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'''フッ化銀'''(フッかぎん、{{lang-en-short|silver fluoride}})とは、[[フッ素]]と[[銀]]からなる[[無機化合物]]である。銀の[[フッ化物]]にあたる。銀の酸化数が1/2, 1, 2, 3の化合物が知られており、それぞれ一フッ化二銀、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、フッ化銀(III)と呼ばれる。 酸化数の多様性以外にも、フッ化銀は他の[[ハロゲン化銀]]と性質が大きく異なる。 {{see also|フッ化銀(I)|一フッ化二銀}} == 一フッ化二銀 == {{Main|一フッ化二銀}} '''一フッ化二銀'''(いちフッかにぎん、{{lang-en-short|disilver monofluoride}})、Ag<sub>2</sub>F はブロンズ状の光沢を示す固体である。結晶系は[[三方晶系]]、結晶構造は[[逆ヨウ化カドミウム型構造]]で、Ag-F の層に Ag の層が挿入された構造をとる。Ag-Ag 間距離は300, 2.81 [[オングストローム|Å]]、Ag-F 間は2.45 Åである。密度は8.57 g/cm<sup>3</sup>。[[電気伝導性]]を持ち、0.65 [[ケルビン|K]]で[[超伝導]]を示す。光に対して安定である。90 {{℃}}で分解する。 一フッ化二銀は、フッ化銀(I)を液体[[フッ化水素]]に溶解させた後にコロイド状の Ag を加えて製造する。水中では Ag と AgF とに[[不均化]]する。 == フッ化銀(I) == {{Main|フッ化銀(I)}} '''フッ化銀(I)'''(フッかぎん いち、{{lang-en-short|silver(I) fluoride}})、AgF は黄色の薄片状固体である。結晶系は[[立方晶系]]、結晶構造は[[塩化ナトリウム型構造]]で、Ag-F 間距離は2.46 Åである。融点435 {{℃}}、沸点1150 {{℃}}である。 他の難溶性のハロゲン化銀と異なり、フッ化銀は水に易溶で[[潮解性]]を示す。溶解度は179 g/100 g (水 at 25 {{℃}}) で、[[フッ化水素酸]]、[[アセトニトリル]]にも可溶である。-14〜18.7 {{℃}}では4水和物が安定、18.7〜39.5 {{℃}}までは2水和物が安定である。それ以上では脱水して無水物となる。光に対して幾分不安定で、光照射により結晶は暗色となる。 他のハロゲン化銀(I)と製法も異なり、[[一酸化銀|Ag<sub>2</sub>O]] を液体フッ化水素に溶解させた後に、黄色の AgF が析出するまで蒸発させる。 フッ化銀(I)は強力な[[フッ素化剤]]である。また、歯科用防腐処置剤としても有用である。 == フッ化銀(II) == '''フッ化銀(II)'''(フッかぎん に、{{lang-en-short|silver(II) fluoride}})、AgF<sub>2</sub> は銀(II)のフッ化物である。純粋なものは無色であるが、光により黒褐色となる。結晶系は[[斜方晶系]]、結晶構造は歪んだ八面体構造であり、Ag-F 間距離は2.07 Å([[エカトリアル]])、2.58 Å([[アキシアル]])。[[反強磁性]]を示し、[[孤立電子対]]の存在のため、予想される値よりも低い[[磁気モーメント]]を示す。融点690 {{℃}}で、0.1 [[標準気圧|atm]]のフッ素気流中では700 {{℃}}まで安定。 フッ化銀(II)はフッ化銀(I)を[[フッ素]]気流中で加熱すると生成する。あるいは AgF<sub>3</sub> と[[キセノン]]とを反応させても生成する。 : <chem>{2AgF3} + Xe -> {AgF2} + XeF2</chem> 光に対して不安定。強力な[[酸化剤]]、フッ素化剤であり、冷水中で[[オゾン]]を発しながらフッ化銀(I) AgF に分解する。液体フッ化水素中の AgF<sub>2</sub> は [[五フッ化アンチモン|SbF<sub>5</sub>]] や [[五フッ化ヒ素|AsF<sub>5</sub>]] のように[[ルイス酸]]として働き、[AgF][MF<sub>6</sub>] 型の深青色の[[塩 (化学)|塩]]を形成する。 == フッ化銀(III) == '''フッ化銀(III)'''(フッかぎん さん、{{lang-en-short|silver(III) fluoride}})、AgF<sub>3</sub> は銀(III)のフッ化物である。不安定な赤色の固体で[[反磁性]]を示す。結晶構造は引き伸ばされた八面体構造であり、Ag-F 間距離はおよそ1.9 Å(エカトリアル)、2.54 Å(アキシアル)である。 [[テトラフルオロ銀(III)塩]]に、[[三フッ化ホウ素|BF<sub>3</sub>]]、[[五フッ化リン|PF<sub>5</sub>]] あるいは [[五フッ化ヒ素|AsF<sub>5</sub>]] を加えると生成する。 : <chem>{AgF4^-} + BF3 -> {AgF3} + BF4^-</chem> この化合物は熱的に不安定であり、液体フッ化水素中であっても20 {{℃}}で F<sub>2</sub> を発生しながらゆっくりと分解し Ag<sub>3</sub>F<sub>8</sub> となる。 == 出典 == * 『理化学辞典』第5版、岩波書店 * ヘスロップ、ジョーンズ、『無機化学』、1978年、東京化学同人 * コットン、ウイルキンソン、『無機化学』原書第2版、p.940、1972年、培風館 * F.A. Cotton, G. Wilkinson, C.A. Murillo, M.Bochmann, Advanced Inorganic Chemistry, 6th Ed., pp1084-1097 ISBN 0-471-19957-5 == 関連項目 == * [[銀]] * [[フッ素]] {{DEFAULTSORT:ふつかきん}} [[Category:銀の化合物]] [[Category:フッ化物]]
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