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{{出典の明記|date=2022年5月}} {{Otheruses|ねじり棒ばね|コイルばねをねじる方向で使うもの|ねじりコイルばね}} '''トーションバー'''とは、[[棒]]状の物体を[[トルク|捻る]]時の反発力を利用した[[ばね]]の一種である<ref name="JISB0103">{{cite jis|B|0103|2015|name=ばね用語|page=9}}</ref>。ねじり棒、ねじりばね、'''ねじり棒ばね'''とも呼ばれる<ref name="JISB0103"/>。 英語では''torsion bar''<ref>{{Cite web|和書|author=ランダムハウス英和大辞典 |url=http://dictionary.goo.ne.jp/ej/87298/meaning/m0u/ |title=「torsion bar」の意味 |work=goo辞書 |publisher=NTT Resonant Inc. |accessdate=2016-09-21}}</ref> や ''torsion spring''、 ''torsion bar spring''<ref name="JISB0103" />などとも。 == 概要 == [[コイルばね]]に比べ、同じ[[質量]]で保存<!--(吸収)--><!--ばねはダンパーではないから、エネルギーを保存はするが吸収はしない-->できる[[エネルギー]]が大きいため、軽量に作ることが出来る。また、まっすぐで細いためスペース効率も高い。多くは中実の鋼棒であるが、中空([[鋼管]])のものもある。 == ねじりばね定数 == [[File:Barre de torsion.png|thumb|250px|左端を固定、右端でねじる場合]] ねじりモーメントに対する変形角度の比を表す[[ばね定数|ねじりばね定数]]は下記で示される。 <math>k=\dfrac{M_{T}}{\alpha}=\dfrac{GJ}{L}</math> :<math>k</math>:ねじりばね定数(Nmm/rad) :<math>M_{T}</math>:ねじりモーメント(Nmm) :<math>\alpha</math>:ねじれ変形角(rad) :<math>L</math>:長さ(mm) :<math>G</math>:材料の[[剛性率]](横弾性係数)(GPa) :<math>J</math>:ねじり定数。円形断面では[[断面二次モーメント#断面二次極モーメント|断面二次極モーメント]]に等しい == 用途 == === トーションバー式サスペンション === [[自動車]]用[[サスペンション]]として、1930年代以降に用いられるようになった形式にトーションバー式サスペンション([[:en:Torsion bar suspension|Torsion bar suspension]])がある。サスペンションのメインスプリングにトーションバーを用いたもので、揺動をねじり軸方向に変換できるタイプの各種サスペンション形態に導入例が見られる。他のばねに比べ、支える荷重が大きい場合でもばね自体の[[質量]]増加が少ないため、特に[[戦車]]や[[貨物自動車|トラック]]、[[牽引自動車|トレーラー(被牽引車)]]などで多用されている。 なお、「[[トーションビーム式サスペンション]]」は使われる「ばね」による区別ではなく、車軸(アクスルビーム)本体がねじれる構造の懸架装置を指す[[用語]]で、本形式とは全く異なる。 [[File:Citroen front suspension (Autocar Handbook, 13th ed, 1935).jpg|thumb|トーションバースプリングを採用した[[シトロエン・トラクシオン・アバン|シトロエンの「トラクシオン・アバン」]]のフロントサスペンション(1934)。初期のトーションバー採用例で、2010年代でも小型トラック等でこれに倣ったサスペンションを用いる事例がある]] [[File:Axle - Trailing arm 41.gif|thumb|right|左右非対称の例。<br />左右で[[ホイールベース]]が異なるこの手法は、1960年代以降のルノー製前輪駆動車における後輪での採用例がよく知られている。]] [[スウィングアクスル式サスペンション|スウィングアクスル]]や[[ダブルウィッシュボーン式サスペンション|ダブルウィッシュボーン]]とは縦置きで、[[トレーリングアーム式サスペンション|トレーリングアーム]]とは横置きでそれぞれ組み合わされる。自動車の後輪や[[無限軌道|履帯]]用では横置きされた複数のトーションバーの干渉を防ぐため、左右の構造が非対称となる場合がある。 自動車では、サスペンションの他、アンチロールバー(いわゆる[[スタビライザー (自動車部品)|スタビライザー]])、[[セダン]]の[[トランク (自動車)#トランクリッド|トランクリッド]]、[[ピックアップトラック]]、[[ライトバン]]、[[ハッチバック]]のドロップゲート(荷台後部の[[あおり]]、バンやハッチバックでは上下分割式バックドアの下側。)のヘルパースプリングなどにトーションスプリングが使われている。[[1960年代]]以降に乗用車用サスペンションの主流を為すようになった[[ストラット式サスペンション]]にはメインスプリングとして使いにくいため主流から退いたが、アンチロールバーとしての補助使用は[[2010年代]]でも広く行われている。 スムーズな動作のためには、アームの[[軸 (機械要素)|ピボット]]とトーションバーの中心とを一致させ、「[[トルク|ねじりモーメント]]」以外がかからないようにするのが通常の設計であるが、[[フォード・モーター|フォード]]のピックアップトラックと[[スポーツ・ユーティリティ・ビークル|SUV]]のフロントや、[[PSA・プジョーシトロエン]]でのリアのように、両者がずれているため先端が[[円運動]]を起こし、トーションバーに「[[曲げモーメント]]」が発生するものもある。 また、プリロードの調整が容易で、ほとんどの場合、根元に嵌合固定されている[[カム (機械要素)|カム]]の位置を回転させるだけで簡単に車高を調節することができる。車種によっては[[ハイドロニューマチック・サスペンション|油気圧]]や[[油圧]]式のハイトコントロールが組み合わされたものもある。 日本では、[[戦後]]に[[富士重工業]](現・[[SUBARU]])が[[スバル・360]]に<ref>及びその前の試作普通乗用車[[スバル・1500|P-1]]でも同様に検討したが、P-1では採用は断念した。</ref>トーションバー式サスペンションを採用する際、多くの課題<ref>日本での乗用車での採用例が無いことや、端が太く中央部が細い形状にトーションバーを加工する際の生産性など</ref>があり、また、ばね製造元の[[日本発条]]<ref>P-1のリアの3枚リーフスプリングからの協力関係があった</ref>も生産設備を持っていなかった困難はあったが、同社の協力も得つつ採用に踏み切った。試作当初は鋼材削り出しで1本1万円のトーションバー4本は、車輛全体の価格のうちのかなりを占める高価と言えるものであったが、その後に日本発条では[[鍛造]]での量産化に成功、採用例も広まった。<ref>『スバル360開発物語: てんとう虫が走った日』 p. 83</ref>。[[スバル・1000]]にも採用したが、いずれも右図のような左右非対称となる、「車体幅一杯の長さのトーションバーをすこしずらせて配置する」という構成ではなく、中央の取付部に左右同相ならば回転できるような自由度を与え、コイルばねを併用するという構成としている<ref>なお、この構成を利用し、空車時と積載時の荷重比が大きい360ではハイトコントロールも検討したが精度のよいシリンダーの油圧装置ができず断念した。</ref>。この構成は、左右対称かつコンパクトで荷重の対応範囲も広いという利点の他、左右に等しい荷重に対しては軟らかめであるのに比しロール剛性は高めという、アンチロールバー(いわゆる[[スタビライザー (自動車部品)|スタビライザー]])を持つサスペンションと同様な性格を与えており、いわゆる「スバル・クッション」と呼ばれた乗り心地の良さなどという評判はこれのためともされる。<ref>『スバル360開発物語: てんとう虫が走った日』 pp. 84〜85</ref> [[レーシングカー]]ではコストの問題は比較的大きくなく、古くは[[ロータス・72]]のような採用例もあるように、トーションバー式サスペンションに積極的な設計者(デザイナー)もいたが、コイルばねの採用も多かった。その後、特に、ルールによりオープンホイールのため足回りがむき出しの[[フォーミュラカー]]において、極度に空力が重視されるようになると、空間効率の高さ(前面投影面積の小ささ)という利点から、[[フォーミュラ1|F1]]では1989年から1991年の[[スクーデリア・フェラーリ|フェラーリ]]([[フェラーリ・640]])以降、[[1990年代]]後半からは広く採用されるようになり、主流になっている。 サスペンション以外では、[[パナール]]の[[パナール・ディナX|ディナX]]以降のモデルや[[ホンダ・RA301]]などで、エンジンの[[ポペットバルブ|バルブ]]スプリングにトーションバーを採用した例もある。 戦車用としては、[[1934年]]に登場した[[スウェーデン]]のAB [[ランズヴェルク]]製L-60軽戦車に用いられたのが最初の例であると考えられる([[ライセンス生産]]版の[[トルディ (戦車)|トルディ]]も参照)。その後[[ドイツ]]や[[ソ連]]では比較的早く、[[1930年代]]末から量産車両に用いられた。当時の事例としては[[フォルクスワーゲン]]の[[フォルクスワーゲン・タイプ1|ビートル]]、[[キューベルワーゲン]]、[[フォルクスワーゲン・タイプ2|トランスポーター]]を挙げることができる。 日本では、[[帝国陸軍]]に委託された東北帝国大学(現[[東北大学]])市原通敏博士らによってトーションバーを軍用装軌車輌に用いる研究が行われていた。帝国陸軍は軽装甲車用トーションバーの研究を1943年8月の段階で完了している<ref>「第1 戦車、装甲車」 Ref.C14011080100</ref>。この頃より開発が始まった[[五式中戦車]](チリ車)はトーションバーサスペンションの採用が検討されていた。しかし同年、試作トーションバーサスペンションを装着した[[九八式六屯牽引車]](ロケ車)を市原博士自ら搭乗して走行試験を行っていた最中、転落事故死してしまい、戦時中の研究は停滞してしまう。その後も[[三菱重工]]では博士の研究成果を元に研究が続けられ、戦後には欧米のトーションバーの研究論文や試験検証法も取り入れられた。それらの成果を元に、戦後陸上自衛隊の発足に合わせて1956年に試作されたSS(試製56式自走105mm無反動砲。[[60式自走106mm無反動砲]]の試作車)や、同年に試作されたSTA([[61式戦車]]の試作車)、1957年に試作されたSU(試製56式装甲車。[[60式装甲車]]の試作車)でトーションバーサスペンションは一挙に採用、実用化された。 === 戦車 === 戦車などの[[無限軌道|履帯]]用も、形式上は「[[トレーリングアーム式サスペンション]]+トーションバー・スプリング」であるが、慣例からそれらを「トーションバーサスペンション」、油気圧併用のものを「[[ハイブリッド]]サスペンション」と呼ぶことが多い。 なお、近年の[[前輪駆動]]車の後輪などに多く見られる「[[トーションビーム式サスペンション]]」は、左右の[[ハブ (機械)|ハブ]]をつなぐ[[梁 (材料)|梁]](ビーム)を捻れ・撓み(トーション)に対応させた構造としたもので、トーションバー式サスペンションとは異なるものである。一般にトーションビームの構造のみでは、ある程度までの変形しか受け持てないため、荷重全体を受けるばねを別途、組み合わせる必要がある。一般的にはコイルばねが用いられるが、トーションスプリングを利用している場合もあり、そういった場合文献などで混乱が見られることもある。 === 自動車以外 === [[File:SIG-T 01.jpg|thumb|right|200 px|枕ばねに2組のトーションバー・スプリングを用いた[[シグ|SIG]]-T台車]] 少数ながら[[鉄道車両の台車]]の[[枕ばね#トーションバー|枕ばね]]に使用された例もある。[[スイス]]の[[シグ|SIG]]([[:en:Schweizerische Industrie Gesellschaft|Schweizerische Industrie Gesellschaft]])が開発した[[通称]]SIG台車と呼ばれるものがそれで、2本のトーションバー・スプリングが[[枕木]]方向に点対称に配置されている。日本ではSIGと[[ライセンス生産|ライセンス]]契約を結んだ[[日本車輌製造|日本車両]]がこれを手がけ、[[遠州鉄道30形電車|遠州鉄道30形]]、[[広島電鉄2000形電車|広島電鉄2000形]]、[[名鉄3700系電車 (2代)#その他|名鉄2代目3700系電車(モ3721で試用)]]の各車に採用された。 {{-}} == その他 == トーションバーは、取付け、取扱性を考慮して両端部のつかみ部の形状は[[スプライン]]、[[セレーション]]、六角断面が多く使われ、形状・寸法についてJIS B2705(現在は廃止)において規格化されていた。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} == 参考文献 == {{参照方法|date=2022年5月}} *『戦後日本の戦車開発史』 林磐男 著 * 陸軍省 第四陸軍技術研究所「第1 戦車、装甲車」昭和18年8月10日[[アジア歴史資料センター]](JACAR)、Ref.C14011080100。 {{DEFAULTSORT:としよんはすふりんく}} [[Category:自動車サスペンション技術]] [[Category:ばね]]
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