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'''シルトプロット'''(Schild plot、'''シルド'''プロット)は、線型回帰('''シルト回帰''')を用いて[[アンタゴニスト]]の[[薬理学]]的[[効力]](p''A<sub>2</sub>''値)を決定するためのグラフを用いた方法である<ref>{{cite journal|author=R. R. Neubig, M. Spedding, T. Kenakin, A. Christopoulos|title= International Union of Pharmacology Committee on Receptor Nomenclature and Drug Classification. XXXVIII. Update on terms and symbols in quantitative pharmacology|journal=Pharmacol. Rev.|year=2003|volume= 55|issue=4|pages=597-606|pmid=14657418|doi=10.1124/pr.55.4.4 }}</ref>。名称は{{仮リンク|ハインツ・オットー・シルト|de|Heinz Otto Schild}}に因む。シルトプロットはアンタゴニストのモル濃度の対数(log [''Antagonist''])とアンタゴニストの阻害作用(log (r-1) で表わされる)との間の線型関係を描写する。 <math>\operatorname{p}A_2 = -\log\,[Antagonist] + \log\,(r - 1)</math> シルトプロットの回帰線は特に重要であり、傾きは拮抗作用の性質に関する情報を与える。回帰線の横軸切片はアンタゴニストの効力(p''A<sub>2</sub>''値)に対応する。 ==方法== シルトプロットを描き、p''A<sub>2</sub>''値を計算するためには、薬理学的試験系(例えば[[培養細胞]]や組織)あるいは[[実験動物]]に様々な濃度のアンタゴニストを投与する。次に次第に濃度が増加する[[アゴニスト]]を添加あるいは投与し、最大活性の半分が観察されるアゴニストの濃度(EC<sub>50</sub>)を決定する。この値はアンタゴニストの濃度に依存し、アンタゴニストの濃度が上昇するにつれて増大する。アンタゴニスト存在下でのEC<sub>50</sub>とアンタゴニスト非存在下でのEC<sub>50</sub>の比は濃度比r(用量比DRとも)と呼ばれる。 <math>r = \frac {EC_{50} (+ Antagonist)} {EC_{50} (- Antagonist)}</math> 異なる濃度のアンタゴニストについて決定された濃度比 ''r''をlog (''r''-1) へと対数変換し、アンタゴニストのモル濃度の対数に対してプロットする。横軸切片はアンタゴニストのp''A<sub>2</sub>''値に対応し、傾きはアンタゴニストの阻害機構に関する情報を与える。 また、EC<sub>50</sub>以外の値(例えばEC<sub>75</sub>やEC<sub>25</sub>)を基にしたシルトプロットも理論的に可能である。 <div style="margin: 0; margin-right:10px; border: 2px solid #dfdfdf; background-color:#F8F8FF; align:right; padding: 0.3em 1em 0.7em 1em;"> [[ファイル:Agonist Antagonist.png|left]] <small>'''シルトプロットを用いたp''A<sub>2</sub>''値の決定''': アンタゴニスト濃度が上昇すると用量反応曲線は右側にシフトし、アゴニストのp''EC''<sub>50</sub>値は減少する。この右シフトから、濃度比''r''が計算される。この値をlog (''r''-1) に変換しアンタゴンストのモル濃度の対数に対してプロットし、p''A<sub>2</sub>''値を決定する。</small> {{clear|left}} </div> ==解釈== p''A<sub>2</sub>''値の決定以外にもシルトプロットからは拮抗作用の定性的な特徴に関する情報が得られる。回帰関数の線型性や回帰線の傾きが1であることは、競合的拮抗作用が存在することのよい判断材料である。これらの条件下では、p''A<sub>2</sub>''値はアンタゴニストの[[解離定数|親和性定数]] p''K''<sub>B</sub>に一致する。 ===線型性からのずれ=== 回帰線が非線型的挙動を示す場合、その他全ての条件(特にアンタゴニストによって引き起こされるアゴニストの用量反応曲線の平衡右側シフト)が満たされるとしても、もはや純粋な競合的拮抗作用が存在するということはできない。2つ以上の線型部分が存在する場合は、受容体にアゴニストとアンタゴニストが競合する2つ以上の結合部位が存在すること示す。 ===傾き=== 回帰線が線型に近いとしても、回帰関数の傾きが1よりも大きい時は、アンタゴニストの作用が不均衡に減少していることを意味し、実験条件下でアンタゴニストの不活性化あるいは取り込みが起こっていることが示唆される。この現象はアンタゴニストのインキュベーション時間が不十分な場合にも起こる。 シルトプロットの傾きが1よりも小さくなる場合は頻繁に見られるが、これはアゴニストの不活性化あるいは取り込みに起因する。アンタゴニストとアゴニストに対する親和性が異なる複数の結合部位でのこれらのリガンドの競合によって傾きが1より小さくなる。 == 代替方法 == 代替となる方法には、{{仮リンク|ジョン・ガッダム|en|John Gaddum}}によるGaddum式や、[[IC50|Cheng-Prusoff式]]がある<ref>{{cite journal|author=S. Lazareno, N. J. Birdsall|title=Estimation of competitive antagonist affinity from functional inhibition curves using the Gaddum, Schild and Cheng-Prusoff equations|journal=Br. J. Pharmacol.|year=1993|volume= 109|issue= 4|pages= 1110-1119|pmid= 8401922|pmc=2175764}}</ref><ref>{{cite journal|author=T. F. Webster|title=Mixtures of endocrine disruptors: How similar must mechanisms be for concentration addition to apply?|journal=Toxicology|year=2013|volume=313 |issue=2-3|pages= 129-133| doi=10.1016/j.tox.2013.01.009 |pmid= 23357612}}</ref><ref>{{cite journal|author=T. L. Williams, D. A. Smith, N. R. Burton, T. W. Stone|title=Amino acid pharmacology in neocortical slices: evidence for bimolecular actions from an extension of the Hill and Gaddum-Schild equations|journal=Br. J. Pharmacol.|year=1988|volume=95|issue= 3|pages= 805-810|pmid= 2905185|pmc=1854217}}</ref>。 == 脚注 == <references /> ==参考文献== *Arunlakshana O. & Schild H.O. (1959). Some quantitative uses of drug antagonism. ''Br. J. Pharmacol.'' '''14''':48-58. *Kenakin T. (1993). Pharmacological analysis of drug-receptor interaction. 2. Aufl., Raven Press, New York. {{DEFAULTSORT:しるとふろつと}} [[Category:薬理学]] [[Category:生化学]] [[Category:グラフ]]
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