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ノイズ (電子工学)
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[[電子工学]]における'''ノイズ'''(noise)または'''雑音'''とは[[電気信号]]の無作為な変動であり、全ての[[電気回路]]に存在する。電子機器が発生するノイズは様々で、その発生原因もいくつかある。[[熱雑音]]と[[ショット雑音]]は[[物理法則]]に起因し、防ぐことができない。一方、他のノイズは機器に起因するもので、多くが製造品質や[[半導体]]の欠陥による。 一般にノイズは好ましくないが、ノイズを有効活用する用途として[[乱数]]発生や後述する[[ディザ]]がある。 == 指標 == [[電気通信]]においては、ノイズは有用な情報を含む信号に対して誤りや不要で無作為な外乱をもたらし、受信側の検波器やデコーダの前または後に生じる。ノイズは天然や人造の発生源からの無用かつ妨げとなるエネルギーの総和である。しかしノイズは一般に[[混信]]([[漏話]]、[[ジャミング]]、特定の送信機による他の好ましくない[[電波障害]])と区別され、[[SN比]](信号対雑音比)のほかにSIR([[信号対混信比]])やSNIR([[信号対雑音干渉電力比]])といった指標がある。また、信号波形の好ましくない変形である[[歪み (電子機器)|歪み]]とも区別されるのが普通で、[[SINAD]](信号対雑音+歪み比)という指標がある。搬送波を変調する通過帯域アナログ通信システムにおいては、受信機の入力におけるCNR([[搬送波対雑音比]])が実際に受信された信号におけるSN比の一定部分を生じる。デジタル通信システムでは、[[Eb/N0|''E''<sub>b</sub>/''N''<sub>0</sub>]]が[[符号誤り率]]の一定部分を生じる。 == 種類 == === 熱雑音 === {{Main|熱雑音}} 熱雑音は'''ジョンソン・ナイキスト・ノイズ'''とも呼ばれ、[[電気伝導体]]中の[[電荷担体]](通常は[[電子]])の熱による無作為な動きによって発生し、防ぐことが出来ない。印加[[電圧]]の大小に関わらず発生する。 熱雑音はほぼ[[ホワイトノイズ]]であり、その[[スペクトル密度|パワースペクトル密度]]は[[周波数スペクトル]]全域に渡ってほぼ同じである。その信号としての振幅は[[正規分布]]に極めて近い。熱雑音の影響を考慮した通信システムのモデルとして「加法性ホワイトガウスノイズ (AWGN) チャネル」がある。 抵抗器 ''R''([[オーム|Ω]])で帯域幅 Δ''f''([[ヘルツ|Hz]])のとき、熱雑音 <math>v_n</math> の[[二乗平均平方根]] (RMS) 電圧は次のようになる。 :<math> v_{n} = \sqrt{ 4 k_B T R \Delta f } </math> ここで ''k<sub>B</sub>'' は[[ボルツマン定数]]([[ジュール|J]]/[[ケルビン|K]])、''T'' はその抵抗器の絶対温度(K)である。 熱雑音の量はその回路の温度によって決まるため、[[電波望遠鏡]]の[[プリアンプ]]のような高感度の回路では、[[液体窒素]]で冷却して熱雑音を低減させることがある。 また、雑音元([[信号 (電気工学)|信号]]元)から回路に入力される雑音[[電力]]を入力雑音電力と言い、[[電気通信]]分野での[[増幅器]]雑音計算には専らこちらが使用される。入力雑音電力''N'' <sub>i</sub> [W]は次式で与えられる。 :<math>N_\mathrm{i} = k_\mathrm{B}T \Delta f</math> === ショットノイズ === {{Main|ショット雑音}} ショットノイズとは、[[電気伝導体]]における[[電流]]の統計的に無作為なゆらぎであり、防ぐことができない。無作為なゆらぎは電流が離散的な電荷([[電子]])の流れであることに起因するもので、常につきまとう問題である。 === フリッカノイズ === フリッカノイズは'''1/fノイズ'''とも呼ばれ、高周波ほど確実に小さくなる[[ピンクノイズ]]の[[周波数スペクトル]]を持つノイズ(信号)である。ほとんど全ての電子素子で発生し、その原因となる物理現象は様々だが直流成分と密接な関係がある。 === バーストノイズ === {{Main|バーストノイズ}} バーストノイズは、2つかそれ以上のレベル間で([[ガウス雑音]]的でない)突然のステップ状の遷移が起きるもので、その差は数百[[ボルト (単位)|ミリボルト]]程度であり、無作為かつ予測不能なタイミングで発生する。オフセット電圧またはオフセット電流のシフトは数ミリ秒続き、そのパルスの間隔は[[低周波]]の範囲内(100[[ヘルツ|Hz]]未満)ということが多い。そのため、音響回路でパチパチいう破裂音として現れ'''ポップコーン・ノイズ'''とも呼ばれる。 === アバランシェノイズ === アバランシェノイズは、接合ダイオードが[[アヴァランシェ・ブレークダウン|アバランシェ降伏点]]で動作するときに発生するもので、[[衝突電離]]によって自由電子が急激に増加するため、電流が不安定に増大しノイズとなる現象である。 == 定量化 == 電子システムにおける'''雑音レベル'''は一般に、電力 ''N''(単位は[[ワット|W]]または[[dBm]])、[[二乗平均平方根]] (RMS) 電圧(単位は[[ボルト (単位)|V]]または[[デシベル|dBμV]]、ノイズの[[標準偏差]]と同じ)、[[平均平方誤差]] (MSE) 電圧(単位はV<sup>2</sup>)で示される。ノイズの特性を表すのに、[[確率分布]]や[[雑音スペクトル密度]] ''N''<sub>0</sub>(''f'') (単位はV/Hz)を使うこともある。 ノイズ信号は一般に有用な情報信号に線形に付加されると考えられる。ノイズに関する典型的な信号品質尺度として[[SN比]](信号対雑音比)があり、[[アナログ-デジタル変換回路|アナログ-デジタル変換]]や圧縮におけるSQNR(信号対量子化雑音比)、画像や動画の符号化におけるPSNR(ピーク信号対雑音比)、デジタル通信における[[Eb/N0|''E''<sub>b</sub>/''N''<sub>0</sub>]]、搬送波変調システムにおけるCNR(搬送波対雑音比)、カスケード増幅器における[[雑音指数]]などがある。 ノイズは[[確率過程]]であり、その確率的特性は[[分散 (確率論)|分散]]、[[確率分布|分布]]、[[スペクトル密度]]などで表される。ノイズのスペクトル分布は[[周波数]]によって変化することがあるので、その電力密度はワット毎ヘルツ (W/Hz) という単位で表される。[[抵抗器]]における電力はそこに印加された電圧の二乗に比例するので、ノイズ電圧(密度)はノイズ電力密度の平方根で計算でき、その単位は <math>\scriptstyle \mathrm{V}/\sqrt{\mathrm{Hz}}</math> となる。[[オペアンプ]]などの[[集積回路]]では入力換算雑音 (EIN) が一般に使われる。 ノイズ電力はワットまたは標準電力からの相対指標として[[デシベル]] (dB) で表され、一般にdB の後にサフィックスをつけて示す。例えば、雑音レベルの測定単位として、[[デシベル|dBu]]、[[:en:dBm0|dBm0]]、[[:en:dBrn|dBrn]]、[[:en:dBrnC|dBrnC]]、dBrn(''f''<sub>1</sub> − ''f''<sub>2</sub>)、dBrn(144-[[:en:line (electrical engineering)|line]]) などがある。 雑音レベルは一般に信号レベルと相反するものと見なされ、[[SN比]]の一部とされることが多い。電気通信システムは効率的にデータを送るためにSN比を増大させるよう努力してきた。実際、送信信号が雑音レベル(ノイズフロア)以下になると、受信機がデータを復元できなくなる。電気通信システムにおけるノイズは、内部で発生するものと外部で発生するものがある。 == ディザ == [[量子化雑音]]のようにノイズ発生源が信号そのものと密接に相関している場合、[[ディザ]]と呼ばれるノイズを意図的に導入することで問題となる帯域幅におけるノイズの総量を減らすことができる。この技法は機器の名目検出しきい値以下で信号を扱えるようにする。[[確率共鳴]]の一例である。 == 参考文献 == * [http://www.sengpielaudio.com/calculator-noise.htm White noise calculator, thermal noise - Voltage in microvolts, conversion to noise level in dBu and dBV and vice versa] * {{Cite book| author=Sh. Kogan | title=Electronic Noise and Fluctuations in Solids | publisher=Cambridge University Press | year=1996 | isbn=0521460344}} == 関連項目 == * [[ノイズ]] ** [[ベリノイズ]] ** [[モスキートノイズ]] ** [[スノーノイズ]] ** [[量子化雑音]] ** [[ハムノイズ]] ** [[ブロックノイズ]] * [[スイッチング電源]] * [[リアクトル]] * [[スケルチ]] * [[電波伝播]]-[[電波障害]] == 外部リンク == * [http://www.c-c-i.com/node/77 Active Filter (Sallen & Key) Noise Study] {{FS1037C MS188}} {{DEFAULTSORT:のいす}} [[Category:電子工学]] [[Category:ノイズ]] [[de:Stromrauschen]] [[es:Ruido (comunicación)]]
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