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[[Image:Dragon curve animation.gif|right|300 px]] '''ドラゴン曲線'''(ドラゴンきょくせん、{{Lang-en|''Dragon curve''}})とは、[[L-system]](リンデンマイヤー・システム)のような[[再帰|再帰法]]を用いて構成することの出来る、ある[[自己相似|自己相似性]][[フラクタル]]の族に含まれている曲線のことを言う。 ==ヘイウェイ・ドラゴン== [[Image:Fractal dragon curve.jpg|thumb|ヘイウェイ・ドラゴン曲線]] '''ヘイウェイ・ドラゴン'''('''ハーター・ヘイウェイ・ドラゴン'''あるいは'''ジュラシック・パーク・ドラゴン'''とも呼ばれる)は、[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]の物理学者のジョン・ヘイウェイ、ブルース・バンクスおよびウィリアム・ハーターによって初めて研究され、1967年、雑誌『[[サイエンティフィック・アメリカン]](Scientific American)』の[[マーティン・ガードナー]]によるコラム「数学ゲーム([[:en:Mathematical Games|Mathematical Games]])」で紹介された。その性質については'''チャンドラー・デイビス'''と[[ドナルド・クヌース]]によって初めて出版化された。[[マイケル・クライトン]]の小説『[[ジュラシック・パーク]]』の節ごとのタイトルページで使用されている。 ===構成方法=== [[Image:DragonCurve animation.gif|right|400px|Recursive construction of the curve]] ヘイウェイ・ドラゴンは、 *角度 90° *初期[[文字列]] ''FX'' *[[文字列書き換え系|文字列書き換え]]規則 **''X'' <math>\rightarrow</math> ''X''+''YF''+ **''Y'' <math>\rightarrow</math> −''FX''−''Y''. であるような[[L-system]]により構成することが出来る。 また、次のような手順で描くことが出来る: 基本となる線分から始めて、各線分を「直角をなすような二つの線分」によって置き換える。ただし置き換える際に線分を回転させる方向は、右、左…と交互になるようにする。 [[Image:Dragon curve iterations (2).svg|none|700px|The first 5 iterations and the 9th]] ヘイウェイ・ドラゴンは次のような複素平面における[[反復関数系]]の極限集合でもある: :<math>f_1(z)=\frac{ \left(1+i \right)z}{2}</math> :<math>f_2(z)=1-\frac{ \left(1-i \right)z}{2}</math> ここで、点の初期集合は <math>S_0=\{0,1\}</math> とする。 実数のペアを用いれば、これは次のような二つの関数 :<math>f_1(x,y)= \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} \cos 45^\circ & -\sin 45^\circ \\ \sin 45^\circ & \cos 45^\circ \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix} \equiv \dfrac{1}{2}\begin{bmatrix} 1& -1\\1 & 1\end{bmatrix}\begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix},</math> :<math>f_2(x,y)= \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{bmatrix} \cos 135^\circ & -\sin 135^\circ \\ \sin 135^\circ & \cos 135^\circ \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix} + \begin{bmatrix} 1 \\ 0 \end{bmatrix}\equiv \dfrac{1}{2}\begin{bmatrix}-1 & -1 \\ 1 & -1\end{bmatrix}\begin{bmatrix} x \\ y \end{bmatrix}+\begin{bmatrix} 1 \\ 0 \end{bmatrix}</math> とも等しい。[[:en:Apophysis_(software)|Apophysis]]のようなソフトウェアでは、こちらの表現の方が一般的に使われている。 ===次元=== *その奇妙な外観にかかわらず、ヘイウェイ・ドラゴン曲線の次元は単純なものである。 [[Image:Dimensions_fractale_dragon.png|none|500px]] *その'''表面'''(surface)も単純である。初期線分が 1 と等しいなら、その表面は <math>\textstyle{\frac{1}{2}}</math> と等しくなる。この結果は、曲線が敷き詰められていく性質に起因する。 *その境界の長さは無限大である。なぜならば、反復が行われる毎に係数 <math>{\sqrt{2}}</math> によって増大していくからである<ref>http://library.thinkquest.org/26242/full/fm/fm8.html</ref>。 *ヘイウェイ・ドラゴン曲線は、自分自身とは決して交わらない。 *ヘイウェイ・ドラゴン曲線には多くの'''自己相似性'''が見られる。もっとも分かりやすいものは、45° の傾きと減少率 <math>\textstyle{\sqrt{2}}</math> を伴うパターンの繰り返しである。 [[Image:Auto-similarity dragon curve.png|none|350px]] *その[[フラクタル次元]]は計算によって <math>\textstyle{\frac {\ln 2} {\ln \sqrt{2}} = 2}</math> であることが分かる。これにより、ヘイウェイ・ドラゴン曲線は[[空間充填曲線]]であることが分かる。 *その'''境界'''のフラクタル次元の数値的な近似は Chang と Zhang によって得られた<ref name="chang"> [http://poignance.coiraweb.com/math/Fractals/Dragon/Bound.html Fractal dimension of the boundary of the Dragon curve]</ref>。実際、解析的には :<math>\log_2\frac{1+\sqrt[3]{73-6\sqrt{87}}+\sqrt[3]{73+6\sqrt{87}}}{3}\cong 1.523627086202492.</math> と得られる<ref>"[http://demonstrations.wolfram.com/TheBoundaryOfPeriodicIteratedFunctionSystems/ The Boundary of Periodic Iterated Function Systems]" by Jarek Duda, [[The Wolfram Demonstrations Project]]. Recurrent construction of the boundary of dragon curve.</ref>。これは方程式 <math>\textstyle{4^x \left(2^x-1 \right)=4 \left(2^x+1 \right)}</math> の根である。 ===タイル張り=== ドラゴン曲線には、平面上にタイル張りする方法が多く存在する。 <center> <gallery> Image:Dragon tiling1.svg|4つの曲線による第1エレメント Image:Dragon tiling2.svg|4つの曲線による第2エレメント Image:Dragon tiling3.svg|4つの曲線による第3エレメント Image:Dragon tiling dragon.svg|自分自身のタイル張り Image:Dragon tiling4.svg|2つの曲線による第1エレメント Image:Dragon tiling5.svg|2つの曲線による第2エレメント(ツインドラゴン) Image:Dragon tiling6.svg|2つの曲線による第3エレメント Image:Full tiling dragon.svg|平面タイル張りの例 Image:Full tiling dragon2.svg|平面タイル張りの例 Image:Full tiling dragon3.svg|平面タイル張りの例 Image:Dragon spiral tiling.png|ある初期スパイラルから sqrt(2) の比率でサイズが増大していくドラゴン曲線。90° の回転を伴う4スパイラルによる平面タイル張り </gallery> </center> ==ツインドラゴン== 二つのヘイウェイ・ドラゴンを背中合わせに配置することにより、'''ツインドラゴン'''('''デイビス-クヌース・ドラゴン'''とも呼ばれる)を作ることが出来る。それは反復関数系 :<math>f_1(z)=\frac{(1+i)z}{2}</math> :<math>f_2(z)=1-\frac{(1+i)z}{2}</math> の[[極限集合]]でもある。ここでの初期形状は集合 <math>S_0 = \{0,1,1-i\}</math> により定義される。 {| |[[Image:Lévy's dragon curve (IFS).jpg|thumb|ツインドラゴン曲線]] |[[Image:TwinDragon.svg|thumb|二つのヘイウェイ・ドラゴンにより構成されるツインドラゴン曲線]] |} ==テルドラゴン== [[Image:Terdragon.png|thumb|right|250px|テルドラゴン曲線]] '''テルドラゴン'''は[[L-system]] *角度 120° *初期文字列 ''F'' *文字列書き換え規則 **''F'' <math>\rightarrow</math> ''F+F−F''. により書くことが出来る。それは反復関数系 :<math>f_1(z)=\lambda z</math> :<math>f_2(z)=\frac{i}{\sqrt{3}}z + \lambda</math> :<math>f_3(z)=\lambda z + \lambda^*</math> の極限集合でもある。ただし <math>\lambda=\frac{1}{2}-\frac{i}{2\sqrt{3}}</math> および <math>\lambda^*=\frac{1}{2}+\frac{i}{2\sqrt{3}}</math> である。 ==レヴィ・ドラゴン== [[レヴィC曲線]]はしばしば'''レヴィ・ドラゴン'''とも呼ばれる。 {| |[[Image:Lévy's C-curve (IFS).jpg|thumb|200px|レヴィC曲線]] |} ==解集合から導かれるドラゴン曲線== ある微分方程式の解集合が得られたとき、それらの解の[[線形結合]]は、[[重ね合わせの原理]]により再び元の微分方程式を満たすものとなる。これはすなわち、すでに存在している解の集合に対してある関数を適用することによって、新たな解を導くことが出来るという意味でもある。これは反復関数系を用いてある集合内に新たな点を導出する方法と同様である(ただし、そのような反復関数は線形関数であるとは限らない)。同様な概念により、関数の集合へとそのような反復的な手法を用いることによって、{{仮リンク|リトルウッド多項式|en|Littlewood polynomial}}の集合を導くことが出来る。 リトルウッド多項式とは、多項式 :<math> p(x) = \sum_{i=0}^n a_i x^i \, </math> のことである(ここで <math>a_i</math> は 1 か -1 のいずれか)。 |w| < 1 を満たすようなある w に対して、関数系 :<math> f_+(z) = 1 + wz</math> :<math> f_-(z) = 1 - wz</math> を定義する。どのような次数 d のリトルウッド多項式であっても、この関数系の z=0 から始めた d+1 回の反復操作によって導出することが出来る<ref name='ncafe'>http://golem.ph.utexas.edu/category/2009/12/this_weeks_finds_in_mathematic_46.html</ref>。例えば、<math>f_+(f_-(f_-(0))) = 1 + (1-w)w = 1 + 1w - 1w^2</math> など。 '''w = (1+i)/2''' である場合、上の関数系はヘイウェイ・ドラゴンの反復関数系と等しいことが分かる。すなわち、ヘイウェイ・ドラゴンは、ある反復操作によって、点 '''w = (1+i)/2''' において評価されるある次数までのすべてのリトルウッド多項式からなる集合を表すものである。実際、リトルウッド多項式の根を十分多くの数プロットしたとき、それらの座標の近くにドラゴン曲線と似た構造が現れることとなる<ref name='ncafe'/><ref>https://math.ucr.edu/home/baez/week285.html</ref><ref>http://johncarlosbaez.wordpress.com/2011/12/11/the-beauty-of-roots/</ref>。 ==注釈== <references/> ==参考文献== * [[Donald Knuth]], ''[[The Art of Computer Programming]]'', vol. 2. Addison-Wesley. ==関連項目== * [[ドラゴン]] * {{仮リンク|ハウスドルフ次元によるフラクタルの一覧|en|List of fractals by Hausdorff dimension}} * {{仮リンク|複素基本系|en|Complex base systems}} * {{仮リンク|正規折紙列|en|Regular paperfolding sequence}} ==外部リンク== {{Commons|Dragon curve}} *[http://mathworld.wolfram.com/DragonCurve.html Dragon Curve]—from [[MathWorld]] *[http://jason.jjtchiu.com/flash/fractal.swf Dragon Curve Maker in Flash] *[http://www.eschertile.com/pic/dragon3.gif Tile made by David Chow] *[http://www.eschertile.com/java/Dragon/dragon.htm Twin dragon tile with JAVA] *[http://www.woollythoughts.com/dragons.html Crochet representation of Dragon Curves] {{Fractals}} {{Math-stub}} {{DEFAULTSORT:とらこんかあふ}} [[Category:フラクタル]] [[Category:フラクタル曲線]] [[Category:折り紙]] [[Category:数学に関する記事]]
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