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{{出典の明記|date=2025-01}} [[File:Tschirnhaus.jpg|thumb|エーレンフリート・ヴァルター・フォン・チルンハウス]] '''チルンハウス変換'''(ちるんはうすへんかん、{{lang-en|Tschirnhaus transformation}})は、[[1683年]]に[[エーレンフリート・ヴァルター・フォン・チルンハウス]]によって発表された[[多項式]]の[[写像]]の一種である。'''チルンハウゼン変換'''とも呼ばれる。 チルンハウス変換は、{{math|''n'' ≧ 2}}次の[[多項式]]を、最高次の項および定数項を除き係数のいくつかまたは全てが0になるように変換する。このような変換は、高次の[[代数方程式]]の求解を目的とした簡略化に用いられる。 == 定義 == === 代入による定義 === {{math|''n''}}次の多項式<math>F(x)</math>が、<math>F(x)=g(x)/h(x)</math>で表すことができ、<math>F(x)=0</math>の根が<math>h(x)</math>の[[関数の零点|零点]]でないとき、1次以上{{math|''n'' - 1}}次以下の多項式<math>y = f(t)</math>を代入して、新たな多項式<math>F(y)</math>を得る変換をチルンハウス変換という。適切な<math>f(t)</math>を選ぶことで、最高次の項と定数項以外のいくつかまたは全ての係数を0にすることができる。 === 終結式による定義 === {{math|''n''}}次の多項式<math>F(x)</math>に対し、1次以上{{math|''n'' - 1}}次以下の多項式<math>f(x)</math>を用いて、[[終結式]]<math>G(x) = \mathrm{Res}(F(y), x - f(y))</math>を得る変換をチルンハウス変換という<ref name="私的数学塾">{{Cite web|和書|url=http://shochandas.xsrv.jp/polynomial/tschirnhaus.htm|title=チルンハウス変換|accessdate=2025-01-30}}</ref>。適切な<math>f(x)</math>を選ぶことで、最高次の項と定数項以外のいくつかまたは全ての係数を0にすることができる。 === 体論における定義 === {{節スタブ|date=2025-01}} == 例 == === 二次方程式の求解 === [[二次方程式]]<math>ax^2+bx+c=0 (a \neq 0)</math>について、<math>F(x)=ax^2+bx+c</math>とする。 代入<math>x = t - \frac{b}{2a}</math>を用いると、<math>F\left(t - \frac{b}{2a}\right) = 0</math>を解くことで、次のように解を求めることができる。 :<math>F\left(t - \frac{b}{2a}\right) = at^2 - \frac{b^2}{4a} + c = 0</math> :<math>\Leftrightarrow t = \pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math> :<math>\therefore x = t - \frac{b}{2a} = -\frac{b}{2a}\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math> 終結式を用いる場合も、<math>f(x)=x+\frac{b}{2a}</math>によって同様の多項式 :<math>G(x)=\mathrm{Res}(F(y),x-f(y))=ax^2-\frac{b^2}{4a}+c</math> が得られ、元の方程式<math>F(x)=0</math>の解{{math|''α''}}について、<math>f(\alpha)</math>は変換して得られた多項式についての方程式<math>G(x)=0</math>の解となる<ref name="私的数学塾"></ref>ため、 :<math>G(x)=0 \Leftrightarrow x=\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math> :<math>\therefore f(\alpha) =\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \Leftrightarrow \alpha=-\frac{b}{2a}\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math> となり、元のニ次方程式の解が求められる。 === 三次方程式の求解 === 同様に、[[三次方程式]]<math>ax^3+bx^2+cx+d=0 (a \neq 0)</math>について、<math>F(x)=ax^3+bx^2+cx+d</math>とすると、代入<math>x=t-\frac{b}{3a}</math>もしくは<math>f(x)=x+\frac{b}{3a}</math>によって得られる終結式により、多項式 :<math>G(x)=ax^3+\left(-\frac{b^2}{3a}+c\right)x+\frac{2b^3}{27a^2}-\frac{bc}{3a}+d</math> が得られる。 その後、[[ジェロラモ・カルダーノ|カルダノ]]の解法では、<math>x=u+v</math>と置換し、{{math|''u, v''}}に関する方程式を[[根と係数の関係]]を用いて解くことで、元の三次方程式を解くことができる<ref name="mathematics-pdf">{{Cite web|和書|url=https://mathematics-pdf.com/pdf/cardano.pdf|title=1 Cardanoによる三次方程式の解法|accessdate=2025-01-31}}</ref>。 == 項の消去 == === n-1次の項の消去 === 前述の例のように、{{math|''n''}}次方程式の求解のためには、{{math|''n'' - 1}}次の項を消去することが有効であるが、適切な一次の多項式<math>f(x)</math>を選ぶことで、チルンハウス変換によって{{math|''n'' - 1}}次の項を消去することができる。 一般に、{{math|''n''}}次多項式 :<math>F(x) = a_0x^n + a_1x^{n-1} + \cdots + a_n (a_0 \neq 0)</math> の{{math|''n'' - 1}}次の項を消去するためには、 :<math>f(x) = x + \frac{a_1}{na_0}</math> としてチルンハウス変換を行えばよい<ref name="science-log">{{Cite web|和書|url=https://science-log.com/%e6%95%b0%e5%ad%a6/3%e6%ac%a1%e6%96%b9%e7%a8%8b%e5%bc%8f%e3%81%ae%e8%a7%a3%e3%81%ae%e5%85%ac%e5%bc%8f/|title=3次方程式の解の公式 - 理系のための備忘録|accessdate=2025-01-31}}</ref>。 まず、<math>f(x) = x + c</math>とし、求めたい方程式<math>F(x) = 0</math>の解を<math>a_k(k=1,2,\cdots n)</math>とすると、定義より、チルンハウス変換によって得られる終結式<math>G(x) = \mathrm{Res}(F(y), x-f(y))</math>は、 :<math>G(x) = a_0(\alpha_1 - (x - c))(\alpha_2 - (x - c))\cdots(\alpha_n - (x - c))</math> となる。 {{math|''n'' - 1}}次の項の係数について考えると、根と係数の関係と[[二項定理]]を用いて、 :<math>(-1)^{n}{}_nC_1(-c) + (-1)^{n-1}(\alpha_1 + \alpha_2 + \cdots + \alpha_n) = (-1)^{n+1}nc + (-1)^n\frac{a_1}{a_0}</math> となり、これが0となるためには、 :<math>c = \frac{a_1}{na_0}</math> であればよい。 したがって、<math>f(x) = x + \frac{a_1}{na_0}</math>とすれば、{{math|''n'' - 1}}次の項を消去することができる。 その後、{{math|''n'' - 1}}次の項が消去された方程式<math>G(x) = 0</math>の解{{math|''β''}}を求め、 :<math>f(\alpha) = \beta \Leftrightarrow \alpha = -\frac{a_1}{na_0} + \beta</math> とすることで、元の方程式の解が求められる。 終結式による定義ではなく、代入による定義を用いても、同様の結果が得られる。<math>x = t - \frac{a_1}{na_0}</math>を代入することで、同様に{{math|''n'' - 1}}次の項を消去することができ、この場合の<math>x = t - \frac{a_1}{na_0}</math>は、終結式で用いた<math>x-f(y) = x - y - \frac{a_1}{na_0} = 0</math>の解<math>y = x - \frac{a_1}{na_0}</math>と対応する。 なお、{{math|''n'' - 1}}次の項を消去する変換のみを指してチルンハウス変換と呼ばれることもある<ref name="science-log"></ref>。 === n-2次の項の消去 === より高次の{{math|''n''}}次方程式の求解のためには、さらなる項の消去が必要であるが、{{math|''n'' - 1}}次の項の消去と同様の方法では、再び{{math|''n'' - 1}}次の項が非零となってしまうため、別の手法が必要であった。 チルンハウスは、{{math|''n'' ≧ 2}}次の多項式に対してチルンハウス変換を用いることで、{{math|''n'' - 1}}次と{{math|''n'' - 2}}次の項を消去できることを発見した<ref name="mathworld">{{MathWorld |title=Tschirnhausen Transformation |id=TschirnhausenTransformation|accessdate=2025-01-30}}</ref>。具体的には、代入に似た方法で、変換後の多項式、および変換前と変換後の解の関係を仮定し、[[ニュートンの恒等式]]を用いて変換後の多項式および解の関係の係数についての連立方程式を解く方法を用いる<ref name="neqmath"></ref>。 {{math|''n'' - 1}}次と{{math|''n'' - 2}}次の項を消去したい{{math|''n'' ≧ 2}}次の多項式 :<math>F(x) = a_0x^n + a_1x^{n-1} + \cdots + a_n (a_0 \neq 0)</math> について、{{math|''n'' - 1}}次と{{math|''n'' - 2}}次の項が消去された次の多項式を仮定する。 :<math>G(x) = z^n + A_3z^{n-3} + \cdots + A_n</math> ここで、方程式<math>F(x)=0</math>と<math>G(x)=0</math>の解をそれぞれ<math>x_j,z_j(j=1,2,\cdots n)</math>とし、それらの関係を次のように仮定する。 :<math>z_j = x_j^2 + Px_j + Q</math> 次に、解の{{math|''m''}}乗和をニュートンの恒等式を用いて係数で表す。根と係数の関係より、解<math>z_j</math>の<math>m(m=1,2,\cdots n)</math>番目の基本多項式を<math>e_m(z_j)</math>とするとき、 :<math>e_k(z_j) = (-1)^k A_k</math> となるため、ニュートンの恒等式により、解<math>z_j</math>の<math>m</math>乗和<math>z_1^m + z_2^m + \cdots + z_n^m</math>を<math>\Sigma z_j^m</math>とするとき、 :<math>\Sigma z_j^m = -mA_{m}-\sum_{l=1}^{m-1}A_{m-l}\Sigma z_j^l </math> が成り立つ。これを用いて、<math>\Sigma z_j^m(m=1,2, \cdots n)</math>を<math>G(x)</math>の係数を使って表し、関係式<math>z_j = x_j^2 + Px_j + Q</math>によって左辺を変形し<math>F(x)</math>の係数を使って表すことにより、<math>G(x)</math>の係数および<math>P,Q</math>を<math>F(x)</math>の係数を使って表すことができる。(<math>G(x)</math>の係数および<math>P,Q</math>は{{math|''n''}}個あるので、解の1乗和から解の{{math|''n''}}乗和まで立式すれば、{{math|''n''}}個の連立方程式を用いてそれぞれを求められることがわかる。) したがって、方程式<math>G(x)=0</math>の解を代数的に求められれば、解を関係式<math>z_j = x_j^2 + Px_j + Q</math>によって変換することで、元の方程式の解を求める(<math>G(x)</math>の係数を使って表す)ことができる。 また、チルンハウス変換によって{{math|''n'' - 1}}および{{math|''n'' - 2}}の項が消去された{{math|''n''}}次方程式の形を、'''{{仮リンク|主標準形|en|Principal equation form}}'''という。 === n-3次の項の消去と五次方程式の求解 === [[五次方程式]]の解の公式を求める中で、[[1786年]]に{{仮リンク|E.S.ブリング|en|Erland Samuel Bring}}は、任意の五次方程式が'''ブリング-ジェラードの標準形'''({{lang-en|Bring–Jerrard normal form}})<math>x^5 + px + q = 0</math>の形に変換できることを証明した<ref name="mathworld"></ref>。 さらに、[[1834年]]に{{仮リンク|G.B.ジェラード|en|George Jerrard}}は、{{math|''n'' ≧ 3}}次の多項式に対してチルンハウス変換を用いることで、{{math|''n'' - 1}}次、{{math|''n'' - 2}}次、および{{math|''n'' - 3}}次の項を消去できることを証明した。{{math|''n'' - 1}}次と{{math|''n'' - 2}}次の項を消去する場合と同様に、解の関係式を仮定する方法が使われ、 :<math>z_j = x_j^4 + \gamma x_j^3 + \delta x_j^2 + \epsilon x_j + \zeta</math> のように四次式が用いられる<ref name="neqmath"></ref>。 なお、任意の五次方程式をブリング-ジェラードの標準形にまで簡略化することができるものの、その後一般の五次方程式には代数的な解の公式が存在しないことが[[パオロ・ルフィニ|ルフィニ]]、[[ニールス・ヘンリック・アーベル|アーベル]]によって証明され([[アーベル・ルフィニの定理]])、[[エヴァリスト・ガロア|ガロア]]によって方程式が代数的に解ける条件が示された([[ガロア理論]])。代数的な方法でなければ、[[楕円積分]]や[[楕円モジュラー関数]]、[[超幾何関数]]などの[[特殊関数]]を用いることで解くことができる<ref name="neqmath">{{Cite web|和書|url=https://neqmath.blogspot.com/2018/08/5.html|title=5次方程式の解の公式をガチで求めよう|accessdate=2025-01-31}}</ref>。また、特定の形の五次方程式は代数的に解くことができることも知られている。 == 脚注 == <!--=== 注釈 ===--> === 出典 === {{reflist}} == 関連項目 == * [[代数方程式]] * [[三次方程式]] * [[四次方程式]] * [[五次方程式]] {{Math-stub}} {{DEFAULTSORT:ちるんはうすへんかん}} [[Category:多項式]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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