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{{distinguish|シュレーディンガー方程式}} [[数学]]における'''シュレーダーの方程式'''(シュレーダーのほうていしき、{{Lang-en-short|Schröder's equation}})は、{{仮リンク|エルンスト・シュレーダー|en|Ernst Schröder}}の名にちなむ、一つの独立変数を持つある[[函数方程式]]のことを言う<ref name="schr">{{cite journal |last=Schröder |first=Ernst |authorlink=:en:Ernst Schröder |year=1870 |title=Ueber iterirte Functionen|journal=Math. Ann. |volume=3 |issue= 2|pages=296–322 | doi=10.1007/BF01443992 }}</ref><ref>{{cite book |title=Complex Dynamics |last=Carleson |first=Lennart|authorlink=レンナルト・カルレソン |last2=Gamelin |first2=Theodore W. |series=Textbook series: Universitext: Tracts in Mathematics |year=1993 |publisher=Springer-Verlag |location=New York |isbn=0-387-97942-5 |page=}}</ref><ref>{{cite book |title=Functional equations in a single variable |last=Kuczma |first=Marek|authorlink=:en:Marek Kuczma|series=Monografie Matematyczne |year=1968 |publisher=PWN – Polish Scientific Publishers |location=Warszawa}}</ref>。すなわち、与えられた函数 {{math|''h''(''x'')}} に対し、次を満たす函数 {{math|''Ψ''(''x'')}} を見つける問題を考える: :<math>\Psi (h(x)) = s\Psi(x).</math> シュレーダーの方程式は、ある函数 {{math|''f''(''x'')}} を {{math|''f''(''h''(''x''))}} に送る[[合成作用素]]に対する固有値方程式である。 {{mvar|a}} が、{{math|''h''(''a'') {{=}} ''a''}} を満たす意味で {{math|''h''(''x'')}} の[[不動点]]であるなら、{{math|''Ψ''(''a'') {{=}} 0}}(あるいは {{math|∞}})か {{math|''s'' {{=}} 1}} のいずれかが成り立つ。したがって、{{math|''Ψ''(''a'')}} が有限で {{math|''Ψ''' (''a'')}} が消失も発散もしないのであれば、[[固有値]] {{mvar|''s''}} は {{math|''s'' {{=}} ''h' ''(''a'')}} で与えられる。 == 函数的意義 == {{math| ''a'' {{=}} 0}} に対し、{{mvar|''h''}} が単位円板上で解析的であり、0 を固定し、さらに 0 < |{{math|''h''′(0)}}| < 1 を満たす場合、シュレーダーの方程式を満たすある解析的な(非自明の){{mvar|''Ψ''}} が存在することが、1884年にケーニッヒによって示された。これは解析的な函数の空間上の合成作用素について理解する上で非常に多くの利がある長い定理の第一ステップの一つである。{{仮リンク|ケーニッヒ函数|en|Koenigs function}}を参照。 シュレーダーの方程式は、[[自己相似|自己相似性]]を符号化することに適しているため、[[非線形システム論|非線型ダイナミクス]]の研究(しばしば口語的に[[カオス理論]]と呼ばれる)において幅広く利用されている。しばしば[[乱流]]や、[[くりこみ群]]の研究においても用いられる<ref>{{cite journal |last=Gell-Mann |first=M. |authorlink=マレー・ゲルマン |author2=Low, F.E. |authorlink2=:en:Francis E. Low |year=1954 |title=Quantum Electrodynamics at Small Distances | journal=Physical Review |volume=95|issue=5|pages=1300–1312 | doi=10.1103/PhysRev.95.1300| bibcode=1954PhRv...95.1300G}}</ref><ref name="renorm">{{cite journal |last=Curtright |first=T.L. |authorlink=:en:Thomas Curtright |author2=Zachos, C.K. |date=March 2011 |title=Renormalization Group Functional Equations | journal=Physical Review D|volume=83|issue= 6|pages=065019| doi=10.1103/PhysRevD.83.065019 |bibcode=2011PhRvD..83f5019C|arxiv = 1010.5174 }}</ref> シュレーダーの共役函数の逆 {{math|''Φ''{{=}}''Ψ''<sup>−1</sup>}} に対する、シュレーダーの方程式の同値な転置型は、{{math|''h''(''Φ''(''y'')) {{=}} ''Φ''(''sy'')}} である。変数変換 {{math|''α''(''x''){{=}}log(''Ψ''(''x''))/log(''s'')}}([[アーベル方程式|アーベル函数]])によってさらに、シュレーダーの方程式はよる古いアーベル方程式 {{math|''α''(''h''(''x'')) {{=}} ''α''(''x'')+1}} へ変換される。同様に、変数変換 {{math|Ψ(''x'') {{=}} log(''φ''(''x''))}} によってシュレーダーの方程式は[[ボッチャーの方程式]]に変換される。さらに、速度 {{math|''β''(''x'') {{=}} ''Ψ''/''Ψ ' ''}} に対し、ジュリアの方程式 {{math| ''β''(''f(x)'') {{=}} ''f ' '' (''x'') ''β''(''x'')}} が成立する<ref name="renorm"/>。 シュレーダーの方程式の ''n'' 次のべきは、固有値が {{math|''s''<sup>''n''</sup>}} であるようなシュレーダーの方程式の解を与える。同じようなやり方で、シュレーダーの方程式の可逆な解 {{math|''Ψ''(''x'')}} に対し、(非可逆な)函数 {{math|''Ψ''(''x'') ''k''(log''Ψ''(''x''))}} もまた周期が {{math|log(''s'')}} の任意の周期函数 {{math| ''k''(''x'')}} に対して解になる。シュレーダーの方程式のすべての解は、このような方法で関連付けられる。 == 解 == シュレーダーの方程式は、{{mvar|a}} が吸引的(但し超吸引的ではない)な不動点である場合、すなわち 0 < |{{math|''h'(a)''}}| < 1 である場合は、{{仮リンク|ガブリエル・ケーニッヒ|en|Gabriel Xavier Paul Koenigs}}(1884)によって解析的に解かれた<ref>{{cite journal |last=Koenigs |first=G. | authorlink=:en:Gabriel Xavier Paul Koenigs |year=1884 |title=Recherches sur les intégrales de certaines équations fonctionelles |journal=Annales Scientifiques de l'École Normale Supérieure|volume=1 |issue=3, Supplément |pages=3–41 |url=http://www.numdam.org/numdam-bin/fitem?id=ASENS_1884_3_1__S3_0}}</ref><ref>{{cite journal |last=Erdős |first=P. |authorlink=ポール・エルデシュ |author2=Jabotinsky, E. | year=1960|title=On Analytic Iteration |journal=Journal d'Analyse Mathématique |volume=8|issue=1 |pages=361–376 |doi=10.1007/BF02786856}}</ref>。 超吸引的な不動点の場合、すなわち |{{math|''h'(a)''}}| = 0 である場合は、シュレーダーの方程式は扱いにくく、[[ボッチャーの方程式]]に変換することが最善の選択であろう<ref>{{cite journal |last=Böttcher |first=L. E. |authorlink=:en:Lucjan Böttcher|year=1904 |title=The principal laws of convergence of iterates and their application to analysis|journal=Izv. Kazan. Fiz.-Mat. Obshch. (Russian) |volume=14 |issue= |pages=155–234}}</ref>。 特殊解は、シュレーダーの1870年の原著論文にまで遡って、多くのものが知られている<ref name="schr"/>。 不動点の周りでの級数展開と、軌道に対する解の適切な収束性およびその解析的性質については、{{仮リンク|ジョージ・セケレシュ|en|George Szekeres}}によってまとめられている<ref>{{cite journal |last=Szekeres |first=G. |authorlink=:en:George Szekeres | year=1958|title=Regular iteration of real and complex functions |journal=Acta Mathematica |volume=100|issue=3–4 |pages=361–376 |doi=10.1007/BF02559539 }} [http://eretrandre.org/rb/files/Szekeres1958_142.pdf]</ref>。その解の幾つかは、[[漸近展開]]によって与えられる。例えば[[カーレマン行列]]を参照。 == 応用 == シュレーダーの方程式は、''h''(''x'') によって生成される系(軌道)がより簡単に見えるような新たな座標系を見つけるために、離散力学系の解析において用いられる。より具体的に、離散単位時間幅が {{math|''x'' → ''h''(''x'')}} に達するような系は、上述のシュレーダーの方程式の解によって再構成される滑らかな軌道(あるいは[[フロー (数学)|フロー]])、すなわち[[位相共役性|共役方程式]]を持つ。 すなわち、 {{math| ''h''(''x'') {{=}} ''Ψ''<sup>−1</sup>(''s'' ''Ψ''(''x'')) ≡ ''h''<sub>1</sub>(''x'')}} である。 一般に、シュレーダーの方程式のすべての函数的反復(正規反復{{仮リンク|一径数群|label=群|en|one-parameter group}})は、次の軌道で与えられる。 :<math>h_t(x) = \Psi^{-1} ( s^t \, \Psi (x)),</math> ここで {{mvar|t}} は実であるが必ずしも正あるいは整数である必要は無い(すなわち、全[[位相群|連続群]]である)。{{math|''h''<sub>''n''</sub>(''x'')}} の集合、すなわち {{math|''h''(''x'')}} のすべての正の整数回の反復([[半群]])は、{{math|''h''(''x'')}} のスプリンター (splinter) あるいはピカール列と呼ばれる。 しかし、{{math|''h''(''x'')}} のすべての反復(分数回、無限小あるいは負)は、シュレーダーの方程式を解くために決定された座標変換 {{math|''Ψ''(''x'')}} を通じて、同様に特定される。すなわち、初期の離散漸化式 {{math|''x'' → ''h''(''x'')}} の光学的な連続補間が構成される<ref name="tlc">{{cite journal |last=Curtright |first=T.L. |authorlink=:en:Thomas Curtright|author2=Zachos, C.K. |authorlink2=:en:Cosmas Zachos | year=2009|title=Evolution Profiles and Functional Equations |journal=Journal of Physics A |volume=42|issue=48 |pages=485208|doi=10.1088/1751-8113/42/48/485208|arxiv = 0909.2424 |bibcode = 2009JPhA...42V5208C }}</ref>。実際、それは全軌道である。 例えば、[[函数的平方根]]は {{math|''h''<sub>½</sub>(''x'') {{=}} ''Ψ''<sup>−1</sup> (''s''<sup>½</sup> ''Ψ''(''x''))}} であるため、{{math|''h''<sub>½</sub>(''h''<sub>½</sub>(''x'') ) {{=}} ''h'' (''x'')}} もまた成立する。 [[Image:Phase-space Orbit of-Logistic map.jpg|right|thumb|300px|<span style="color:red"> ''s''=4 のカオス的ロジスティック写像 {{math|''h''(''x'')}}</span> の相空間軌道のはじめの五つの半周期を、シュレーダーの方程式によって光学的に補間したもの。<span style="color:green">{{math|''h''<sub>''t''</sub>}} に対する速度 {{math|''v''{{=}}d''h''<sub>''t''</sub>/d''t''}}</span> がプロットされている。全時間をかけてすべての {{mvar|x}} を通る軌道においてカオス性は明らかである。]] 例えば<ref>Curtright, T.L. [http://www.physics.miami.edu/~curtright/Schroeder.html Evolution surfaces and Schröder functional methods.]</ref>、カオス的であるような[[ロジスティック写像]]の特別な場合 {{math|''h''(''x'') {{=}} 4''x''(1 − ''x'')}} は、シュレーダーの原著論文<ref name="schr" />においてすでに算出されていた(例えば p. 306 を参照): :<math>\Psi(x)=\arcsin^2(\sqrt{x}),\,s=4.</math> したがって <math>h_t(x)=\sin^2(2^t\arcsin(\sqrt{x})).</math> 実際この解は、シュレーダーの方程式によって影響される連続的な反復の一般的な特徴である、スイッチバック・ポテンシャル {{math|''V''(''x'') ∝ ''x''(''x''−1) (''nπ''+arcsin √''x'')<sup>2</sup>}} の列によって記述される運動として観測される<ref>{{cite journal |last=Curtright|first=T.L. |authorlink=:en:Thomas Curtright|author2=Zachos, C.K. | year=2010|title=Chaotic Maps, Hamiltonian Flows, and Holographic Methods |journal=Journal of Physics A |volume=43|issue=44 |pages=445101|doi=10.1088/1751-8113/43/44/445101|arxiv = 1002.0104 |bibcode = 2010JPhA...43R5101C }}</ref>。 カオス的でない場合、{{math|''h''(''x'') {{=}} 2''x''(1−''x'')}} によって :<math>\Psi(x)=-\frac12\ln(1-2x),</math> したがって <math>h_t(x)=-\frac12\left((1-2x)^{2^t}-1\right)</math> であることもまた示されていた。 同様に、{{仮リンク|ベバートン=ホルトモデル|en|Beverton–Holt model}} {{math|''h''(''x''){{=}}''x''/(2−''x'')}} に対し、{{math|''Ψ''(''x'') {{=}} ''x''/(1−''x'')}} であり、したがって :<math>h_t(x)= \Psi^{-1} (2^{-t} \, \Psi (x))= \frac{x}{2^t + x(1-2^t)} ~.</math> であることがすでに知られている<ref>Skellam, J.G. (1951). “Random dispersal in theoretical populations”, ''Biometrika'' '''38''' 196−218, eqns (41,42)</ref>。 {{see also|有理差分方程式}} == 参考文献 == <references /> {{DEFAULTSORT:しゆれえたあのほうていしき}} [[Category:関数方程式]] [[Category:数理物理学]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:人名を冠した数式]]
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