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スピン密度波
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{{Wikify|date=2023-03}} '''スピン密度波'''(-みつどは、{{lang-en|spin density wave}}、SDW)とは、基本的には一つの[[方向]]にだけ[[金属]]の性質を持つ「[[1次元性導体]]」の[[電流]]を運ぶ[[電子]]が作るスピン密度の波である。原理的には[[電荷密度波]](CDW)と同様に理解できるが、CDWは電子間の[[クーロンの法則]]を無視できる場合のものであるのに対し、SDWは[[クーロン力|クーロン]][[斥力]]が大事になるときに生じる。[[電子]]の「[[スピン角運動量|スピン]]」という[[量子力学]]特有の性質が主役である。SDW(とCDW)は、ある特徴的な[[波長]]を持つ波であり、SDWでは電子のスピンの[[密度]]に[[縦波と横波|粗密波]]が生じる<ref>{{Cite book|和書 |title=局在・量子ホール効果・密度波 |year=1993 |publisher=岩波書店 |page=159 |author=長岡洋介、安藤恒也、高山一 |isbn=4-00-010448-9 |chapter=Ⅲ電荷密度波・スピン密度波}}</ref><ref>{{Cite book|洋書 |title=Density Waves in Solid |year=1994 |publisher=Addison-Wesley Publishing Co. |author=G. Gruner. |isbn=0-201-62654-3}}</ref>。 == 原理 == SDWの起因と性質を理解するには、[[量子力学]]の世界で考察する必要がある。しかし、その結論は次のようにイメージできる。まず、CDWでは、電子系との[[相互作用]]の結果、物質を構成する[[原子]]・[[分子]]の[[配列周期]]に新たな[[周期]]歪の波が生じて、電子系には同じ[[波長]]の[[密度]]の波が生じ、[[ポラリトン|混成波]]としてCDWが生じる。その波長の大きさは、ちょうど1波長の中に2個の電子が割り当てられるようなものである。SDWでは、上向きスピンと下向きスピンそれぞれの電子が密度波を作り、その密度波の波長は、CDWと同じく、ちょうど1波長の中に2電子が割り当てられる大きさである。上向きスピン、下向きスピンそれぞれの電子の波は、電子間クーロン斥力を最小にするように互いに避け合う。つまり、上向きスピンの粗密波の密度最大の位置には、下向きスピンの密度最小の位置がくる。その結果、1次元方向に上向きスピンの波の密度のピークと、下向きスピンのそれとが交互に位置することになる。スピンは[[磁性]]の担い手であり、これは[[反強磁性]]の状態である。 == 相転移 == SDWが生じると[[金属]]状態から[[絶縁体]]状態への[[相転移]]が生じる。その理由は、例えば一つの向きのスピンの電子に対して、逆向きのスピンの電子はCDWのときの[[格子歪]]の波に相当する作用を及ぼすので、量子力学の[[バンド理論]]でいう「[[フェルミエネルギー]]」に[[バンドギャップ]]が開くからである。また、SDWは物質中に[[不純物]](特に[[磁性不純物]])がなければ、物質中を任意の速さで滑って電流を運ぶことができる。また[[クロム]]のように1次元性導体でなくても、その電子系に[[1次元|1次元]]とみなせる方向があれば、その方向に沿ってSDWが生じることができる。このような性質はCDWと基本的に共通である。 '''SDW'''と'''CDW'''は、固体における[[エネルギー]]の低い2つの似通った[[社会秩序|秩序]]状態を指す。2つの状態とも、異方的な低次元物質もしくは[[フェルミエネルギー]]<math>N(E_F)</math>に高い[[状態密度]]を持つ金属において低温でおきる。このような物質でおきる他の低温での[[基底状態]]は、[[超伝導]]、[[強磁性]]、[[反強磁性]]である。秩序状態への転移は、[[凝縮エネルギー]]によって引き起こされ、その大きさはおよそ<math>N(E_F)\Delta</math>である。<math>\Delta</math>は転移によって開く[[エネルギーギャップ]]の大きさである。SDWは[[スピン波]]とは異なることに注意しなければならない。スピン波は[[強磁性]]、[[反強磁性]]の[[励起状態]]である。 == 周期性 == 基本的にSDWとCDWは、周期的な[[変調方式|変調]]をそれぞれ電子の[[スピン角運動量|スピン]]密度と[[電荷密度]]に生じ、それらは特徴的な[[空間周波数]]<math>q</math>を持ち、<math>q</math>は[[イオン (化学)|イオン]]の位置を表す[[対称群]]においては変化しない。CDWによる新たな周期性は、[[走査型トンネル顕微鏡]]や[[電子回折]]によって簡単に見ることが出来る。これに比べSDWは見にくく、一般的に[[中性子回折法]]や[[磁化率]]測定によって見ることができる。もし新たな周期性が[[格子定数]]の整数分の1か整数倍の時は、波は[[コメンシュレート]]であると言い、そうでない時は、[[インコメンシュレート]]であると言う。 == ネスティングベクトル == [[画像:Crnest.png|thumb|k空間における[[クロム|Cr]]のフェルミ面の(001)断面。[[クロム|Cr]]のバンド構造によって、<math>\Gamma</math>点を中心とした電子ポケット(緑)とH点を中心としたホールポケット(青)が生じている。囲んでいる黒い四角は第一[[ブリュアンゾーン]]を示す。]] なぜ、高い<math>N(E_F)</math>を持つ固体は低温で密度波を形成し、他の物質は[[超伝導]]や[[磁気|磁気的]]な[[基底状態]]をとるのか。その答えは物質の[[フェルミ面]]に存在する[[ネスティングベクトル]]と関係している。ネスティングベクトルの概念を図に示す。これはよく知られた[[クロム|Cr]]の場合である。[[クロム|Cr]]は[[ルイ・ネール|ネール]]温度311Kで[[常磁性]]からSDW状態に転移する。[[クロム|Cr]]は[[体心立方格子構造|体心立方格子]]であり、[[フェルミ面]]の特徴として、<math>\Gamma</math>点とH点を中心とする電子ポケットの間に、[[フェルミ面]]が多くの平行な境界を持っている。これらの大きい平行な領域は、図の赤で示された[[ネスティングベクトル]]<math>q</math>によって結ばれている。スピン密度波によって出来た実空間での周期は<math>2\pi/q</math>で与えられる。この[[空間周波数]]のSDWができることによって、[[エネルギーギャップ]]が開き、系のエネルギーが下がる。[[クロム|Cr]]におけるSDWの存在を始めて仮定したのは[[パデュー大学]]の[[Albert Overhauser]]である。[[マサチューセッツ工科大学|MIT]]の[[クリフォード・シャル]]は、[[クロム|Cr]]におけるSDWを実験で観測したことで、1994年に[[ノーベル物理学賞]]を受賞した。CDWの理論を初めて提案したのは、[[超伝導]]を説明しようとしていた[[オックスフォード大学]]の[[ルドルフ・パイエルス]]である。 低次元の固体の多くは[[フェルミ面]]が異方的であり、顕著なネスティングベクトルを持っている。有名なものに、層状物質の[[三セレン化ニオブ|NbSe<sub>3</sub>]]、TaSe<sub>3</sub>、K<sub>0.03</sub>MoO<sub>3</sub>(Chevrel相)や[[擬一次元有機導体]]のTMTSFやTTF-TCNQがある。CDWは固体表面でも良く見られ、[[表面再構成]]や[[二量体]]などと呼ばれる。表面は二次元[[フェルミ面]]で描かれ、層状物質のようになっているので、CDWにとってしばしば都合が良い。 密度波の最も魅力的な性質は、その[[動力学|ダイナミクス]]である。適切な[[電場]]や[[磁場]]のもとでは、場の向いている方向に密度波が"スライド"する。電場や磁場の力によるものである。大抵は密度波のスライディングは直ちに起こらず、しきい電場を越えるまでは"[[ピン止め効果|ピン止め]]"されている。しきい値電場で、欠陥が作るポテンシャルから抜け出すことが出来る。したがって、密度波の[[ヒステリシス]]のある動きは[[転位]]や[[磁区]]のものとは異なる。電荷密度波固体の[[電流電圧特性]]は、ピン止め電圧までは非常に高い[[抵抗値|抵抗]]を示し、それより上では[[オームの法則]]的な振る舞いを示す。ピン止め電圧は物質の[[純度]]に依存するが、この電圧以下では結晶は[[絶縁体]]である。 ==参考文献== #A pedagogical article about the topic: [http://www.sciamdigital.com/browse.cfm?sequencenameCHAR=item2&methodnameCHAR=resource_getitembrowse&interfacenameCHAR=browse.cfm&ISSUEID_CHAR=A9362308-C3A8-4DC4-AC9C-8DE25B1A481&ARTICLEID_CHAR=181A387B-4ECD-4443-8927-9A3926F28B2&sc=I100322 "Charge and Spin Density Waves,"] Stuart Brown and George Gruner, ''Scientific American'' 270, 50 (1994). #Authoritative work on Cr: [https://doi.org/10.1103/RevModPhys.60.209 "Spin-density-wave antiferromagnetism in chromium,"] E. Fawcett, ''Rev. Mod. Phys.'' 60, 209 (1988). #About Fermi surfaces and nesting: ''Electronic Structure and the Properties of Solids,'' Walter A. Harrison, ISBN 0-486-66021-4. #[http://www.techfak.uni-kiel.de/matwis/amat/semi_en/kap_a/advanced/ta_4_1.html Peierls instability.] <references /> ==関連項目== * [[パイエルス転移]] * [[電荷密度波]] {{DEFAULTSORT:すひんみつとは}} [[Category:物性物理学]]
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