宮崎県南西部の多くの地域が、多くの農産物には適さないがサツマイモの栽培には適した水はけの良い[[シラス台地]]であること。また、サツマイモは可食部が地中の「芋」であるため、[[台風]]に襲われても害を受けにくいことなどが挙げられる<ref>{{Cite web|title=どうして、鹿児島県（かごしまけん）のシラス台地でサツマイモがよく栽培（さいばい）されるのですか |date=2021 |publisher=農林水産省 |url=https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0108/03.html |accessdate=2023-12-04}}</ref>。

2022年においては、全国の総収穫量は717,000<math>t</math>であり、主産地の収穫量は以下の通りである<ref name="農水省統計"/>。
{| class="wikitable"
|+ 主産地の収穫量
! 順位 !! 都道府県名 !! 収穫量 !! 比率
|-
! 1
| [[鹿児島県]] ||align=right| 210,000<math>t</math>||align=right| 30％
|-
! 2
| [[茨城県]] ||align=right| 194,300<math>t</math>||align=right| 27％
|-
! 3
| [[千葉県]] ||align=right| 88,800<math>t</math>||align=right| 12％
|-
! 4
| [[宮崎県]] ||align=right| 77,900<math>t</math>||align=right| 11％
|}

; ブランド産地
* 鹿児島県 - 知覧紅（ちらんべに）、[[安納いも|安納芋]]（あんのういも）
* 徳島県 - [[鳴門金時]]（なるときんとき）
* [[石川県]] - 五郎島金時（ごろうじまきんとき、[[加賀野菜]]の一つ）

この他にも、[[新潟市]][[西区 (新潟市)|西区]]を主産地とする「いもジェンヌ」のように、地元品種のブランド化を試みる生産者や[[地方公共団体|地方自治体]]がある<ref>{{Cite news|url=https://special.nikkeibp.co.jp/NBO/businessfarm/innovation/11/ |title=【改革の旗手】異例のスピードでブランド化した「いもジェンヌ」JA新潟みらいが、商・工・官・学と連携して販売1億円超に |newspaper=[[日経ビジネス]]オンライン |date=2017年12月13日 |accessdate=2018年12月6日}}</ref>。

このほか、生産量は少ないものの地域特産品となっているサツマイモに、[[新居大島]]（[[愛媛県]][[新居浜市]]）の「七福芋」がある。見かけが白色の[[白いも]]で、[[明治]]33年（1900年）にアメリカ合衆国から移入された。同島で育てると[[糖度]]15％と[[栗きんとん]]並みの甘さになる<ref>[https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/unyu/sitihukuimo.html 七福芋とは] 新居浜市ホームページ（2020年11月28日閲覧）</ref>。

=== 日本国内間の検疫 ===
[[植物防疫法]]の定めにより、[[アリモドキゾウムシ]]、[[イモゾウムシ]]や[[サツマイモノメイガ]]などの害虫の拡散を防ぐため国内間でも[[検疫]]が行われ<ref>{{Cite web|url=https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/imo/pdf/6_8.pdf|title=イモゾウムシ及びアリモドキゾウムシの緊急防除に関する省令|publisher=農林水産省|format=PDF|accessdate=2018-09-02}}</ref>、沖縄県全域、奄美群島、[[トカラ列島]]、小笠原諸島からは、サツマイモやグンバイヒルガオ等のヒルガオ科植物の生茎葉および生塊根等の持ち出しは規制されている<ref>{{Cite web|url=https://www.pref.okinawa.jp/mibae/imo/index.html |title=イモゾウムシとは |publisher=沖縄県病害虫防除技術センター |accessdate=2011-02-01}}</ref>。個人の手荷物程度の量であれば、所定の方法で事前に申請すれば移動規制地域から持ち出すことができる。ただし、蒸気で消毒を行う蒸熱処理を行うためその施設がない地域からの持ち出しは出来ない{{Efn|[[小笠原諸島]]には蒸熱処理施設が無いので根本的に持ち出しは出来ない。}}<ref>{{Cite web|url=https://www.maff.go.jp/pps/j/introduction/domestic/didoukisei/kensa_syoudoku/index.html |title=移動規制のある植物の検査及び消毒について |publisher=農林水産省 植物防疫所 |accessdate=2015年5月29日}}</ref>。<!-- したがって、空港などで該当する物品を所持していると没収される。-->加工品にはこのような制限はない。

現地の港および[[空港]]に、これらの注意を促す掲示やポスターがあるので、当地を訪問の際には参照されたい。

== 日本列島における栽培と普及史 ==
{{複数の問題
|section=1
|出典の明記 = 2022年10月
|独自研究 = 2022年10月
|雑多な内容の箇条書き = 2022年10月
|内容過剰 = 2022年10月
}}
南方ないしは中国大陸などから伝わったものが[[薩摩藩]]で栽培され、[[享保の大飢饉]]の際に全国に広まったとされている{{r|どこ}}。

=== 本土への渡来 ===
[[File:WilliamAdams-woodblack-new.svg|thumb|100px|right|三浦按針]]
[[File:Portrait-Kaibara-Ekiken-(cropped)-c1700.png|thumb|100px|right|「貝原益軒像」]]
前述のように、一般的には[[日本列島]]の南方から順に伝わったとされているが、[[室町時代]]や[[安土桃山時代]]に中国や東南アジアから直接、九州各地の貿易港や[[畿内]]の[[堺]]などにもたらされた可能性もあり、複数の導入経路が考えられる。もっともほとんどの経路において、栽培に成功したわけではなく、定着には至っていない。本土で最初にサツマイモが定着したのは薩摩藩であったとされる。

* 後世に薩摩藩で編纂された[[農書]]・[[本草学]]書『[[成形図説]]』に拠れば、慶長から[[元和 (日本)|元和]]年間（1596から1623年）にかけてのうちに領内の[[坊津|坊津港]]での[[ポルトガル]]人との貿易において、[[ルソン]]からの交易品として既にサツマイモがもたらされていたとされる。
* [[1614年]]（慶長19年）、肥前国[[平戸]]の[[イギリス商館]]{{Efn|当時はイギリス（グレートブリテン王国）と呼ばれる国家は存在せず、[[イングランド王国]]と[[スコットランド王国]]の[[同君連合]]であったが、便宜上「イギリス」の呼称を用いる。}}長[[公使の]][[リチャード・コックス]]の命を受けた[[ウィリアム・アダムス|ウィリアム・アダムス（三浦按針）]]は、平戸からシャム（タイ）に向けて貿易のための航海にたった。しかし中古の中国[[ジャンク船]]を改造したシーアドベンチャー号は浸水を起こし、琉球国[[那覇港]]に寄港した。船の修理を行う間にアダムスは現地の芋を入手し、翌1615年（[[元和 (日本)|元和]]元年）に平戸に持ち帰った。イギリスで食されていたジャガイモに似ているため、コックスは平戸で[[畑]]を借り、農民に委託する形でこれを栽培した、とコックスの日記に記されている。コックスはこれを「琉球芋」と記している。
* 同じく元和の頃、薩摩出身の僧侶であった鼎山が、[[紀伊国]]に持ち込んだ、とされる。
* [[1692年]]（元禄5年）、[[伊予国]][[今治藩]]の重臣江島為信が、日向国から今治藩領に種芋を移入した。しかし、その後の記録は途絶えており、栽培には失敗したと考えられている<ref>{{Cite web |title=段々畑とサツマイモ（甘藷） |publisher=愛媛県生涯学習センター|url=https://www.i-manabi.jp/system/regionals/regionals/ecode:1/2/view/289|accessdate=2021-09-07}}</ref>。
* [[1697年]]（[[元禄]]9年）、[[宮崎安貞]]が『[[農業全書]]』を著す。同書では甘藷についての記述があるが、宮崎は甘藷そのものを見たことはなかったのではないか、と推測されている。また「薩摩や[[長崎市|長崎]]周辺では「琉球芋」または「赤芋」と言い広く栽培されているが、他地域では知られていない」と記している。宮崎と親交のあった[[貝原益軒]]の[[1708年]]（宝永5年）の著『[[大和本草]]』では、貝原が実際に観察したと推測される記述がみられ、また、「蕃薯（琉球芋、赤芋）」と「甘薯」の二つに分けて区別している。貝原は「蕃薯は長崎に多く、甘い」「甘薯は元禄時期に琉球から薩摩に伝わった」としている。
* [[1704年]]（[[宝永]]元年）に出版された[[浮世草子]]『心中大鑑』（書方軒）に、「八里半（後述）といふ芋、[[栗]]に似たる風味とて[[四国]]にありとかや」とあり、これはサツマイモのことだと推定される。
[[ファイル:Commemoration of Sweet potato coming.jpg|150px|right|thumb|甘藷翁（前田利右衛門）頌徳碑]]
* [[1705年]]（[[1709年]]とするものもあり）、薩摩[[山川町 (鹿児島県)|山川]][[外城制|郷]][[山川岡児ケ水|岡児ケ水村]]の[[前田利右衛門]]は、船乗りとして琉球を訪れ、甘藷を持ち帰り、「カライモ」と呼び、やがて[[薩摩藩]]で栽培されるようになった。前田利右衛門を祀る[[徳光神社]]には「さつまいも発祥の地」とする碑が建てられている。

=== 救荒作物としての普及 ===
藩を挙げて栽培を奨励していた薩摩藩を除き、サツマイモはまず、民間の力で広まった。最初に本格的な栽培に成功したのは[[飢饉]]に見舞われることの多かった芸予地方とされ、その後も土壌や土地傾斜などが耕作に不向きなために食糧生産力が低い、すなわち気候異常などにより[[飢饉]]が発生し易かった土地を中心に救荒作物として普及していった。薩摩藩もまた、領内の半数を占めた[[シラス台地]]と呼ばれる、[[米作]]には不向きな土地があったことが奨励の主要因である。
[[File:Kouunji20210427_5.jpg|100px|thumb|right|下見吉十郎の像]]
* 薩摩藩以外で最初に栽培に成功したのは[[芸予諸島]]であるとされる。[[1711年]]（[[正徳 (日本)|正徳]]3年）、六部僧として[[大三島]]から諸国行脚の道中に薩摩を訪れた[[下見吉十郎]]が、薩摩藩領内からの持ち出し禁止とされていた芋を、[[仏像]]に穴を空けてそこに種芋を隠すという手法で持ち出し、故郷である[[伊予国]]（現在の[[愛媛県]]）大三島での栽培を開始した。下見の妻の父である村上休広が琉球から持ち帰った芋を[[安芸国]]竹原で栽培したとする話も伝わる。
* [[1715年]]（正徳5年）、[[対馬]]の[[郷士]]原田三郎右衛門が、薩摩国からサツマイモの種芋を持ち帰った。対馬国の地は全島の9割近くが山地であり、耕作面積が非常に狭いため、武士階級でも山野の食物を採集して食べていたほど食糧生産事情が悪かったが、サツマイモの普及によりこれが解消した。現地では「孝行イモ」とも呼ばれる。また、サツマイモを非常に手間をかけて加工し、「[[せん (食品)|せん]]」と呼ばれる保存食を製造していた。この「せん」から対馬独特の団子や餅、[[ちまき]]、さらに「[[六兵衛|ろくべえ]]」と呼ばれる麺を作る。六兵衛は[[肥前国]][[島原半島]]周辺と対馬にて作られているが、両者の関係はよくわかっていない。共通するのは他のサツマイモ産地と同様に「米作りに適した土地（土壌）ではなかった」という点である。
* [[1716年]]（[[享保]]元年）、[[京都]]の薬問屋・島利兵衛（嶋利兵衛）という男が琉球から芋を持ち帰り、故郷の村で栽培に成功する。一説には禁を破ったため琉球[[鬼界ヶ島]]へ[[流罪|島流し]]となり、許されて帰る際にこれまた禁を破って芋を持ち帰った、とされている。流刑先は琉球の他、[[壱岐島]]・[[硫黄島 (鹿児島県)|硫黄島]]・[[隠岐諸島|隠岐島]]など諸説ある。村の名を取り「寺田芋」として名産地となった。利兵衛の墓は後年、[[和菓子]]司の手によって「琉球芋宗匠 島利兵衛」と刻まれた。このため同地では「[[青木昆陽]]の栽培より10年早い」ということを誇っている{{Efn|ここまで各地で栽培に成功しており、また、近年になって利兵衛の孫の口上書が発見されたが、それに拠れば流刑先は肥前国[[壱岐島]]（現・長崎県）で、1746年（[[宝暦]]3年）に赦免され帰国したことになり、以降に栽培した場合、江戸幕府試験場での栽培試験のほうが先であったことになる。}}。

[[Image:Ido Masaakira02.jpg|100px|thumb|井戸正明像(井戸神社蔵)]]
* [[1732年]]（享保17年）、[[享保の大飢饉]]により[[瀬戸内地方]]を中心に[[西日本]]が大凶作に見舞われ、深刻な食料不足に陥った。しかしサツマイモを栽培していた伊予国大三島の周辺では餓死者が全く出ず、これによりサツマイモの有用性を天下に知らしめることとなった。
: また、[[石見国]]（現・[[島根県]]）の[[天領]][[石見銀山]]では江戸幕府の[[代官]]であった[[井戸正明]]が同飢饉に対し[[年貢]]の減免、年貢米の放出、官金や私財の投入などを行った。大森地区（現在の[[島根県]][[大田市]]）の栄泉寺で、薩摩国の僧である泰永から甘藷が救荒作物として適しているという話を聞き、種芋を移入した。その年に種付けを試みたが、種付けの時期が遅かったことなどもあって期待通りの成果は得られなかった。しかしながら、[[邇摩郡]][[福光村 (島根県)|福光村]]（現・大田市[[温泉津町]]福光）の老農であった松浦屋与兵衛が収穫に成功した。その後、サツマイモは石見地方を中心に救荒作物として栽培されるようになり、多くの領民を救った。この功績により、井戸正明は領民たちから「芋代官」あるいは「芋殿様」と称えられ、今日まで顕彰されるに至っている。<ref name="芋代官">{{cite web|url= https://ohnan.saloon.jp/diary/imodaikan.htm |title=石見の恩人「芋代官」こと井戸正明の碑|work=島根県邑南町の城|accessdate=2020-12-20}}</ref>

=== 幕府の奨励 ===
* [[江戸幕府]]はこの頃、救荒作物としてリュウキュウイモ（サツマイモ）の有用性を認識していた。
* 1723年（[[享保]]8年）に耕作に不向きで全島飢饉に陥ることが多かった[[八丈島]]にこれを導入しようとした。同年の試みは失敗に終わったが、数年後の1727年（享保12年）に「白さつま」と呼ばれる品種の定着に成功した。これとは別に、1728年に同島に島流し刑にされた罪人が、乾燥させて保存させる方法、いわゆる干芋の技法を伝えている。1735年（享保20年）には[[伊豆七島]]の各島に後述される青木昆陽の栽培手引書と共にアカイモと呼ばれた品種の種芋を送り、栽培を推奨している。ただし、以降も八丈島民の腹を満たすほどの量は採れず、数年間隔で起きる飢饉時には相変わらず数百人単位の死者を出していた。1767年（明和4年）から1769年（明和6年）の飢餓の際は、最終的に全島で1500人余の死者を出している。[[1811年]]（文化8年）に八丈島大賀郷の名主家の菊池武昌（菊池秀右衛門）は[[新島]]から紅さつま芋を持ち込み、栽培した。さらに[[1822年]]（文政5年)には、武昌の息子の小源太が本土からハンスという品種を導入したとされる。菊池親子の事績は小源太の息子が建てた「甘藷由来碑」として残されており<ref>[[近藤富蔵]]の著作『[[近藤富蔵#『八丈実記』|八丈実記]]』に記載有</ref><ref>[http://www.town.hachijo.tokyo.jp/culture/?p=223 八丈島甘藷由来碑 - 八丈島の文化財]</ref>、これに従えばこの導入以降10年ほどして、八丈島での栽培が定着したとされる。八丈にはそれまでも[[サトイモ]]はあったのだが、サツマイモの普及以降、八丈島は飢饉時の人的被害が無くなり、人口が増えたとされる。
** 1735年（享保20年）に種芋5個を送られた新島での栽培は、それ以前には凶作の年は餓死者を出すこともあったが、栽培以降は餓死者はいなくなったとされる。さらに18世紀末には逆に島外へ出荷するほどの生産量があった。また同島ではサツマイモの澱粉を加工して原料とし、焼酎さらに酢や醤油を製造していた記録が残る。

[[File:Aoki Konyo1.jpg|thumb|100px|青木昆陽]]
* 江戸幕府第八代[[征夷大将軍|将軍]]・[[徳川吉宗]]の当時、[[儒学]]者として知られていた[[青木昆陽]]は<!--八代将軍・徳川吉宗はサツマイモの栽培を関東に広めようと決意する。そして起用されたのが、青木昆陽であった。-->、その才能を買っていた[[八丁堀 (東京都中央区)|八丁堀]]の[[与力]][[加藤枝直]]により[[江戸]][[町奉行]]・[[大岡忠相]]に推挙され、幕府の書物を自由に閲覧できるようになった。昆陽は同じ[[伊藤東涯]]門下の先輩である松岡成章の著書『番藷録』や中国の文献を参考にして、サツマイモの効用を説いた『蕃藷考』を著し、吉宗に献上した。

: [[1734年]]、青木昆陽は薩摩藩から甘藷の苗を取り寄せ、九州出身の者の手を借り、江戸[[小石川植物園]]、[[下総国|下総]]の馬加村（現・[[千葉市]][[花見川区]][[幕張|幕張町]]）、[[上総国|上総]]の[[九十九里浜]]の不動堂村（現・[[九十九里町]]）において試験栽培し、翌[[1735年]]に栽培成功を確認した。「薩摩芋」はこれ以後、[[東日本]]にも広く普及するようになった。
: 1734年、 昆陽は『甘藷記』を記し、さらなる普及に努めている。編纂は越智直澄。共著は小比賀時胤、越智直澄、医官の[[野呂元丈]]。
: [[1736年]]（[[元文]]元年）昆陽は幕府より薩摩芋御用掛を拝命し、幕臣となった。

: サツマイモの普及イコール甘藷先生（青木昆陽）の手柄、とするには異説もあるが、昆陽が同時代に既に薩摩芋を代名詞とする名声を得ていたことは事実である。
{{Main|青木昆陽}}

* [[1801年]]（[[享和]]元年）以降、名代官として知られた幕府[[旗本]]の[[早川正紀]]が、代官として支配していた[[武蔵国]][[久喜市|久喜]]周辺にサツマイモの栽培を推奨した。

=== 一般への普及 ===
その後、サツマイモは庶民の生活・文化の中に急速に浸透した。サツマイモを詠んだ[[狂歌]]や[[川柳]]も多く残る。

* [[1751年]]（[[寛延]]4年）頃、[[川越市|川越]]の[[名主]]が息子を[[上総]]に派遣してサツマイモの栽培法を学ばせ、これを導入した。これがのちに川越をサツマイモの名産地と成した。のち[[川越藩]]主の[[松平直恒]]を通して将軍[[徳川家治]]に川越地方でとれたサツマイモを献上した際、「川越いも」の名を賜ったとされる。
[[File:Shinmei-sha Tokorozawa (imo no kami).jpg|thumb|150px|川越旧三富新田の神明社境内<br />「甘諸乃神（いものかみ）」]]
* [[1773年]]（[[安永]]2年）出版の[[小松屋百亀]]の[[笑話|小噺]]本『聞上手』に「いもや」という話が収録されている。古典[[落語]]『[[芋俵]]』の元になったとされるが、この時点で江戸では芋が庶民にも親しまれ、芋の商いが商売として成り立っていたことがわかる。
* この頃の[[川柳]]作品に「夏渋く冬甘くなる堀江町」という一句がある。これは当時日本橋堀江町において、夏は[[柿渋]]を塗って製造される[[団扇]]を商い、冬は芋を売っていた情景を読んだ一句である。この頃はまだ焼き芋ではなく、蒸した芋であった。山東京伝作の『一百三升芋地獄』の作中において、[[閻魔大王]]の裁きを受けたサツマイモは「粋人を胸焼けさせた罪」を問われ、「堀江町地獄」に送られている。このように堀江町は当時、芋の商いで有名であった。
* [[1789年]]（[[寛政]]元年）、いわゆる百珍物の[[レシピ]]本である『甘藷百珍』（珍古楼主人・著）が出版された。
* 寛政年間（[[1789年]]-[[1801年]]）頃、[[尼崎市|尼崎]]においてサツマイモの栽培が始まった。それまでは農業に適しているとはいえなかった荒れた土地を使い、「[[尼いも]]」と呼ばれ特産となった芋は[[京阪神]]の料亭などに出荷された。
* [[1794年]]（寛政6年）に刊行された[[山東京伝]]・作で[[北尾重政]]・画の[[黄表紙]]『箕間尺参人酩酊』には、蒸し芋売りの店が描かれている。1830年頃の随筆『[[燕石十種|寛天見聞記]]』には「寛政の頃は[[焼き芋]]はなく、蒸し芋しかなかった。のち神田甚兵衛橋（[[弁慶橋]]隣）あたりで焼き芋が初めて売られた」と記されている。
* [[文政|文政年間]]（1818年-1831年）頃、[[駿河国]][[御前崎]]周辺（現在の[[静岡県]][[御前崎市]]）で[[干しいも]]の製法が確立された。現代の干しいもも基本的にこの製法である。
* [[1831年]]（[[天保]]2年）、幕臣の山田桂翁による随筆集『宝暦現来集』には、[[1793年]]（寛政5年）の冬に、江戸[[本郷]]{{要曖昧さ回避|date=2020年4月}}四丁目の[[番屋]]にて、[[行灯]]に「八里半」と書いて焼芋{{Efn|1833年（天保4年）城北百拙老人・著『世のすがた』によれば「ほうろく焼き」、すなわち壺焼き。}}を売った、その後[[小石川]][[白山町]]にてこちらは行灯に「十三里」と書いて石焼芋が売られた、と記されている。また、それ以前の江戸では「蒸し芋」が主であったが、このヒット以降、焼き芋が主流になったとも書かれている。番所では小物の商いをすることが黙認されており、その物販の一つとして冬場に芋が売られていた。
[[画像:100 views edo 114.jpg|right|thumb|300px|『名所江戸百景』冬の部<br />「びくにはし雪中」<br />画の右の「〇やき」の表記看板に注目]]
* 上述の「八里半」とは栗（九里）に食味が近いという意味である。前出の通り、1704年頃には既に[[関西]]方面では知られた名称だったことが推測される。また「十三里」は栗より上という意味と、当時サツマイモ栽培が盛んであった[[武蔵国]]川越が、江戸から十三里の距離であったことに由来すると共に「栗より美味い十三里（九里＋四里＝十三里）」という江戸の[[地口]]の宣伝文句と共に広まった。[[1853年]]（[[嘉永]]六年）頃に書かれた[[喜多川守貞]]の『[[守貞謾稿]]』では、川越とはもはや無関係の関西方面でも「十三里」と書かれた芋売りがいたことが記されている。同書では一方で江戸の「○焼き」「八里半」と書かれた看板（行燈）の挿絵も収録されている。[[1858年]]（[[安政]]5年）に描かれた[[歌川広重]]の『[[名所江戸百景]]』中の｢びくにはし雪中｣という作品には、冬の江戸（[[京橋川]]が外堀に出る河口に架かっていた比丘尼橋付近。現在の銀座一丁目あたり）で「○焼き」「十三里」と書かれた看板が描かれている。この「○焼き」とは焼き芋の形体の事であり、切ってから焼いたものを「切焼き」、芋一本を丸ごと焼いたものを「丸焼き」と呼び、「○焼き」などと書かれた。また「十里」という用語もある。[[1850年]] ([[嘉永]]3年) に[[西沢一鳳]]が出した江戸見聞録『皇都午睡』{{Efn|「みやこのひるね」。旅先の江戸やその道中の風俗を、著者の地元である京・大阪と比較している。}}にて、生焼けの芋を十里と言う、と書かれている。五里五里、すなわち食感がゴリゴリだという意味である。
* 前出の『守貞謾稿』では大阪京都において「ほっこり、ほっこり」と言いながら行商で蒸し芋を売り歩く姿が記録されており、これは同書に先立つ[[1809年]]（[[文化 (元号)|文化]]6年）出版の[[十返舎一九]]の[[滑稽本]]『[[東海道中膝栗毛]]』大阪編においても「ほっこりほっこり、ぬくいのあがらんかいな」と売り歩く姿が書かれている。ここから派生し、上方方面では蒸し芋・焼き芋の事を「ほっこり」と呼ぶようになった。『東海道中膝栗毛』作中においても「女中がたの器量不器量、ほっこり買うて喰うてござるも」という文があり、現代の辞書においても「ほっこり」の意味として「[[上方]][[方言]]で焼き芋のこと」とされている。
* [[1853年]]（[[嘉永]]六年）、薩摩の商人であった丹宗庄右衛門が罪を得て八丈島に遠島処分となった。前出のように八丈島では米が恒久的に不作であり、酒造りに回す余剰の米が無く、酒造は禁止されていた。庄右衛門は八丈島にて栽培定着していたサツマイモを使って、地元薩摩で行われていた芋[[焼酎]]作りに着手し成功した。庄右衛門が島に居た16年の間に彼は、薩摩から焼酎に適した品種の芋、薩摩の優れた道具の導入を行い、八丈島に芋焼酎産業を定着させた。<ref group="注釈">これを顕彰した「島酒の碑」が昭和42年に建立されたが、除幕式典には庄右衛門の曾孫で当時の[[鹿児島県]][[阿久根市]]長であった[[丹宗忠]]が招かれた。</ref>
* 江戸末期において甘いサツマイモは、世間に肥満が増えた原因とされたことがある。
* [[近世]]後期において、九州、四国を中心とした日本の西南地域ではサツマイモの日常食材化が進み、人口増加率も全国平均を大きく上回っている。風害や干害に強く人口支持力の高いサツマイモは、米の売却で利益を得る諸藩にとってもまた藩領民にとっても、基本的に税の対象外でもあり、都合の良い作物だった<ref>{{Cite book|和書|author=有薗正一郎 |title=近世庶民の日常食：百姓は米を食べられなかったか |publisher=海青社 |year=2007 |isbn=9784860992316 |pages=131-133}}</ref>。
* 江戸時代末期に生まれた菊池貴一郎が「蘆乃葉散人」という筆名で[[明治]]30年代になって出版した『江戸府内絵本風俗往来』という書がある。自身の手による挿絵もある同書には、自身の江戸期の思い出として「冬になれば江戸の町人が住む市中で焼芋店のあらぬ所はなかった」「町々の木戸の番太郎の店（番屋）では必ず焼芋を売っていた」「日本橋あたりの繁華街で売っていた芋は甘くて香りが良かった。あれは川越の本場物だったと推測する。だからであろう、値段も高かった」と記されている。また、「焼き芋は9月下旬から12月まで売られた」「1月から2～3月は焼芋ではなく蒸し芋または芋の丸揚げが売られた」とも記されている。同書の著者の菊池とは、のちの[[歌川広重 (4代目)|四代目歌川広重]]のことである。

==== 明治以降 ====
* [[幕末]]から明治期には、現在もサツマイモで名高い川越の[[赤沢仁兵衛]]が実験・研究しまとめた「赤沢式甘藷栽培法」によって収穫量が増加した。
* 明治42年（1902年）に刊行された夏目漱石の小説『それから』の作中には、東京市内において夏は氷水、冬は焼き芋を扱う店が多くあったことが書かれている。
* 前述の番所での焼き芋の商いは明治期になり番所制度と共に無くなった。一方で漱石が記すようなビジネスが生まれ、さらに専業ではない店や主婦の小商いとして人気があり店舗も多かったが、それらは同時に火災の原因となることも多かった。明治期に入り明治24年（1891年）10月9日に東京府から『麪包（パン）焼場及甘藷焼場規則制定』が出され、さらに明治26年（1893年）には『甘藷焼場改造』の布令が出された。両法令には防火設備の義務付けなどが含まれており、手頃なサイドビジネスとしての街角の焼き芋売りは姿を消していった。同時に明治24年（1891年）11月4日に東京甘藷小売商組合が設立され、業界内での自立規制を執ろうとする動きがみられる。これらの法令にも拘らず東京の焼き芋人気は衰えを知らず、明治30年頃の東京のサツマイモ消費量は「年間60万俵」と記録されている。ただし大正12年（1923年）9月1日に発生した[[関東大震災]]により、これらの小売焼き芋店は他業種の店舗と同様にその店舗を失った。
* 明治時代になり、各地に海外から新品種のサツマイモが導入され、品種改良も進み、現在は多様な品種が栽培されている。
** 伊豆諸島の[[新島]]の事例である。広島県安芸郡出身の久保田勇次郎がアメリカに渡り、農場で数年間働いた。明治33年（1900年）に帰国する際に農場からサツマイモを二つ譲り受けた。この新品種が新島に伝わり、島の気候土壌に合致したため栽培が進んだ。「七福」<ref group="注釈">1927年に農商務省と農事試験場によって「七福」と名前が認定されている。元々[[イタリア]]で栽培されていたが、イタリアからの移民の手により1830年ごろにアメリカに伝わったとされる品種であり、1. 風土を選ばない、2. 作りやすい、3. 貯蔵性が良い、4. 食味が良い、5. イタリアから、6. アメリカに伝わり、7. 日本に伝わった、以上合わせて七つの福が名前の由来。収穫直後は食用に向かないが、貯蔵しているうちに糖化し風味がよくなる。このため島の住宅には、床下や倉庫に芋の貯蔵保管庫が作られていた。</ref>と名付けられたこの品種は外見が白いことが特徴であり、現地では「あめりか芋」と呼ばれて現在も栽培されており、食用および島の焼酎などの原料として利用されている。
** [[伊豆大島]]でもサツマイモが栽培されていたが、明治23年に漁業で来島した大分県の粟本佐治郎が、島の娘と結婚して土着した。粟本は一旦大分に帰ったが、再来島した際に地元からサツマイモの品種を持ち込んだ。「テリコ（天留古）」と呼ばれたこの品種は大変に甘く、貯蔵にも耐えたため、瞬く間に全島に広がり、一時は本土に出荷されていた。品種が増えた現在も、テリコは同島で細々ながら保存栽培されている。
** 明治31年（1898年）、埼玉県木崎村（現在のさいたま市）の主婦であった[[山田いち]]が、青木昆陽以来の一般品種であった「八房」から鮮紅色の突然変異を発見した。後にさらに選定を進めて「紅赤」になった。山田家はこれを独占することをせず、希望者にはどんどん分けていたため、紅赤は味の良さからまたたくまに関東一円に広がった。

==== 大学芋 ====
[[画像:Daigaku-imo 001.jpg|right|thumb|150px|大学芋]]
* 明治31年（[[1898年]]）に[[平出鏗二郎]]が書いた『[[東京]]風俗志』にて、東京の焼き藷の売り方として「丸焼・切焼・[[胡麻塩]]焼の類あれども、京阪に見るが如く輪切にして焼き、[[醤油]]を塗れるものなし。近時京都焼きと称して、間々これを学ぶものあれども、多く行われず。」と記録されている、明治時代に焼き藷屋が味付けをしていたこと、またサツマイモに[[ゴマ]]を合わせていたことも知れる。これがのちの「[[大学芋]]」のルーツの一つではないかとする説がある。

== 食材としての利用 ==
主に[[塊根]]（芋）の部位が利用される。主食や[[おかず]]のほか、[[軽食]]、[[おやつ]]用に様々に調理・加工される。さらには[[焼酎|本格焼酎]]などの酒[[醸造]]の材料として使われる。加熱しただけで甘味があり、焼き芋や天ぷらにするとホクホクしたおいしさが引き立つ{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。反対に、水分が多くねっとりした食感を持つ品種もある{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。

また、柔らかい[[葉]]や[[茎]]も食用にでき、これらは主に[[炒め物]]や[[佃煮]]、[[かき揚げ]]などの[[天ぷら]]素材などにして利用される{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}。ヒルガオ科の[[クウシンサイ]]に似た風味で、茎や葉を専用に食べる品種もある{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=114}}。

サツマイモ本来の[[旬]]は9 - 11月とされ、掘りたてより貯蔵後が甘いため、収穫してから1か月ほど熟成させてから出荷される{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|講談社編|2013|p=180}}。2か月ほど貯蔵して熟成させることで糖度が増し、美味しさが充実してくる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=194}}。超早掘が5月、早掘が7月から出回ることもあるが{{sfn|講談社編|2013|p=180}}、それらは貯蔵性がないため収穫後はすぐに出荷される{{sfn|講談社編|2013|p=181}}。芋の皮の色が均一でハリとツヤがあり、傷や斑点がなく、中央部がずんぐりと膨らんでいて、凸凹やひげ根が少ないものが商品価値の高い良品とされる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=194}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。

=== 栄養価 ===
{{栄養価
|name = さつまいも 塊根 皮むき 生<ref name=mext7>{{Cite web|publisher=[[文部科学省]] |url=https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm |title=日本食品標準成分表2015年版（七訂） |accessdate=2017-01-20}}</ref>
|kJ = 559
|water = 65.6 g
|protein = 1.2 g
|fat = 0.2 g
|satfat = 0.03 g
|polyfat = 0.02 g
|carbs = 31.9 g
|starch = 30.9 g
|opt1n = [[食物繊維|水溶性食物繊維]]
|opt1v = 0.6 g
|opt2n = [[食物繊維|不溶性食物繊維]]
|opt2v = 1.6 g
|fiber = 2.2 g
|sodium_mg = 11
|potassium_mg = 480
|calcium_mg = 36
|magnesium_mg = 24
|phosphorus_mg = 47
|iron_mg = 0.6
|zinc_mg = 0.2
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|Manganese_mg = 0.41
|betacarotene_ug = 28
|vitA_ug = 2
|vitE_mg = 1.5
|thiamin_mg = 0.11
|riboflavin_mg = 0.04
|niacin_mg = 0.8
|vitB6_mg = 0.26
|folate_ug = 49
|pantothenic_mg = 0.90
|opt3n = [[ビオチン]] (B{{sub|7}})
|opt3v = 4.1 µg
|vitC_mg = 29
|opt4n = [[有機酸]]
|opt4v = 0.4 g
|note = ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した<ref>{{Cite web|publisher=[[厚生労働省]] |url=https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf |title=日本人の食事摂取基準（2015年版）|accessdate=2017-01-20}}</ref>。別名：かんしょ（甘藷）。廃棄部位：表層および両端（表皮の割合：2 %）
|right = 1
}}
[[画像:Sweet Potato-AAS.JPG|330px|thumb|サツマイモの[[アミノ酸スコア]]<ref>http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/ {{Dl|date=2020-03-09}}{{accessdate|2011-12-28}}</ref><ref>{{Cite book|和書|title=タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告 |editor=日本アミノ酸学会監訳 |publisher=医歯薬出版 |year=2009 |month=05 |isbn=978-4263705681}}{{Pb}}邦訳元:{{Cite web|url=https://whqlibdoc.who.int/trs/WHO_TRS_935_eng.pdf |title=Protein and amino acid requirements in human nutrition |author=Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation |year=2007 |accessdate=2012-12-24}}</ref>]]
生の場合の可食部100[[グラム]] (g) あたりのエネルギー量は132&nbsp;[[キロカロリー|kcal]]で、水分は約66%含まれ、[[炭水化物]]31.5&nbsp;g、[[タンパク質]]1.2&nbsp;g、[[灰分]]1.0&nbsp;g、[[脂質]]0.2&nbsp;gが含まれている{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。[[デンプン]]が豊富で、甘味が強いのでカロリーが高めと思われがちであるが、米飯とのカロリー比較で約0.8倍にとどまる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=194}}。また、[[ビタミンC]]や[[食物繊維]]を多く含み、サツマイモのビタミンCはリンゴの5倍以上とされ、加熱してもデンプン質によって熱から守られて壊れにくいという特長がある{{sfn|主婦の友社編|2011|p=194}}{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。水溶性・不溶性ともに豊富に含まれる食物繊維は[[ジャガイモ]]の約2倍で{{sfn|主婦の友社編|2011|p=194}}、切り口からにじみ出る白い液体の[[ヤラピン]]の働きで、腸の働きを活性化し、便秘の解消に効果的な食材といわれ{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|藤田智監修 NHK出版編|2019|p=115}}、大腸がんの予防、糖尿病や高血脂症、高血圧の予防にも期待されている{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。ビタミン類は、[[ビタミンD]]・[[ビタミンK|K]]を除いてバランス良く含んでおり、とりわけ[[ビタミンB1]]・[[ビタミン|B6]]・[[ビタミンC|C]]・[[ビタミンE|E]]を多く含んでいる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。芋の中身がオレンジ色の品種は色素成分[[β-カロテン]]を多く含み、紫色の品種は[[アントシアニン]]を含んでいる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。ミネラル類では、余分な塩分を排出する作用がある[[カリウム]]、鉄欠乏性貧血の予防に欠かせない[[鉄]]、赤血球を作るのに欠かさない[[銅]]、性ホルモンの合成を助ける[[マンガン]]などに富む{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。

サツマイモは1回に食べる量が多く、栄養的には多くの野菜を摂ったのと同様の効果があるが、[[緑黄色野菜]]に含まれるカロテンの量が普通のサツマイモでは少なく、エネルギーが高いため、肥満を気にする人は注意する必要がある{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。

サツマイモの[[炭水化物]]の約8割がデンプンで、良質なエネルギー源であるが、消化しきれないデンプンが1 - 2割は残る{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。サツマイモを食べると[[屁|ガス]]が出やすいのは、食物繊維としてデンプンが残るせいだと言われるが、健康を保つための大切な働きもしている{{sfn|講談社編|2013|p=187}}。単位面積当たりのカロリーベース収量は、[[米|コメ]]を上回る<ref name="o_t_sk_p98">{{Cite book|和書|author=小原章裕 |author2=玉置ミヨ子 |title=食品科学 |page=98 |publisher=三和書房 |date=1996年4月15日 |isbn=4-7833-0620-6}}</ref>。他に、栄養面（特にタンパク質）でコメに比べて劣ることも挙げられる<ref name="o_t_sk_p98"/>。

=== 調理法 ===
焼いたり、蒸したりしてそのまま食べるか、[[煮物]]、[[天ぷら]]、[[スイートポテト]]や[[大学芋]]などの菓子などに、また裏ごしして[[栗金団]]などにする{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。60 - 70[[セルシウス度|℃]]程度で長時間かけて加熱すると、[[デンプン]]を[[マルトース|麦芽糖]]に[[糖化]]する[[酵素]]の働きが活発になり、甘味が増す{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。[[石焼き芋]]やふかし芋は、この性質により甘味をストレートに最大限引き出す調理法である{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}。また、蒸したあと天日で干して[[干しいも|干し芋]]などに加工されることも多い。いも類は[[ポリフェノール]]化合物による変色（褐変）を起こしやすく、[[灰汁]]の[[タンニン]]も含まれるため、切断面を水や焼き[[ミョウバン]]水にさらす方法などで褐変を防ぎ灰汁抜きを行う{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}<ref>{{Cite web |url=https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/06/13/1306691_04.pdf |title=第3章　調理室における衛生管理＆調理技術マニュアル |publisher=文部科学省 |accessdate=2020-06-05}}</ref>。色よく仕上げるため、栗金団などで使うときは皮の内側の薄い筋のあるところまで、皮を厚めに剥いて使われる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。皮が黒変している部分は、強い苦味がある有害成分を含んでおり、完全に取り除いておく{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。焼き芋では丸ごと使われるが、皮ごと使う煮物や天ぷらは[[食材の切り方一覧#さまざまな切り方|輪切り]]に、炒め物や大学芋では皮付きのまま[[食材の切り方一覧#さまざまな切り方|乱切り]]に、[[揚げサツマイモ]]などの揚げ物などには太めの[[食材の切り方一覧#さまざまな切り方|拍子切り]]にしてよく使われる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。
{{gallery
|画像:Annouimo.jpg|[[安納いも|安納芋]]の焼き芋
|ファイル:Kuri-kinton 001.jpg|栗金団。左が安納芋を用いたもの、右が紫芋を用いたもの。
|ファイル:Imo-kenpi 001.jpg|[[芋ケンピ|芋けんぴ]]
|ファイル:Hoshi-imo.JPG|薄切りにした芋をビニールハウスで天日干ししている様子
}}

=== 保存 ===
サツマイモは、うまく貯蔵すれば長期間食べられる{{Sfn|金子美登|2012|p=182}}。低温に弱い性質のため[[冷蔵庫]]には保存しないで、乾いたサツマイモを[[新聞紙]]や[[袋#紙袋|紙袋]]などでくるみ、風通しの良い冷暗所に置いて保存する{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。温度13 - 15℃くらい、湿度は高めの85 - 90%の日の当たらない場所が、保存に適した環境とされる{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。旬のものであれば、この状態で3か月ほど保存がきく{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=106}}。低温にはとても弱く{{sfn|主婦の友社編|2011|p=195}}、冷蔵庫に長期保存すると腐敗の原因につながる{{sfn|講談社編|2013|p=183}}。

農家が種芋として保存する場合は、穴を掘って土の中で貯蔵する{{Sfn|金子美登|2012|p=182}}。乾燥させたイモを株ごと入れ、藁をかけて、さらに籾殻や土をかけたところにパイプ状のものをさして、空気孔をあけた状態で貯蔵する{{Sfn|金子美登|2012|p=182}}。

=== 食中毒 ===
害虫の食害や[[フザリウム]]（''Fusarium''）属の[[カビ]]からの防御物質（[[ファイトアレキシン]]）として苦味のあるフラノ[[テルペン]]類のイポメアマロン (iopmeamarone)、イポメアニン (ipomeanine) やイポメアノール (ipomeanol) 類を[[生合成]]する。この病変は、甘藷黒斑病と呼ばれ、イモは黒緑色から黒色に変色する<ref>{{Cite web|url=http://www.niah.affrc.go.jp/disease/poisoning/manual/ipomea.html |title=甘藷黒斑病 |publisher=農研機構（農業・食品産業技術総合研究機構） |accessdate=2011-02-01 |url-status=dead|url-status-date=2020-03-09 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130221190821/http://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_poisoning/manual/ipomea.html |archivedate=2013-02-21}}</ref>。イポメアマロンなどの生成物には[[哺乳類]]の[[肝臓]]および[[肺]]への毒性があり、[[肺]]の重度出血、間質性[[肺気腫]]、[[肺水腫]]等の症状を引き起こし、[[家畜]]での中毒死事例が報告されることがある。したがって、人の食用および家畜の[[飼料]]としては使用できない。また、この苦味物質は[[焼酎]]に加工した場合でも、[[蒸発]]して焼酎に移行する{{要出典|date=2023年7月}}。
{{-}}

== 原料・飼料としての利用 ==
{| class="wikitable floatright" 
|+ 日本における用途別消費量と割合（2018年<ref>{{Cite web |url=https://www.alic.go.jp/starch/japan/data/kokunai1-2-b.pdf |title=でん粉 > 統計資料【国内情報】（2）いもの需給 b　かんしょの用途別消費の推移 |format=PDF |publisher=独立行政法人農畜産業振興機構 |date=2020-09-18 |accessdate=2021-09-07}}</ref>）
! 用途 !! 消費量(トン) !! 割合
|-
!生食用{{Efn|name="飼料用"|ただし、内40,600トン（総消費量中約5.1％）は自家消費であり、これらは飼料用途と考えられる。}}
|align=right| 387,200 ||align=right| 48.6%
|-
! アルコール用
|align=right| 213,400 ||align=right| 26.8%
|-
! でん粉用
|align=right| 95,800 ||align=right| 12.0%
|-
! 加工食品用
|align=right| 71,500 ||align=right| 9.0%
|-
! 種子用
|align=right| 9,600 ||align=right| 1.2%
|-
! 飼料用{{Efn|name="飼料用"}}
|align=right| 2,200 ||align=right| 0.3％
|-
! 減耗・その他
|align=right| 16,800 ||align=right| 2.1%
|-style="background-color:#ddf"
! 総生産量
|align=right| 796,500 ||align=right| 100.0%
|}
サツマイモは、調理素材としての食用他、以下のとおり、原料・飼料として利用されている。用途別の消費量は右のとおり。

=== デンプン ===
サツマイモからは[[デンプン]]を取ることができる。このデンプンは、[[春雨 (食品)|春雨]]や[[水飴]]などの原料となる{{要出典|date=2023年7月}}。また、沖縄県ではサツマイモから取ったデンプンがイムクジ（芋くず）という名前で市販されており、生産量が少なく高価な[[葛粉]]の代用品として使われている{{要出典|date=2023年7月}}。家庭でも[[葛餅]]や[[ジーマーミ豆腐]]など料理の凝固、とろみ付けに使用される{{要出典|date=2023年7月}}。

=== 焼酎 ===
サツマイモは焼酎の原料としても利用され、サツマイモを主原料とした焼酎を[[芋焼酎]]といい<ref group="注釈">[[ジャガイモ]]、[[ナガイモ]]（長芋）、[[サトイモ]]（里芋）を主原料とした焼酎も存在する。これらは「芋」を使った焼酎であることには違いないが、通常、芋焼酎とは区別され、ジャガイモ焼酎、長芋焼酎、里芋焼酎などと呼ばれる。したがって、芋焼酎といえばサツマイモを主原料とした焼酎と考えてよい。</ref>、鹿児島県や[[宮崎県]]を中心に製造されている{{要出典|date=2023年7月}}。デンプンを糖化するための[[麹]]原料としても、米と共に芋が使用される{{要出典|date=2023年7月}}。

鹿児島では江戸時代から芋焼酎が作られており、法律によって自家醸造が禁止されるまでは、広く家庭で作られていた{{Sfn|橋口孝司|2004|p=155}}。よって、鹿児島では「味のよい焼酎を煮れる女が立派な主婦」などといわれていた{{Sfn|橋口孝司|2004|p=156}}。当時の作り方は、サツマイモ<!-- 品種不明 -->を蒸してから[[臼]]で潰し、それに加水して2 - 5日放置し、そこに[[種麹#菌種による分類|黄麹]]を加えて[[攪拌]]して放置して作った[[もろみ]]を、ツブロ式蒸留器で[[蒸留]]するというものだった{{Sfn|橋口孝司|2004|p=155}}。

[[2000年代]]には焼酎ブームによりサツマイモ不足に陥った。また、中小建設業者が多角化の一環としてコガネセンガン（黄金千貫）の栽培に取り組む例もみられる{{要出典|date=2023年7月}}。

中国の[[白酒 (中国酒)]] には、サツマイモを原料とする製品もある<ref>{{Cite journal|和書|doi=10.6013/jbrewsocjapan1988.89.53 |author=花井四郎 |title=中国の白酒と香気 |journal=日本醸造協会誌 |volume=89 |issue=1 |pages=53-59 |year=1994}}</ref>。

=== 芋蜜 ===
鹿児島県[[南九州市]]の[[知覧町]]と[[頴娃町]]には「あめんどろ」と呼ばれるサツマイモを煮詰めて作った[[蜜]]が伝わっていた。伝統的な製法を守ってきた最後の職人が廃業し、伝統が消滅する寸前であったが、後継者が現れ全国展開を進めている<ref name="朝日20190302">{{cite news|date= 2019-03-02|title= けいざい＋ 守れ、伝統の味：下 芋蜜、地方の片隅から世界へ|newspaper=『[[朝日新聞]]』|url=https://www.asahi.com/articles/DA3S13916121.html|accessdate=2019-03-03|ref="朝日20190302"}}{{要購読}}</ref><ref>{{cite web|date=2018-11-12 |title=全国展開初！薩摩の伝統素材“芋蜜”が遂にプリンに芋蜜だからできる「純粋な甘さと香り」まさに初めての味わい！メイトー『薩摩あめんどろ芋蜜プリン』|url=https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000033623.html|accessdate=2019-03-03|publisher=PR TIMES|ref="PR_TIMES20181112"}}</ref>。

==== 原料イモの品種 ====
食用としても広く消費されるベニアズマや紫芋の1種でアヤムラサキ、焼酎専用品種のジョイホワイトなど様々な品種が使用されており、耐病性、単位面積あたりの収穫量、デンプンの含有率、貯蔵性を良くすることに主眼が置かれた品種改良が行われている{{要出典|date=2023年7月}}。
* 農林2号 [[1970年]]（[[昭和]]45年）頃まで中心品種として栽培されていた{{要出典|date=2023年7月}}。
* [[コガネセンガン]] [[1966年]]（昭和41年）に命名登録され[[1967年]]（昭和42年）より用いられ[[1980年]]（昭和55年）過ぎまでは中心品種として栽培された。これは、農林2号よりデンプンの含有率が高く1株当たりの収量が1.5倍であったことによる{{要出典|date=2023年7月}}。
* シロサツマ - [[1985年]]（昭和60年）頃から。収穫後も傷みにくい{{要出典|date=2023年7月}}。
* シロユタカ - 1985年（昭和60年）頃から。耐病性があり高デンプン含有率{{要出典|date=2023年7月}}。
* ムラサキマサリ（農林54号） - [[2001年]]（平成13年）頃から。[[アントシアニン]]を含有した紫芋で、蒸留後、芳香性や甘みを与える{{要出典|date=2023年7月}}。
この他にも多種の品種が使用される。

=== 飼料 ===
サツマイモは、[[飼料]]として[[家畜]]に与えられることもある。[[ブタ]]にサツマイモを与えることを義務付けているブランド[[豚肉]]もある。そうして育てる千葉県産「いも豚」は、獣臭さが少なく、脂が甘く食べると口溶けが良いことが特徴である<ref>{{Cite news|title=【食のフロンティア】イモ食の豚、甘い口溶け／旭食肉協同組合、内外で好評 |newspaper=『[[日経MJ]]』|date=2018年4月23日 |page=フード面}}</ref>。[[かごしま黒豚]]の定義では、肥育後期に飼料含量あたり20%のサツマイモを与えるよう定めている{{要出典|date=2023年7月}}。

=== 燃料 ===
痩せ地での栽培に適し、デンプンを多く含むサツマイモは、しばし[[バイオマスエタノール|バイオエタノール]]の原料として注目されることがある。[[第二次世界大戦]]中の日本では、不足する[[航空機]]用燃料のためにバイオエタノールの製造が研究された<ref>{{Cite web|url=https://www.gelifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/chem_story/90.html |title=生化夜話 第17回：未知なる燃料を芋に求めて |accessdate=2014-03-01 |publisher=GEヘルスケア}}</ref>。現代においても、環境志向の高まりと将来起こるであろう[[化石燃料]]の不足に備えて、研究が進められている<ref>{{Cite news|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2319271?pid=2412941 |title=バイオ燃料の原料に適したサツマイモの開発に成功 |newspaper=[[フランス通信社|AFP BBnews]] |date=2007年11月30日 |accessdate=2014-03-01}}</ref>。

== 薬用 ==
薬菜の1種として、晩秋から冬にかけて掘り出した塊根を'''蕃薯'''（ばんしょ）と称して薬用にする{{sfn|貝津好孝|1995|p=34}}。[[民間療法]]では、薬効は疲労倦怠、食欲不振、便秘に有効とされ、煮たり焼いたりして食べる{{sfn|貝津好孝|1995|p=34}}。繊維質が多く、胃腸を温める作用があることから、[[クリ]]、[[ジャガイモ]]、[[トウモロコシ]]と同様に、特に冷え症の人の便秘によいと言われる{{sfn|貝津好孝|1995|p=34}}。生野菜を食べても便秘が解消できない人や、虚弱体質で食欲がない子供に向いている薬菜であり、サツマイモを食べると胸焼けを起こす人には、[[ショウガ]]と一緒に煮て食べるとよいと言われている{{sfn|貝津好孝|1995|p=34}}。

== 文化 ==
[[ファイル:Ishi yakiimo vendor by MShades in Nara.jpg|thumb|100px|[[リヤカー]]の石焼き芋売り]]
===食品===
; [[石焼き芋]]
: 石焼き芋の[[屋台]]は秋から冬にかけての[[風物詩]]である{{要出典|date=2023年7月}}。「いしやあーきぃいも〜」という特徴のある呼び声や、地域によってはピョーという独特の笛の音を響かせて街を巡る{{要出典|date=2023年7月}}。この笛は芋を焼く窯に取り付けられており、排ガスの圧力で鳴る仕組みになっている{{要出典|date=2023年7月}}。
; [[切り干し芋]]
: 静岡県の郷土料理<ref>[https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/36_19_shizuoka.html 切り干し芋|静岡県] 農林水産省、2024年2月2日閲覧。</ref>。遠江国[[榛原郡]][[白羽村]]の栗林庄蔵によって1824年（旧暦[[文政]]7年）に開発された<ref>「栗林正蔵さん」『[http://hoshiimojiten.com/history/hoshiimo01.html ほしいも百科事典 ほしいも情報満載の干し芋情報サイト]』タツマ。（「正蔵」との表記は[[原文ママ]]）</ref><ref group="注釈">[[静岡県]][[榛原郡]][[白羽村]]は、[[御前崎村]]と合併し、1955年に[[御前崎町]]が設置された。</ref>。その後、[[保存食]]として全国各地に広まった{{要出典|date=2023年7月}}。[[日露戦争]]で野戦食としても活用され、「軍人いも」と呼ばれた{{要出典|date=2023年7月}}。 
[[画像:Hishiimo.jpg|thumb|100px|right|干しいも]] 
; [[干し芋]]
: 茨城県の郷土料理<ref>[https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/hoshiimo_ibaraki.html 干しいも|茨城県] 農林水産省、2024年2月2日閲覧</ref>。静岡県の郷土料理である切り干し芋を参考に、茨城県[[那珂郡]][[前渡村 (茨城県)|前渡村]]の照沼勘太郎によって1895年（明治28年）に開発された<ref>先﨑千尋「『ほしいも文庫』と『白土松吉文庫』の誕生」『いも類振興情報』117号、いも類振興会、2013年10月、35頁。</ref><ref group="注釈">1954年、[[茨城県]][[那珂郡]][[前渡村 (茨城県)|前渡村]]の一部は[[那珂湊町]]に編入され、前渡村の残部は勝田町に編入された。</ref>。乾燥させたサツマイモとしては、現在は茨城県が圧倒的なシェアを誇るまでになっている{{要出典|date=2023年7月}}。
; [[きんこ (サツマイモ)|きんこ]]
: 三重県の郷土料理<ref>「志摩の《きんこ》」[https://www.city.shima.mie.jp/shisei/shi_no_shokai/shisei_yoran/1481588967412.html 志摩の『きんこ』] [[志摩市役所]]、2016年12月19日。</ref>。静岡県の切り干し芋や茨城県の干し芋のように蒸かしてはおらず、煮てから乾燥させている<ref>「きんこ」『[https://www.location-research.co.jp/kyoudoryouri100/ryouri/24.html 三重県の郷土料理｜農山漁村の郷土料理百選]』ロケーションリサーチ。</ref>。
[[画像:Ikinaridango 2.jpg|thumb|100px|いきなり団子]]
; [[いきなり団子]]（いきなりだんご、いきなりだご）
: [[熊本県]]の[[郷土料理]]、[[郷土菓子]]。[[輪切り]]にしたサツマイモと[[餡]]（小豆あん）を[[餅]]（ねりもち）、または[[小麦粉]]を練って平たく伸ばした生地で包み、蒸した[[食品]]{{要出典|date=2023年7月}}。見た目は[[大福]]にも似ている{{要出典|date=2023年7月}}。[[福岡県]][[筑後地方]]には、いきなり団子とほぼ同じ「'''いきなり饅頭'''」と呼ばれる[[饅頭]]状の菓子があり、特に熊本県に隣接する[[福岡県]][[大牟田市]]などでは土産物としても扱われている<ref>{{Cite web|和書|publisher=[[福岡放送]]|website=ラッキーワゴンの旅|url=https://www.fbs.co.jp/mentai/onair/2124.html|title=大牟田市後編|date=2024-04-18|accessdate=2024-06-08}}</ref>。
; [[ねりくり]]（ねったぼ、からいも餅）
[[File:Nerikuri.JPG|thumb|100px|ねりくり]]
: 鹿児島県から[[宮崎県]]南部で食される、茹でた[[餅]]と蒸したサツマイモを合わせて作る[[いももち|芋餅]]の一種{{要出典|date=2023年7月}}。家庭料理としては、[[正月]]に余って硬くなった[[餅]]や水餅などを使って作られ、食べる時には[[きな粉]]をまぶして食する{{要出典|date=2023年7月}}。[[奄美群島]]では[[小正月]]の[[餅花]]を利用して'''ひっきゃげ'''、'''ひっちゃき'''とする{{要出典|date=2023年7月}}。
; [[かんころ餅]]（甘古呂餅）
[[ファイル:Kancoromochi.jpg|right|thumb|100px|かんころもち]]
: [[長崎県]][[五島列島]]特産のサツマイモを薄く輪切りにし、湯がいて天日で干し上げもち米と蒸して搗き合わせ、お餅に仕上げたもの{{要出典|date=2023年7月}}。かつてもち米の貴重だった時代にその量を増やすために作られ、冬の間の貴重な保存食でもあった{{要出典|date=2023年7月}}。五島列島のほか長崎県の[[崎戸島]]、[[大島 (長崎県西海市)|大島]]などの島々では今でも各家庭の伝統として伝わっている{{要出典|date=2023年7月}}。
; 丸十
: サツマイモは、日本料理の献立に「丸十（まるじゅう）」と書かれることがある。これは、薩摩藩[[島津氏]]の[[家紋]]が丸に十字であることが由来だとされている。マルジュという地域もある<ref>{{Cite book|和書|editor=[[佐久市]]志編纂委員会編纂 |title=佐久市志 民俗編 下 |publisher=佐久市志刊行会 |year=1990 |page=1394 |ncid=BN02516633}}</ref>。
; [[芋ケンピ]]
; [[芋羊羹]]
; [[芋飴]]
; [[せん (食品)]]
; [[スイートポテトパイ]]
; [[あぶらき]]
: 伊豆諸島神津島の郷土菓子{{要出典|date=2023年7月}}。茹でたのち潰したサツマイモに、薄力粉や砂糖などを加えて整形したのち揚げたもの{{要出典|date=2023年7月}}。
; [[切干餅]]
: 神津島の郷土料理{{要出典|date=2023年7月}}。生のサツマイモをスライスし、天日に干して乾燥させたのちに砕いて粉にしたのを、糯米を合わせて整形し、揚げて食す{{要出典|date=2023年7月}}。芋粥のように、米（もち米）が貴重であったために生まれた食文化であろうと考えられている。[[三宅島]]にも同様の製法で作る「いいもち」がある{{要出典|date=2023年7月}}。
; からいも飴
： 鹿児島県で作られる[[ミルキー]]の様な食感の飴菓子。

===慣用句===
; 八里半（はちりはん）
: 焼き芋（または蒸し芋）の異称。味が[[栗]]（くり＝九里）に近く美味しいという意味で八里半<ref name=hac>{{Cite web|url=http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E5%85%AB%E9%87%8C%E5%8D%8A&match=beginswith&itemid=DJR_hatirihann_-010 |title=「はちりはん（八里半）」|work=『[[大辞林]]』第三版（[[三省堂]]）|accessdate=2015-01-26 |url-status=dead|url-status-date=2020-03-09 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150503174106/http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=八里半&match=beginswith&itemid=DJR_hatirihann_-010 |archivedate=2015-05-03}}</ref>。石焼き芋などサツマイモ食品を売る店が看板に用いた<ref name=hac/>。
; 九里四里（くりより）うまい十三里（または十三里半）、十三里
[[ファイル:Ishi yaki imo by Kanko.jpg|thumb|100px|石焼き芋]]
: 栗（九里）より（四里）うまいと、サツマイモ（特に川越いも）の美味しさを称えた言葉<ref name=huk/>。
: 十三里は江戸時代、サツマイモの名産地で知られた[[川越市|川越]]（現在の[[埼玉県]]）が江戸から[[川越街道]]を通り、約十三[[里 (尺貫法)#中世・近世|里]]（52km）の距離であったことに因み<ref name=huk>[http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/column/54143.html 「栗（九里）より（四里）うまい十三里―と…」]『[[福井新聞]]』（2014年09月15日午前06時43分）2015年01月24日閲覧</ref><ref name=sou/>、距離的概念の十三里と九里+四里を足して十三里 (9+4=13) を引っかけ、[[洒落]]を利かせている<ref>関根 久夫『埼玉の日本一風土記』2010年 幹書房</ref>。
: 現在では各地で販売するサツマイモ食品の宣伝文句や商品名に活用されている<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASG784PTPG78PLZB00G.html |title=「（おあがりやす）遊び心 サツマイモで包む」 |newspaper=『[[朝日新聞]] |date=2014年07月10日10時57分 |accessdate=2015年01月24日 |deadlinkdate=2020-03-09 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20140711020016/http://www.asahi.com/articles/ASG784PTPG78PLZB00G.html |archivedate=2014-07-11}}</ref>。愛媛県の[[佐田岬半島]]地域でも、佐田岬半島の長さが約十三里であることから「栗よりうまい十三里」という。同半島は[[火山灰]]の混じる土壌でサツマイモの産地でもある。
: 九里四里うまいを略し、「十三里」でサツマイモ、サツマイモ食品の異称にもなっている<ref>{{Cite web|url=http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E5%8D%81%E4%B8%89%E9%87%8C&match=beginswith&itemid=DJR_juusannri_-010 |title=「じゅうさんり（十三里）」|work=『大辞林』第三版（三省堂） |accessdate=2015-01-24 |url-status=dead|url-status-date=2020-03-09 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150924071923/http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=十三里&match=beginswith&itemid=DJR_juusannri_-010 |archivedate=2015-09-24}}</ref>。
; いもづる式
: 1つの事実が明らかになったことをきっかけに、次々と関連する事実が明らかになること<ref>{{cite web|url= https://kotobank.jp/word/芋蔓式-436100 |title=芋蔓式|work=コトバンク|accessdate=2021-6-4}}</ref>。サツマイモの芋は塊根であり、塊根のもととなる不定根は地表を這っている匍匐茎（ツル）の葉の付け根から出ていて、芋がツルを介してつながっている。1つの芋を掘り出せば残りの芋も容易に見つけられることから来た言葉である{{要出典|date=2023年7月}}。
; 芋を引く
: 芋を収穫するときに後ずさりすることから転じて怯むこと。主として[[仁侠]]の世界の人間が使うことが多い{{要出典|date=2023年7月}}。
; 芋っぽい
:田舎っぽい、ダサい、垢抜けていないなどを意味する{{要出典|date=2023年7月}}。

===その他===
; 芋掘り
: 秋、サツマイモの「芋掘り」を[[観光]][[農場|農園]]などで体験することができる。サツマイモは収穫しやすく、探り掘りの楽しみもある上、掘った後の調理も比較的簡単であるので、学校行事として行うことも多い。[[幼稚園]]・[[保育所]]などでは、秋の[[イベント|行事]]として定着している所も少なくない。収穫したイモを園庭で焼き芋にして食べる園もある{{要出典|date=2023年7月}}。
:; 芋堀をテーマとする本
::* 『ねずみのいもほり』 ISBN 4-89325-199-6
::* 『さつまのおいも』 ISBN 4-494-00563-0
::* 『おおきなおおきなおいも』 ISBN 4-8340-0360-4
[[ファイル:Potato Stamps-Chinese New Year.jpg|200px|サムネイル|右|ジャガイモを使用した芋版]]
; {{仮リンク|芋版|label=芋版（いもばん）|fr|Patatogravure|preserve=1}}
: サツマイモなどの芋を[[輪切り]]にし、その断面に図や文を彫って[[印刷]]する簡易な[[印刷#凸版|凸版印刷術]]<ref>広辞林第五版。三省堂</ref>。[[児童教育]]にも用いられる<ref>[https://oekakihiro.exblog.jp/18214414/ こども造形絵画教室おえかきひろば] 城陽教室　～イモ版で年賀状作り！～</ref><ref>[https://www.chiben.ac.jp/naracollege-el/2017/11/09/39404/  230.芋版づくり（1年生）] 智辯学園奈良カレッジ小学部</ref>。
; さつまいもの日 - [[10月13日]]
: サツマイモの[[旬]]が[[10月]]であることと、[[川越いも]]（サツマイモの一種）と[[埼玉県]][[川越市]]に由来する言葉「九里四里（くりより）うまい十三里」の13里を合わせて、同市の市民グループ『川越いも友の会』が[[記念日]]に制定した<ref name="sou">{{Cite web|url=http://www.stat.go.jp/naruhodo/c3d1013.htm |publisher=総務省 統計局 |title=今日は何の日？10月13日 - さつまいもの日（なるほど統計学園） |accessdate=2015-01-26 |url-status=dead|url-status-date=2020-03-09 |archiveurl=https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10196900/www.stat.go.jp/naruhodo/c3d1013.htm |archivedate=2016-09-02}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注釈"}}

=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author =板木利隆|title = 決定版 野菜づくり大百科|date=2020-03-16|publisher = [[家の光協会]]|isbn=978-4-259-56650-0|pages =394 - 397|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =市川啓一郎|title =タネ屋がこっそり教える 野菜づくりの極意|date=2021-10-30|publisher =[[農山漁村文化協会]]|isbn=978-4-540-21109-6|pages =140 - 143|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|title = かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典|date=2012-07-10|publisher = [[成美堂出版]]|isbn=978-4-415-30997-2|page =106 - 107|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =貝津好孝|title = 日本の薬草|date=1995-07-20|publisher = [[小学館]]|series = 小学館のフィールド・ガイドシリーズ|isbn=4-09-208016-6|page =34|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =[[金子美登]]・野口勲監修 成美堂出版編集部編|title = 有機・無農薬 家庭菜園 ご当地ふるさと野菜の育て方|date=2011-04-01|publisher = 成美堂出版|isbn=978-4-415-30991-0|pages =132 - 136|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =[[金子美登]]|title=有機・無農薬でできる野菜づくり大事典|date=2012-04-01|publisher = [[成美堂出版]]|isbn=978-4-415-30998-9|pages=178 - 182|ref={{SfnRef|金子美登|2012}} }}
* {{Cite book|和書|author =講談社編|title = からだにやさしい旬の食材 野菜の本|date=2013-05-13|publisher = [[講談社]]|isbn=978-4-06-218342-0|pages =180 - 187|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =主婦の友社編|title = 野菜まるごと大図鑑|date=2011-02-20|publisher = [[主婦の友社]]|isbn=978-4-07-273608-1|pages =194 - 199|ref=harv}}
* {{Cite book|和書 |author=徳永和喜 |year=1983 |title=歴史寸描「種子島の史跡」 |publisher=和田書店 |isbn=|ref=徳永}}
* {{Cite book|和書|author=橋口孝司 |title=本格焼酎銘酒事典 |page=155 |publisher=[[新星出版社]] |date=2004年10月15日 |isbn=4-405-09113-7 |ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =藤田智監修 NHK出版編|title = NHK趣味の園芸 やさいの時間 藤田智の新・野菜づくり大全|series=生活実用シリーズ|date=2019-03-20|publisher = [[NHK出版]]|isbn=978-4-14-199277-6|pages =114 - 115|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =丸山亮平編|title =野菜づくり大辞典|series=ブティック・ムック|date=2017-05-20|publisher = [[ブティック社]]|isbn=978-4-8347-7465-8|pages =102 - 103|ref=harv}}

== 関連人物 ==
* [[青木昆陽]] -  - 墓所がある[[瀧泉寺]]（目黒不動）では、毎年命日に「甘藷祭り」が開かれる。
* [[大沢権右衛門]]

== 関連項目 ==
* [[芋]]
** {{仮リンク|シモンイモ|en|Ipomoea batatas}} - 南アメリカ原産の白甘藷。
** [[ヤム|ヤムイモ]] - アメリカ合衆国ではサツマイモは yam と呼ばれ、しばしば混同される。
** [[芋羊羹]]
* [[昆陽神社]] - 青木昆陽が「芋神様」として祀られている。
* [[堀出神社 (ひたちなか市)|堀出神社]] - 境内末社に「ほしいもの神様」が祀られている。
* [[シラス (地質)|シラス]] - サツマイモは南九州の、他の作物に不向きなシラス台地でよく栽培される。
* [[焼酎]] - サツマイモは[[焼酎#芋焼酎|芋焼酎]]の原料。
* [[ジャガイモ]]
* [[サトイモ]]
* [[キャッサバ]] - [[トウダイグサ科]]の植物で、茎の根元にサツマイモに似た形状の塊根を付ける。塊根の風味もサツマイモに類似している。
* [[琉球芋]]

== 外部リンク ==
{{Sisterlinks
 | wikt = さつまいも
 | q = no
 | s = no
 | n = no
 | v = no
 | species = Ipomoea batatas
}}
* [https://www.jrt.gr.jp/ JRT 日本いも類研究会]
* [http://www.pref.kagoshima.jp/sangyo-rodo/nogyo/nosanbutu/satumaimo/ 鹿児島県 さつまいも通信]
* {{Cite web
| author = [[東京国際大学]]ベーリ・ドゥエル教授
| url = http://www.tiu.ac.jp/~bduell/sp/usasp/
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20060207123345/tiu.ac.jp/~bduell/sp/usasp/
| title = アメリカ、サツマイモ事情
| accessdate = 2006-03-01
| archivedate = 2006-02-07
| url-status=dead|url-status-date=2021-04-18 }}
* [http://www.yomitan.jp/beni-imo/09_date/pdf/history.pdf 読谷村紅イモ探偵団 甘藷の歴史を探る（アジアから琉球）]

{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:さつまいも}}
[[Category:サツマイモ属]]
[[Category:サツマイモ|*]]