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[[ファイル:TorusKnot3D.png|thumb|right|(3,7)型トーラス結び目の立体的な図。]] '''トーラス結び目'''(トーラスむすびめ、Torus knot)または'''輪環結び目'''(りんかんむすびめ)とは、[[位相幾何学]]の一分野である[[結び目理論]]において、[[トーラス]]面上にぴったりと貼り付けられるような[[結び目理論#基本的な図形|結び目]]のこと。絡み目の場合は'''トーラス絡み目'''(トーラスからみめ、Torus link)という。 ==(''p'' , ''q'')型トーラス結び目== [[ファイル:torus_cycles.png|thumb|赤色の線がメリディアン、桃色の線がロンジチュード]] [[ファイル:TorusKnot-3-8.png|thumb|right|(3,8)型トーラス結び目の[[結び目理論#結び目の表示|射影図]]。]] ''p'' , ''q'' を[[互いに素 (整数論)|互いに素]]または片方が0でもう片方が±1の[[整数]]としたとき、トーラス結び目の標準形として(''p'' , ''q'')型のトーラス結び目というものが定義できる。 3次元[[ユークリッド空間]] '''R'''<sup>3</sup> または3次元[[球面]] ''S''<sup>3</sup> 内の自明なトーラス(中心曲線が[[自明な結び目]]となっているトーラス)を考え、メリディアンとロンジチュードに向きを与えておく(中心曲線・メリディアン・ロンジチュードの定義は[[トーラス#ドーナツ型]]を参照)。 このとき、トーラス上のある1点から出発して、トーラス上をメリディアンの方向に ''p'' 回、ロンジチュード方向に ''q'' 回だけまわって元に点に戻ってくるような閉曲線を(''p'' , ''q'')型の'''トーラス結び目'''という<ref>『結び目の数学』107-108頁。</ref>。ただし、''p'' , ''q'' が負のときは、最初に向きをつけたメリディアン・ロンジチュードとは逆向きにまわることにする。もし[[結び目理論#向き付け|向き]]をつけてトーラス結び目を考える場合は、このとき点を移動させた方向に沿って向きをつけることにする。 (''p'' , ''q'')型のトーラス結び目は、そのトーラスのメリディアンと |''q''| 個の交点を持ち、ロンジチュードと|''p''|個の交点を持つことになる。また、特に ''q'' = 2であるようなトーラス結び目(絡み目)は、'''初等トーラス結び目'''(絡み目)という<ref name="#1">『結び目理論とその応用』112頁。</ref>。 (''p'' , ''q'')型のトーラス結び目・絡み目には他にも以下のような定義の方法がある。 ''p'' , ''q'' が互いに素でない場合は、それらの[[最大公約数]] ''k'' と、互いに素な整数 ''p′'' , ''q′'' を使って、''p = k p′'' , ''q = k q′'' と表せるので、始点を ''k'' 個取ってそれぞれからメリディアンの方向に ''p′'' 回、ロンジチュード方向に ''q′'' 回だけまわって元の点に戻ってくるような閉曲線を交わらないようにかけば、それらはトーラス上での ''k'' 成分の絡み目となる。これを(''p'' , ''q'')型の'''トーラス絡み目'''といい、各成分は(''p′'' , ''q′'')型のトーラス結び目となる。 ===ねじった円柱による定義=== [[円柱 (数学)|円柱]]を用意し、底面の[[円周]]を ''q'' 等分するような ''q'' 個の点をとる。それぞれの点から側面に沿って垂直に上へ線分を引き、上面の円周とぶつかったところにも点をとる(合計で2''q'' 個の点があることになる)。ここで、この円柱に対し、底面と上面の中心同士を結ぶ線分を軸として 2π''p''/''q'' ([[ラジアン|rad]])だけのねじれを与える。ねじれを与えたことにより、さきほど底面の円周から上面の円周へ垂直に引いた線分は、円柱の側面を 2π''p''/''q'' (rad)だけ回転しながら底面の円周と上面の円周を結んでいることになる。この状態で円柱を曲げて底面と上面を ''q'' 個ずつの点同士が重なるように貼りあわせて同一視すると、円柱はトーラスになる(ただしこのときトーラスの中心曲線が自明な結び目になるようにする)。さきほど引いた線分は、底面と上面を貼り合せたことによって端点同士が繋がり、トーラス上で絡み目となっている。これを(''p'' , ''q'')型のトーラス絡み目と定義する<ref>『結び目理論とその応用』103-105頁。</ref>。 ===組み紐による定義=== 以下の語の[[組み紐 (数学)|組み紐]]で表された絡み目として(''p'' , ''q'')型のトーラス結び目(絡み目)を定義することもできる<ref>[[W. B. R. リコリッシュ]] 『結び目理論概説』 [[シュプリンガー・フェアラーク東京]]、2000年、13頁。ISBN 978-4431708599。</ref>。 {{Indent|<math>(\sigma_1\sigma_2\cdots\sigma_{p-1})^q \,</math>}} この語で表された ''p'' 本の組み紐は、1番目の紐がほかの紐の手前を通って ''p'' 番目に繋がり、ほかの紐はさきほどの紐の奥を通って1つだけ番号の小さい紐のところへ繋がるという交差のパターンを ''q'' 回だけ繰り返すというもので、手前側を通る紐がトーラスの上側に貼りついており、奥を通る紐がトーラスの下側に貼り付いていると考えれば、最初に述べた意味での(''p'' , ''q'')型トーラス結び目(絡み目)と同じものになることがわかる。 ===平滑化による定義=== 最初に述べた定義のときのように標準的なトーラスに向き付けたメリディアンとロンジチュードを用意しておく。 ここで、トーラス上にメリディアンと平行な |''p''| 本の閉曲線を引き、 ''p'' が正ならメリディアンと同じ向きを、負なら逆の向きを与える。同様にして、ロンジチュードと平行な |''q''| 本の閉曲線を引き、 ''q'' が正ならロンジチュードと同じ向きを、負なら逆の向きを与える。こうするとトーラス上に |''p''| + |''q''| 本の有向閉曲線があり、|''pq''| 個の交点があることになる。それらの交点は下図の図1のようになっているので、それを図2のような形に置き換えることによって交点をすべて解消する。この操作を'''平滑化'''(smoothing)という。平滑化を行ったあとの曲線は絡み目となるので、これを(''p'' , ''q'')型トーラス絡み目と定義する<ref>『結び目理論入門』47頁。</ref>。 <gallery widths="55px" heights="55px"> ファイル:Tangle flip.svg|図1(平滑化前) ファイル:Knot-crossing-zero.svg|図2(平滑化後) </gallery> ===座標による直接的な定義=== ''p'' , ''q'' は互いに素とする。3次元ユークリッド空間 '''R'''<sup>3</sup>で[[極座標系#円柱座標|円柱座標]](''r'',θ,''z'')を使うとき、[[媒介変数]] ''t'' (0≦''t''≦1)を使って {{Indent| <math> r = 1+\frac{1}{2}\cos{2 \pi pt} \, </math><br /> <math> \theta = 2 \pi qt \, </math><br /> <math> z = \frac{1}{2} \sin{2 \pi pt} \, </math> }}と表示される曲線を(''p'' , ''q'')型のトーラス結び目とする<ref>『トポロジー入門』230-231頁。</ref>。 ==トーラス結び目の性質== [[ファイル:TrefoilKnot-01.png|thumb|right|[[三葉結び目]]は(2,3)型のトーラス結び目でもある。]] 基本的な性質として、以下が成り立つ<ref>『結び目理論とその応用』108頁。</ref><ref>『結び目理論入門』48頁。</ref>。 *(''p'' , ±1)型、(±1 , ''q'')型のトーラス結び目は自明な結び目である。特に(±1 , 0)型はトーラスのメリディアン、(0,±1)型はロンジチュードとなる。 *(''p , q'')型トーラス結び目と(''q , p'')型トーラス結び目は等しい。 *(-''p'' , ''q'')型または(''p'' , -''q'')型のトーラス結び目は(''p'' , ''q'')型の[[鏡像]]である。 *トーラス結び目は'''可逆'''である。 また、以下の公式が知られている(以下では ''p'' , ''q'' は非負とする)。 ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[交点数 (結び目理論)|交点数]] ''c'' は、 :<math> c = min \{ p(q - 1) , q (p - 1) \} \, </math><ref>『結び目の数学』111頁。</ref><ref name="ouyou-119">『結び目理論とその応用』119頁。</ref> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[橋指数]] ''br'' は、 :<math> br = min \{ p , q \} \, </math><ref name="ouyou-119" /> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[組み紐指数]] ''b'' は、 :<math> b = min \{ p , q \} \, </math><ref>『結び目理論とその応用』176頁。</ref> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[結び目解消数]] ''u'' は、 :<math> u = \frac{1}{2}(p-1)(q-1) \, </math><ref name="ouyou-119" /> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[種数]] ''g'' は、 :<math> g = \frac{1}{2}(p-1)(q-1) \, </math><ref>『結び目理論概説』175頁。</ref> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[ジョーンズ多項式]] ''f(t)'' は、 :<math> f(t) = t^{\frac{1}{2} (p-1)(q-1)}\frac{1-t^{p+1}-t^{q+1}+t^{p+q}}{1-t^2} \, </math><ref>『結び目の数学』153頁。</ref> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[アレクサンダー多項式]] ''f(t)'' は、 :<math> f(t) = \frac{(1-t)(1-t^{pq})}{(1-t^p)(1-t^q)} \, </math><ref name="#1"/> ;(''p , q'')型トーラス結び目の[[基本群]] π (''K'')は、 :<math> \pi (K) = \{ a,b | a^p=b^q \} \, </math><ref>『トポロジー入門』233頁。</ref> ==自明でないトーラスでのトーラス結び目== [[ファイル:KnottedTorus.png|thumb|right|[[三葉結び目]]状のトーラス。この上でトーラス結び目のようなものを考えることもできる。]] 3次元空間において自明でない結び目状になっているトーラスを考える場合も、メリディアンは通常のトーラスと同様に定義できる。ロンジチュードについては、メリディアンと垂直な方向にトーラス面上を一周するような同位でない複数の閉曲線のうち、トーラスの中心曲線との[[結び目理論#結び目不変量|絡み数]]が0になるようなもの<ref>V. V. Prasolov, A. B. Sossinsky, ''Knots, Links, Braids and 3-Manifolds'', Amer Mathematical Society, 1993, p. 102. ISBN 978-0821808986.</ref>、あるいは中心曲線の[[ザイフェルト曲面]]とトーラスの共通部分となっているもの<ref> 『結び目理論とその応用』123頁。</ref>をロンジチュードとして採用することにする(どちらで定義しても[[同値]]である)。 このようにすると、自明でない結び目状になっているトーラスにおいても(''p , q'')型トーラス結び目(絡み目)に相当するものを考えることができる。ただし、それは通常のトーラスでの同じ型のトーラス結び目とは異なるものとなる。 これはケーブル結び目と呼ばれる。 ==関連項目== *[[サテライト結び目]]・[[双曲結び目]] **全ての結び目はトーラス結び目かサテライト結び目か双曲結び目のいずれかである<ref>『結び目の数学』118-119頁。</ref>。 ==参考文献== * [[C・C・アダムス]]著、[[金信泰造]]訳 『結び目の数学』 [[培風館]]、1998年、107-113頁。ISBN 978-4563002541。 * [[村杉邦男]] 『結び目理論とその応用』 [[日本評論社]]、1993年、103-111頁。ISBN 978-4535781993。 * [[鈴木晋一]] 『結び目理論入門』 [[サイエンス社]]、1991年、47-49頁。ISBN 978-4781906331。 * [[クゼ・コスニオフスキ]]著、[[加藤十吉]]訳編 『トポロジー入門』 [[東京大学出版会]]、1983年、230-237頁。 {{reflist}} ==外部リンク== *{{MathWorld|urlname=TorusKnot|title=Torus Knot}} {{DEFAULTSORT:とらすむすひめ}} [[Category:結び目理論]] [[Category:数学に関する記事]]
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