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{{出典の明記|date=2016年11月}} [[File:Clean room.jpg|thumb|半導体素子製造におけるフォトリソグラフィ。レジストの感光を防ぐ為に波長の長い黄色い照明を使用し、[[クリーンルーム]]内で行われる。]] '''フォトリソグラフィ'''({{lang-en|photolithography}})は、[[感光]]性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光(パターン露光、像様露光などともいう)することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する技術。主に、[[集積回路]]、[[プリント基板]]、[[印刷]]版、[[液晶ディスプレイ]]パネル、[[プラズマディスプレイ]]パネルなどの製造に用いられる。 == 半導体素子の製造 == 集積回路の製造においてフォトリソグラフィは次のように行われる。[[シリコン]]、[[ヒ化ガリウム]]等の[[半導体]][[ウェハー]]上に'''[[フォトレジスト]]'''と呼ばれる[[感光性有機物質]]を塗布し、'''[[ステッパー]]'''と呼ばれる[[露光]]装置を用いて、'''[[レチクル]]'''と呼ばれる[[フォトマスク]]に描かれた素子・回路のパターンを焼き付ける。以下、工程をさらに詳しく説明する。 === コート === [[File:Spinner.jpg|thumb|[[ウェハー]]にレジストを塗布するための[[スピンコーター]]。]] シリコンウェハー上に、[[レジスト]]と呼ばれる[[液体]]を、[[スピンコーター]]や吹きつけによって塗布する。レジストは[[光]]によって反応する[[化学物質]]を[[溶媒]]に溶かしたもので、感光した部分が溶解する「[[ポジ]]型」と、感光した部分が残る「[[ネガ]]型」がある。パターンの微細化にはポジ型が有利とされ、現在ではポジ型が主流である。また、KrFなどの[[エキシマレーザー]]を用いた露光の場合、露光強度が弱いため、化学増幅型フォトレジストが使用される。 === プリベーク === [[レジスト]]を塗布したウェハーを加熱し、レジストを固化する。 === 露光 === {{更新|date=2022年11月|section=1}} レジストに光を照射して反応させる。このとき、[[回路図]]の形状を描いたマスクを用い、光を照射する部分を制御することで必要な形状をレジスト上に描く。[[露光]]装置はかつてはマスクとウェハーを密着させ露光する'''等倍露光'''であったが、要求されるパターンが微細になるとともにマスクの作成が困難になってきたため、近年では実寸よりも大きく作成したマスクパターンを[[ステッパー]]と呼ばれる装置を用いてウェハー上を移動させながら'''縮小投影露光'''する手法に変わってきた。パターンが微細化するほど短[[波長]]の光源が必要であり、現在は[[高圧水銀灯]]のg線(波長 436[[ナノメートル|nm]])、i線(波長 365nm)、KrF[[エキシマレーザー]](波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)などが主流で、次世代の光源としてEUV光(波長 13.5nm:[[極端紫外線リソグラフィ|EUVリソグラフィ]])が開発段階にある。また[[X線]]を光源に用いたり、[[電子線]]で直接レジスト上に描画する方法([[電子線リソグラフィ]])も存在する。 === 現像・リンス === 露光したウェハーを[[現像液]]に浸し、余分な部分のレジストを除去する。この過程ではじめて回路図のパターンがウェハー上に現れる。現像液はレジストを溶解する薬液が使用される。用いられる薬液には、レジストを溶解する有機溶剤の場合と、有機または無機アルカリの場合がある。現在の半導体用フォトリソグラフィでは、有機アルカリである[[水酸化テトラメチルアンモニウム]] (TMAH: tetra-methyl-ammonium-hydroxyde)の2.38 [[質量パーセント濃度|wt%]]水溶液が主流となっている。これは、水酸化カリウム(KOH)などの無機アルカリでは金属イオンの工程への混入を避けられないためである。[[リンス]]液(主に[[超純水]])で数回すすぎ、不要部分を完全に除去する。 === ポストベーク === 付着したリンス液を加熱によって除去する。加熱により、ウェハーとの密着性が良くなる。 === パターン成形 === レジストで描かれたパターンを利用して、目的とする回路などを作成する。ウェハーに用いたものによって工程が異なり、不要な部分を除去したい場合はエッチングを、必要な回路を追加したい場合は成膜・リフトオフの工程となる。 ==== エッチング ==== ウェハーに単に凹凸を付けたい場合、あるいは元々ウェハー上にパターンが作成されていた場合などは、[[エッチング]]によって不要な部分を除去する。[[ドライエッチング]]と[[ウェットエッチング]]が存在する。レジストの残っている部分はエッチングによって除去されないため、残したいパターンがウェハー上に形成される。最後に溶剤などによってレジストを完全に除去する。 ==== 成膜・リフトオフ ==== ウェハー上に別の[[金属]]や[[酸化物]]などを付けたい場合は、[[蒸着|真空蒸着]]や[[スパッタリング]]、[[化学気相成長|CVD]]などの手法によって[[成膜]]する。最後に溶剤などでレジストを除去する際に、レジスト上に成膜された材料も同時に除去される('''リフトオフ'''という)ため、ウェハー上に好みのパターンを追加することができる。 == 露光系における分解能 == 縮小露光系において[[分解能]]は、使用する光源の波長に依存する。縮小レンズの性能によってマスクの[[回折限界]]まで露光できるかが決まる。波長248~193nmの深紫外線を使用した場合は50nmの線幅まで露光できる。 露光系の最小線幅は以下の式で求まる: :<math>F = k \cdot\frac{\lambda}{N_A}</math> ここで、各々の定数や変数の定義は以下のとおりである: * <math>\,F</math> は最小線幅(一般に'''目標デザインルール'''と呼ばれる)。通常は2を掛ける 2 '''ハーフピッチ'''における''回数'' * <math>\,k</math> (一般に '''k1 ファクター'''と呼ばれる)は、プロセスに関連するファクターをあらわす係数(通常は 0.5 で近似される) * <math>\,\lambda</math> は光源の波長 * <math>\,N_A</math> はウェハーに対する[[開口率]] 最小線幅は波長に依存すると同時に開口率にも依存する。開口率が大きくなるとレンズは大きくなり、ウェハーに接近する。これらの要素は互いに牽制する。現在では以下のようになる{{要出典|date=2011年8月9日 (火) 13:57 (UTC)}}: :<math>D_F = 0.6 \cdot\frac{\lambda}{{N_A}^2}</math> 被写界深度はフォトレジストの断面の厚みに影響される。高分解能を得る為の前提として、化学的研磨によってウェハーの表面を平坦に磨き平面度を高める必要がある。 == 印刷版の製造 == 感光性の物質を塗布した基板をパターン露光し、現像して不要な部分を除去することで、フレキソ版、平版、水なし平版などの印刷版原版を作成することができる。版面を編集するコンピュータと露光装置を接続し、直接印刷版原版を作成することを、[[コンピューター・トゥ・プレート]]([[:en:Computer to plate|computer to plate]]、CTP)という。また、平版印刷版の作成に用いられる、あらかじめ感光性物質を塗布したアルミ板を、'''PS版'''(pre-sensitised plate)という。写真や絵など原稿から、あるいは電子媒体からの製版工程が容易であるためPS版は広く普及している。 == 名前の由来 == フォトリソグラフィ(photolithography)は、写真(photo)技術を用いて、基板に(絵や文字を含む)画像パターンを刻み込む技法(lithography)という意味である。「リソ(litho)」は石の意であり、石板に絵を刻み込んで平板印刷の刷版とする[[石版画]](lithograph)と同一の概念であるが、石版画は画家が石板に直接描くペンキをマスクとして、非描画部の基板表面を酸処理し、親水化するのに対して、フォトリソグラフィでは、フォトレジストの現像で残った部分をマスクとして基板表面を酸処理する点が異なる。また印刷分野では、フォトリソグラフィにより[[刷版]]を作ることが印刷前の最終工程であるが、半導体分野では、膨大な数の工程ごとに使われる一つの(但し重要な)技術に過ぎない。 尚、日本では石版画を意味する"lithograph"は「リトグラフ」と読み、半導体分野での"lithography"は「リソグラフィ」と読むのが一般的である。かつてはフォトレジストをコダック社1社で供給していたため、KPR(Kodak photo resist)工程と呼ばれたり、PEP(photo engraving process)とも呼ばれたりした。 フォトリソグラフィやPEP技術は、日本語では「写真蝕刻」技術と訳される。印刷分野では写真などの画像を印刷するためにも用いられるため違和感が無いが、フォトマスクに写真画像を用いない半導体分野では違和感が大きいため、「光蝕刻」技術、「光リソグラフィ」と訳されることが多い。 尚、印刷分野では、写真を印刷するための技術だから「[[写真製版]]」技術だと勘違いされがちであるが、正しくは『写真技術を用いて製版する(刷版を作る)』ための技術であるから「写真製版」であり、これは「[[写真植字]]」(略称:「写植」)技術に由来する。この技術は1851年にフランス人科学者・エンジニアのAlphonse Louis Poitevinに開発され、現在に至る。 == 関連項目 == * [[フォトレジスト]] * [[半導体工学]] * [[印刷]] * [[液晶ディスプレイ]] * [[プラズマディスプレイ]] {{ナノリソグラフィ}} {{物質の技術的操作のレベル}} {{DEFAULTSORT:ふおとりそくらふい}} [[Category:半導体製造]] [[Category:印刷]] [[Category:ナノテクノロジー]] [[Category:光学]] [[Category:フォトリソグラフィ|*]]
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