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{{出典の明記| date = 2023年10月}} {{物性物理学|expanded=物質の状態}} '''フェルミ気体''' ({{lang-en-short|Fermi gas}}) とは、数多くの[[フェルミ粒子]](名前は[[エンリコ・フェルミ]]に由来)の集まった[[相 (物質)|相]]のこと。 フェルミ粒子は[[フェルミ=ディラック統計]]に従う[[亜原子粒子|粒子]]である。 これらの統計は[[熱平衡]]状態のフェルミ気体におけるフェルミ粒子のエネルギー分布を決め、その[[数密度]]、[[温度]]、可能なエネルギー状態の組によって特徴づけられる。 [[パウリの排他原理]]により同じ[[量子数]]の組をもつ[[量子状態]]を2つ以上のフェルミ粒子がとることができない。 よって[[ボース気体]]とは異なり、相互作用のないフェルミ気体は[[ボース=アインシュタイン凝縮]]を起こすことは禁じられるが、相互作用があるフェルミ気体では凝縮を起こす場合もある<ref>http://www.conferences.uiuc.edu/bcs50/PDF/Jin.pdf {{リンク切れ|date=2023-10}}</ref>。 [[絶対零度]]でのフェルミ気体の全エネルギーは1粒子[[基底状態]]の和よりも大きくなる。 なぜならパウリの排他原理は、ある種の相互作用や圧力によって互いのフェルミ粒子が同じ状態にならないように動くことを意味しているからである。 この理由のため、古典的な理想気体とは対照的に、温度0においてもフェルミ気体の[[圧力]]は0にはならない。 [[縮退圧]]と呼ばれるこの圧力は、[[中性子星]](中性子のフェルミ気体)や[[白色矮星]](電子のフェルミ気体)を、表面上は星を崩壊させブラックホールにする内部へ向かう重力に対して安定化する。 星が十分に質量を持ち、縮退圧に打ち勝つときにのみ、崩壊して特異点となる。 その温度以下では気体は縮退すると言えるような温度が定義でき、[[フェルミ温度]]という(そのときの圧力はほぼパウリの原理のみに由来する)。 フェルミ温度はフェルミ粒子の質量とエネルギー[[状態密度]]に依存する。 金属では、電子気体のフェルミ温度は一般的に数千ケルビンであり、日常的な条件では縮退しているといえる。 温度ゼロでのフェルミ粒子のエネルギー最大値は[[フェルミエネルギー]]と呼ばれる。 [[運動量空間]]におけるフェルミエネルギー面は、[[フェルミ面]]として知られる。 ==理想フェルミ気体== {{see also|自由電子}} 理想フェルミ気体や自由フェルミ気体は、相互作用のないフェルミ粒子の集まりと仮定する[[数理モデル|物理モデル]]である。 これは[[理想気体]]の[[量子力学]]版でフェルミ粒子を考えた場合である。 [[白色矮星]]における電子や[[中性子星]]における中性子の振る舞いは、それらを理想フェルミ気体として扱うことで近似できる。 [[金属]]や[[半導体]]の[[結晶格子]]中を動きまわる電子などの周期的な系でも同じようなことができ、擬運動量や[[結晶運動量]]([[ブロッホ波]])と呼ばれるものを用いる。 相互作用は定義により無視されるため、理想フェルミ気体の平衡特性やダイナミクスを扱う問題は、1つの独立な粒子の振る舞いの研究に帰着する。 これにより比較的扱いやすくなり、たとえば[[摂動論]]のような、相互作用を扱うより進んだ理論のための出発点を作ってくれる。 フェルミ粒子の濃度は温度によって変化しないと仮定すると、3次元理想フェルミ気体の[[全化学ポテンシャル]] <math>\mu</math> ([[フェルミ準位]]) は、[[ゾンマーフェルト展開]] ( <math>kT \ll E_\mathrm{F}</math> と仮定)により温度ゼロの[[フェルミエネルギー]] <math>E_\mathrm{F}</math> と次の関係になる。 :<math>\mu = E_0 + E_\mathrm{F} \left[ 1- \frac{\pi ^2}{12} \left(\frac{kT}{E_\mathrm{F}}\right) ^2 - \frac{\pi^4}{80} \left(\frac{kT}{E_\mathrm{F}}\right)^4 + \cdots \right] </math> ここで <math>E_0</math> は粒子あたりのポテンシャルエネルギー、<math>k</math> は[[ボルツマン定数]]、<math>T</math> は[[温度]]である<ref>http://www.uam.es/personal_pdi/ciencias/jgr/pdfs/fermi.pdf page 10 {{リンク切れ|date=2023-10}}</ref><ref>http://www.physics.usyd.edu.au/ugrad/sphys_old/sphys_webct/PHYS3905_SM/TSM12.pdf {{リンク切れ|date=2023-10}}</ref>。 よって[[内部化学ポテンシャル]] <math>\mu - E_0</math> は、フェルミ温度 <math>E_\mathrm{F}/k</math> よりはるかに低い温度でのフェルミエネルギーに近似的に等しくなる。 金属におけるフェルミ温度は10<sup>5</sup>ケルビンのオーダーであるため、室温(300 K)ではフェルミエネルギーと内部化学ポテンシャルは本質的に同等となる。 ==参考文献== {{reflist}} ==関連項目== * [[フェルミ液体]] * [[ボース気体]] * [[自由電子]] * [[箱の中の気体]] {{Condensed matter physics topics}} {{DEFAULTSORT:ふえるみきたい}} [[Category:統計力学]] [[Category:物性物理学]] [[Category:エンリコ・フェルミ]] [[Category:物理学のエポニム]]
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