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トレミーの不等式
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[[画像:Ptolemy Inequality.svg|thumb|4つの点と6つの距離。これらの点は共円ではないため、トレミーの不等式はこれらの点に対して厳密である。]] [[ユークリッド幾何学]]において、'''トレミーの不等式'''(トレミーのふとうしき)とは、[[ユークリッド平面|平面]]または高次元空間内の4点により決まる6つの距離についての不等式。4つの任意の点 {{mvar|A}}, {{mvar|B}}, {{mvar|C}}, {{mvar|D}} について、次の[[不等式]]が成り立つことを示す。 :<math>\overline{AB}\cdot \overline{CD}+\overline{BC}\cdot \overline{DA} \ge \overline{AC}\cdot \overline{BD}.</math> その名は[[ローマ帝国支配下のギリシャ|ギリシャ]]の[[天文学者]]、[[数学者]]である[[クラウディオス・プトレマイオス|トレミー]]に因む。 4つの点は3つの異なる方法(反転を区別せずに数えている)で順番をつけて3つの異なる[[四辺形]]を作ることができる。それぞれの対辺の積の和は少なくとも対角線の積と同じ大きさである。よって不等式の3つの積の項はいずれかを不等式の右側に加えるように並べ替えることができるため、四辺形の任意の1つの対辺または対角線の3つの積は[[三角不等式]]に従う必要がある<ref name="s40">{{Citation |last=Schoenberg |first=I. J. |authorlink=Isaac Jacob Schoenberg |doi=10.2307/1968849 |journal=Annals of Mathematics |mr=0002903 |pages=715-726 |series=Second Series |title=On metric arcs of vanishing Menger curvature |volume=41 |year=1940}}.</ref>。 特別な場合として、4つの点が[[円 (数学)|円]]上に並んでいる場合は不等式が等式になる([[トレミーの定理]])。他の場合では、4つの点が[[共線|同一直線上]]にあるとき等式が成り立つ。この不等式は[[ユークリッド空間]]から任意の[[距離空間]]に一般化されない。これが成り立つ空間は「プトレマイオス空間」と呼ばれる。これには[[内積空間]]、[[アダマール空間]]、プトレマイオスグラフ上の[[最短経路問題|最短経路]]距離が含まれる。 == 仮定と導出 == トレミーの不等式は、しばしば特殊な場合である4点が周期的な順番で与えられる[[凸多角形|凸]][[四辺形]]の[[頂点]]である場合で述べられる<ref>{{Citation |title=The Cauchy-Schwarz Master Class: An Introduction to the Art of Mathematical Inequalities |series=MAA problem books |first=J. Michael |last=Steele |authorlink=J. Michael Steele|publisher=Cambridge University Press |year=2004 |isbn=9780521546775 |contribution-url=https://books.google.com/books?id=7GDyRMrlgDsC&pg=PA69 |page=69 |contribution=Exercise 4.6 (Ptolemy's Inequality)}}.</ref><ref>{{Citation |title=When Less is More: Visualizing Basic Inequalities |volume=36 |series=Dolciani Mathematical Expositions |first1=Claudi |last1=Alsina |first2=Roger B.|last2=Nelsen |publisher=Mathematical Association of America |year=2009 |isbn=9780883853429 |pages=82-83 |contribution-url=https://books.google.com/books?id=U1ovBsSRNscC&pg=PA82|contribution=6.1 Ptolemy's inequality}}.</ref>。しかし、この定理はより一般的に4つの点について適用され、4点が作る四辺形が凸、単純、平面である必要はない。 平面内の点の場合、トレミーの不等式は4つの点いずれかを中心とした[[反転幾何学|反転]]により[[三角不等式]]から導き出すことができる<ref>{{harvtxt|Apostol|1967}} attributes the inversion-based proof to textbooks by R. A. Johnson (1929) and [[Howard Eves]] (1963).</ref><ref name="bmc">{{citation|title=A Decade of the Berkeley Math Circle: The American Experience|volume=1|series=MSRI Mathematical Circles Library |editor1-first=Zvezdelina |editor1-last=Stankova|editor1-link=Zvezdelina Stankova|editor2-first=Tom|editor2-last=Rike |publisher=American Mathematical Society|year=2008|isbn=9780821846834 |page=18 |contribution-url=https://books.google.com/books?id=vix-AwAAQBAJ&pg=PA18|contribution=Problem 7 (Ptolemy's Inequality)}}.</ref>。また、[[複素数]]の恒等式を用いて4点を複素数として解釈することでも導出できる。 :<math>(A-B)(C-D)+(B-C)(A-D)=(A-C)(B-D)</math> 辺の長さが与えられた四辺形の辺の積である三角形を作るために、この三角形に三角不等式を適用する<ref name="apostol">{{Citation |last=Apostol |first=Tom M. |authorlink=Tom M. Apostol |journal=Mathematics Magazine |mr=0225213 |pages=233-235 |title=Ptolemy's inequality and the chordal metric |volume=40 |year=1967}}.</ref>。点を複素[[射影直線]]に属しているとみなし、不等式を点の2つの[[交差比]]の[[絶対値]]が少なくとも1つになる形式で表現し、これを交差比自体が正確に1つに加えられるという事実から推測できる<ref>{{Citation |title=Geometry: Ancient and Modern |first=John R.|last=Silvester |publisher=Oxford University Press|year=2001 |isbn=9780198508250 |contribution-url=https://books.google.com/books?id=VtH_QG6scSUC&pg=PA229 |page=229 |contribution=Proposition 9.10 (Ptolemy's theorem)}}.</ref>。 3次元空間の点に対するこの不等式の証明は、任意の非平面四辺形に対して四辺形が平面になるまで対角線の周りで点の1つを回転させ、他の対角線の長さを伸ばし、他の5つの距離を一定に保つことが可能であることを観察することにより、平面の場合に縮小することができる<ref name="apostol"/>。3よりも高い次元の空間では、任意の4点が3次元部分空間に存在し、同じ3次元の証明を使うことができる。 == 4つの同一円上の点 == {{main|トレミーの定理}} [[共円|円の周りの4点]]を順に並べると、トレミーの不等式は等式となり、これは[[トレミーの定理]]として知られる。 :<math>\overline{AB}\cdot \overline{CD}+\overline{BC}\cdot \overline{DA} = \overline{AC}\cdot \overline{BD}.</math> 反転に基づくトレミーの不等式の証明では、4つの共円の点のうち1つを中心とした反転により、それらの点を変換すると、他の3つの点は共線になるため、(トレミーの不等式から導出された)これら3つの点の三角形の等式も等式になる<ref name="bmc"/>。任意の4点に対して、トレミーの不等式は厳密である。 == 一般距離空間 == [[画像:Circle graph C4.svg|thumb|upright=0.75|距離がトレミーの不等式に従わない[[閉路グラフ]]]] トレミーの不等式は、任意の[[内積空間]]でより一般的に成り立ち<ref name="s40"/><ref name="nls"/>、[[ノルム線型空間]]に対して真である場合は常にその空間は内積空間でなくてはならない<ref name="nls">{{Citation |title=Introduction to the Analysis of Normed Linear Spaces |volume=13 |series=Australian Mathematical Society lecture series |first=J. R.|last=Giles |publisher=Cambridge University Press |year=2000 |isbn=9780521653756 |page=47 |contribution=Exercise 12 |contribution-url=https://books.google.com/books?id=VVeV6EKimjQC&pg=PA47}}.</ref><ref>{{Citation |last=Schoenberg |first=I. J. |authorlink=Isaac Jacob Schoenberg |doi=10.2307/2031742 |journal=Proceedings of the American Mathematical Society |mr=0052035 |pages=961-964 |title=A remark on M. M. Day's characterization of inner-product spaces and a conjecture of L. M. Blumenthal |volume=3 |year=1952}}.</ref>。 他のタイプの[[距離空間]]では、この不等式は成り立つ場合と成り立たない場合がある。この不等式が成立する空間を''Ptolemaic''と呼び、例えば、図のような4頂点で全ての辺の長さが1に等しい[[閉路グラフ]]を考える。対向する辺の積の和は2であるが、対角線上にある頂点は[[頂点 (グラフ理論)|頂点]]は互いに2の距離にあるため対角線の積は4となり、辺の積の和よりも大きくなる。したがって、このグラフの[[最短経路問題|最短経路]]距離はPtolemaicではない。距離がトレミーの不等式に従うグラフは[[Ptolemaic graph]]と呼ばれ、任意のグラフに比べて制限された構造をしている。特に、示されるような3以上の長さの[[誘導パス]]を認めない<ref>{{Citation |last=Howorka |first=Edward |doi=10.1002/jgt.3190050314 |issue=3 |journal=Journal of Graph Theory |mr=625074 |pages=323-331 |title=A characterization of Ptolemaic graphs |volume=5 |year=1981}}.</ref>。 Ptolemaicな空間は全ての[[CAT(k)空間|CAT(0)空間]]および特に全ての[[アダマール空間]]を含む。完全な[[リーマン多様体]]がPtolemaicであれば、それは必ずアダマール空間である<ref>{{Citation |last1 = Buckley |first1=S. M. |last2=Falk |first2=K. |last3=Wraith |first3=D. J. |doi=10.1017/S0017089509004984 |issue=2 |journal=Glasgow Mathematical Journal |mr=2500753 |pages=301-314 |title=Ptolemaic spaces and CAT(0) |volume=51 |year=2009}}.</ref>。 == 関連項目 == * [[三角不等式]] == 脚注 == {{Reflist|30em}} == 外部リンク == * {{高校数学の美しい物語|650|トレミーの不等式の証明と例題}} {{DEFAULTSORT:とれみのふとうしき}} [[Category:不等式]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:人名を冠した数式]]
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