テューキーの補題のソースを表示

'''テューキーの補題'''（{{Lang-en-short|Tukey's lemma}}あるいは{{Lang-en-short|Teichmüller–Tukey lemma}}）とは、ある性質を満たす[[集合族]]が[[包含関係]]に関する[[極大元]]を持つことを保証する[[命題]]である。[[ジョン・テューキー]]が初めに使用したことからその名前がついた。[[選択公理]]や[[ツォルンの補題]]と[[同値]]であることが知られている。

==定義==
テューキーの補題は、空でない集合族<math>\mathcal{F}</math>が[[有限性]]（[[:en:Finite character|Finite character]]）を満たすならば、<math>\mathcal{F}</math>は包含関係に関する極大元を持つという命題である。
集合族<math>\mathcal{F}</math>がFinite characterを満たすとは、次の性質を満たすことを言う。

* 任意の[[集合]]<math>A</math>に対し、<math>A</math>の各[[有限|有限部分集合]]が<math>\mathcal{F}</math>に含まれるとき、そしてその時に限り、<math>A</math>は<math>\mathcal{F}</math>に含まれる。

==応用==
選択公理から「任意の[[ベクトル空間]]は[[基底]]を持つ」が従うことが知られているが、これはテューキーの補題を経由して以下のように証明される。まず、<math>\mathcal{F}</math>を[[線形独立]]な[[ベクトル]]の集合からなる集合族とすると、これはFinite characterを持つ。なぜなら、<math>A</math>を線形独立なベクトルの集合とすると、当然その部分集合も線形独立であり、逆にもし集合<math>A</math>の任意の有限部分が線形独立なら、（線形独立性は有限個のベクトル間の関係だから）<math>A</math>も線形独立な集合となるからである。よって、テューキーの補題より、包含関係に関して極大である線形独立なベクトルの集合<math>B</math>が存在する。<math>B</math>が基底であることは、もし<math>B</math>の元の線形結合で表せないベクトルが存在したとすると、それをBに加えればBより大きい線形独立なベクトルの集合が得られてしまうことからわかる。

==選択公理との同値性==
テューキーの補題から選択公理を導くことができる。<math>\mathcal{F}</math>を空でない集合の集合族とし、<math>\mathcal{B}</math>を<math>\mathcal{F}</math>の部分集合上の選択関数になっているような関数全体の集合とする。選択関数の部分集合は元の選択関数の定義域を制限した選択関数であることなどから、<math>\mathcal{B}</math>はFinite characterを満たす。よってテューキーの補題より<math>\mathcal{B}</math>には包含関係による極大元が存在する。極大性より、その[[定義域]]が<math>\mathcal{F}</math>全体になっていることがわかる。

逆に選択公理からテューキーの補題を導くには、ツォルンの補題を経由する。<math>\mathcal{F}</math>を空でない集合族でFinite characterを満たすものとする。<math>\mathcal{B}</math>を<math>\mathcal{F}</math>の包含関係に関する任意の[[全順序#鎖|鎖]]とする。<math>A = \cup \{ X : X \in  \mathcal{B} \}</math>の任意の有限部分集合<math>S</math>を考えると、<math>S</math>の各要素は何らかの<math>X\in \mathcal{B}</math>に含まれている。<math> \mathcal{B}</math>が包含関係について全順序で、Sの要素は有限であることから、<math>S</math>の要素を全て含む<math>X'\in \mathcal{B}\subset \mathcal{F}</math>が存在する。<math>S</math>は<math>X' \in \mathcal{F}</math>の有限部分集合であるから、Finite characterより<math>S</math>は<math>\mathcal{F}</math>に含まれる。したがって、再びFinite characterより<math>A</math>も<math>\mathcal{F}</math>に含まれる。<math>A</math>は鎖<math>B</math>の[[順序集合#上界|上界]]となっているから、ツォルンの補題より<math>\mathcal{F}</math>には極大元が存在する。

==関連項目==
* [[順序集合]]
* {{仮リンク|整列可能定理|en|Well-ordering theorem|redirect=1}}
* {{仮リンク|ハウスドルフの極大原理|en|Hausdorff maximal principle}}

==参考文献==
* Thomas J. Jech, ''The axiom of choice'', 2008, Dover Publications.

{{集合論}}
{{DEFAULTSORT:てゆうきいのほたい}}
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