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[[ファイル:HahnEcho GWM.gif|thumb|400px|スピンエコーのアニメーション。青で示されている[[ブロッホ球]]中の[[スピン角運動量|スピン]](赤矢印)の緑で示されているパルスシークエンスに対する応答を示している。]] 磁気共鳴における'''スピンエコー法'''(スピンエコーほう、{{lang-en-short|spin echo、SE}})は、[[歳差]][[スピン角運動量|スピン]]磁化の共鳴[[電磁波|放射]]パルスによるリフォーカスである。現代の[[核磁気共鳴]] (NMR) ならびに[[核磁気共鳴画像法]] (MRI) は、この効果に依存するところが大きい。 励起パルスの後に観測される[[自由誘導減衰|NMRシグナル]]は、[[スピン-スピン緩和]]ならびに異なるスピンが異なる速度で歳差運動する原因となる全ての「不均一」効果(例えば[[化学シフト]]の分布あるいは磁場勾配)によって時間とともに減衰する。緩和の結果として不可逆的な磁化の損失([[量子デコヒーレンス|デコヒーレンス]])が起こるが、不均一な離調は磁化ベクトルを反転させる180°パルスあるいは「反転」パルスを適用することにより逆転させることができる。 現在最も一般的に用いられる[[パルス系列]]であり、[[90度パルス|90°パルス]]-[[180度パルス|180°パルス]]の組み合わせを一定間隔 (1TE) で連続的に印加する。均一静磁場中の核スピンに対して、まず90°パルスを印加し、巨視的磁化ベクトルをx-y平面上に倒す。90°パルス印加直後から、核スピンが定常状態に戻る緩和の過程で、巨視的磁化ベクトルはT2*の時定数で消失する[[自由誘導減衰]] (FID) 信号を放出するが、この途中で、90°パルス印加からτ(TE/2)時間後に180°パルスを印加すると、各核スピンの角速度がキャンセルされ、τ時間後に、T2の時定数で求められる信号強度に該当するエコー信号が観測される。これがスピンエコーである。Short-TR&TEで[[T1強調画像]]を、Long-TR&TEで[[T2強調画像]]を得ることができる。スピン-格子緩和(spin-lattice relaxation)ともいう。 エコー現象は、[[分光法|レーザー分光法]]<ref name=PhotonEcho> {{cite journal |author = Kurnit, N. A.; Abella, I. D.; Hartmann, S. R. |title = Observation of a photon echo |journal = Physical Review Letters |year = 1964 |volume = 13 |pages = 567–568 |doi = 10.1103/PhysRevLett.13.567 |bibcode=1964PhRvL..13..567K}} </ref>や{{仮リンク|中性子スピンエコー|en|Neutron spin echo|label=中性子散乱}}などの磁気共鳴以外の分野での使用されるコヒーレント分光法の重要な要素である。エコーは最初1950年に[[アーウィン・ハーン]]によって核磁気共鳴において検出され<ref name=hahn> {{cite journal |author = Hahn, E.L. |title = Spin echoes |journal = Physical Review |year = 1950 |volume = 80 |pages = 580–594 |doi = 10.1103/PhysRev.80.580|bibcode = 1950PhRv...80..580H }} </ref>、スピンエコーは「ハーンエコー」と呼ばれることがある。核磁気共鳴や核磁気共鳴画像法の分野では、高周波照射が最も一般的に使用される。 ==原理== アーウィン・ハーンのスピンエコーのコンセプトは1950年の彼の論文で解説されており<ref name=hahn/>、180°リフォーカシングパルスの利点を指摘したカー (Carr) と[[エドワード・ミルズ・パーセル|パーセル]]によって更に発展した<ref> {{cite journal |author = Carr, H. Y.; Purcell, E. M. |title = Effects of Diffusion on Free Precession in Nuclear Magnetic Resonance Experiments |journal = Physical Review |year = 1954 |volume = 94 |pages = 630–638 |doi = 10.1103/PhysRev.94.630|bibcode = 1954PhRv...94..630C }} </ref>。 パルスシークエンスは以下の段階に分解することでより理解することができる。 [[ファイル:SpinEcho GWM stills.jpg|800px]] スピンエコーシークエンス '''A''') - 垂直の赤矢印はプロトンといったスピンの一つの集団の平均磁気モーメントである。全ては垂直磁場中で垂直に位置し、長軸に沿ってスピンしている。しかしこのイラストは、スピンが平均すると静止している[[回転座標系]]である。'''B''') 90°パルスを印加し、巨視的磁化ベクトルをx-y平面上に倒す。'''C''') 局所的な磁場の不均一性(時間に対して不変なサンプルの異なる部分での磁場のばらつき)のため、減速するスピンと逆に加速し前方に出るスピンが生じる。これによってシグナルの減衰が起こる。'''D''') 遅いスピンが主モーメントよりも前方に出て、速いスピンが逆に後方になるように180°パルスを印加する。'''E''') 次第に速いモーメントは主モーメントに追い付き、遅いモーメントは主モーメントに戻っていく。'''F''') 完全なリフォーカスが起こり、この時全ての<math>T_2*</math>効果が除去された正確な<math>T_2</math>エコーを計測することができる。図では示されていないが、全く独立した赤矢印の垂直方向への回復は<math>T_1</math>緩和を反映している。 このアニメーションではいくつかの単純化が行われている(デコヒーレンスが含まれていない)。 180度は<math>\pi</math>[[ラジアン]]であるため、180° パルスはしばしば<math>\pi</math>と呼ばれる。 ==ハーンエコー減衰== ハーンエコー減衰実験は、下のアニメーションに見るような位相散逸時間を測定するために用いることができる。2つのパルスの幅を変化させ、エコーの大きさを記録することによって、<math>\pi</math>パルスによってリフォーカスされないデコヒーレンスを明らかにすることができる。ある場合は、<math>T_2</math>時間で表される[[指数関数的減衰]]が測定される。 [[ファイル:GWM_HahnEchoDecay.gif]] ==刺激エコー== ハーンの1950年の論文<ref name=hahn/>では、スピンエコーを精製するため、三連続90°パルスを印加するもう一つの手法が示されている。初めの90°パルスの後、磁化ベクトルは上の図に示しているように拡散し、x-y平面にパンケーキのような広がりを形成する。この拡散は<math>a</math>時間続き、次に「パンケーキ」がx-z平面に移動するように二番目の90°パルスが印加される。さらに<math>b</math>時間後、三番目のパルスが印加され、最後のパルスの<math>a</math>時間後に刺激エコー (stimulated echo) が観測される。 ==光子エコー== ハーンエコーは、光周波数においても観測される<ref name=PhotonEcho/>。この場合、共鳴光は[[スペクトル線|不均一に拡がった]]吸収共鳴を持つ物体に対して照射される。磁場中の2つのスピン状態を用いる代わりに、光子エコー (photon echo) はゼロ磁場においても物質中に存在する2つのエネルギーレベルを使用する<ref>{{cite web|url=http://www.physics.montana.edu/oct/web/basics_of_octs.htm|title=Basics of OCTs|author=The Babbitt Rf Photonics Group|accessdate=2011-11-11}}</ref>。 == 脚注 == {{reflist}} == 教科書 == *{{cite book |author = Ray Freeman |title = Spin Choreography: Basic Steps in High Resolution NMR |publisher = Oxford University Press |year = 1999 |isbn = 978-0-19-850481-8 }} *{{cite book |author = Malcolm H. Levitt |title = Spin Dynamics: Basics of Nuclear Magnetic Resonance |publisher = Wiley |year = 2001 |isbn = 978-0471489221 }} *{{cite book |author = Arthur Schweiger, Gunnar Jeschke |title = Principles of Pulse Electron Paramagnetic Resonance |publisher = Oxford University Press |year = 2001 |isbn = 978-0198506348 }} ==関連項目== *[[核磁気共鳴画像法]] == 外部リンク == *[http://scratch.mit.edu/projects/nevit/872879 Spin Echo Simulation] *[http://www.bigs.de/BLH/en/index.php?option=com_content&view=category&layout=blog&id=103&Itemid=271 The animation show pulse sequences like spin echo sequence] {{medical-stub}} {{デフォルトソート:すひんえこおほう}} [[Category:画像診断]] [[Category:核磁気共鳴]]
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