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{{出典の明記|date=2023年1月3日 (火) 08:56 (UTC)}} [[画像:Disulfide general structure.png|thumb|right|有機ジスルフィドの一般式]] '''ジスルフィド''' (disulfide, disulphide) とは、2個の[[硫黄]]原子が繋がった[[ジスルフィド結合|ジスルフィド基]] (-S-S-) を官能基として有する[[有機硫黄化合物]]の総称。一般式は R-S-S-R' と表される。 ジスルフィドの英語表記はdisulfideで、この用語は二硫化物イオン (S<sub>2</sub><sup>2−</sup>) を構造に含む塩や錯体の総称でもある。日本語ではその総称をもっぱら [[二硫化物]] と呼ぶ。ジスルフィドイオンは二硫化物イオンの別称。錯体の命名法では二硫化物イオンの配位子名は「ジスルフィド」(disulfido) である。二硫化物塩や錯体の詳細は記事: [[二硫化物]] を参照。 [[無機化合物]]においては陽性成分1モルに対して2モルの硫黄原子を陰性成分として持つ化合物が二硫化物 (disulfide) として命名される。このような無機化合物には有機ジスルフィドと同様にS-S結合を持つ二硫化物イオン S<sub>2</sub><sup>2−</sup>を含むものと、硫黄原子間に直接結合をもたない化合物が含まれる。 == 有機ジスルフィド == {{see also|ジスルフィド結合}} === 性質 === ジスルフィドの硫黄の[[酸化数]]は -I で電子配置は塩素分子の状況に似ており、もう1個の S(-I) と共有結合することによって2価のジスルフィド基を形成している。このことは[[酸素]]も同様で、[[過酸化水素]]や、それを親化合物とする[[ペルオキシド]]([[過酸化物]])が存在する。 有機ジスルフィドの親化合物である[[二硫化水素|二硫化二水素]](ジスルファン)H<sub>2</sub>S<sub>2</sub>やそのモノアルキル化体(RSSH) は熱的に不安定で容易に分解する。一方、ジアルキルジスルフィドは比較的安定であり、容易にO-O結合が熱分解するジアルキルペルオキシドとはかなり性質が異なる。また、硫黄同士の結合がさらに進んだ[[トリスルフィド]]、[[多硫化物]](ポリスルフィド)を作れることも酸素の場合とは異なる。 低分子量のジアルキルジスルフィドは[[キャベツ]]や[[ネギ属]]の香気成分として知られており、強いにおいを持っている。 ジスルフィド結合は強く、典型的な[[結合解離エネルギー]]は60 kcal/mol (251 kJ mol<sup>−1</sup>) である。しかしながら、[[炭素-炭素結合|C–C結合]]や[[炭素-水素結合|C-H結合]]よりもおよそ40%弱いため、ジスルフィド結合は多くの分子中で「弱いつながり」として機能することが多い、そのうえ、二価硫黄の[[分極率]]を反映して、{{chem2|S\sS}}結合は極性試薬([[求電子剤]]と特に[[求核剤]]〔Nu〕)による切断を受け易い<ref>{{cite book|first=R. J.|last=Cremlyn|title=An Introduction to Organosulfur Chemistry|publisher=John Wiley and Sons|location=Chichester|date=1996|isbn=0-471-95512-4}}</ref>。 :<chem>RS-SR + Nu- -> RS-Nu + RS-</chem> ジスルフィド結合の長さはおよそ2.05 [[オングストローム|Å]]で、{{chem2|C\sC}}結合よりもおよそ0.5 Å長い。{{chem2|S\sS}}を中心とした回転障壁は低い。ジスルフィド結合の[[二面角]]は90°に近い特徴的な選好性を示す。角度が0°または180°に近づくと、ジスルフィドは著しく優れた酸化剤となる。ジスルフィド結合が一見不安定そうな90°の二面角を示す理由は以下のように説明される<ref>{{cite journal|和書|journal=有機合成化学協会誌|volume=35|year=1977|issue= 5 |title=SHとSSの生化学|author=高木 俊夫|pages=332-342|doi=10.5059/yukigoseikyokaishi.35.332}}</ref>。ジスルフィド結合の配座がアンチ(180°)の場合、それぞれの硫黄原子上にある2つの3p軌道(孤立電子対)が隣りの硫黄原子上の3p軌道と相互作用するとπ([[結合性軌道|結合性]])とπ*([[反結合性軌道|反結合性]])の2つの[[分子軌道]]が形成されるが、両方とも2つの電子によって占有されるため、π軌道形成による安定化はπ*軌道形成による不安定化を相殺できない。そのため、孤立電子対同士の重なり合いが小さい90°に近い二面角が安定となる。 === 合成と反応 === 対称な有機ジスルフィドは通常、対応する[[チオール]]2分子を酸化的に結合させて得る。[[酸化剤]]としては[[過酸化水素]]水や[[ヨウ素]]が利用される。過酸化水素を酸化剤にした場合、ジスルフィドから過剰な酸化が起こりうるので反応条件の設定は重要である。 :<chem>{2R-SH} + \mathrm{oxidant} -> R-S-S-R</chem> また二硫化ナトリウムと2当量のアルキル化剤を反応させても、対称ジスルフィドを調製することができる。二硫化物イオンは硫化ナトリウムの水溶液に硫黄を1当量加えて加熱することでも生成できる。 :<chem>{Na2S} + S -> Na2S2</chem> :<chem>{2R-X} + Na2S2 -> {R-S-S-R} + 2NaX</chem> 非対称ジスルフィドは硫黄上に脱離基を持つR-S-Xの化合物とチオールの塩を低温で反応させることによって得られる。XとしてはハロゲンやSO<sub>3</sub>Na(Bunteの塩)、CNなどが利用される。非対称ジスルフィドは過剰のチオール塩の存在下で[[不均化]]しやすいので反応条件は重要である。 :<chem>{R-S-X} + R'-S^- -> {R-S-S-R'} + X^-</chem> ジスルフィドは還元するとチオールに戻る。[[水素化ホウ素ナトリウム]]などが[[還元剤]]として使用される。 [[求核剤]]の攻撃で S-S 結合が切断される。求核剤としてチオールの塩を使用するとこれはジスルフィド交換反応になる。 :<chem>{R-S-S-R} + Nu^- -> {R-S^-} + Nu-S-R</chem> == 例 == === 有機ジスルフィド === *[[アミノ酸]]の[[シスチン]] *[[α-リポ酸]] *[[ジメチルジスルフィド]] (<chem>CH3S-SCH3</chem>) *[[二硫化アリル]] (<chem>H2C=CH-CH2S-SCH2-CH=CH2</chem>) *[[ジフェニルジスルフィド]] (<chem>Ph2S2</chem>) === 無機ジスルフィド === ==== 二硫化物イオンを含む化合物 ==== *二硫化鉄 (FeS<sub>2</sub>):[[黄鉄鉱]]、[[白鉄鉱]]として知られる。黄鉄鉱はFeとS<sub>2</sub>が[[塩化ナトリウム型構造]]をとっている。 *[[二塩化二硫黄]] (S<sub>2</sub>Cl<sub>2</sub>) <center> {|align="center" class="wikitable" ! colspan="3" |有機ジスルフィド |- |<center>[[Image:Cystine-3D-balls.png|100px]]</center> |<center>[[Image:Lipoic-acid-3D-balls.png|150px]]</center> |<center>[[Image:Diphenyl-disulfide-3D-balls.png|150px]]</center> |- |<center>シスチン</center> |<center>α-リポ酸</center> |<center>Ph<sub>2</sub>S<sub>2</sub></center> |} </center> == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} == 関連項目 == {{Commonscat|Organic disulfides}} * [[ジスルフィド結合]] * [[二硫化物]] * [[ブンテ塩]] {{Chem-stub}} {{DEFAULTSORT:しするふいと}} [[Category:ジスルフィド|*]] [[Category:硫黄の化合物]] [[Category:有機硫黄化合物]] [[Category:官能基]]
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