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[[幾何学]]において、デーン平面({{lang-en-short|Dehn plane}})とは、[[デーン]]が導入した2つの非ユークリッド幾何の例をいう。[[マックス・デーン]]は2つの平面の例、'''半ユークリッド幾何'''と'''非ルジャンドル幾何'''とを導入した。これらは、所与の点と直線に対し、その点を通る無限本の平行線を持つようなものでありながら、三角形の内角の和が少なくとも <math>\pi</math> となるようなものである。同様な現象は[[双曲幾何学|双曲幾何]]でも見られるが、そこでは三角形の内角の和は <math>\pi</math> 未満である。デーンの例は非アルキメデス的順序体<!-- 訳注:大雑把にいえば無限大元を持つような順序体である。-->を利用して構成されるが、それゆえ[[アルキメデスの公理]]が破れる。これらは{{harvs|txt|authorlink=Max Dehn|first=Max |last=Dehn|year=1900}}で導入され、{{harvtxt|Hilbert|1902|loc=p.127–130, or p. 42-43 in some later editions}}で論じられている。 ==デーンの非アルキメデス的順序体 {{math|Ω(''t'')}}== {{anchors|デーンの非アルキメデス的順序体}} デーンは自らの幾何を構成する為に[[アルキメデスの性質|非アルキメデス的]]に順序付けられた[[ピタゴラス的体]] <math>\Omega(t)</math> を用いた。これは実係数1変数有理式(関数)の成す体 <math>\mathbb{R}(t)</math> の[[ピタゴラス閉包]]、すなわち実定数関数と不定元 ''t'' を意味する恒等関数(実数をそれ自身に写す関数)を含み、演算 <math>\omega \mapsto \sqrt{(1+\omega^2)}</math> で閉じた最小の関数体である。この <math>\Omega(t)</math> は次のように順序付けられる:<math>x > y</math> であるのは、十分大きな任意の実数 <math>t</math> に対して <math>x(t) > y(t)</math> が成り立つときである。<math>\Omega(t)</math> の元 <math>x</math> が'''有限'''と呼ばれるのは、ある整数 <math>m,n </math> に対して <math>m<x<n</math> となるときである。<!-- 訳注:どんな順序環も整数環を順序環として含んでいるものと考えられ、その含み方は一意的である。それゆえwell-definedである。 -->有限でない元は無限大と呼ばれる。 ==デーンの半ユークリッド幾何== いま、<math>\Omega(t)</math> の元 <math>x</math> と <math>y</math> によって <math>(x, y)</math> と表される全ての元からなる集合に、次のような通常の[[計量_(数学)|計量]] : <math>\|(x,y)\| = \sqrt{x^2+y^2} </math> を入れたものを考える。ここで <math>\|(x, y)\|</math> は <math>\Omega(t)</math> に値を取ることに注意。この空間は[[ユークリッド幾何]]のモデルを与える。[[平行線公準]]はこのモデルに於いて真である。すなわち、1つの直線に2本の直線が交わり、同じ側にある内角の和が2直角よりも小さいならば、2本の直線はその側で交わる。他方、もしその内角和と2直角との誤差が無限小(どんな正の有理数よりも小さいことを意味する)ならば、その2つの直線の交点は、平面の有限でない点で交わる。<!-- 訳注:ここで1つの直線と2つの直線の交点は平面の有限部分に存在するものとする。さらに、2つの交点との距離は無限小ではないものとする。さもなくば、後の2つの直線が有限部分で交わることが有り得ることは、明らかであろう。 -->すなわち、もしこのモデルを平面の有限部分(つまり <math>(x, y)</math> で <math>x,y</math> がともに有限である点)に制限したならば、平行線公準を破りつつ、三角形の内角の和が <math>\pi</math> であるような幾何学が得られる。これがデーンの半ユークリッド幾何である。これは{{harvtxt|Rucker|1982|loc=page 98}}で論じられている。 ==デーンの非ルジャンドル幾何== 同じ論文に於いて、デーンは非ルジャンドル幾何の例も構成している。これは、ある点を通り別の直線と交わらない無限本の直線が存在する(平行線公準が破れている)が、三角形の内角和が <math>\pi</math> を超えるようなものである。<math>\Omega(t)</math> 上のリーマンの[[楕円幾何学|楕円幾何]]は <math>\Omega(t)</math> 上の射影平面から構成され、これは <math>(x: y: 1)</math> の形の点に"無限遠にある直線"を付け加えたアファイン平面と同一視できる。これはいかなる三角形の内角の和も <math>\pi</math> を超えるという性質を持つ。非ルジャンドル幾何は、このアファイン部分空間の点 <math>(x: y: 1)</math> で <math>tx</math> と <math>ty</math> がともに有限であるものからなる。(ここで <math>t</math> は恒等関数によって表現される <math>\Omega(t)</math> の元である。)[[サッケーリ=ルジャンドルの定理|ルジャンドルの定理]]は三角形の内角和が高々 <math>\pi</math> であることを述べるが、これはアルキメデスの公理を仮定するものである。デーンの例は、ルジャンドルの定理がアルキメデスの公理を除くと成立しない可能性があることを示している。 ==参考文献== *{{Citation | last1=Dehn | first1=Max | author1-link=Max Dehn | title=Die Legendre'schen Sätze über die Winkelsumme im Dreieck | url=https://books.google.com/books?id=vEbWAAAAMAAJ&pg=PA404 | doi=10.1007/BF01448980 | jfm=31.0471.01 | year=1900 | journal=[[Mathematische Annalen]] | issn=0025-5831 | volume=53 | issue=3 | pages=404–439}} *{{Citation | last1=Hilbert | first1=David | author1-link=David Hilbert | title=The foundations of geometry | year=1902 | publisher=The Open Court Publishing Co., La Salle, Ill. | mr=0116216 |url=http://www.gutenberg.org/files/17384/17384-pdf.pdf}} *{{citation|mr=0658492 |last=Rucker|first= Rudy |title=Infinity and the mind. The science and philosophy of the infinite|publisher= Birkhäuser|place= Boston, Mass.|year= 1982|isbn= 3-7643-3034-1 }} {{デフォルトソート:てえんへいめん}} [[Category:幾何学]] [[Category:非ユークリッド幾何学]] [[Category:数学に関する記事]]
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