スミスチャートのソースを表示

[[ファイル:Smith chart.svg|フレーム|スミスチャート（データは未記入） 実用チャートでは外囲に波数比の目盛りがつく]]
'''スミスチャート'''（Smith chart）とは、[[電子工学]]において[[伝送線路|伝送路]]の[[インピーダンス整合]]を設計する際に用いられる、[[複素数|複素]][[インピーダンス]]を示す円形の図表である。[[1939年]]に[[ベル研究所]]のエンジニアでアマチュア無線家（コールサイン 1ANB）でもある[[フィリップ・スミス]]により発明されたとされる。発明の理由をスミス氏は「[[計算尺]]が使えるようになった頃から、数学的な関係を図で表現することに興味を持っていた」と説明した。スミスの提案の2年前、[[日本無線電信|日本無線電信株式会社]]の水橋東作は[[1937年|1937年（昭和12年）]]に発表した論文中第１図で、「反射係数<math>\gamma</math>の<math>Z_{01}</math>（及<math>Z_{02}</math>）に対する円線図」という正規化インピーダンスに対するスミスチャートと等価の計算図表を提案し、この「便利な図」を用いてグラフィカルにインピーダンスの計算ができることを示した<ref>水橋東作, [http://www.linkclub.or.jp/~morikuni/mizuhashi-smithchart/Mizuhashi,J.IECEJ(1937).pdf "四端子回路のインピーダンス変成と整合回路の理論,"] [[電子情報通信学会|電気通信学会]]雑誌、第12号、pp.1053-1058 (1937).</ref>。このため日本国内では、スミスチャートは''水橋チャート''または''水橋-スミスチャート''と呼称するのが妥当であるとの意見が存在する<ref>岡村史良, [http://www.linkclub.or.jp/~morikuni/mizuhashi-smithchart/Okamura,J.IECEJ(1959).pdf "スミスチャートは日本人の独創ではないか,"] [[電子情報通信学会|電気通信学会]]雑誌、第８号、pp.768-769 (1959).</ref><ref>伊藤健一「インピーダンスのはなし」日刊工業新聞社 、p.26 (1999) ISBN 4-526-04463-6</ref>。


スミスチャートの基本は次の式で示される。
:<math>\Gamma = \frac{z_L - 1}{z_L + 1}</math>
<math>\Gamma</math>は複素反射係数（散乱係数''s''または<math>s_{11}</math>とも呼ばれる)、<math>z_L</math>は[[伝送線路|伝送路]]の[[負荷]]の正規化[[インピーダンス]]で、<math>Z_L/Z_0</math>に等しい。ここで、
:<math>Z_L</math>は負荷のインピーダンス
:<math>Z_0</math>は伝送路の特性インピーダンス 
である。

この図自体は[[複素平面]]であり、水平軸は複素反射係数の実数部、垂直軸は虚数部を表す。また、各円上はインピーダンスの[[実数]]（[[電気抵抗|抵抗]]）成分が一定、上下に曲がった曲線上（実は円弧）はインピーダンスの[[虚数]]（[[リアクタンス]]）成分が一定である。図の中心は負荷と伝送線路が整合された場合に対応する。図の周囲は100％の反射に対応し、周囲に書かれた角度は反射係数の[[位相]]を0から180度（半波長）で示す。

インピーダンスではなく[[アドミタンス]]を表すスミスチャートを'''アドミタンスチャート'''と言う。アドミタンスチャートはスミスチャートを180度回転して作成される。スミスチャートにアドミタンスチャートを重ね合わせたものを'''[[イミタンス]]チャート'''と言う。

コンピュータの時代になり、紙のスミスチャートが問題を解くために使われることは少なくなったが、高周波の複素インピーダンスを直感的にわかるかたちで示す方法として、非常に有用な方法である。また、[[電磁気学]]（特に[[電波工学]]）を学ぶ学生には、通常はこの図表を用いた演習問題が課されており、依然として重要な教育手段である。

また、[[ネットワーク・アナライザ (高周波回路)|ネットワークアナライザ]]と呼ばれる計測器では、測定結果をスミスチャートの形で表示する。ネットワークアナライザは、現代の[[高周波回路]]の設計に欠かせない計測器である。

== 参考文献 ==
{{reflist}}
# Field and Wave Electromagnetics, David K. Cheng, Addison Wesley, ISBN 0-201-52820-7

== 外部リンク ==
{{commons|Category:Smith charts}}
* {{Wayback|url=http://www16.ocn.ne.jp/~macoco/ham/chart/chart.html |title=スミスチャート |date=20071130042231}} - アンテナを製作する際のインピーダンスチャート、アドミタンスチャート、イミタンスチャートの使用例が書かれている。インピーダンスチャート、イミタンスチャートが入手可能。
* [http://wista.jp/SmithChart.htm The Art of Analog Circuits, Smith chart] - スミスチャートでの整合のとり方が書かれている。スミスチャート、イミタンスチャートが入手可能。
* [http://www.mwave-lab.jp/smith.htm スミスチャート] - インピーダンスチャートとアドミタンスチャートの使い方が書かれている。

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:すみすちやあと}}
[[Category:電磁気学]]
[[Category:電気回路]]
[[Category:電子工学]]
[[Category:無線工学]]
[[Category:グラフ]]