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バーンサイドの定理
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[[Image:Burnside 2.jpeg|thumb|ウィリアム・バーンサイド]] [[数学]]における'''バーンサイドの定理'''(バーンサイドのていり、{{Lang-en-short|Burnside theorem}})は、[[位数]]が[[素数]] ''p'' , ''q'' と非負[[整数]] ''a'' , ''b'' により :<math>p^a q^b\ </math> と書ける[[有限群]] ''G'' は必ず[[可解群]]になることを主張する[[群論]]の定理である。この定理は位数が ''p{{sup|a}}'' と書ける有限群([[p群|''p'' 群]])は必ず([[冪零群]]であるから)可解群になる、というよく知られた主張の拡張と見做せる。これより、任意の[[可換群|非可換]]な有限[[単純群]]の位数は少なくとも3個以上の素因数を持たねばならない。 バーンサイドの定理は次のフィリップ・ホールによる名高い可解群の[[特徴づけ (数学)|特徴づけ]]の特別な場合である。 :有限群が可解群であることと、任意の素数 ''p'' に関して[[ホール部分群|ホール ''p''′-部分群]]が存在することは同値である<ref>{{cite book |author = D. Gorentein |year = 1980 |title = Finite Groups |edition = Second |publisher = American Mathematical Society |isbn = 978-0-8218-4342-0 |loc = Theorem 6.4.5 (P. Hall) |page = {{google books quote|id=hUsMFbMGZqoC|page=233|233}} }}</ref>。 ==歴史== この定理は[[ウィリアム・バーンサイド]]により有限群の[[群の表現|表現論]]を使って証明された{{harv|Burnside|1904}}。いくつかの特別な場合は既にバーンサイド、ジョルダン、フロベニウスといった数学者によって証明が与えられていた。[[ジョン・G・トンプソン]]は自身のN群の理論によって表現論を使わない証明が得られると指摘し、実際に位数が奇数の場合の証明{{harv|Goldschmidt|1970}}、位数が偶数の場合の証明{{harv|Bender|1972}}が与えられた。{{harvtxt|Matsuyama|1973}} は証明を簡単にした。 ==証明== [[背理法]]による。 ''p'' ,''q'' を固定する。位数がこの形で書けるような非可解群がもし存在するなら、その中で位数が最小となるものがあるから、はじめから ''G'' がそのような位数最小の群であるとしてよい。 ;''G'' の[[群の中心|中心]] ''Z''(''G'') は単位元のみからなる。また ''a'' も ''b'' も0でない。 ''G'' が自明でない[[正規部分群]] ''H'' を持てば、位数の最小性より ''H'' と[[商群]] ''G''/''H'' はともに可解群になるから、''G'' も可解群となって矛盾する。よって ''G'' は[[単純群]]である。 ''G'' の中心 ''Z''(''G'') は ''G'' の正規部分群だが、''G'' は可換群ではあり得ないので ''G'' 自身とは一致せず、よって単位元のみになるしかない。 ''a'' または ''b'' が0だとすると、''G'' は有限 [[p-群|q-群]](または有限 p-群)であり、よって[[冪零群]]となり、従って可解群になって矛盾する。 ;[[共役類]]の元の個数が ''q<sup>d</sup>'' ( ''d'' > 0 )であるような ''G'' の元 ''g'' が存在する。 [[シローの定理]]より、''G'' には位数 ''p<sup>a</sup>'' の部分群 ''S'' が存在する。''S'' は非自明な ''p''-群だから、その中心 ''Z''(''S'') は非自明である。そこで単位元でない <math>g\in Z(S)</math> がとれる。 ''g'' と共役な元の個数は[[共役類|共役作用]]についての[[固定部分群]] ''G<sub>g</sub>'' の[[部分群の指数|指数]] <nowiki>[</nowiki>''G'' : ''G<sub>g</sub>''<nowiki>]</nowiki> に等しく、それは ''S'' の指数 ''q<sup>b</sup>'' を割り切る。なぜなら ''S'' は ''G<sub>g</sub>'' の部分群だからである。 よって共役な元の個数は ''q<sup>d</sup>'' の形に書ける。さらに ''g'' は単位元でなかったから ''G'' において中心的でなく、整数 ''d'' は正である。 以下、群 ''G'' の[[複素数|複素数体]] '''C''' 上の[[一般線型群]]における[[群の表現|表現]]を考察する。 ; ''G'' の非自明な[[既約表現]] ρ:''G'' → GL<sub>''n''</sub>(C) とその[[既約指標]] χ で、次元 ''n'' が ''q'' で割り切れず、複素数 χ(''g'') が0にならないようなものが存在する。 (χ<sub>i</sub>)<sub>1≤''i≤h''</sub> を ''G'' の '''C''' 上の既約指標全体( χ<sub>1</sub> は自明指標)とする。''g'' は単位元 1<sub>G</sub> と共役でないから、群の[[指標表]]における[[大直交性定理|直交関係]]より <center><math>0=\sum_{i=1}^h \chi_i(1_{G})\chi_i(g)= 1 + \sum_{i=2}^h \chi_i(1_{G})\chi_i(g)</math></center> ここで χ<sub>i</sub>(''g'') は[[正則行列]] ρ(''g'') の[[固有値]]の和に等しいが、ρ(''g'') の[[最小多項式]]は <math>T^{\operatorname{ord}(g)} -1</math> を割り切るので、固有値はみな[[1の冪根]]である。よって χ<sub>i</sub>(''g'') は[[代数的整数]]である。 もし、χ(''g'') が0にならないような全ての非自明な既約指標について χ(1<sub>G</sub>) が ''q'' で割り切れるならば <center><math>-\frac1q=\sum_{i\ge 2,~\chi_i(g)\ne 0}\frac{\chi_i(1_{G})}q\chi_i(g)</math></center> となる。ところが左辺は[[整数|有理整数]]でない[[有理数]]だから代数的整数ではなく、右辺は代数的整数の有理整数倍の和だから代数的整数であり、矛盾する。よって望んでいた条件を満たす既約指標の存在が言えた。 ;複素数 ''q<sup>d</sup>''χ(''g'')/n は代数的整数である。 ''G'' 上の任意の有理整数値[[類関数]] ''u'' に対し、[[群環]]の一般論より <center><math>\frac{1}{n}\sum_{s \in G} u_(s) \chi_i(s)</math></center> は有理整数環 '''Z''' 上[[整拡大|整]]であり、特に ''g'' の共役類上で1、それ以外で0をとるような類関数 ''u'' を選んだときの <center><math>\frac{1}{n}\sum_{s \in G} u_(s) \chi_i(s)=\frac{q^d\chi(g)}{n}</math></center> は代数的整数である。 ;複素数 χ(g)/n は代数的整数である。 ''q'' と ''n'' は[[互いに素 (整数論)|互いに素]]だから、[[ベズーの等式|ベズーの補題]]より有理整数 ''x'' , ''y'' で <center><math>xq^d + yn=1\qquad\therefore \frac{\chi(g)}{n}=x\frac{q^d\chi(g)}{n} + y\chi(g)</math></center> を満たすものが存在する。この左辺は代数的整数の有理整数倍の和だから、代数的整数になる。 ; ''g'' の ρ による像は単位行列の複素数倍である。 複素数 ζ := χ(g)/n は代数的整数だから、その[[代数的数#ノルム|ノルム]] ''N''(ζ) ( ζ の '''Q'''上の[[最小多項式]]の根全体(共役数)を掛け合わせたもの)は0でない有理整数になる。 ζ およびその共役数はいずれも1の冪根(ρ(''g'') の固有値)の[[算術平均]]なので、絶対値は1以下である。一方それらの積 ''N''(ζ) は1以上だから、絶対値はちょうど1でなければならない。 特に ζ の絶対値は1であり、これは ρ(''g'') の固有値が全て等しいことを意味する。よって ρ(''g'') の[[対角化]]を考えると、 ρ(''g'') 自身が単位行列の複素数倍であることがわかる。 ;結論 ''N'' を ρ の[[核 (代数学)|核]]とする。ρ(''g'') は[[像 (数学)|像]] Im(ρ) において中心的であるが、 ''g'' は ''G'' において中心的ではない。''G/N'' と Im(ρ) が標準的に同型である( <math> xN \mapsto \rho (x) </math> )ことを考えると、''N'' は単位元以外の元を含む。ここで ''G'' は単純群だから、''N'' は ''G'' と一致する。ところがこれは、 ρ は自明表現でないとしていた仮定と矛盾する。 以上よりバーンサイドの定理は証明された。[[Q.E.D.]] ==脚注== {{reflist}} ==参考文献== *{{citation|mr=0322048 |last=Bender|first= Helmut |title=A group theoretic proof of Burnside's p<sup>a</sup>q<sup>b</sup>-theorem. |journal=Math. Z.|volume= 126 |year=1972|pages= 327–338|doi=10.1007/bf01110337}} *{{citation|first=W.|last= Burnside |title=On Groups of Order p<sup>α</sup>q<sup>β</sup> |journal=Proc. London Math. Soc. |year=1904|issue= s2-1 (1)|pages= 388–392 |doi=10.1112/plms/s2-1.1.388}} *{{citation|mr=0276338 |last=Goldschmidt|first= David M. |title=A group theoretic proof of the p<sup>a</sup>q<sup>b</sup> theorem for odd primes |journal=Math. Z. |volume=113|year= 1970 |pages=373–375|doi=10.1007/bf01110506}} *James, Gordon; and Liebeck, Martin (2001). ''Representations and Characters of Groups'' (2nd ed.). Cambridge University Press. {{ISBN2|0-521-00392-X}}. See chapter 31. *{{citation|mr=0323890 |last=Matsuyama|first= Hiroshi |title=Solvability of groups of order 2<sup>a</sup>q<sup>b</sup>. |journal=Osaka J. Math.|volume= 10 |year=1973|pages= 375–378}} ==関連項目== *{{仮リンク|奇数位数定理|en|Odd order theorem}} {{algebra-stub}} {{DEFAULTSORT:はあんさいとのていり}} [[Category:代数学の定理]] [[Category:群論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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