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[[関数解析学]]における'''シフト作用素'''(シフトさようそ、{{Lang-en-short|Shift operator}})あるいは'''平行移動作用素'''(translation operator)とは、ある関数 {{math|''f''(''x'')}} をその平行移動 {{math|''f''(''x''+''a'')}} に写す作用素のことを言う<ref>{{MathWorld|id=ShiftOperator|title=Shift Operator}}</ref>。[[時系列|時系列解析]]では、シフト作用素は'''{{仮リンク|ラグ作用素|en|Lag operator}}'''と呼ばれる。 シフト作用素は[[線型作用素]]の例であり、その簡明さおよび自然発生的な需要において重要なものである。シフト作用素のある実数関数上での作用は、[[調和解析]]の分野で重要な役割を担い、例えば[[概周期関数]]や{{仮リンク|正定値関数|en|Positive-definite function}}、[[畳み込み]]の定義において用いられる<ref name="mar">{{harvnb|Marchenko|2006|pp=145–162|loc=The generalized shift, transformation operators, and inverse problems|title=Mathematical events of the twentieth century}}.</ref>。ある(整数を変数とする関数の)列のシフトは、[[ハーディ空間]]や[[アーベル多様体]]の理論、{{仮リンク|ベーカー写像|en|baker's map}}が陽的な表現となる{{仮リンク|記号力学|en|symbolic dynamics}}の理論のような広範な分野に現れる。 == 定義 == === 実変数関数 === シフト作用素 {{math|''T''<sup>''t''</sup>}} ({{math|''t'' ∈ '''R'''}}) は、'''R''' 上の関数 {{math|''f''}} を、次のような平行移動 {{math|''f''<sub>''t''</sub>}} に写す。 :<math> f_t(x) = f(x+t)~.</math> 線型作用素 {{math|''T''<sup>''t''</sup>}} の簡単な微分 {{math|<sup>''d''</sup>⁄<sub>''dx''</sub>}} に関する実践的な表現は、[[ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ|ラグランジュ]]によって次のように与えられた。 :<math>T^t= e^{t \frac{d}{dx}}~, </math> これは ''t'' についての形式的なテイラー展開として解釈出来、単項式 ''x''<sup>n</sup> 上での作用は[[二項定理]]によって明らかで、したがって ''x'' についてのすべての級数の上でも明らかである{{sfn|Jordan|1965}}。 === 列 === 片側[[列 (数学)|無限数列]]上の'''左シフト'''作用素は、次のように与えられる。 :<math> S^*: (a_1, a_2, a_3, \ldots) \mapsto (a_2, a_3, a_4, \ldots).</math> また両側無限数列に対しては、次のように与えられる。 :<math> T: (a_k)_{k=-\infty}^\infty \mapsto (a_{k+1})_{k=-\infty}^\infty.</math> 片側[[列 (数学)|無限数列]]上の'''右シフト'''作用素は、次のように与えられる。 :<math> S: (a_1, a_2, a_3, \ldots) \mapsto (0, a_1, a_2, \ldots).</math> また両側無限数列に対しては、次のように与えられる。 :<math> T^{-1}:(a_k)_{k=-\infty}^\infty \mapsto (a_{k-1})_{k=-\infty}^\infty.</math> === アーベル群 === 一般に、{{math|''f''}} がある[[アーベル群]] {{math|''G''}} 上の関数で、{{math|''g''}} を {{math|''G''}} の元とするとき、シフト作用素 {{math|''T''<sup>''g''</sup>}} は {{math|''f''}} を :<math> f_g(h) = f(g+h)</math> へと写す{{sfn|Millionshchikov|2001}}。 == シフト作用素の性質 == 実あるいは複素数値の関数あるいは列の上のシフト作用素は、関数解析学の分野に現れる標準的な[[ノルム]]の大半を保つ線型作用素である。したがってシフト作用素は、通常ノルムが 1 の[[有界作用素|連続作用素]]である。 === ヒルベルト空間上での作用 === 両側列の上のシフト作用素は、{{math|''l''<sub>2</sub>('''Z''')}} 上の[[ユニタリ作用素]]である。実数を変数とする関数上のシフト作用素は、{{math|''L''<sub>2</sub>('''R''')}} 上のユニタリ作用素である。 いずれの場合でも、(左)シフト作用素は次のような[[フーリエ変換]]に関する[[交換子|交換関係]]を満たす: :<math> \mathcal{F} T^t = M^t \mathcal{F}. </math> ここで {{math|''M''<sup>''t''</sup>}} は {{math|exp(i ''t'' ''x'')}} との[[乗算作用素]]である。したがって {{math|''T''<sup>''t''</sup>}} のスペクトルは単位円板である。 {{math|''l''<sub>2</sub>('''N''')}} 上の片側シフト {{math|''S''}} は、第一[[座標]]において消失するすべての[[空間ベクトル|ベクトル]]とその[[値域]]が等しいようなある固有[[等長写像|等長作用素]]である。そのような作用素 ''S'' は、次のような意味で ''T<sup>−1</sup>'' の[[圧縮 (関数解析学)|圧縮]]である: :<math>T^{-1}y=Sx \text{ for each } x \in \ell^2(\mathbb{N}). \,</math> ここで {{math|''y''}} は {{math|''l''<sub>2</sub>('''Z''')}} 内のベクトルで、{{math|''i'' ≥ 0}} に対して {{math|''y''<sub>''i''</sub>}} = {{math|''x''<sub>''i''</sub>}} を満たし、{{math|''i'' < 0}} に対して {{math|''y''<sub>''i''</sub>}} = {{math|0}} を満たすようなものである。以上の事実は、等長写像の多くの[[伸張 (作用素論)|ユニタリ伸張]]を構成する上での肝となる。 ''S'' のスペクトルは単位円板である。そのようなシフト ''S'' は[[フレドホルム作用素]]の一例で、そのフレドホルム指数は −1 である。 == 一般化 == [[ジャン・デルサルト]]は'''一般化シフト作用素'''(generalised shift operator。'''一般化置換作用素'''とも呼ばれる)の概念を導入した。またその概念は、{{仮リンク|ボリス・レヴィタン|en|Boris Levitan}}によって発展された<ref name="mar" />{{sfn|Levitan|Litvinov|2001}}{{sfn|Bredikhina|2001}}。 ある集合 {{math|''X''}} から {{math|'''C'''}} への関数の空間 {{math|'''C'''}} 上の作用素の族 {{math|{''L''<sup>''x''</sup>}<sub>''x'' ∈ ''X''</sub>}} は、次の性質を満たすとき'''一般化シフト作用素の族'''(family of generalised shift operators)と呼ばれる。 # 結合性:{{math|(''R''<sup>''y''</sup>''f'')(''x'')}} = {{math|(''L''<sup>''x''</sup>''f'')(''y'')}} とする。このとき {{math|''L''<sup>''x''</sup>''R''<sup>''y''</sup>}} = {{math|''R''<sup>''y''</sup>''L''<sup>''x''</sup>}} が成立する。 # {{math|''L''<sup>''e''</sup>}} が恒等作用素となるようなある {{math|''e'' ∈ ''X''}} が存在する。 この場合、集合 {{math|'''X'''}} は{{仮リンク|ハイパー構造|label=ハイパー群|en|Hyperstructure}}と呼ばれる。 == 関連項目 == * {{仮リンク|算術シフト|en|Arithmetic shift}} * {{仮リンク|論理シフト|en|Logical shift}} * [[差分法|有限差分]] == 注釈 == {{Reflist}} == 参考文献 == * {{cite book|mr=2182783|last=Marchenko|first=V. A.|author-link=:en:Vladimir Marchenko|publisher=Springer|location=Berlin|date=2006|doi=10.1007/3-540-29462-7_8|ref=harv}} * {{cite book|last=Jordan |first=Charles |origdate=1939 |date=1965-01-01 |title=Calculus of Finite Differences |edition=3 |publisher=AMS Chelsea Publishing |ref=harv}} * {{SpringerEOM|title=Shift operator|last=Millionshchikov|first=V.M.|urlname=Shift_operator}} * {{SpringerEOM|id=Generalized_displacement_operator&oldid=43800|first=B.M.|last=Levitan|author-link=:en:Boris Levitan|first2=G.L.|last2=Litvinov|title=Generalized displacement operators}} * {{SpringerEOM|id=Almost-periodic_function|oldid=011970|first=E.A.|last= Bredikhina|title=Almost-periodic function}} * {{cite book|first=Jonathan R.|last=Partington|title=Linear Operators and Linear Systems, An Analytical Approach to Control Theory|date=2004|series=London Mathematical Society Student Texts '''60'''|publisher=Cambridge University Press|ref=harv}}. * {{cite book|first1=Marvin |last1=Rosenblum |first2=James |last2=Rovnyak |title=Hardy Classes and Operator Theory |date=1985 |publisher=Oxford University Press|ref=harv}} {{DEFAULTSORT:しふとさようそ}} [[Category:ユニタリ作用素]] [[Category:等長作用素]] [[Category:関数解析学]] [[Category:数学に関する記事]]
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