テトラエチル鉛のソースを表示

{{Chembox
|   Name = テトラエチル鉛
|   ImageFile = Tera-ethyl-lead-chemical.png
|   ImageFile1 = Tetraethyl-lead-3D-balls.png
|   ImageSize1 = 180px
|   IUPACName = tetraethyllead
|   OtherNames = TEL
| Section1 = {{Chembox Identifiers
|   SMILES = CC[Pb](CC)(CC)CC
|   CASNo = 78-00-2
|   RTECS = TP4550000
  }}
| Section2 = {{Chembox Properties
|   Formula = C<sub>8</sub>H<sub>20</sub>Pb
|   MolarMass = 323.44 g/mol
|   Appearance = 無色の粘性液体
|   Density = 1.653 g/mL (25 {{℃}})
|   Solubility = 不溶
|   MeltingPt = -136 {{℃}}
|   BoilingPt = 84-85 {{℃}} (15 mmHg)
|   Viscosity =
|   RefractIndex = 1.519
  }}
| Section3 = {{Chembox Structure
|   MolShape = 四面体
|   Dipole = 0 D
  }}
| Section7 = {{Chembox Hazards
|   ExternalSDS = {{ICSC-small|0008}}
|   MainHazards = 毒性、可燃性
|   NFPA-H = 3
|   NFPA-F = 2
|   NFPA-R = 3
|   FlashPt = 346 K - 73 {{℃}} - 163 {{°F}}
|   RPhrases = {{R-phrases|61|26/27/28|33|50/53|62}}
|   SPhrases = {{S-phrases|53|45|60|61}}
  }}
| Section8 = {{Chembox Related
|   OtherAnions = [[テトラフェニル鉛]]
|   OtherCations = [[テトラメチルシラン]]<br />[[テトラメチルスズ]]
|   OtherCpds = [[塩化鉛(II)]]
  }}
}}
'''テトラエチル鉛'''（テトラエチルなまり、{{lang-en-short|tetraethyllead}}、略称:[[TEL]]）は、[[化学式]]が Pb(CH<sub>3</sub>CH<sub>2</sub>)<sub>4</sub> で表される[[有機鉛化合物]]である。'''四エチル鉛'''。
[[エンジン]]の[[ノッキング]]を防ぐ[[アンチノック剤]]として用いられ、類縁体の[[エチルトリメチル鉛]]、[[ジエチルジメチル鉛]]、[[テトラメチル鉛]]と合わせて'''四アルキル鉛'''、'''アルキル鉛'''とも呼ばれている。 また、[[日本]]においては[[毒物及び劇物取締法]]第二条によって指定されている[[毒物]]の一種である。

== 性質 ==
特異臭を有する無色の液体で、揮発しやすい。日光に対して不安定で、徐々に分解・白濁する。引火性があり、金属に対しても腐食性を持つ。蒸気として、そして皮膚から吸収され易く、強い神経毒性を有する<ref name="akatsuka">{{Cite journal|和書|author =赤塚京治|title =四アルキル鉛中毒 -とくに四エチル鉛の製造, 四アルキル鉛の運搬, 使用に関する現場経験と四アルキル鉛中毒の実験的研究体験について-|date =1973|publisher =日本産業衛生学会|journal =産業医学|volume =15|issue =1|doi =10.1539/joh1959.15.3|pages =3-66|ref = }}</ref>。

== 合成 ==
[[クロロエタン]]と鉛-[[ナトリウム]]合金との反応によって合成される<ref name="akatsuka"/>。
: <chem>4NaPb\ + 4CH3CH2Cl -> (CH3CH2)4Pb\ + 4NaCl\ + 3Pb</chem>

そのほか、グリニャール試薬を経由する合成、電解法による合成などが知られている<ref name="akatsuka"/>。
== 用途 ==
[[1921年]]に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ゼネラルモーターズ|GM社]]の[[チャールズ・ケタリング]]の元で働いていた[[トーマス・ミジリー]]により、[[エンジン]]の[[ノッキング]]を防ぐ[[アンチノック剤]]として開発された<ref name="akatsuka"/>。

=== 原理 ===
テトラエチル鉛の鉛原子と炭素原子との結合は弱く、[[内燃機関]]の温度で鉛とエチルラジカルに分解する。エチルラジカルはすぐに燃焼し、鉛は[[酸化鉛(II)]]となる。鉛や酸化鉛は[[燃焼]]で生じる[[ラジカル]]中間体を除去するため、未燃焼混合気の着火が起こりにくくなる。つまり、アンチノック剤として働くのは鉛そのものであり、テトラエチル鉛は鉛をガソリンに可溶にしているに過ぎない。

燃焼反応は次の通り。
: <chem>(CH3CH2)4Pb\ + 13O2 -> 8CO2\ + 10H2O\ + Pb</chem>

生じた鉛や酸化鉛がエンジン内に蓄積すればエンジンが破壊されるため、鉛除去剤として[[1,2-ジブロモエタン]]と[[1,2-ジクロロエタン]]を併用する。これによって[[臭化鉛(II)]]や[[塩化鉛(II)]]（いずれも1000{{℃}}弱で気化）となって排気中へ排出される。

=== ガソリン無鉛化 ===
[[日本]]では、[[1970年]]に排気ガス中の鉛により中毒が引き起こされる懸念が強く意識されたことから、世界に先駆けて自動車用ガソリンの[[無鉛化]]が進められ、[[1986年]]に世界で初めて自動車用ガソリンの完全無鉛化が達成された。1970年頃から普及し始めた触媒式排ガス浄化装置の性能低下を招くこと、アルキル鉛に代わるアンチノック剤が開発されたことなどから、世界的にも徐々に使用量は減っていき、[[2000年]]までに多くの国で自動車用ガソリンへの添加が禁止されている。2017年現在で自動車用ガソリンへの添加が許されているのは、[[アルジェリア]]、[[イエメン]]、[[イラク]]の3か国のみである。

一方、[[レシプロエンジン]]を搭載した[[航空燃料#航空機用ガソリン|航空機用のガソリン]]（{{仮リンク|Avgas|en|Avgas}}）はテトラエチル鉛を含んだ[[有鉛ガソリン]]でありいまだ使用されている。

== 法規制 ==
[[毒物及び劇物取締法]]で規定される特定毒物であり、製造・輸入・取り扱いに[[都道府県知事]]の[[許可]]が必要。テトラエチル鉛を含有する製剤（[[1,2-ジブロモエタン]]などとの混合液を想定）の譲渡にあたっては赤・青・黄・緑のいずれかに着色しなければならず、またその用途は石油精製業者が有鉛ガソリンを製造することに限られている。

[[労働安全衛生法]]に規定される四アルキル鉛を取り扱う事業者の義務として、[[作業主任者]]の選任、四アルキル鉛取扱いの業務に従事する労働者に対して、雇い入れ・配置換えの際及びその後3か月以内ごとに1回の'''特殊健康診断'''の実施、業務に就かせる際の'''安全又は衛生のための特別の教育'''を行なわなければならない。

==主な出来事==
* [[1957年]] - [[福岡県]][[福岡市]]南部の[[地下水]]がテトラエチル鉛で汚染されていることが判明。原因は、付近の[[防空壕]]に貯蔵、放置されていたテトラエチル鉛とガソリンの混合物が漏出したことによるもの<ref>{{Cite book |和書 |editor=日外アソシエーツ編集部編 |title=日本災害史事典 1868-2009 |publisher=日外アソシエーツ |year=2010 |page=120 |isbn=9784816922749}}</ref>。
* [[1970年]] - イギリスの貨物船が日本近海で[[ドラム缶]]入りのテトラエチル鉛を[[海洋投入|海洋投棄]]した。貨物船は、アメリカから横浜港経由で四日市港を目指していたが、[[時化]]にあいドラム缶が破損。横浜港到着後、横浜海上保安部は検査の上、破損した20本を沿岸に影響のない[[太平洋]]上で投棄するよう指示したが、貨物船は[[四日市港]]へ向けてほぼ最短距離を取りながらドラム缶を投棄した。投棄場所は不明<ref>「英国船から四エチル鉛 漁場近くで投棄?」『朝日新聞』昭和45年（1970年）3月27日朝刊、12版、15面</ref>。

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
* [[エチル コーポレーション]]
* [[ノッキング]]
* [[有鉛ガソリン]]
* [[四アルキル鉛等作業主任者]]
* [[特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習]]
* [[四アルキル鉛中毒予防規則]]
* [[有機鉛化合物]]

== 外部リンク ==
* {{ICSC|0008}}
* 篠崎平馬, 鈴木満之助, [https://doi.org/10.5059/yukigoseikyokaishi.2.4_345 耐爆劑の化學]」『有機合成化学協会誌』 2巻 4号 1944年 p.345-349, {{doi|10.5059/yukigoseikyokaishi.2.4_345}}
* [https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0046.html 四メチル鉛 ] 職場のあんぜんサイト 厚生労働省
* 島田允堯, 「[https://www.oyo.co.jp/oyocms_hq/wp-content/uploads/2014/12/2013_01.pdf 自然由来重金属等による地下水・土壌汚染問題の本質 : 鉛]」『応用地質技術年報』 2013年 32号 p.1-27, 応用地質, {{naid|40019756948}}

{{鉛の化合物}}

{{DEFAULTSORT:てとらえちるなまり}}
[[Category:有機鉛化合物]]
[[Category:有機金属化合物]]
[[Category:鉛の化合物]]
[[Category:特定毒物]]
[[Category:アンチノック剤]]
[[Category:SVHC]]