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サルとココナッツ
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'''サルとココナッツ'''({{Lang-en-short|the monkey and the coconuts}})は、無人島に流れ着いた5人の水夫と1匹のサルがココナッツの山を分け合うという設定の[[数学パズル]]で、[[ディオファントス方程式]]に関連した問題である。 ==歴史== この問題は、アメリカの長編・短編作家{{仮リンク|ベン・エイムズ・ウィリアムズ|en|Ben Ames Williams}}が古くからあった問題を改作して[[サタデー・イブニング・ポスト]]の1926年10月9日の号に掲載した<ref name=pleacher>Pleacher (2005)</ref>ことで悪名高く知られるようになった。ここにウィリアムズ自身が記した形で問題を述べる: : 5人の水夫と1匹のサルが難破船からある島に漂着した。彼らは最初の晩をココナッツ集めで過ごした。夜中水夫の1人が目を覚まし、自分のココナッツの取り分を持っていくことにした。彼がココナッツの山を5つに分けると、1個だけ余りが出たのでそれはサルにやることにし、自分の分は隠して再び眠りに就いた。 : そのすぐ後に、2人目の水夫が目を覚まし、同じことをした。ココナッツの山を5つに分けると1個だけ余りが出たので、それはサルにやった。彼は自分の分け前を隠し、寝床に戻った。3人目、4人目、5人目の水夫もこれと全く同じことを続けて行った。翌朝全員が目を覚まし、残っているココナッツの山をきっちり5等分した。このときは余りは出なかった。 : 元々あったココナッツは、最も少ない場合、いくつだっただろうか。 サタデー・イブニング・ポストには問題の答えを知りたいという2000通以上の手紙が殺到した。編集長の{{仮リンク|ジョージ・ホレイス・ロイマー|en|George Horace Lorimer}}はいみじくも即座にウィリアムズに打電してこう伝えた:"FOR THE LOVE OF MIKE, HOW MANY COCONUTS? HELL POPPING AROUND HERE(後生だから、ココナッツはいくつか教えてくれ。こっちはすごいことになっている)." ウィリアムズには続く20年、答を尋ねる手紙が届き続けることになる<ref name=gardner>Gardner (2001)</ref>。 ウィリアムズはより混乱を誘うため、古くからあった問題を改作していた。古い版では、最後の分配のときもまずサルに1個やってからちょうど5等分することになっている。ウィリアムズ版では最後に残る山はそのままで5等分できる<ref>Antonick (2013)</ref>。 [[マーティン・ガードナー]]は[[サイエンティフィック・アメリカン]]1958年4月号上の彼のコラム{{仮リンク|Mathematical Games column|en|Mathematical Games column}}の中でこの問題を特集している。彼はこの問題がお気に入りだと息子のジムにかつて言っており<ref>Antonick(2013): 『私はジムに、父さんにはお気に入りのパズルはあったかと聞いたが、彼はほとんど即座に「サルとココナッツ」と答えた。マーティンはこの問題がたいそう気に入っていた』</ref>、後にコラムのベスト集 " ''The Colossal Book of Mathematics''<ref name=gardner>Gardner (2001)</ref> "で第1章にしているほどである。彼は、サルとココナッツの問題は「おそらく、最も多く挑戦され、最も正解者が少ない」代数のパズルだと言っている<ref name=pleacher>Pleacher (2005)</ref>。以来、ウィリアムズ版の問題は{{仮リンク|レクリエーショナルマセマティクス|en|recreational mathematics}}の定番になっている<ref>Wolfram Mathworld</ref>。この問題を含んだ元の物語は1962年の{{仮リンク|クリフトン・ファディマン|en|Clifton Fadiman}}の選集、" ''{{仮リンク|The Mathematical Magpie|en|The Mathematical Magpie}}''<ref>[https://www.kirkusreviews.com/book-reviews/clifton-ed-fadlman/the-mathematical-magpie/ KIRKUS REVIEW of The Mathematical Magpie] July 27, 1962</ref>" ("magpie"とはカササギのことだが、「何でも集めたがり屋」の意味もある)に全文が載るかたちで再版されることとなった。この本は{{仮リンク|アメリカ数学協会|en|Mathematical Association of America}}の、大学学部生向け数学図書室への推薦図書となっている<ref>[http://www.maa.org/publications/maa-reviews/the-mathematical-magpie ''The Mathematical Magpie''], by Clifton Fadiman, Mathematical Association of America, Springer, 1997</ref>。 ==解== ガードナーは彼のコラムの中で、オリジナル版、ウィリアムズ版の双方に完全な解析を与えた。彼はまず、比較的ややこしくないオリジナル版から着手した。''N'' を最初にあったココナッツの数、''F'' を翌朝の最後の5等分でそれぞれの水夫が受け取ったココナッツの数とする。このとき、次のディオファントス方程式が成り立つ<ref name=gardner>Gardner (2001)</ref>{{efn| (訳注)<math>N</math> をココナッツの数とすると、ここから1個除いて 1/5 を取り去ると残りは <math>\frac{4}{5} (N-1)</math> 個である。これを5回繰り返し、残りから1個除いて5等分すると :<math> F= \frac{1}{5} \left \{ \frac{4}{5} \left \{ \frac{4}{5} \left \{ \frac{4}{5} \left \{ \frac{4}{5} \left \{ \frac{4}{5} (N-1) -1 \right \} -1 \right \} -1 \right \} -1 \right \} -1 \right \} </math> が得られる。 <math>F</math> が整数であることと、取り分けの各ステップでの数が全て整数であることは同値である。方程式の解法や性質の詳細についてはディオファントス方程式、特に[[ベズー方程式]]を参照。 }}: :1024 ''N'' = 15625 ''F'' + 11529 ガードナーの指摘では、この方程式は試行錯誤で解くには複雑すぎる<ref>Gardner (2001) p. 4: 『この方程式は試行錯誤で解くには複雑すぎる。また、解を得るのに[[連分数|連分数展開]]を巧みに用いた標準的な手続きがあるが、長くて骨が折れるものである』</ref>。さらにこの方程式には無数の解が存在する。実際、もし''(N, F)'' が解なら、任意の整数 ''t'' に対して ''(N + 15625 t, F + 1024 t)'' も解である。このことから、解には負の整数も現れることがわかる。絶対値の大きくない負数をいくつか試してみると、''N = -4, F = -1'' が解になっていることがわかる<ref>Bogomolny (1996)</ref>。これではココナッツの数がマイナスとなって不合理なので、-4に15625を、-1に1024をそれぞれ加えることで、最小の正整数解 ''(15621, 1023)'' が得られる<ref>Gardner (2001) p. 5: 『この解は時折[[ケンブリッジ大学]]の物理学者[[ポール・ディラック]](1902-1984)に帰せられることがあるが、私がディラック教授に宛てた質問の回答によれば、彼はこの解を数学教授の(著名な哲学者[[アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド]]の甥でもある){{仮リンク|J・H・C・ホワイトヘッド|en|J.H.C. Whitehead}}から得たという。ホワイトヘッド教授に同じ質問をするとどこかの誰かから教わったとのことだったが、私はここでそれ以上の追求をやめた』</ref>。ガードナーはこのケースを一般化した問題を解き、さらにウィリアムズ版の解を ''N ='' {{nowrap|1=5<sup>5</sup> - 4 = 3121}} と求めている。 ==出典と注釈== {{Reflist|30em}} ==補足== {{notelist}} ==参考文献== * Antonick, Gary (2013). ''[https://wordplay.blogs.nytimes.com/2013/10/07/gardner-2/ Martin Gardner’s The Monkey and the Coconuts]'' in Numberplay The ''New York Times'':, October 7, 2013 * Pleacher, David (2005). ''[http://www.pleacher.com/mp/probweek/p2005/a051605.html Problem of the Week: The Monkey and the Coconuts]'' May 16, 2005 * Gardner, Martin (2001). ''[https://books.google.com/books?id=orz0SDEakpYC&pg=PA3&lpg=PA3&dq=monkey+and+the+coconuts+problem+response+to+saturday+evening+post&source=bl&ots=wKNHjNuft_&sig=Uz_RXe_-KGdoke2ToACfKzWgOpM&hl=en&sa=X&ved=2ahUKEwjE8fz9kNTcAhXBrVkKHYqhDVcQ6AEwB3oECAMQAQ#v=onepage&q=monkey%20and%20the%20coconuts%20problem%20response%20to%20saturday%20evening%20post&f=false The Colossal Book of Mathematics: Classic Puzzles, Paradoxes, and Problems]'' W.W. Norton & Company; {{ISBN2|0-393-02023-1}} * Pappas, Theoni (1993). ''[https://www.amazon.com/Joy-Mathematics-Discovering-All-Around/dp/0933174659/ref=mt_paperback?_encoding=UTF8&me=&qid=&dpID=51k10hvAbXL&preST=_SY344_BO1,204,203,200_QL70_&dpSrc=detail|The Joy of Mathematics: Discovering Mathematics All Around|]'' Wide World Publishing, January 23, 1993, {{ISBN2|0933174659}} * Wolfram Mathworld: ''[http://mathworld.wolfram.com/MonkeyandCoconutProblem.html Monkey and Coconut Problem]'' * Kirchner, R. B. "The Generalized Coconut Problem." Amer. Math. Monthly 67, 516-519, 1960. * Fadiman, Clifton (1962). ''[[The Mathematical Magpie]]'', Simon & Schuster * [[Alexander Bogomolny|Bogomolny, Alexander]] (1996) ''[https://www.cut-the-knot.org/proofs/NegativeCoconuts.shtml Negative Coconuts]'' at cut-the-knot ==外部リンク== * [https://www.youtube.com/watch?v=U9qU20VmvaU Monkeys and Coconuts - Numberphile] video {{DEFAULTSORT:さるとここなつつ}} [[Category:数学パズル]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:ココナッツ]]
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