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[[数学]]において、'''ディリクレ固有値'''(ディリクレこゆうち、{{Lang-en-short|Dirichlet eigenvalue}})は、ある与えられた形の理想的な太鼓の[[固有振動|基本固有振動]]である。ここでの問題は、{{仮リンク|太鼓の形の聴き取り|label=太鼓の形を聴くことが出来るか|en|hearing the shape of a drum}}、である。すなわち、ディリクレ固有値が与えられたとき、その太鼓の形のどのような特徴を推測することが出来るか、ということである。ここでの「太鼓」とは、境界が固定された平面領域として表される、伸縮自在の膜 Ω のことをいう。ディリクレ固有値は、未知函数 ''u'' ≠ 0 と[[固有値]] λ に対して次の問題を解くことで得られる。 {{NumBlk|:|<math>\begin{cases} \Delta u + \lambda u = 0& \rm{in\ }\Omega\\ u|_{\partial\Omega} =0.& \end{cases} </math>|{{EquationRef|1}}}} ここで Δ は、''xy''-座標において次で与えられる[[ラプラシアン]]である。 :<math>\Delta u = \frac{\partial^2u}{\partial x^2} + \frac{\partial^2 u}{\partial y^2}.</math> [[境界値問題]] ({{EquationNote|1}}) は、もちろん[[ヘルムホルツ方程式]]に対する[[ディリクレ問題]]であり、したがって λ は Ω に対するディリクレ固有値として知られる。ディリクレ固有値は、対応する[[ノイマン境界条件|ノイマン問題]]に対する固有値であるノイマン固有値とは比較される。({{EquationNote|1}}) に現れるラプラス作用素 Δ は、ディリクレ境界条件を満たす函数 ''u'' に対してのみ考えられるとき、しばしば'''ディリクレラプラシアン'''と呼ばれる。より一般に、[[スペクトル幾何学]]においては、({{EquationNote|1}}) は境界を持つ[[多様体]] Ω 上で考えられる。このとき Δ は、ディリクレ境界条件に対して、{{仮リンク|ラプラス=ベルトラミ作用素|en|Laplace-Beltrami operator}}となる。 コンパクト自己共役作用素に対する[[スペクトル定理]]を用いることで、固有空間が有限次元であり、ディリクレ固有値 λ が実かつ正であり、[[集積点]]を持たないことが示される。したがって、それらを大きさの順番に並べることが出来る: :<math>0<\lambda_1\le\lambda_2\le\cdots,\quad \lambda_n\to\infty.</math> ここで各固有値は、その幾何学的重複度にしたがって数えられる。その固有空間は、[[自乗可積分函数]]の空間において直交し、[[滑らかな関数|滑らかな函数]]からなる。実際、ディリクレラプラシアンは、[[ソボレフ空間]] <math>H^2_0(\Omega)</math> から <math>L^2(\Omega)</math> への作用素への連続的な拡張を持つ。この作用素は可逆であり、その逆はコンパクトかつ自己共役であるため、通常のスペクトル定理は Δ の固有空間とその固有値の逆数 1/λ を得るために利用することができる。 ディリクレ固有値の研究における基本的な道具の一つに、次の[[レイリー商|最大値最小値原理]]がある:第一固有値 λ<sub>1</sub> は[[ディリクレエネルギー]]を最小化する。すなわち :<math>\lambda_1 = \inf_{u\not=0}\frac{\int_\Omega |\nabla u|^2}{\int_\Omega |u|^2},</math> は、Ω において恒等的にゼロとはならない[[コンパクトな台]]を持つすべての ''u'' に関する下限である。この下限はゼロでない <math>u\in H_0^1(\Omega)</math> に関する下限となる。さらに[[弱形式|ラックス=ミルグラムの定理]]と同様の[[変分法]]の結果を使うことで、<math>H_0^1(\Omega)</math> 内に最小点が存在することを証明できる。より一般に :<math>\lambda_k = \sup\inf \frac{\int_\Omega |\nabla u|^2}{\int_\Omega |u|^2}</math> が成り立つ。ここで上限はすべての (''k''−1)-タプル <math>\phi_1,\dots,\phi_{k-1}\in H^1_0(\Omega)</math> について取られ、下限は φ<sub>''i''</sub> に直交するすべての ''u'' について取られる。 == 応用 == ディリクレラプラシアンは、[[数理物理学]]の様々な問題に現れる。例えば、理想化された太鼓のモードや、理想化されたプールの表面での小さな波や、[[近軸近似]]における理想化された[[光ファイバー]]のモードなどに関する問題で現れる。この最後の例は、{{仮リンク|ダブルクラッドファイバー|en|double-clad fiber}}との関係で最も実用的である。そのようなファイバーにおいて、ほとんどのモードは領域を一様に埋めるか、あるいはほとんどの半直線はその核と交差するという事実が重要である。最も単純な形の領域は、円状対称である<ref name=bedo>{{cite journal| author=S. Bedo|author2=W. Luthy|author3=H. P. Weber | title=The effective absorption coefficient in double-clad fibers| journal=[[:en:Optics Communications|Optics Communications]]| volume=99| issue=5-6| pages=331–335| year=1993| url=http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6TVF-46JGTGD-M5&_user=10&_coverDate=06%2F15%2F1993&_alid=550903253&_rdoc=1&_fmt=summary&_orig=search&_cdi=5533&_sort=d&_docanchor=&view=c&_ct=1&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=c8a4c3ecc3d9a4e9ecb84f96cfef0333 | doi=10.1016/0030-4018(93)90338-6 | bibcode=1993OptCo..99..331B}} </ref><ref name="Doya">{{cite journal|title=Modeling and optimization of double-clad fiber amplifiers using chaotic propagation of pump| author= Leproux, P.|author2=S. Fevrier |author3=V. Doya |author4=P. Roy |author5=D. Pagnoux | journal=[[:en:Optical Fiber Technology|Optical Fiber Technology]]| url=http://www.ingentaconnect.com/content/ap/of/2001/00000007/00000004/art00361| volume=7 | year=2003 | issue=4 | pages=324–339|doi=10.1006/ofte.2001.0361 | bibcode=2001OptFT...7..324L}}</ref><ref name="Liu">{{cite journal| title=The absorption characteristics of circular, offset, and rectangular double-clad fibers| author=A. Liu|author2=K. Ueda| url= http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6TVF-497C4YV-BW&_user=10&_coverDate=12%2F15%2F1996&_alid=550869877&_rdoc=3&_fmt=summary&_orig=search&_cdi=5533&_sort=d&_docanchor=&view=c&_ct=3&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=688bbca25fdd98e29caadb676b003c1e | journal=[[:en:Optics Communications|Optics Communications]]| volume=132| year=1996| issue=5-6| pages= 511–518| doi=10.1016/0030-4018(96)00368-9|bibcode = 1996OptCo.132..511A }}</ref>。ポンプのモードは、ダブルクラッドファイバー[[光増幅器|増幅器]]において用いられるアクティブコアを避けるべきではない。そのような応用に対して渦状領域は、'''ディリクレラプラシアン'''のモードの境界での挙動により、特に効果的となる<ref name="Kouznetsov">{{cite journal |title=Boundary behavior of modes of Dirichlet laplacian | author= Kouznetsov, D.|author2=Moloney, J.V.| journal=[[:en:Journal of Modern Optics|Journal of Modern Optics]] |volume=51 | year=2004 | issue=13 | pages=1955–1962 |ref=http://www.ils.uec.ac.jp/~dima/TMOP102136.pdf | doi=10.1080/09500340408232504 | bibcode=2004JMOp...51.1955K}}</ref>。 次の定理は、[[幾何光学]]における半直線の性質と似たディリクレラプラシアンの境界での挙動に関するものである:半直線の角運動量は、その半直線がチャンクにぶつかるまで、境界の渦状の部分で反射する度に増加する。(光軸と平行なものを除く)すべての半直線は、角運動量の超過のためにチャンクの付近を必ず通る。同様に、ディリクレラプラシアンのモードはチャンクの付近でゼロで無い値を取る。そのモードの境界での微分の法線成分は、[[圧力]]と解釈できる。その圧力が表面について積分されたものが[[力 (物理学)|力]]となる。そのモードは伝播方程式の(縦座標への自明な依存性を持つ)定常解なので、その力の総和は必ずゼロとなる。同様に、その力の角運動量もゼロとならなければならない。しかし、物理系に対して同様の結果が得られないという事実に関する正式な証明が存在する<ref name="Kouznetsov"/>。 == 注釈 == <references/> == 参考文献 == * {{SpringerEOM|title=Dirichlet eigenvalues|last=Benguria|first=Rafael D.|urlname=Dirichlet_eigenvalue}}. * {{Cite book|first=Isaac|last=Chavel|title=Eigenvalues in Riemannian geometry|series=Pure Appl. Math.|volume=115|publisher=[[:en:Academic Press|Academic Press]]|year=1984|isbn=0-12-170640-0}}. * {{Cite book|first1=Richard|last1=Courant|authorlink1=リヒャルト・クーラント|first2=David|last2=Hilbert|authorlink2=ダフィット・ヒルベルト|title=Methods of Mathematical Physics, Volume I|publisher=Wiley-Interscience|year=1962}}. {{DEFAULTSORT:ていりくれこゆうち}} [[Category:微分作用素]] [[Category:偏微分方程式]] [[Category:スペクトル理論]] [[Category:ペーター・グスタフ・ディリクレ]] [[Category:数学に関する記事]]
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