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{{Chembox |出典= |画像1=Nitrocellulose-2D-skeletal.png |画像サイズ1= |画像キャプション1=ニトロセルロースの部分構造 |画像2=Nitrocellulose hexanitrate.jpg |画像サイズ2= |画像キャプション2=綿状のニトロセルロース |IUPAC名=<!-- | IUPACName_hidden = yes で長いIUPAC名を隠す--> |別称= |Section1= {{Chembox Identifiers |CAS番号=9004-70-0 |PubChem= |SMILES= }} |Section2={{Chembox Properties |化学式=({{chem|C|6|H|9|(N|O|2|)O|5|)|''n''}} <br/> ({{chem|C|6|H|8|(N|O|2|)|2|O|5|)|''n''}} <br/> ({{chem|C|6|H|7|(N|O|2|)|3|O|5|)|''n''}} |モル質量= |外観=白色または淡黄色の綿状物質 |密度= |融点=160 to 170 °C |沸点= |溶解度= }} |Section3={{Chembox Hazards |主な危険性= |NFPA-H=2 |NFPA-F=3 |NFPA-R=3 |NFPA-O= |引火点=4.4 °C |発火点= |LD50=10 mg/kg }} }} '''ニトロセルロース'''({{lang-en-short|nitrocellulose}})は、硝酸繊維素、硝化綿ともいい、[[セルロース]]を[[硝酸]]と[[硫酸]]との[[混酸]]で処理して得られるセルロースの[[硝酸エステル]]である。白色または淡黄色の綿状物質で、着火すると激しく[[燃焼]]する。 == 概要 == セルロースを構成する[[グルコース]]1単位分子あたり3か所で[[硝酸エステル]]化することが可能だが、さまざまな程度に硝化されたものが得られ、[[窒素]]の含有量で区別する。綿状であるため、[[日本]]では[[窒素]]量が13%以上のものを強綿薬、10%未満のものを脆綿薬、その中間を弱綿薬と称する。 ニトロセルロースはフィルム強度が高く[[溶媒]]の速乾性に優れており、また、[[可塑剤]]、[[合成樹脂|樹脂]]、[[顔料]]などの添加で改質することができる。[[樟脳]]と混合してつくられた[[セルロイド]]は世界最初の熱可塑性[[合成樹脂]]である。フィルムや[[セルロイド]]は広範に使用されたが、[[可燃性]]と[[経時劣化]]が指摘されたため、現在ではこれらの用途にはより難燃性の[[合成樹脂]]が使用されるようになった。 == 用途 == 主な用途は[[ラッカー]]塗料や[[火薬]]、[[接着剤]](ニトロセルロース系接着剤)<ref>代表的な製品としては「セメダインC」ことセメダイン321がある。製品安全データシートによれば、基剤としてニトロセルロースを10%~20%・溶剤としてアセトンを40%~50%含む。残りの50%~30%はその他の添加基剤・溶剤である。</ref>である。かつては[[ロケットエンジンの推進剤]]などにも使用された。[[手品]]で紙を一瞬で燃やす場合、紙状や綿状のニトロセルロースを使用する。紙状の物はフラッシュペーパー、綿状の物はフラッシュコットンと呼ばれる。燃やしても灰が出ない特性を活かしている。 === 火薬 === ニトロセルロースを主成分として各種の添加剤を加えて造粒した火薬は[[黒色火薬]]に替わる[[小火器]]、[[火砲]]の発射薬として使用されている。発射にあたって大量の白煙を上げる黒色火薬に比して[[無煙火薬]]と呼ばれる。また開発者の一人である[[フレデリック・エイベル]]による「[[コルダイト]]」の名称でも知られる。このうち主にニトロセルロースのみを使用した火薬をシングルベース火薬と呼ぶ。現在のほとんどの[[拳銃]]や[[アサルトライフル]]が弾薬として[[シングルベース火薬]]を使用している。燃焼の調整を目的としてニトロセルロースに[[ニトログリセリン]]を加えたものを[[ダブルベース火薬]]、さらに[[ニトログアニジン]]を加えた物を[[トリプルベース火薬]]と呼ぶ。こちらは主に大口径火砲の装薬として使用されている。 === ナイトレートフィルム === 1887年5月2日にハンニバル・グッドウィンが、ニトロセルロースを使用した映像用[[写真フィルム|フィルム]]の製造方法の特許を申請後<ref>{{US Patent|610861}}</ref>、ナイトレートフィルムと呼ばれる映像用フィルムに使用されていた。しかし、このフィルムは自然発火し、度重なる火災、多くの犠牲者、歴史的な映画フィルムの焼失が幾度も発生した(例:[[1937年フォックス保管庫火災]]など)。そのためX線写真用フィルムは1930年代から、映画用フィルムは1948年から[[安全フィルム]]に置き換わった。ナイトレートフィルムを上映するには防火設備などが求められるため、上映できる劇場は{{仮リンク|ジョージ・イーストマン博物館|en|George Eastman Museum}}や[[エジプシャン・シアター]]など数少ない<ref>{{cite web|title=Nitrate Film: If It Hasn’t Gone Away, It’s Still Here!|url=https://protekvaults.com/nitrate-film-if-it-hasnt-gone-away-its-still-here/|website=Pro-Tek Vaults|accessdate=11 March 2016}}</ref>。 ニトロセルロースの性質上の問題もあって、一般にナイトレートフィルムの現存数は少なく、貴重な文化遺産となっており、厳重な管理が求められる。ナイトレートフィルムは物質の性質上、火に非常に弱いこと以外にも、長期保管中に焼失せずとも厳重な管理がなされていない場合劣化もしやすく、FIAF(国際フィルム・アーカイブ連盟)ではナイトレートフィルムの劣化を以下の5段階で示している。<ref>[https://kirokueiga-hozon.jp/images/hozon/pdf/nitratefilm.pdf 可燃性フィルムを所有していませんか?]</ref> * 第1段階 - フィルムの画像が薄れていく。乳剤が茶系に変色する。微かな異臭。 * 第2段階 - 乳剤面がべとべとになる。微かな異臭。 * 第3段階 - 乳剤面の溶解、ガスの発生を伴う気泡が出る。異臭が激しくなる。映画としての複製・復元が不可能になる。 * 第4段階 - フィルムが固い塊になる。強烈な異臭。 * 第5段階 - フィルムが茶系色の粉末になる。 == 歴史 == * [[1832年]] - [[フランス]]の[[アンリ・ブラコノー]]が澱粉や綿などを濃硝酸に入れて暖めて溶解させ、水洗いすると強燃性の白い粉末が出来ることを発見し、これをキシロイジンと命名した。 * [[1838年]] - フランスの[[テオフィル=ジュール・ペルーズ]]が木綿、亜麻、紙などを濃硝酸で処理して可燃物質を作り、これをパイロキシリンと呼んだ。 * [[1845年]] - [[スイス]]で[[クリスチアン・シェーンバイン]]が硝酸と硫酸の混酸で木綿を処理して高硝化度のニトロセルロースを作り、火薬としての応用法を発見した。 * [[1886年]] - 最初の実用火薬として[[ポール・ヴィエイユ]]が[[B火薬]]として実用化する。 * [[1889年]] - より安定した[[コルダイト]]が[[フレデリック・エイベル]]と[[ジェイムズ・デュワー]]によって発明される == 製造法 == 工業的にはセルロースを硝酸と硫酸の混酸で硝化する方法で製造される。 : <chem>{3HNO3} + C6H10O5 ->[H_2SO_4] {C6H7(NO2)3O5} + 3 H2O</chem> ; 硝化 : 硝化装置には主に三種類の方式があるが、現在ではデュポン式のみになっている。 :* トムソン式(置換式) :* セルウィヒ・ランゲ式(旋回式) :* デュポン式(攪拌式) ; 精製 : 硝化反応が終わったら、大量の水で煮洗を10回、流水洗を5回くり返し、念入りに酸を取り除く。この工程で繊維の裁断も同時に行う。一般に、洗うのに60時間、裁断に5時間を要する。洗浄が終わったらふるいにかけたり磁石で金属を取り除いたりして不純物を除去する。最後に脱水機にかけて水分を取り除く。 ; 加工 : 膠化剤としてニトログリセリンなどを加えたり、自然分解しないように安定化剤などを加え、アセトンなどの溶剤に溶いて目的の形へ加工する。 == 事故 == 過去に何度も製造過程の不具合による自然発火事故が起きている。自然発火事故は特に危険であり、火薬の分量がまとまっているほど事故の危険度は高くなるが、技術水準の低かった戦前の日本では重火砲の装薬が自然発火して自爆する事故が相次いだ。海外でも[[B火薬]]の時代には事故が相次いでいた。 また、製造技術が低いと早く劣化する火薬ができてしまい、不発弾薬が続出する原因になる。特に以下のような欠陥の有る火薬は自然発火を起こすか、不発になるかの二者択一になると言われるほど危険である。 * 製造過程で酸が適切に洗い流されていない。 * 繊維の裁断が均質に行われず、繊維の塊ができる。 * 硝化度が不均一で窒素量が一定していない。 * 不純物が混入している、特に金属粉末は極めて危険である。 保管においては、摩擦を防ぐため[[アルコール]]などで湿潤させる必要がある。[[1964年]]には[[東京都|東京]]で、ニトロセルロースの湿潤が不完全と推定される火災が発生し、消防士19人が殉職する[[爆発事故]]が発生している([[品川勝島倉庫爆発火災]])。 == 脚注 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[火薬]]、[[炸薬]]、[[ダイナマイト]] * [[硝酸エステル]] * [[コロジオン]] * [[ラッカー]] * [[シングルベース火薬]]、[[ダブルベース火薬]]、[[トリプルベース火薬]] * [[失われた映画]] ** [[1937年フォックス保管庫火災]] ‐映像制作会社{{仮リンク|フォックス映画|en|Fox Film}}フィルム保管庫におけるフィルム成分分解発火による火災 ** [[1965年MGM保管庫火災]] ‐ 映像制作会社[[メトロ・ゴールドウィン・メイヤー]]の保管庫で起きた[[短絡|電気ショート]]からナイトレートフィルムに燃え広がった火災 == 外部リンク == * {{ICSC|1560|title=ニトロセルロース(窒素含量12.6%未満)}} {{authority control}} {{DEFAULTSORT:にとろせるろおす}} [[Category:セルロース]] [[Category:硝酸エステル]] [[Category:火薬]] [[Category:爆薬]] [[Category:第5類危険物]]
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