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{{参照方法|date=2013年7月}} 数学において、集合''A'' が'''デデキント無限'''(Dedekind-infinite)である、または'''デデキント無限集合'''であるとは、''A'' と[[同数]](equinumerous)であるような''A'' の[[真部分集合]]''B'' が存在することである。つまり、''A'' と''A'' の[[真部分集合]]''B'' の間に[[全単射]]が存在するということである。集合 ''A'' がデデキント無限でないとき、'''デデキント有限'''であるいう。 デデキント無限は、[[自然数]]を用いないような最初の[[無限]]の定義である。[[選択公理]]を除いた[[ツェルメロ・フレンケルの公理系]]は、任意のデデキント有限集合は[[有限]]個の元を持つという意味での有限である、ということを証明するだけの強さを持たない<ref name="herrlich">{{cite book |title=Axiom of Choice |last=Herrlich | first=Horst |year=2006 |publisher=Springer-Verlag |series=Lecture Notes in Mathematics 1876 |isbn=978-3540309895}}</ref>。デデキント無限以外にも、選択公理を用いない有限集合や無限集合の定義が存在する。 == 通常の無限集合の定義との比較 == デデキントの意味での“無限集合”は、普通の意味での無限集合と比較されるべきであろう: : 集合''A'' が無限であるとは、どのような自然数 ''n'' に対しても、{0,1,2,..., ''n'' -1}([[順序数#順序数の大小関係|有限順序数]])と ''A'' との間に全単射が存在しないことである。 無限とは、全単射が存在しないという意味で文字通り有限でないという集合である。 19世紀後半、多くの数学者はデデキント無限であることと通常の意味の無限は同値であると単純に考えていた。しかし実際は、選択公理(“'''AC'''”)を除いたツェルメロ・フレンケルの公理系(通常、“'''ZF'''”と表記される)からは、その同値性は証明されえない。弱い'''AC'''を使うことで証明でき、フルの強さは要求されない。その同値性は、[[可算選択公理]](“'''CC'''”)より真に弱い形で証明できる。 == ZFにおけるデデキント無限 == 次の4条件は、'''ZF'''上同値である。特に、これらの同値性は'''AC'''を用いないで証明できることに注意せよ。 * ''A'' は'''デデキント無限'''である。 * 全射ではないが単射であるような''A'' から''A'' への関数が存在する。 * 自然数の集合'''N''' から''A'' への単射が存在する。 * ''A'' は可算無限な部分集合を持つ。 どのようなデデキント無限集合''A'' も以下の条件を満たす。 * 単射ではないが全射の、''A'' から''A'' への関数が存在する。 このことを、“''A'' は'''双対デデキント無限'''である”という。''A'' が双対デデキント無限であるならば''A'' がデデキント無限であるということは('''AC'''を除いた'''ZF'''上で)証明可能でない。<!--以下の括弧内は翻訳時に意味がよく理解できなかったためとりあえず非表示とする。(例えば、''B'' を通常の意味で無限でデデキント有限な集合、''A'' を''B'' からの一対一の数列の集合であるとする。そうすると、“最後の元を落とす”というのは、''A'' から''A'' への全射であるが単射でない写像であるが、しかし''A'' はデデキント有限である。)--> どのような双対デデキント無限集合も次の(同値な)条件を満たす、ということが'''ZF'''上で証明できる。 * ''A'' から可算無限集合への全射が存在する。 * ''A'' の冪集合がデデキント無限である。 (この条件を満たすことを、'''弱デデキント無限'''(weakly Dedekind infinite)であるということがある。) 弱デデキント無限であるならば無限であることは'''ZF'''において証明されている。 また、整列無限集合はデデキント無限であることも'''ZF'''において示されている。 == 歴史 == {{節stub}} デデキント無限という語は、この定義を初めて明確に示したドイツ人の[[リヒャルト・デデキント]]にちなんでつけられた。自然数の定義に依存しない最初の“無限”の定義であったことは明記すべきであろう。 == 選択公理との関係 == 整列可能な任意の無限集合はデデキント無限である。'''AC'''は任意の集合が整列可能であることを述べた[[整列可能定理]]と同値であるから、'''AC'''から無限集合はデデキント無限集合であるということが簡単に導かれる。しかしながら、無限とデデキント無限の同値性は'''AC'''よりもっと弱いものである。すなわちこの同値性を仮定しても'''AC'''は導かれない。 とくに可算無限な部分集合を持たない無限集合の存在するような'''ZF'''のモデルが存在する。このモデルでは無限だがデデキント有限である集合が存在する。以上よりそのような集合はこのモデルにおいて整列不可能である。 可算選択公理'''CC'''('''AC'''<sub>ω</sub>)を仮定すればいかなる無限集合もデデキント無限であることが証明される。しかしながら、この同値性は、実際には'''CC'''より真に弱い。('''ZF'''の無矛盾性の仮定のもとで)'''CC'''は成立しないが2つの無限集合の定義の同値性が成り立つ'''ZF'''のモデルが存在する。すなわちこの同値性を仮定しても'''CC'''は導かれない。 == 可算選択公理を仮定した無限との同値性の証明 == デデキント無限集合が無限であることは'''ZF'''で容易に証明される。実際、任意の有限集合はある有限順序数と等濃であって、有限順序数がデデキント有限であることは帰納法により証明できる。 可算選択公理を用いることによって、その逆が証明できる。つまり、無限集合はデデキント無限であることを以下のように証明できる<ref>田中尚夫(1987)『選択公理と数学』遊星社</ref>。 <!-- 可算選択公理ではなく選択公理を用いられていたので修正。必要ならば選択公理、従属選択公理、可算選択公理をそれぞれ用いた証明を載せてもよい。 --> まず無限集合 <math>X</math> は可算無限な部分集合を持つことを示す。相異なる <math>X</math> の元からなる長さ <math>n+1</math> の列の成す集合を <math>X_n</math> とする。 <math>X</math> は有限でないから <math>X_n</math> は空でない。したがって可算選択公理により選択関数 <math>f:\omega \to \bigcup_{n < \omega}X_n</math> が存在する。そこで : <math>f(n) = (x_{n0},x_{n1},\ldots,x_{nn})</math> と表す。いま <math>Y = \{ x_{ni} \mid i \leq n < \omega \}</math> とおけば、 <math>Y</math> は可算無限集合である。実際 <math>Y</math> の元は <math>x_{00}, x_{10}, x_{11}, \ldots</math> と(重複は飛ばして)枚挙できる。したがって <math>Y</math> は <math>X</math> の可算無限部分集合である。そこで可算無限部分集合 <math>Y</math> を'''潰す'''ことで全射でない単射 <math>h:X\to X</math> が得られる。したがって <math>X</math> はデデキント無限である。 <!-- 【翻訳部分がわかりにくいので書き換えます。】 第一に、(有限順序数でもある)自然数の集合'''N'''上の関数''f'' :'''N'''→P(''X'' )を定義する。 つまり、どのような自然数''n'' についても、''f(n)'' はサイズが''n'' (つまり有限順序数''n'' との間に全単射が存在) の''X'' の部分集合の集合である。どの''n'' に対しても''f(n)'' は空ではない。 もしそうでないならば、''X'' は有限になってしまう。(''n'' による帰納法によって証明される。) ''f'' の像は、各元それ自身が(非可算である可能性のある)無限集合であるような { f(n) | n∈'''N''' }という可算集合である。 可算選択公理を使って、自然数''n'' に対してf(n)の元である''X'' の有限部分集合''g(n)'' を一つ対応させることができる。 但し、G= { g(n) | n∈'''N''' } 、g(n)∈f(n)である。 そのような集合''G'' が存在する いま、''U'' を''G'' の元たちの和集合と定義しよう。''U'' は''X'' の可算無限な部分集合であって、自然数の集合'''N'''から''U'' への全単射''h'' :'''N'''→''U'' を容易に定義できる。(※ この全単射の構成には可算選択公理が必要である。というのも g(n) は整列されていないから、その整列順序を選択しなければならない。なお上の証明では有限集合ではなく有限列を考えることによって整列順序の選択を回避している。) そして、''h(n)'' を''h(n+1)'' に対応させ、それ以外は恒等的に写す<math>B:X \rightarrow X\backslash h(0)</math>という全単射を定義しよう。 このとき<math>X\backslash h(0)</math>は''X'' の真部分集合であるので、''X'' はデデキント無限である。 --> == 一般化 == 圏論的な言葉で表現すれば、集合 {{mvar|A}} は集合の圏においてすべてのモノ射 {{nowrap|''f'': ''A'' → ''A''}} が同型射であるときにデデキント有限である。[[フォン・ノイマン正則環]] {{mvar|R}} が(左あるいは右){{mvar|R}}-加群の圏において同様の性質を持つことと、{{mvar|R}} において {{nowrap|1=''xy'' = 1}} ならば {{nowrap|1=''yx'' = 1}} が成り立つことは同値である。より一般に、'''デデキント有限環''' (Dedekind-finite ring) は、この条件({{nowrap|1=''xy'' = 1}} ならば {{nowrap|1=''yx'' = 1}})を満たす環のことである。台集合がデデキント無限であっても環はデデキント有限となりうることに注意。例えば整数環。正則加群 ''<sub>R</sub>R'' がホップ的(すなわち任意の全射自己準同型が同型)であることと ''R'' がデデキント有限であることは同値である。 == 引用文献 == <references /> == 参考文献 == * 『選択公理と数学』[[田中尚夫]]著 [[遊星社]] 1987年 98頁、214頁 * Faith, Carl Clifton. ''Mathematical surveys and monographs''. Volume 65. American Mathematical Society. 2nd ed. AMS Bookstore, 2004. ISBN 0-8218-3672-2 *Moore, Gregory H., ''Zermelo's Axiom of Choice'', Springer-Verlag, 1982 (out-of-print), ISBN 0-387-90670-3, in particular pp. 22-30 and tables 1 and 2 on p. 322-323 *[[Thomas Jech|Jech, Thomas J.]], ''The Axiom of Choice'', Dover Publications, 2008, ISBN 0-486-46624-8 * Lam, Tsit-Yuen. ''A first course in noncommutative rings''. Volume 131 of [[Graduate texts in mathematics]]. 2nd ed. Springer, 2001. ISBN 0-387-95183-0 *Herrlich, Horst, ''Axiom of Choice'', Springer-Verlag, 2006, Lecture Notes in Mathematics 1876, ISSN print edition 0075–8434, ISSN electronic edition: 1617-9692, in particular Section 4.1. == 関連項目 == * [[リヒャルト・デーデキント]] {{デフォルトソート:ててきんとむげん}} [[Category:数学に関する記事]] [[Category:無限]] [[Category:集合論]] [[Category:数学のエポニム]]
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