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{{出典の明記|date=2012年11月29日 (木) 07:04 (UTC)}} [[Image:Wykres wektorowy by Zureks.svg|thumb|300px|単純な[[RLC回路]]のフェーザ図。]] '''フェーザ表示'''(フェーザひょうじ、{{lang-en-short|phasor}})とは、[[電気工学]]や[[物理光学|波動光学]]などにおいて正弦信号を[[複素数]]で表現する表示方法である。主に[[線型回路]]の交流解析に使用される。[[線型]]な電気回路において、本来は[[微分方程式]]の求解問題である定常的な振る舞いの解析を、フェーザ表示を利用することでより簡単な[[代数方程式]](特に[[連立一次方程式]])の求解問題に帰着させることができる。 == 定義 == 次の正弦信号 {{Math|''s''(''t'')}} を考える。 :<math>s(t)=A \sin(\omega t+\theta)</math> {{Math|''s''(''t'')}} は、[[オイラーの公式]]を使って、次のように書ける。 :<math>s(t)=\Im[S \exp(\mathrm{j}\omega t)]\qquad(1)</math> ここで、{{Math|j}} は[[虚数単位]]、{{Math|1 = ''S'' = ''A'' exp(j''θ'') = ''A''∠''θ''}} は絶対値が {{Mvar|A}} で偏角が {{Mvar|θ}} の[[複素数]]、<math>\Im[X]</math> は複素数 {{Mvar|X}} の虚部を表す。 このとき複素数 {{Mvar|S}} を信号 {{Math|''s''(''t'')}} の'''フェーザ表示'''または'''フェーザ'''という<ref>上式の''S'' の<math>1/\sqrt{2}</math>倍をフェーザと定義する場合もある。これは最大値と実効値のどちらを用いるかによるものである。また、ここではsin(ω''t'') を位相の基準とする定義を述べたが、cos(ω''t'') を基準とする流儀もある。</ref>。 == 性質 == フェーザ表示は[[フーリエ変換]]と同様の性質をもっている。以下、正弦信号 {{Math|''v''(''t'')}} のフェーザ表示が {{Mvar|V}} であるとする。 ;線形性 :2つの信号の和 {{Math|''v''<sub>1</sub>(''t'') + ''v''<sub>2</sub>(''t'')}} のフェーザ表示は {{Math|''V''<sub>1</sub> +''V''<sub>2</sub>}} である。 ;微分 :{{Math|{{sfrac|d''v''(''t'')|d''t''}}}} のフェーザ表示は {{Math|j''ωV''}} であり、次の対応関係がある: ::<math>\frac{\mathrm d}{\mathrm dt}\Leftrightarrow \mathrm j \omega</math> :これは次のようにしてわかる。(1)式から ::<math>v(t)=\Im[V \exp(\mathrm j\omega t)]</math> :である。これを[[時間微分]]すると ::<math>\frac{\mathrm dv(t)}{\mathrm dt}=\Im[\mathrm{j} \omega V \exp(\mathrm{j}\omega t)]</math> :となる。これと(1)式を見比べれば、上述の性質が成り立つことがわかる。 == 応用 == 簡単な線型素子について、[[電圧]]と[[電流]]の関係をフェーザ表示を使って表してみる。 === キャパシタ === キャパシタ([[コンデンサ]])の場合、電流 {{Math|''i''(''t'')}} と電圧 {{Math|''v''(''t'')}} の関係は :<math>i(t)=C \frac{\mathrm dv(t)}{\mathrm dt}</math> である。電流と電圧のフェーザ表示をそれぞれ {{Mvar|I, V}} とすると :<math>I = \mathrm{j}\omega C V\qquad(2)</math> となる。 === インダクタ === インダクタ([[コイル]])の場合は :<math>v(t)=L \frac{\mathrm di(t)}{\mathrm dt}</math> であり、同様にフェーザ表示すると :<math>V=\mathrm{j}\omega L I\qquad(3)</math> となる。 === RLC回路 === [[RLC回路]]: :<math>v(t) = Ri(t) + L\frac{\mathrm di(t)}{\mathrm dt} + \frac{1}{C} \int i(t)\, \mathrm dt</math> の場合も、線形性より、各項をフェーザ表示して和をとれば良い。 :<math>V = RI + \mathrm{j}\omega LI + \frac{1}{\mathrm{j}\omega C}I</math> == 付録 == 振幅 {{Mvar|A}} 、角周波数 {{Mvar|ω}}、位相 {{Mvar|θ}} である時間関数の複素数 {{Math|''A'' exp(j(''ωt'' + ''θ''))}} を考えると[[オイラーの公式]]より、 :<math>A e^{\mathrm{j}(\omega t + \theta)} = A e^{\mathrm{j} \theta} e^{\mathrm{j} \omega t} = A \cos(\omega t + \theta) + \mathrm{j} A \sin(\omega t + \theta) </math> である。ここで {{Math|1=''s''(''t'') = ''A'' sin(''ωt'' + ''θ''), ''S'' = ''A'' exp(j''θ'')}} とおくと、 :<math>S e^{\mathrm{j} \omega t} = A \cos(\omega t + \theta) + \mathrm{j} s(t)</math> である。ここで時間 {{Mvar|t}} によらない {{Math|1=''S'' = ''A'' exp(j''θ'')}} を {{Math|''s''(''t'')}} の'''フェーザ'''([[:en:Phasor_(electronics)|phase vector]]、phasor、位相ベクトル)といい、そのフェーザが 時間 {{Mvar|t}} の関数 {{Math|exp(j''ωt'')}} で回転されるものと考える。さらに 複素数 {{Math|*}} の虚数部を <math>\Im[*]</math> で表すと、 :<math>s(t) = \Im[S e^{\mathrm{j}\omega t}]\qquad(1)</math> となり式(1)を得る。一方、{{Math|''s''(''t'')}} を微分、あるいは不定積分(交流解析のため積分定数は考慮しない)すると、 :<math>\begin{align}&\frac{\mathrm ds(t)}{\mathrm dt} = \Im[ \mathrm{j} \omega S e^{\mathrm{j} \omega t}] \\ &\int s(t) \mathrm dt = \Im\left[\frac{1}{ \mathrm{j} \omega} S e^{\mathrm{j} \omega t}\right]\end{align}</math> となり、時間関数表現とフェーザ表現を対応させると形式的に :<math>\begin{align}s(t) &\Leftrightarrow S \\ \frac{\mathrm d}{\mathrm dt} s(t) &\Leftrightarrow \mathrm{j} \omega S \\ \int s(t) \mathrm dt &\Leftrightarrow \frac{1}{ \mathrm{j} \omega} S\end{align}</math> という一対一関係が成り立つ。つまり、通常の時間関数表現の微分方程式・積分方程式は、フェーザ表示では代数方程式に対応する。これが、フェーザ表示によれば微分方程式による電気回路の定常解解析が代数方程式に帰着できる理由である。 本項では虚数部 <math>\Im[*]</math> を用いたので {{Math|sin}} が基準となったが、実数部 <math>\Re[*]</math> を用いると {{Math|cos}} が基準となる。 本項では {{Mvar|A}} を振幅とし、フェーザの絶対値を 振幅 に対応させた。しかし、{{Mvar|A}} を実効値とし、フェーザの絶対値を 実効値 に対応させる流儀もある。この場合、フェーザと瞬時値の対応は :<math>s(t)=\Im\left[\sqrt{2} S \exp(\mathrm{j}\omega t)\right]\qquad(1')</math> となる。複素電力を求めるときはこの方が便利である。基準を明確にすれば以降の議論は等価である。 == 脚注 == <references /> == 関連項目 == * [[回路理論]] * [[実効値]] * [[インピーダンス]] * [[アドミタンス]] * [[動的弾性率]] {{デフォルトソート:ふええさひようし}} [[Category:電気回路]] [[Category:電気工学]] [[Category:物理光学]]
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