ビタミンEのソースを表示

{{Chembox
| 化合物名=ビタミンE
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| 画像ファイル=Витамин Е - плюс (2).jpg
| 画像サイズ=
| 画像キャプション=
| IUPAC名=<!-- | IUPACName_hidden = yes で長いIUPAC名を隠す-->
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|Section1={{Chembox Identifiers
| CASNo=1406-18-4
| PubChem=
| 日化辞番号=J203.513H
| KEGG=D02331
| KEGG_Comment=(医薬品)
| KEGG1=C02477
| KEGG1_Comment=<br/>(α-トコフェロール)
| KEGG2=C14152
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| SMILES=
 }}
}}
{{Infobox drug class
| Image             = Alpha-Tocopherol Structural Formulae V.1.svg
| Alt               =
| Caption           = α-トコフェロール
| Use               = ビタミンE欠乏症、抗酸化物質
| Biological_target = [[活性酸素]]種
| ATC_prefix        = A11HA03
| MeshID            = D014810
| Drugs.com         = {{Drugs.com|npp|vitamin-e}}
| Consumer_Reports  =
| medicinenet       =
| rxlist            =
}}
'''ビタミンE'''（vitamin E）は、[[脂溶性ビタミン]]の1種である。'''トコフェロール'''（tocopherol）とも呼ばれ、特に<small>D</small>-α-トコフェロールは自然界に広く普遍的に存在し、[[植物]]、[[藻類]]、藍藻などの[[光合成]]生物により合成される。[[医薬品]]、[[食品]]、[[飼料]]などに[[疾病]]の治療、[[栄養]]の補給、[[食品添加物]]の[[酸化防止剤]]として広く利用されている。

ビタミンEの構造中の環状部分は、慣用名で[[クロマン]]と呼ばれる構造である。このクロマンに付く[[メチル基]]の位置や有無によって、異なる型のトコフェロールに分類される。[[ヒト]]では<small>D</small>-α-トコフェロールがもっとも強い活性をもち、主に[[抗酸化物質]]として働くと考えられている。抗酸化物質としての役割は、[[代謝]]によって生じる[[ラジカル (化学)|フリーラジカル]]から細胞を守ることである。

== 歴史 ==
[[1922年]]に[[アメリカ合衆国]]の{{仮リンク|ハーバート・エバンス|en|Herbert McLean Evans}}（Herbert M. Evans）と{{仮リンク|キャサリン・ビショップ|en|Katharine Bishop}}（Katharine S. Bishop）によって発見された。

== 構造 ==
[[画像:Lipid peroxidation.svg|class=skin-invert-image|thumb|350px|[[脂質過酸化反応]]のメカニズム]]
トコフェロールはトコールのメチル化誘導体である。構造中の環状部分は、慣用名で[[クロマン]]と呼ばれる構造であり、このクロマンに付く[[メチル基]]の位置や有無によって、α, β, γ, δ の4種がある。また、トコフェロールの炭化水素鎖の部分に多数の二重結合部分を持つトコトリエノールも、ビタミンEとしての活性を持つ。トコトリエノールは[[米油]]などに豊富に含まれ、トコフェロールと比較してin vitroでは同等程度の抗酸化力を示すが、細胞中では40-60倍の抗酸化力を示す{{sfn|谷口、橋本、細田ほか|2012|pages=301-318}}。トコトリエノールの経口摂取は、生体中における[[脳卒中]]関連脳血管障害を予防すると考えられている{{sfn|Khanna S, Roy S, Slivka A, et al|2005|pages=2258-64}}。

以下にトコフェロールとトコトリエノールの構造を示す。
<gallery class="skin-invert-image">
ファイル:Tocopherols.svg|トコフェロール
ファイル:Tocotrienols.svg|トコトリエノール
</gallery>

メチル基の置換位置とトコフェロールの活性比は以下の通りである。
{| class="wikitable"
|-
! 誘導体 !! R<sup>1</sup> !! R<sup>2</sup> !! R<sup>3</sup> !! 活性比
|-
| α || CH<sub>3</sub> || CH<sub>3</sub> || CH<sub>3</sub> || 100
|-
|β || CH<sub>3</sub> || H || CH<sub>3</sub> || 40
|-
|γ || H || CH<sub>3</sub> || CH<sub>3</sub> || 10
|-
|δ || H || H || CH<sub>3</sub> || 1
|-
|}

== 特徴 ==
ビタミンEは、フリーラジカルを消失させることにより自らがビタミンEラジカルとなり、フリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止する。発生したビタミンEラジカルは、[[ビタミンC]]などの[[抗酸化物質]]によりビタミンEに再生される{{sfn|平原|1994|paes=205-206}}

フリーラジカルは[[デオキシリボ核酸|DNA]]や[[タンパク質]]を攻撃することで[[悪性腫瘍|ガン]]の原因ともなりうるし、また、[[脂質過酸化反応]]により[[脂質]]を連鎖的に[[酸化]]させるとされている<ref>{{Cite journal|和書  |author=吉川敏一, 谷川徹 |title=活性酵素・フリーラジカルの化学と生物 ４ 活性酸素・フリーラジカルと疾患 |journal=化学と生物 |issn=0453-073X |publisher=日本農芸化学会 |year=1999 |volume=37 |issue=7 |pages=475-481 |naid=130003439797 |doi=10.1271/kagakutoseibutsu1962.37.475 |url=https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu1962.37.475}}</ref>。

== 摂取基準 ==
かつてはα-トコフェロール当量 (mgα-TE) で所要量が表示されていたが、[[厚生労働省]]が策定した2010年版の食事摂取基準においては、α-トコフェロールのみの目安量（adequate intake, AI）及び耐用上限量（tolerable upper intake level, UL）を定めている。血液及び組織中に存在するビタミンE同族体の大部分がα─トコフェロールであるため、α─トコフェロールのみを指標にビタミンEの食事摂取基準を策定している<ref>[[厚生労働省]]「[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html 日本人の食事摂取基準（2020年版）]」、策定検討会の報告書は[[#参考文献]]のとおり。</ref>。

* 目安量
** 成人男子（18-29歳） 7 mg/day
** 成人女子（18-29歳） 6.5 mg/day
* 上限量
** 成人男子（18-29歳） 800 mg/day
** 成人女子（18-29歳） 650 mg/day

※ビタミンE 1 mg = 1 IU ([[国際単位]]) に換算される。

== 多く含む食品 ==
ビタミンEを多く含む食品は以下のとおりである。

* [[ひまわり油]](サンフラワー油)、[[綿実油]]、[[べにばな油]](サフラワー油)、[[米ぬか油]]、[[とうもろこし油]]などの[[油脂]]類
* [[アーモンド]]、[[ラッカセイ]]、[[大豆]]などの[[種実]]類
* [[キャビア]]、[[いくら]]、[[たらこ]]などの[[魚卵]]類
* [[青魚]]
* [[マヨネーズ]]
{| class="wikitable sortable"
|+ 主要な植物油（100g）中の各種トコフェロールの含有量(mg){{sfn|七訂食品標準成分表|2015}}
!食品名!!α-トコフェロール!!β-トコフェロール!!γ-トコフェロール!!δ-トコフェロール
|-
|[[ひまわり油]]<br/>(ハイオレイック)||38.7||0.8||2.0||0.4
|-
|[[綿実油]]||28.3||0.3||27.1||0.4
|-
|[[サフラワー油]]<br/>(ハイオレイック)||27.1||0.6||2.3||0.3
|-
|[[米ぬか油]]||25.5||1.5||3.4||0.4
|-
|[[とうもろこし油]]||17.1||0.3||70.3||3.4
|-
|[[なたね油]]||15.2||0.3||31.8||1.0
|-
|[[大豆油]]||10.4||2.0||80.9||20.8
|-
|[[パーム油]]||8.6||0.4||1.3||0.2
|-
|[[オリーブ油]]||7.4||0.2||1.2||0.1
|-
|[[えごま油]]||2.4||0.6||58.6||4.6
|-
|[[アマニ油]]||0.5||0||39.2||0.6
|-
|[[ごま油]]||0.4||Tr||43.7||0.7
|-
|}

== 欠乏症 ==
[[未熟児]]において、[[溶血性貧血]]、[[深部感覚]]異常及び[[小脳失調]]の原因となることが知られている。[[生体膜]]で[[活性酸素]]が存在すると[[脂質過酸化反応]]により[[過酸化脂質]]が連鎖的に生成され、膜が損傷し、[[赤血球]]では[[溶血]]が起こるなど生体膜の機能障害が発生する<ref>[http://www.suzugamine.ac.jp/~arinobu/gakusyuu/vitamin.pdf ビタミンの栄養] [http://www.suzugamine.ac.jp/~arinobu/ 授業資料2006年06月23日に追加]</ref>{{信頼性要検証|date=2012年11月}}。また、[[不妊症]]や[[筋萎縮]]症、[[脳軟化症]]の原因となるといわれているが、[[植物油]]に豊富に含まれているため通常の食生活で欠乏することはないと言われている。

* [[黄色脂肪症]]

=== 特発性ビタミンE欠乏症 ===
ビタミンE欠乏症は原因に関わらず臨床症状は比較的一定である。神経症状では[[フリードライヒ失調症]]とほとんど区別がつかないが一部の例で[[網膜色素変性症]]を伴う点が異なっている。基本的な神経症状は下肢に高度で顕著な深部感覚障害、後索性運動失調、[[構音障害]]と四肢腱反射消失である。深部感覚障害は重度で、振動覚は消失し、四肢関節位置覚障害も高度である。一部の患者では網膜色素変性症や[[側彎症]]、凹足、[[バビンスキー徴候]]、振戦を認める。[[知能障害]]、[[眼振]]、線維束性攣縮、自律神経症状は認めない。頭部の[[MRI]]では[[小脳]]や[[脳幹]]の萎縮や異常信号域は認められない。脊髄MRIでは[[脊髄]]に異常が認められることがある。電気生理学的所見では正中神経の[[体性感覚誘発電位|SEP]]ではN13と皮質電位の消失を認めるが末梢神経の電位は認められる。治療法は吸収不良を伴う場合はビタミンEの筋肉注射であり、吸収不良ではない場合は経口大量投与で神経症状の軽度の改善や進行の停止が期待できる。

== 過剰症 ==
過剰に摂取した場合、骨が減ってもろくなる[[骨粗しょう症]]になる恐れが高まるとの動物実験の結果が報告されている。脂溶性のため体内に蓄積しやすいことからも過剰摂取はすすめられない<ref>{{Cite news |url=https://web.archive.org/web/20140725062212/http://www.47news.jp/medical/2012/03/post_20120305031204.php | title=過剰摂取で骨粗しょう症の恐れ 人気サプリのビタミンE |newspaper=47 NEWS |date=2012-3-4 |accessdate=2012-3-4 }}</ref>。

== 効果 ==

*基礎研究

[[放射線]]の照射により[[赤血球]]の溶血反応が発生するが、これは放射線による[[活性酸素]]の生成により脂質過酸化反応による膜の破壊によるものである。ラットを使った研究では、ビタミンEの投与により、放射線による赤血球の溶血や[[細胞小器官]]である[[ミトコンドリア]]、ミクロゾーム、[[リボゾーム]]の脂質過酸化反応が顕著に抑制された。[[スーパーオキシドディスムターゼ|SOD]]も同様の効果を示した{{sfn|青野、山本、飯田ほか|1978|paes=1297-1308}}。

== 相互作用 ==
* ビタミンEとビタミンK1(フィロキノン)の間には相互作用があり、ビタミンEは体内のビタミンK1量または活性を減少させる。

==出典==
{{Reflist|30em}}

== 参考文献 ==
;発行年順
* {{cite journal|和書|author1=青野要 |author2=山本道夫 |auhor3=飯田荘介 ほか |title=放射線障害におけるスーパーオキサイド生成系(O〓)とスーパーオキサイド・ディスムターゼ(SOD)及びビタミンEの関与に対する考察 |url=https://doi.org/10.4044/joma1947.90.9-10_1297 |date=1978|journal=岡山医学会雑誌 |volume=90|number=9-10号 |pages=1297-1308 |doi=10.4044/joma1947.90.9-10_1297 |ref={{sfnref|青野、山本、飯田ほか|1978}} }} 註：表題は「スーパーオキサイド生成系 (<chem>O2 ^{\cdot -}</chem>) とスーパー…」の文字化け。
* {{cite journal|和書|author1=平原文子 |title=ビタミンEと抗酸化性 |url=https://doi.org/10.5264/eiyogakuzashi.52.205 |date=1994 |journal=栄養学雑誌 |volume=52 |number=4 |pages=205-206 |publisher=国立健康・栄養研究所 |ref={{sfnref|平原|1994}} }}
* {{cite journal|author=Khanna S, Roy S, Slivka A |coauthors=et al |date=2005 |title=Neuroprotective Properties of The Natural Vitamin E α-Tocotrienol |journal=Stroke|volume=36 |issue=10|pages=2258-64 |doi=10.1161/01.STR.0000181082.70763.22 |pmid=16166580 |pmc=1829173 |ref={{sfnref|Khanna S, Roy S, Slivka A, et al|2005}} }}
* {{cite journal|和書|date=2012 |title=米糠含有成分の機能性とその向上 |url=https://doi.org/10.3136/nskkk.59.301 |journal=日本食品科学工学会誌 |volume=59 |number=7|pages=301-318|doi=10.3136/nskkk.59.301 |author1=谷口久次|author2=橋本博之|author3=細田朝夫 ほか |ref={{sfnref|谷口、橋本、細田ほか|2012}} }}
* {{cite book|和書|title=日本食品標準成分表2015年版（七訂）|chapter=第2章 日本食品標準成分表 Excel（日本語版）&mdash;油脂類|publisher=文部科学省 |url=https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/02/14/1365344_1-0214r9.xlsx |format=xlsx |date=2015-12 |ref={{sfnref|七訂食品標準成分表|2015}} }}
* {{cite document|和書|title=第2章 各論&mdash;1-6 ビタミン §1 脂溶性ビタミン (1) ビタミン E |publisher=[[厚生労働省]] |url=https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf |format=PDF |author=菱田明; 中村丁次; [[佐々木敏_(栄養学者)|佐々木敏]] ほか |date=2018-3|journal=「日本人の食事摂取基準（2015年版）」 策定検討会報告書 |volume= |pages=176-180 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170107172555/http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000114399.pdf |archivedate=2017-01-07 }}

== 関連項目 ==
* [[ビタミンE誘導体]]

== 外部リンク ==
* {{Hfnet|176|ビタミンE解説}}
* {{Hfnet|43|ビタミンE (トコフェロール)|nolink=yes}}
* {{PaulingInstitute|jp/mic/vitamins/vitamin-E}} 日本微量栄養素情報センター：[[新潟薬科大学]]との共同研究事業
* {{PaulingInstitute|mic/health-disease/skin-health/vitamin-E|Vitamin E and Skin Health|nolink=yes}}

{{ビタミン}}
{{抗酸化物質}}
{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:ひたみんE}}
[[Category:ビタミン|E]]
[[Category:クロマン]]
[[Category:フェノール]]