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フレドホルム核
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[[数学]]の分野における'''フレドホルム核'''(フレドホルムかく、{{Lang-en-short|Fredholm kernel}})とは、ある[[バナッハ空間]]上の[[積分変換|核]]で、その空間の[[核作用素]]と関連するものである。[[フレドホルム積分方程式]]および[[フレドホルム作用素]]の概念の一つの抽象化であり、[[フレドホルム理論]]における主要な研究対象の一つとなっている。その名称は、[[エリック・イヴァル・フレドホルム]]にちなむ。フレドホルム核に関する抽象理論の多くは、[[アレクサンドル・グロタンディーク]]によって研究され、その内容は 1955 年の出版物に見られる。 == 定義 == ''B'' を任意の[[バナッハ空間]]とし、''B''<sup>*</sup> をその双対空間、すなわち、''B'' 上の[[有界作用素|有界線型汎函数]]からなる空間とする。[[テンソル積]] <math>B^*\otimes B</math> には、ノルム :<math>\Vert X \Vert_\pi = \inf \sum_{\{i\}} \Vert e^*_i\Vert \Vert e_i \Vert</math> の下での[[完備距離空間|完備化]]が存在する。但しここで、上式の[[下限]]は、すべての有限な表現 :<math>X=\sum_{\{i\}} e^*_i e_i \in B^*\otimes B</math> に関して取られるものとする。 そのようなノルムの下での完備化は、しばしば :<math>B^* \widehat{\,\otimes\,}_\pi B </math> のように記述され、'''{{仮リンク|位相テンソル積|label=射影位相テンソル積|en|topological tensor product}}'''と呼ばれる。この空間の元が、'''フレドホルム核'''と呼ばれる。 == 性質 == すべてのフレドホルム核は、次のような形式で表現することが出来る: :<math>X=\sum_{\{i\}} \lambda_i e^*_i \otimes e_i</math> ここで <math>e_i \in B</math> および <math>e^*_i \in B^*</math> は <math>\Vert e_i \Vert = \Vert e^*_i \Vert = 1</math> を満たすようなものであり、 :<math>\sum_{\{i\}} \vert \lambda_i \vert < \infty \, </math> が成立している。 そのような核に対応するものは、正準表現 :<math>\mathcal{L}_X f =\sum_{\{i\}} \lambda_i e^*_i(f) \otimes e_i \, </math> の存在する線型作用素 :<math>\mathcal {L}_X : B \to B</math> である。 すべてのフレドホルム核に対応するものは、 :<math>\mbox{tr} X = \sum_{\{i\}} \lambda_i e^*_i(e_i) \,</math> で定義される、トレースである。 ==''p''-総和可能な核== フレドホルム核は、 :<math>\sum_{\{i\}} \vert \lambda_i \vert^p < \infty</math> が成立するとき、'''''p''-総和可能'''(''p''-summable)であると言われる。 フレドホルム核は、それが ''p''-総和可能であるようなすべての <math>0<p\le 1</math> についての[[下限]]が ''q'' であるとき、'''次数 ''q''''' であると言われる。 == バナッハ空間上の核作用素 == 作用素 <math>\mathcal{L}:B \to B</math> は、<math>\mathcal{L} = \mathcal{L}_X</math> であるような <math>X\in B^* \widehat{\,\otimes\,}_\pi B</math> が存在するとき、[[核作用素]]であると言われる。そのような作用素が ''p''-総和可能あるいは次数 ''q'' であるとは、''X'' がそれらの性質を満たすことを言う。一般的に、そのような核作用素の対応する核 ''X'' は唯一つであるとは限らない。したがって、そのトレースは一意には定まらない。しかし、次数が <math>q \le 2/3</math> を満たすなら、そのトレースは一意に定まる。これはグロタンディークの定理によるものである。 == グロタンディークの定理 == <math>\mathcal{L}:B\to B</math> をある作用素とする。その次数が <math>q \le 2/3</math> を満たすなら、そのトレースは :<math>\mbox{Tr} \mathcal {L} = \sum_{\{i\}} \rho_i</math> のように定義されうる。ここで、<math>\rho_i</math> は <math>\mathcal{L}</math> の[[固有値]]とする。また、その[[フレドホルム行列式]]は、''z'' の[[整関数]] :<math>\det \left( 1-z\mathcal{L}\right)= \prod_i \left(1-\rho_i z \right)</math> である。関係式 :<math>\det \left( 1-z\mathcal{L}\right)= \exp \mbox{Tr} \log\left( 1-z\mathcal{L}\right) </math> も同様に成立する。最後に、<math>\mathcal{L}</math> がある[[複素数|複素数値]]パラメータ ''w'' によって関連付けらなら、すなわち、<math>\mathcal{L}=\mathcal{L}_w</math> であり、そのパラメータ付けがある領域上で[[正則関数|正則]]であるなら、 <math>\mathcal{L}=\mathcal{L}_w</math> も同じ領域上で正則となる。 == 例 == ある重要な例として、領域 <math>D\subset \mathbb{C}^k</math> 上の正則関数からなるバナッハ空間が挙げられる。この空間においては、すべての核作用素の次数はゼロであり、したがって[[トレースクラス]]である。 == 核空間 == 核作用素の概念は、[[フレシェ空間]]にも適用される。{{仮リンク|核空間 (作用素論)|label=核空間|en|nuclear space}}とは、その空間から任意のバナッハ空間へのすべての有界写像が核作用素であるようなフレシェ空間のことを言う。 == 参考文献 == *{{cite journal |author=Grothendieck A |title=Produits tensoriels topologiques et espaces nucléaires |journal=Mem. Am. Math.Soc. |volume=16 |year=1955}} *{{cite journal |author=Grothendieck A |title=La théorie de Fredholm |journal=Bull. Soc. Math. France |volume=84 |pages=319–84 |year=1956}} * {{SpringerEOM|title=Fredholm kernel|author=B.V. Khvedelidze, G.L. Litvinov|urlname=Fredholm_kernel}} *{{cite journal |author=Fréchet M |title=On the Behavior of the nth Iterate of a Fredholm Kernel as n Becomes Infinite |journal=Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. |volume=18 |issue=11 |pages=671–3 |year=1932 |month=November |pmid=16577494 |pmc=1076308 |doi=10.1073/pnas.18.11.671 }} {{DEFAULTSORT:ふれとほるむかく}} [[Category:フレドホルム理論]] [[Category:関数解析学]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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